ラストゲーム(後編) ◆ENH3iGRX0Y
『精々最期の刻まで、足掻くがいい』
「何やってんだ、あいつら」
猫は放送を聞きながら、事態の異様さに勘付く。これまでこのような形で放送が流されたことは一度たりともない。
それにアンバーの名や吹き込まれたという単語から、猫の知らないところで何か企んでいたのは事実だろう。
正式な参加者ではないものの、猫もこの殺し合いが終焉に向かっていることを肌で実感していた。
とにかく会ってどうなるものでもないが、エドワードや杏子と合流しなければ。特にエドワードは穂乃果の名前や
ウェイブの名前に動揺しているかもしれない。
「って、あいつらの心配するなんてらしくないな」
契約者として合理的に今まで生きて、この場でも杏子の方針にも特に異を挟まず、とにかくその場で生延びられそうな方へと立場をコロコロ変えて生還しようと思っていたのだが、
蘇芳の死を悲しみ、みくに同情し、御坂を気にかけたりと、自然と他人の心配をしあまつさえその為に急ぐとは、昔の猫では考えられない。
「全く誰の影響を受けたんだが……」
場所は南の方はあらかた探した、つもりなので一先ず西の方へ猫は向かっていた。事実、向こう側から雷光なども見えていたので恐らく勘は当たっていると猫は確信する。
だがいかんせん小柄な猫の体では、移動はそう早くはない。
ネコは最高速度で48km/h前後を叩きだすことができる。これはかの有名な人類史上最速のスプリンターすらも追いつけないほどの脅威的な速度なのだが、やはり持久力がない。
加えて猫はここで何度か走りっぱなしだった疲労と、ほんの数日前は蘇芳に買われていたモモンガだったのを、主催の趣味で黒猫の体に無理やり入れ替えさせられたのもありネコの体を自在に操る勘が鈍ってしまっていた。
「また会ったね。ネコちゃん」
そんな疲労困憊の中、慣れない肉体で走り続けていたせいだろう。猫は
御坂美琴が目の前に現れるまで気付けなかった。
「にゃ、にゃー」
普通の猫ならばもっと早くに御坂の電波を察しして迂回することも出来たが、猫はうっかりそれに気づかないまま素通りし鉢合わせしてしまった。
かけもしない汗を垂らしたような感覚のなか、猫は全ての人生経験を頭の隅から引っ張り出し、総動員させ全力全開、渾身の演技でネコの鳴き声を真似る。
どこからどう見ても可愛い、キュートなネコを演出できていると猫は自信をもって言える。だが、御坂は噴き出すように笑った。
「無理しなくていいわよ。本当はさ。喋れるんでしょ」
「にゃ? にゃにゃ? ごろーにゃ?」
「私、見ちゃってるのよ。エドと黒子と貴方が喋ってるとこ」
「……………あっ」
『来るな』
『お姉様、ですわね』
喋った。確かに目の前で喋った。
黒子と御坂が交戦したあの場でつい猫は御坂の前で話していたのを思い出す。
あの時はまさかこんな事になるとは思えず、ただのネコのフリをするのを忘れていたのがここで響いた。
(ま、まずい……)
年貢の納め時だ。
終わった。
「ふふっ……そう身構えなくても良いって。どうせエド探してるんでしょ? 一緒にいこ」
□
それから数分。猫は実に快適な道のりを歩んでいた。
やはりネコと言う体になった以上人に抱かれて、楽をするのが一番賢い移動方法なのかもしれない。
「……どうしたの? 何も喋らないじゃない」
まあ、それが殺し合いに乗った御坂でなければ良かったのだが。
猫はここまで全く生きた心地をせず、御坂の腕の中でじっとしていた。まるで良く出来たネコの人形だと言えば信じる者もいるかもしれない。
「別にそんな怖がらなくていいのに。だって、貴方を殺す必要なんてないでしょ?」
「……なあ、どうしてわざわざ俺を拾ったんだ? ネコ質にでも使うつもりか」
猫は恐る恐る口を開く。この現状、猫の最も有効活用はそれしかない。だとすれば、エドワード達の足手纏いになる。
契約者としての合理的な判断では、御坂の言うがまま協力した方が良いのだが、寝覚めの悪さを感じつい猫が思ったことを口にした。
「そう、ね……」
(ま、まずいか?)
それから強く後悔し、下手に刺激するべきではなかったと遅い反省をする。
だがそんなものは役に立たない。黒を始め、この場では杏子やエドワードなど変な連中に関わりすぎて合理的な判断を誤ってしまったらしい。
猫は激しく自己嫌悪に襲われ自分を責める。チクチク刺激する電磁波も相まって、全身が警鐘を鳴らしている。
御坂は不意に俯き、前髪が掛かって目が隠れている。それが感情を読めず、何をするか分からない。
今すぐにでも爪を立て、御坂を引っ掛けて逃げれるように猫は身構えた。
「ぷっ……」
「ッ!?」
「もう、そんなに怖がらないでよ。私さ、ネコに嫌われる体質なの。ネコちゃんなら分かるよね?
だから一度こうやって抱っこしてみたかったの。これが理由よ」
あっけからんと明るく話す御坂に猫は違和感を抱いた。
これが本当に何人も殺害した女と同一津人物なのだろうか。しかも現在進行形で、エドワード達の抹殺を考えているとは思えない。
本当にただの女の子だ。
「ネコちゃんもさ。ここから帰りたいなら、私と一緒に居た方がいいよ。
だって私が勝つにしろ、負けるにしろ。勝者の近くに居ないと連れてって貰えないでしょ」
言われて見ると一理あると猫は思う。
猫は知らないがエドワードと杏子は彼を置いていくところだったのだ。
優勝するか脱出するか今のところ分からないが、所詮所持品である猫はとにかく参加者の近くにいた方が良い。
合理的な判断で基づけば、御坂が本当に手を出さないのなら一緒にいるのはそう悪くはない。まあそれが嘘の可能性もあるが。
「例えば、俺が不意打ちをしそうな嬢ちゃんの邪魔して、大声出すかもしれないだろ。それでも抱っこしたいだけで俺を連れて行くのか?」
「別にそれならそれでいいけどね。邪魔したっていいし、だからってネコちゃんを殺したりもしないから」
とても合理的じゃない。本当に殺し合いに乗った奴の発言なのだろうか。
だが
白井黒子を殺したのは間違いなくこの女だ。みくを殺め、アヴドゥルも手にかけた。
その事実は変わらない。だからこそ、猫は更に言葉を紡いでしまう。
「なんで、こんな殺し合いに乗ったんだ? 正直、殺し合いに嬢ちゃんは向いてなさすぎる」
「……ねえ、ヒーローが負けた時ってどんな感じだと思う?」
「は?」
「何でもいいからさ。色々いるでしょ? テレビの特撮ヒーローとか何でもいいから」
しかし猫には全くなじみのない話だ。適当にスーパーマンの負けた姿を思い浮かべてみたが、何の感傷もなかった。
「信じたものが崩れるっていうのかな。本当、何もなくなっちゃうの。
こんなはずがないって、こんなのおかしいって」
猫は目にしていないが、黒子が口にした見せしめで殺された上条という人物の事を言っているのだろうと察しを付ける。
それがどんな人物だったか、もう聞きだすまでもないだろう。尊敬や憧れ、恋心。様々な念が入り混じった複雑な感情が御坂の言葉には込められている。
「きっとね。もう駄目だって思ってた。アイツが負けた相手に私が勝てる筈がないのよ。
それで最悪アイツを生き返らせようとして……でも友達を殺すのも嫌で……」
――それで友人が皆死んだら、君は猟犬となるのかい?
「ああ、あの男がいなかったら……ううん、関係ないのかな」
あの白い悪魔を思い出す。御坂の運命を決定づけたあの男を。
もしも、彼にさえ会わなければ別の道を歩めていたのだろうか。
案外そうだったのかもしれない。その後に
アカメに殺されるか、エドワードに説教されて改心した未来もあったと考えるとすこしおかしくなる。
「非合理的だな」
同情も頷きもせず、猫は敢えて冷たく言い放つ。
「死者の蘇生なんて、契約者でもそんなことできる奴はいない。それを目的に殺し合いに乗るなんてありえない。
それで良く、友達まで殺したもんだ」
「最初は感情的に暴れたかっただけだと思う」
「ほう」
「でも、それが馬鹿だったのよ。放送で佐天さんの名前聞いてもう取り返しの付かない事に気づいて、ズルズル行ってこの様」
巡り会わせが悪かった、のだろうか。ここまで至る前に何処かで分岐点のようなものはあったはずだ。
どうしてこうなってしまったのか、御坂という少女はこういう人間ではない。猫はそう確信をもって言える。
「それでも……まだ嬢ちゃんが嬢ちゃんだった頃に戻れるんじゃないか」
駄目もとだが猫は一つの突破口になるのではと脳裏に浮かんだ言葉を口にした。
御坂が猫をただの黒ネコと思い、胸の内を打ち明けたあの瞬間に出た言葉だ。
かつての自分への決別として投げかけた台詞だ。思うところがないわけではないだろう。
「そっか、ちょっと勘違いさせたならごめんね。私、そういうつもりでネコちゃんを拾ったわけじゃないから」
もっとも、猫の台詞は御坂には届かない。何より御坂本人がそれを否定し拒んでいるのだ。
そこを猫がこじ開けることは出来ない。
「この子さ、エカテリーナちゃんって言うんだけど預かってほしいの」
「げっ!?」
御坂のディバックからお洒落な蛇が出てきた。流石に猫も予想が付かず、引いてしまったがよくよく見れば猫はこの蛇を知っていた。
確か御坂と
エスデスから逃げた後の束の間の休息の時だ。黒子が死んだ友人の飼い蛇で仕方なく保護していたと、エドワードに見せていた記憶がある。
つまるとこ御坂も黒子と同じで友人のペットを無碍にはできなかったのか。
「大丈夫。人懐っこいし、大人しいから言うこと聞いてくれると思う。お願いって言うのはネコちゃんが帰れた時、この子も連れて帰ってほしいの」
俺はネコだと突っ込みたくなる猫だが野暮な突っ込みはしないでおいた。それに御坂の言うとおり、蛇の癖に躾けられているのか確かに大人しい。
連れて回るくらいならそう難しくない。
「悪いが俺はこの様だし飼えないぞ」
「私が優勝したら、元の飼い主に返すし、もしそうじゃなかったら、ネコちゃんからエドに何とかしてもらうようお願いして。
エドの言葉を借りるなら等価交換、私がネコちゃん達の安全だけは保障する代わりにこちらの頼みも聞いて。どう? 悪くないと思うけど」
「この状況じゃ選択肢はない。契約者として合理的に判断させてもらうか」
「交渉成立ね。ありがとう」
御坂の腕の中だ。下手に断れば何をされるか分からない。というのは建前でしかない。
彼女の中の最後の良心が猫には、垣間見えた気がしたのだ。だからこそ彼はこの取引に乗ってみた。
ふと顔を見上げれば、本当に穏やかな安らかな顔を御坂は浮かべている。
「……そんな顔するなら、殺人なんてするなよ」
「何か言った?」
「いや」
もっともそんな顔を猫に見せたのは、猫が御坂にとって影響を与える人物ではないからなのだろう。
心を許す。逆を言えば内心を見せても問題にはならない。もはや敵でも味方でもない、そういった存在だからだ。
実際猫には御坂をどうにしてやりたいという思いはあっても、それをどうすればいいのか分からない。
彼が契約者であり、合理的判断を下すが故に非合理の存在をまことに理解することなど出来ないのだ。
(なあ、黒。お前ならこの時なんて声を掛けてやれたんだ? 俺は何て言えば良かったんだろうな)
ここにはいないとある男に猫はそう語りかける。
契約者になってから、こんな思いをするのは初めてだ。猫の考えていた以上に周りの影響を受け続けたのかもしれない。
こうして誰かの事を第一に考え、それでいてどうしても判断をくだせない。
(……面白いこと考えるじゃないか俺も……契約者の癖に)
「そろそろ少し、離れたほうがいいわ。巻き込まない自信はないから」
「あ?」
御坂の言葉を理解しきる前に猫の前方から雷が降ってきていた。
こんな雲一つない快晴に雷など、鳴るはずもない。あれは生き残った参加者がわざわざ目立つようにして御坂を誘っているのだ。
残されたタイムリミットは僅かだ。御坂と最後の決着を急いでいるのかもしれない。
それはエドワード達なのか、彼らを殺し優勝を目指すまだ見ぬ第三者なのかは分からないが、猫はこれがこの場に於ける最後の戦いだと直感する。
御坂もそうなのだろう。猫を放るように手放し、エカテリーナちゃんと一緒に猫は解放された。
「じゃあね。これでお別れか、また会うか分からないけど。その子をよろくしね」
「お、おい……!」
言いたいことだけを一方的に伝え、御坂は遥か先へと走り去っていた。その場に残された猫はエカテリーナちゃんと一緒に急いで御坂の後を追う。
幸い雷が御坂の向かうであろう位置を教えてくれる為、追いつくのは時間の問題だ。それが生きてるか死んでるかは別として。
「こんな急いで……俺はどうすりゃいいんだか……」
□
「チィ!」
瞬間移動を多用し、黒を囲むように
エンブリヲはパンプキンを連射する。
だが黒はエンブリヲの移動先、パンプキンの射線を即座に見抜き、エンブリヲがトリガーを引いた時には既に彼の視界から消えていた。
エンブリヲの目に写るのは、虚しく空ぶる光弾と視界の隅に写る黒い影だけだ。
交戦から何度も見た光景に舌打ちし、エンブリヲはまた瞬間移動で距離を取る。
本来パンプキンはピンチに陥れば陥るほど威力を増すが、逆を言えば目に見えた窮地でなければ本領を発揮しない。
そして戦況は決してエンブリヲが有利でもなければ、特別ピンチともいえない。パンプキンにとってもっとも理想から程遠い展開だ。
「なに!?」
いい加減痺れを切らしたエンブリヲは苛立ちに任せ、トリガーを引く。だが、その瞬間エンブリヲの足場が滑った。
躓くような場所もない。尻餅を付き、足元を見た時エンブリヲは解にたどり着く。
彼の足元に広がる水溜り、ローションがエンブリヲ転倒させたのだと。
エンブリヲの転移能力は確かに厄介ではあり、黒の見た中ではもっとも手数に優れた男だった。
だが反面、やれることが多すぎるあまり戦場での洞察力、及び応用力には非常に劣っている。
この戦いの中でもエンブリヲは回避と攻撃にのみ意識を向け、黒が回避に見せかけた誘導を行いかつその場所にローションを仕込んでいたことに気づけなかった。
「終わりだ」
黒の宣言と共に黒い手がエンブリヲの眼前に翳される。
訪れたピンチにエンブリヲはパンプキンを構えるが、既に両者必殺の間合い。で、あれば勝るのは先手を取った黒しかない。
額を掴まれ、エンブリヲの視界が真っ黒に染まる。黒の能力を知っている以上、この状況は喉下に刃を突きつけられているのと同じことだとエンブリヲは理解した。
その上で殺さない理由も分かる。
「お前、何を隠している?」
やはりだ。黒はエンブリヲから脱出に繋がるであろう情報を引き出したいのだ。
エンブリヲは思案する。まだツキはこちらに向いてもいる。しかし、残された切り札を切るには早い。
可能な限り、時間を稼がなければ。
「何のことだか」
「とぼけるな」
黒もまた焦っていた。彼もエンブリヲに実質命を握られている状況でもある。
ここで殺せば、僅かに差し込んだ光明を自ら閉ざすかもしれないのだ。拷問で吐き出させる手もあるが、時間がない上にエンブリヲは回復能力がある。
痛みを残り数十分耐えるだけならば、エンブリヲはそちらを選ぶだろう。
きっかけが欲しい。
この状況を打破する切り札が必要だ。
「ところで黒、もしも、銀が生きているとしたらどうする?」
「……俺がお前を殺せないと高を括っているのか」
「おやおや、良いのかい? 横に彼女がいるじゃないか」
決してエンブリヲの戯言に騙されたわけではない。だが、例えエンブリヲの言い出した虚言であろうと、目の前に彼女がいたのなら黒は信じざるを得ない。
「……………銀―――」
見間違うはずもない。あの銀髪も柔肌も盲目の紫眼も、全てが銀だ。
「違う、それは―――」
雪乃の絶叫が響き、我に帰った黒の真下にはパンプキンの銃口が突きつけられていた。
もう猶予はない。自衛の為に黒は電撃を流す。
終わりだ。相手が後藤でもなければ遅れを取ることはない。
「やめて」
「……っ」
「こんな手にかかるとは愚かだな」
銀の声で、制止を呼びかけられてしまう。分かってはいる、けれど黒は非合理な判断を誤ってしまう。
エンブリヲを殺そうとした手が止まりる。それを見ながら銀は黒をあざ笑った。
ガイアファンデーションで分身を銀に化けさせ、気を取られた隙に殺す。こんな子供だましにまんまと引っかかるとは、エンブリヲは笑いが止まらない。
実に良い気分だ。これだけ邪魔をしてきた男をこうやって自分の手で殺すと言うのは。
「がっ!? ぐ、ああアアア!!」
だが悲鳴をあげたのはエンブリヲだ。構えていたパンプキンを手放し、胸を押さえ悶絶する。
それから数秒の後、もがき苦しみながらエンブリヲは絶命した。
「―――貴様何をした?」
銀に化けていたエンブリヲが変身を解き、黒を警戒する。
絶命の寸前、本体のエンブリヲは分身と不確定世界の自分と入れ替わる要領で入れ変わり死を免れたのだ。
よって今、こちらのエンブリヲこそが本体だ。
「俺は、何も……」
エンブリヲはおろか、黒ですら何が起こったのか分からない。
攻め入るべきか、このまま離脱し切り札を待つかエンブリヲが逡巡した時、二人に雷が降り注いだ。
エンブリヲは瞬間移動で避け、黒は当たったところで利かない。雪乃は完全な射程外。これは殺意ではなく、少し脅かそうとした放たれたものだ。
「やれやれ、間に合ったって事でいいのかな。全く」
「無事かい、雪乃?」
エンブリヲに連れ去られる前、交戦していたはずの杏子達と足立が穏やかに足並みを揃えてこちらに向かってきていることに雪乃は首を傾げる。
エドワードもそれを理解していたのか、エンブリヲと黒の間に割り込んでから声をあげる。
「聞け、脱出する方法があるかもしれねえ。全員協力しろ!」
□
「今更その下らない錬金術が今何の役に立つんだ」
「正直、同意見だね。こんな異常性犯罪者の変態と同感なのは腹立つけど」
「仲良くしたほうがいいわ。強姦魔(あなた)達」
煽り返そうとした足立だが、ちょっと前に同じ事をやっていたことに気づき黙る事にした。
エンブリヲと同レベルなのだと自己嫌悪に陥る。
彼としては珍しい、己の犯罪行為に対する素直な反省だった。
「ああ、錬金術じゃ外せねえよ」
何を言っているのかと一同は思う。脱出方法を見つけたと言う趣旨と内容が既に食い違い始めている。
だがエドワードはそんな疑念を向けられても一切気にせず話を進めた。
「錬金術は理解、分解、再構築からなる。まずその理解をしてないから、初っ端からもう錬金術じゃ首輪を外せないって訳だ。
でも、お前は違うんだろ?」
エドワードは目線を黒に向けた。
そこから筆談に移る。
『その物質変換ってのは、首輪そのものを問答無用で無力化出来るって言ってたよな』
『聞いていたのか? それは理屈上であり、実際には不可能だと話したはずだが』
エンブリヲは目に見えて苛立つ。
もしやと思い期待したのが、とんだ見込み外れだ。
『ようするに、エネルギーと能力の処理が追いつかないって話だろ?
だったら、それを何処からか代用しちまえばいい。こんだけ雁首揃えてるんだ。能力の処理負担を更に俺達で分配するとかな』
エドワードの言葉にエンブリヲは目を丸くした。
『アンバーから送られた資料がヒントになった。ここの施設は繋がっていて、一箇所に何かが起きても別の箇所で代用出来るらしい』
『ネットワークのことか?』
黒はエドワードの言いたいことを理解した。
もっとも地獄門で聞いたヒースクリフからの完全な受け売りではあるが。
『そうだ。そのネットワークは俺より皆のが詳しいと思う……だよな、杏子?』
『何で私に振るんだ』
『話が逸れたけど、俺達の意識でネットワークを作り上げてその物質変換ってのに必要な代理処理を行う。これなら黒が一人で能力を使うよりはずっと効率が上がるんじゃねえか?』
『私を笑い死にさせたいのか? まずそのネットワークをどうやって組み上げる? 全員の頭を管で繋げるつもりか馬鹿馬鹿しい』
『なんだ。お前、まだ気づかないのか』
『なんだと』
『俺達は全員、既に意識を共有してるって事に』
エンブリヲは驚嘆と共にエドワードの真意を図りかねていた。
一体何を意味した台詞なのか、何処で意識を共有していたのか。だが、エンブリヲが解に至る前に杏子が真っ先に声を張り上げた。
『もしかして、言葉か?』
『鋭いな。そうだ、俺達は皆、言語レベルの意識を共有しあっている。今、この瞬間も異なる文化の文字を理解しあっているじゃないか』
エンブリヲにとっては盲点だった。何せ彼の世界は異世界のドラゴンたちとも人間体ならば、意思疎通ができるほどに言語が統一されている。
つまるとこ人種による言語の違いという認識が薄いのだ。
『杏子達はまだしも、俺やエンブリヲは明らかに皆からすれば外人だ。しかも、ここまで全部アメストリスの言葉で俺は喋ってきたのに杏子と会話が成立していた』
あまりにも言葉を通じすぎていた為に誰もが、見落としていた。
参加者名簿や放送など、言語がバラバラでは意味がない。主催はそこで参加者の意識を共有させたと考えるのが自然だ。
『その意識の繋がりを元に俺達でネットワークを作り出す。そしてその物質変換とやらに必要な処理を分担し、黒の負担を軽減させる』
『仮にそれが出来たところで、エネルギーは何処から持って来るつもりだ?』
エドワードとエンブリヲが議論を続ける最中、足立はエドワードの提案についてやはり懐疑的だった。
全員の意識を繋げるだのと言われたところで、足立はこれでも社会人の一人だ。いきなり、そんな突拍子もない理屈を言われて納得も出来ない。
それよりも今丁度5人が揃っている。そして油断もしているだろう。一気に全員始末して、御坂を殺しに行ったほうが生存率は高い。足立がそう考え付くのに、時間は掛からなかった。
「ッぐ、お、え……」
「たく、油断もすきもないね」
だが、足立がペルソナを繰り出すより先に杏子の拳が足立の鳩尾に減り込んでいた。
腹の中が逆流し、唾液を吐き出しながら足立は蹲る。
『エネルギーならあるさ』
エドワードが糸を取り出す。足立はこれから何をされるのか察しが着き、もがき抵抗するが杏子の強靭な膂力で抑えられては一溜まりもない。
身動きできなくなった足立の手足をエドワードはそのまま縛りつけた。
「ここにな」
足立を縛り上げ、それに指をさすエドワードに流石のエンブリヲも面を食らった。
しかし考えれば、生きた人間とはそれだけで効率的なエネルギー源でもある。エンブリヲも姿は違うが、アウラというドラゴンからマナを搾取し続けていた。
規模は違えど人間も同じようにその生命を抽出し、圧縮すれば使い勝手のいいエネルギー体を作り出せるだろう。
「お、おい……嘘だろ、ちょっと待てよ」
エドワードが雪乃が、更に杏子が黒がエンブリヲが足立を取り囲む。
この光景はどこかで見たことがある気がした。そうだ、以前どこかで経験したのだ。
それが何処かまでは分からないが、非常に鮮明なデジャヴが足立の中であった。
(そうだ、電車の中で……!)
思い出した。セリューから逃亡し電車の中で一息ついた時、少し仮眠を取った。その時に見た夢だ。
あの時は白いスーツを着た胡散臭い男がいた気がするが、それは重要なことではない。問題はその後だ。
この後の光景も足立は知っている。自分が変な石ころになり、それでいて意識もまだあるのに身動き一つ取れない。
『いやだ……おれ、おれは……死にたくない……なんでおればかりこんな目に……』
『死にはしませんよ。あなたは賢者の石となって永遠に生き続けるのです。光栄な事と思ってくださいね? では、さようなら』
『バイバーイ☆』
『いやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
そして、死にたくても死ねない。まさしく文字通りの生き地獄。
「いやだ、いやだいやだいやだ……やめろ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
これなら殺されていたほうがマシだ。ここまで必死に抗い続けた末の末路がこんな目に合うことなど、笑い話にもならない。
助けを懇願し叫び続ける足立。タロットカードを握ろうとしても、手の拘束が強く届かない。流石にエドワード達もそれを警戒しているらしい。
それでも足立は体をくねらせ、半泣きになり、それでも必死に必死に手足をジタバタさせ抵抗し続ける。
エンブリヲはまるで死に掛けた芋虫を見るような目で、雪乃は散らばったゴミ屑を見るような目で、全員の目線が足立に突き刺さる。
「ふざけんなっ! クソが! なんでこんなことになるんだよ! いっそ殺してくれ!! あんな石になるのはいやだ! いやだあああああああああああああああ!!!!!」
「……何か、勘違いしてないか」
「はえ?」
冷めたような声を聞き、足立がふと冷静になりよくよく見てみるとエドワードの指先は足立の手足に向けられていた。
そう手足、より正確にはそこに結ばれた糸だ。
「誰かを心底無様だと思ったのは生まれて初めてだわ」
足立の涙と鼻水と唾液と泥に塗れた汚い顔に雪乃はティッシュを一枚、―――これも足立のもので暴れた際に零れ落ちたものだが―――置いた。
「な、なんだよ……オイ、こっち見てんじゃねえよ……ふざけんな、てめえら!!」
『で、この糸は恐らく賢者の石に非常に近しい性質を持っている。
素材は何か人間以外の別の生き物を加工したんだろう。だが、生物を元に生み出されてたという点において、これと賢者の石はある意味同質のものだ』
小柄の少女とはいえ二人分の死体を繋ぎあげる強度、戦闘においても応用が利き、卯月のような無力な存在が生きてこれたほどの戦力。
確かにその特異な力はエネルギーとしては十分だ。エンブリヲもこれに対しては何の異論もなかった。
『エネルギーとして十分、といえるかは分からないが。賭けてみる価値はある』
『賭けるか。やはり、絶対の保障はないということだな』
確実性でいえば低い。あくまでエドワードの立てた仮定であり、それこそ更なる検証を重ね慎重に事を運ぶべきだった。
しかし、時間がない。残り一時間もない現状では、むしろこれだけ材料を揃えて、脱出方法を明示したエドワードは非常に優れた頭脳の持ち主だと認めざるを得ない。エンブリヲからすれば気に入らない話だが。
(……どうする? 乗るべきか……)
エンブリヲは思案する。
(ヒステリカさえ戻れば最悪の場合、肉体(こちら)の私が死のうと機体(むこう)の私が残り、復活することは出来る。だが、間に合うか……?)
先ほどの練成が失敗した際は全てをこの保険に賭けて、逃亡したがもし本当に外せるのなら―――しかし、確実性は低い。
それでも、せめてタイムリミットがなければ話は別だが、幾分の危険性を伴っていたとしても乗った方が合理的かもしれない。
「良いだろう。最後に協力してやる。だが、条件が一つある」
「条件?」
「残り5分まで、その決行は待ってもらう」
「それは、いいが……何のためだ?」
エンブリヲは返事をしない。エドワードは問い詰めようかと逡巡したが、疑念を押さえ込んだ。
どちらにしろ、エドワードも今すぐ決行しようと考えてはいない。時間を待つぐらいなら、譲っても良いラインだ。
「みんな……」
エンブリヲの協力は取り付けた。残すは志を同じくした、仲間……といえるほど深い仲ではないが、少なくとも味方といえる三人に確認しなければならない。
「はっきり言う。成功率は高くはない。主催が何も手を出してこないのが良い証拠だ。
失敗するかもしれない……けれど、この方法は全員の協力が必要なんだ……。
情けない話だ。俺が一人で突っ走らず、ちゃんと解析を進めてれば、もっと効率よく確実に脱出できたかもしれない」
ここまでの道のりは煽てにも褒められたものではなかった。自分の力を客観的に認識せず、衝動的に動き回りかき回し続けた果てが今のエドワードだ。
喪ってきた命も犠牲にした命も少なくない。そんな自分が今更、どの面を下げて懇願すればいいのか。
「だけど……俺一人じゃ無理なんだ。俺だけじゃ、これは外せない……だから、頼む……! 全員俺と一緒に命を賭けてくれ!!」
頭を深々と下げ、エドワードは心の限りから吐き出した。非常に分の悪い賭けを強制し、命まで張れという我侭だ。エドワードは殺されても文句は言えない。
「冗談じゃないよ、まったく」
呆れた顔で杏子は溜息をつく。
前から思っていたことだが、本当にとんでもない馬鹿だ。こんな奴についていけば命がいくつあっても足りない。
「まっ、でも……アンタには一度助けられてるからね。これで貸し借り全部チャラだよ」
「そうだったな。……あと先に言っとくが、利子分はまだまだ膨らんでるからな。返済完了は当分先だぜ」
「は? なんだそりゃ!?」
冗談を交えた談笑でエドワードの顔に明るさが徐々に戻りつつあった。
ここまで何も成せず、何一つ救えなかったと思っていたが。たった一人、これだけ頼もしい仲間が出来たのだ。
エドワードの戦いは決して、無意味なものではなかったのかもしれない。
「エルリック君、私もそれに一枚噛ませてもらうわ」
「俺も異論はない」
雪乃と黒も快く承諾してくれた。わずか一時間にも満たない付き合いだが、信頼を寄せてくれてくれるのは有り難い。
絶対に失敗出来ないというプレッシャーと、それを跳ね除ける強い自信が漲ってきたのをエドワードは感じていた。
「ふざけんなコラ! 俺の意思確認はどうした!?」
一人不愉快な気分で愚痴る足立だが、どうしようもない。ここまで無力化されれば石にされないだけマシなのかもしれないが、俄然心境は重い。
『全員、見てくれ。もう一つ重要なピースがある』
足立の内心を読んだかのように、エドワードは紙に文字を記し全員の前に差し出した。
□
エンブリヲは腰を下ろしゆっくりと深呼吸をしていた。
エドワードの話す全ての計画を頭に叩き込み、残りは待つだけだ。
もちろん彼が待っているのはそれだけではない。もう一つ掛けていた保険も待っている。
「一時間、か……」
忌々しい話だ。最初はアンバーも手札の一つとして利用するはすが、こうして首を絞めるとは。
勿論、保険の方も賭けにはなってしまう為、取れる手段を取る事は間違いではないと後悔はない。
しかし、些かの失望があったのも事実だろう。こう見えてアンバーにはかなりの好感度があり、声だけでもその美しさを隠しきれていないのをエンブリヲは感じ取っており、是非とも屈服させたかったものだ。
もしも保険の方が成功した暁には、黒とアンバーを蘇生させ、目の前で犯してやろうとエンブリヲはほくそ笑む。
「ねえ、一つ聞いていいかしら」
雪乃がエンブリヲの元へやってきた。
ふと見ると、その服装は黒のコートから血がこびり付いたパラメイルのライダースーツに変わっていた。
雪乃の支給品だろうか。胸の部分だけ、スカスカなのが哀愁を漂わせる。
「貴方は何を狙っているの?」
告白をするのだろうと考えたエンブリヲは粋な返しを想定するが、その内容はまったく関係ないものだった。
「教えてあげても良かったが、それは私の妻のみが知ることを許される」
「そう、じゃあもし体を貴方に売れば、貴方は私のATMとしてひれ伏すのかしら?」
「面白い冗談を言う。妻は夫を立てるものだよ」
「立つのは、その粗末な下半身だけで十分ね」
我ながら下品なことを口にしていると雪乃は驚くが、不思議とこの男には何を浴びせても罪悪感が働かない。
八幡ですら、多少は遠慮していたのに不思議なものだ。
それが本当の嫌悪感と親しいからこそ言い合える仲だからこその違いなのだろうか。
「そうだな。だが、一つヒントを言えば生還できるのは私と選ばれた女性達だけだ」
「貴方は、そうやって自己を大きく見せなければ人と話せないのかしら?」
引っかかる言い方だった。これまで散々罵倒されてきたエンブリヲだが、今回は僅かに眉が歪んでいた。
「そうね。きっと貴方は自分と対等の人間と話したことがないのね」
「もちろん、そんな人間はいない」
「言い訳ね。本当は貴方一人が怖いのよ。でも、誰かとの接し方が分からない。だから力付くか
サリアさんみたいに心の隙に付け込むしかない」
エンブリヲは溜息をつく。
言っている内容に対し理解に苦しむ。何を話しても歯向かう雪乃に面倒くささも感じていただろ。
既に時間は10分を切っている。エドワード達も動き出す頃だ。
どうやら、保険の方は間に合わないかもしれない。
「可哀想ね。一人でも、貴方を想い叱ってくれる人がいれば変われたかもしれないのに」
「では君がなってみるかい?」
「遠慮しておくわ」
「君との会話は良い頭の体操になるよ。これから君と過ごす時間が楽しみだ」
重い腰を上げながら、エンブリヲは雪乃に背を向けた。
見れば時間は既に十分を切っている。エドワード達も決行間近なため、最後の準備に取り掛かっていた。
「しかし、不思議だな。あのスーツを着た彼女の台詞はやけに印象に残る。……気のせいか」
□
「こんなとこか」
エドワードは練成陣を書き上げていた。
本来彼は練成陣なしで、あらゆる練成を行えるいわばオールマイティな術者ではある。しかし、反面基礎に優れ一つの何かに特化しているというわけではない。
この練成もエドワードの管轄外であり、練成陣を書き込みしっかりとイメージを想定しなければどのような結果を齎すか分からない。
短時間で出来る限りのリスク軽減の一つだった。
「持ってきたよエド」
練成陣の完成と同時に杏子が帰還し、ティバックをエドワードに放り投げた。
バックを掴み、エドワードは目当ての物を意識し手を入れる。
「サンキュー杏子。まだ調子も良くないのに動かして悪かった」
バックから出てきたのは無数の青黒い破片だった。
それはウェイブの真の帝具、かつての戦いで完全に破壊された修羅化身グランシャリオの破片である。
エドワードはそれを練成陣の中央へと集めて固めた。
「それが何の役に立つんだ?」
一連の光景を見て黒が口を開いた。
「あの糸が賢者の石、まあ黒の力を増幅させるエネルギー源だとは話したよな? こいつも同じさ。
これも何かの生き物から作り出された物だと思う」
エドワードの推測どおりグランシャリオもまた危険種を元に編み出された兵器だ。
同じく賢者の石に近い性質を持つ。
「グランシャリオとこの糸を合わせれば、より安定したエネルギー源になるってことだ」
「……なぁ、私のインクルシオも使えるんじゃないか」
杏子はインクルシオの鍵剣を抜き、エドワードの前に突き出す。
グランシャリオとインクルシオはその後継機とそのプロトタイプだけあり、構造は非常に良く似ている。
エドワードの言う賢者の石というものにこれも使えるはずだと、杏子は思いついていた。
「それも考えた。だが、やめたほうがいい」
「戦力のことか? それは確かにかなり減っちまうけど」
「そうじゃない、その鎧はまだ生きてんだ。糸やグランシャリオとはそこが大きく違う。
あの二つは既に加工されて、完全な武器になってるがインクルシオは竜そのものがまだ生きている。いわば生きた武器だ。
だから、単純なエネルギーとしては使えない。その前に賢者の石として組み替えなきゃならないが、その鎧の竜とびっきりタフな奴だろ? 下手な練成じゃリバウンドの可能性が高い。
試すには時間もないし、リスクも高い」
杏子も心当たりはあった。
以前の使用時よりもウェイブの手に渡った後の方が明らかに強化され、インクルシオに今も現在進行形で蝕まれているのだ。
普通に使ってこれなのだから、エドワードが手を出してそのリバウンドとやらが起きれば洒落にもならない。
時間があれば別だったのかもしれないが、リスクとメリットを計りに掛けリスクのほうが大きいとエドワードが判断したのも納得できる。
「しかし、まあ良くこんな馬鹿でかい陣を書き上げたな。これなんて書いてあるんだ?」
杏子は踵で地面を叩きながら呟く。
エドワードが書き上げた練成陣は意味不明の文字や、絵などが入れ混じり杏子にはさっぱり理解不能だった。
「少し説明が長くなるけど……まあいいか。
覚えてるか最初の練成陣を? あれをベースに俺が新しく書き上げたんだ」
エドワードは紙を広げて、筆談を始め。以前の練成陣を大雑把に書き上げ再現する。
『こいつがさっき俺らが利用した練成陣だ。
練成陣の基本はこの一番外側の円、こいつが力の循環を意味する。そして内側に記されているのは人体練成に限りなく近い人間を意味するものだ』
「この魚座のことか?」
エドワードが指す内側には、正座の魚座のような紋章が刻まれていた。
星空を良く眺めていた黒からすれば一目で分かる。
『魚座は肉体、精神、霊魂、交感を示し、更にそこへ組み込まれた山羊座は神々の門、自我を意味している。これが人間を表す。
人体練成の場合、更にそこへ性別を……この場合、星座を元にしているから、月か太陽がなければおかしいが、この練成陣には最初それがなかった。つまり人間を作るという目的ではなく、既に完成された人間を表現しているんだ。
そして、中央部分に記される獅子座、そしてそれを上書きするように刻まれた乙女座、蠍座。これらは支配、分析、破壊と解釈出来る。
つまりこの練成陣の意味を掻い摘めば、人間は、門を開け、支配を分析し、破壊する。この三つを俺ら風に分かりやすく言うのなら首輪、解析、解除ってことだ』
「それで、この陣と何の関係があるんだ」
エドワードの話を聞きながら、要領を得ない説明に杏子は忙しくなる。
『先ず人間の部分を大幅に修正し、新たに魚座を基点に双子座と射手座を書き加えた。これが知性や理性といった精神を司る。
そしてその二つを共有するのだから破壊の蠍座は要らない。同じく門や自我を意味する山羊座もだ。
あとはこの外周の円をエネルギーの循環と、同時に俺達が構築する精神のネットワークの循環として見立て、残った獅子座に、知恵や独創を意味する水瓶座を追記すれば
お互いの精神を支配し合い新たな知恵を独創する。といった風に新たな解釈を得ることになり、この練成陣は新しく別の構築式へと生まれ変わる』
「そ、そうか」
聞いて後悔しながら杏子は力のない声で答えた。
軽い気持ちで聞いたが、中々の情報量を力説するエドワードにあまり理解の追いつかない杏子は申し訳なさを感じた。
『ようするに、俺の力を増幅させて首輪を外すということだろう』
ああ、こいつもついていけてないな。
杏子はクールぶりながら適当に纏める黒に親近感を覚えた。
恐らく星座以外はチンプンカンプンだろう。
「って、もうこんな時間か……そろそろ、最後の仕込みに移るか」
エドワードは未だに拘束された足立の元へ駆け寄り、クローステールを解く。
足立は忌々しい枷から外されたものの、反抗しようとは決してしなかった。
ただ、エドワードと黒を睨みつけながら、背後を取った杏子が突きつけた矛先を背中で感じ渋々立ち上がる。
「後は打ち合わせ通りに頼むぜ」
「クソガキがッ! 綺麗ごとばかり並べるくせに俺は道具みたいに利用しやがって!!」
「妙な真似したら殺すからな」
自分の扱いに抗議を申し立てたところで連中は誰も聞き入れない。
言われたとおりに、足立はタロットカードを握りつぶす。
「ペルソナ!!」
マガツイザナギが電撃を放つ。エドワードたちに向けたものではなく、足立の正面にまるで己の位置を誇示するかのように雷鳴が轟いている。
雷音にひかれ、雪乃とエンブリヲも駆けつけてきた。
「エンブリヲ、残り時間は僅かだ。約束どおりお前も準備しろ」
「チッ……時間さえあれば」
不服そうな舌打ちと共にエンブリヲは練成陣の中へ足を踏み入れる。
奴が何を企んでいたのかは分からない。油断も隙も見せることのできない相手だが、今のエドワードたちにはなくてはならない人材だ。
毒を食らわば皿までとも言う。あえて、その企みを見越した上でエドワードが言及を避けた。
「なあ、いつまでぶっ放してりゃ良いんだよ?」
「御坂が来るまでずっとだ!」
足立は生きた心地もせず、永遠と電撃を放ち続ける。
我ながら、そんな役回りだと自嘲せずにはいられない。何せ今の足立は、釣りに使われる哀れな虫けらと同じなのだから。
御坂美琴という大魚を釣る為に意気の良い餌を演じるざまは滑稽ですらある。
「来たぞ、エドワード!!」
杏子の叫びが木霊する。
足立は一目散に駆け出し、練成陣に飛び込む。その瞬間、天を覆うほどの雷が練成陣へと叩き込まれる。
「インクルシオ!!」
鍵剣を抜き、鎧の名を叫び杏子は雷へとその身を晒していた。
電撃が鎧に触れ、吸い込まれるようにして消滅していく。インクルシオの電撃への耐性が働いたのだ。
驚嘆する御坂に杏子は一気に肉薄し拳を放つ。
「アンタ、何時の間に……!」
杏子の新しい力を聞き出す間もない。砂鉄を巻き上げ、拳をいなしながら御坂はレールガンを打ち出す。
砲弾並みの質量をもった鉄塊が音速の数倍の速度を叩き出し、この至近距離で杏子へと命中した。
あの鎧が何かは御坂は詳しく知らないが、使い手の力を跳ね上げる武装であるとは理解している。だが、それを計算に入れても杏子は確実にミンチになっている。
しかし、杏子は血反吐を吐きながら致命傷も受けずにレールガンを受け止めていた。
「今のは効いたよ……。ちょっと前なら、死んでた」
「な、によ……その鎧は……?」
予想が外れていることに驚いたわけではない。レールガンを無力する者には既に数人出会っている。それならそれで、別の対策をするだけで済む。
御坂が警戒しているのは、決して致命傷ではないにしろ少なくないダメージを負いながら、仮面の下で笑っているであろう杏子に畏怖のようなものを抱いたからだ。
何か罠があるのか、杏子の後方にいるであろうエドワード達に目を向けたが、エンブリヲも足立も黒もその場を動いていない。
「……待って、何で戦闘に」
御坂が感じた違和感はこれだ。御坂をおびき出しながら、杏子以外は誰も戦闘に参加しない。
残り5分もない現状で何故、エンブリヲはおろか足立すらも誰も生き残ろうとしないのか。
その刹那、背後から気配を感じ御坂は前屈みになる。御坂が放つレーダーがなければ気づかないほどのスピード、これだけの手練がまだ残っていたというのか。
首だけを背後に回し、その下手人を視界に収める。そこにいたのは西洋剣を手にした普通の少女だった。
アカメのような剣豪ではありえない。本当に、御坂なら軽く殺せる程度の血塗れのスーツと美しい容姿以外は極一般的な―――
『かかったなアホが!』
御坂の油断はほんの一瞬、だが雪乃の体を借りたアヌビス神が攻め入るには十分すぎる程の時間。
背中に強い衝撃が走り、貼り付けるように御坂の右手で剣で貫かれ串刺しになる。
「……っ、こ、の」
「今よ!!」
アヌビス神を手放し、雪乃は御坂から離脱する。
既にそこは練成陣の中、御坂の意思がどうであろうと最早練成を止めることはできない。
「よくやった! 黒、行くぞ!!」
練成陣の中に全ての残存参加者が揃った。後はこの手を合わせ、全てを委ねるのみ。
エドワードの両手が合わさり、黒の体が青く光る。
練成光とランセルノプト放射光が同時に輝き、練成陣を包み込む。
「エド?」
猫が到着したには既に遅い、光はより眩さを増しその場の全てを飲み込んでいた。
□
――――なん、だこれは……
重い、全身に錘を括りつけ更に重力を数十倍にまで引き上げたかのようだ。
思考が渦巻き、濁流のように意識が流されそうになる。
自分という自我を確立するだけで、体が弾け飛びそうな激痛を感じる。
これが精神の共有、意識の統一。
予想以上だ。
恐らく、このままでは全員の脳が許容量をオーバーし首輪の爆破の前に絶命する。
誰の考えで誰の知識から引き出した結論かは分からない。しかし、分かってしまう。
―――まだなのか……
首輪と能力が触れ合い、拮抗し続けている。いや、首輪が明らかに能力が打ち消され続けていた。
分かる。物質の変換が追いつかない。処理が、エネルギーが何もかもが足りない。
グランシャリオの破片は既に使い潰し、クローステールは残り僅か。
不可能だ。
誰が思ったか分からない。けれど、それが精神を通じ意識に流れてくる。
希望は潰えた。
□
エドワードは首輪を外すには、残された全ての参加者の力を借りる必要があると考えていた。
しかし、御坂だけはどうしても説得に応じない。故に練成に強制的に巻き込むという方法を思いつき、仲間達に伝えた。
機動力が高く、電撃に耐性のある杏子が御坂の気を引き、ノーマークであろう雪乃がアヌビス神の力を借り御坂を練成陣に叩き込む。
その思惑は成功し、エドワードはこの現状で理想の練成環境を揃え、可能な限り万全を尽くしたといえよう。
「惜しいな」
お父様はアンバーを抹殺した足で、参加者の最期を見届ける為、かつては広川が担当していた監視を続けていた。
エドワードたちの言い出した物質変換を補佐し、首輪そのものを無力化させるという術にはお父様自身感心したものだ。
流星の欠片を持った状態でも首輪に干渉できないだろうと踏んでいたが、能力の処理を全員で分散するという発想は数だけはある人間ならではといえるだろう。
虫けらの中にもその数を生かし、格上であるはずの上位の生物を殺すものたちも複数いる。
取るに足らない生き物達にも知恵があり、それを工夫する様を観察するのは悪い気分ではなかった。
「術式は完璧だ。帝具を賢者の石として代用したのも良い。しかし――」
「人数があまりにも少ない」
お父様の台詞を想定したかのように広川が紡ぐ。
「この殺し合いの上限である72人でようやく五分以下、それがたった7人では」
そうだ。不可能だと断定できる72人を掻き集め、その程度。賭けにすらなっていない。
「最後の足掻きとしては中々に粘ったでしょう。御坂美琴を引き込んだのも良判断です」
数増し以外にも御坂は黒と同じ電撃能力、それも上位互換といっても良いレベル5の一人だ。
電撃を操る緻密で優れた頭脳は決して、無駄にはならないとエドワードは当たりをつけていた。
「しかし、純粋な能力の規模、戦闘力を別として「電子の支配」という点においては、御坂は黒の下位互換になる。この方法では御坂は決定打になりえない」
これがもし学園都市第二位の冷蔵庫か、四位のビームおばさんであったのなら話は違ったかもしれない。お父様すら予想だにしない奇跡を引き当てた可能性もある。
だが現実は変わらない。
「終わりだな」
この結末は全ての積み重ねだ。
あの参加者さえ生きていれば、首輪の解析がもっと進んでいれば。ああはならずにすんだ、こうはならなかった。
思い起こせば幾らでもある。お父様ですら、この局面に至るまでは完全に安心しきってはいなかった。
かつてあらゆる逆境を跳ね除けた、または跳ね除けて自らの未来を勝ち取れる筈だった者たちが塵芥のように消えていく。
最早お父様は確信していた。本来、自分を打ち倒すべき側だった主役(もの)たちが、今この場において破れ去り、神となる己の姿を。
運命に愛された者達の敗北とその運命に打ち勝ったという絶大な確信を。
「人間よ、神よ、そして、我が運命よ……もう二度と……二度と私は貴様らごときには縛られん」
―――立てよ ド三流 オレ達とおまえとの格の違いってやつを見せてやる!!!
たかが人間ごときに殴り飛ばされ、見下ろされた。それがホーエンハイムの息子だとしてもだ。
許せることではない。見過ごせることでもない。
全てがあそこから狂い出した。まるで、運命に後押しされるかのような偶然の巡り合わせ。鋼の錬金術師を中心に引き起こされた、一連の物語はお父様の敗北が決定付けられていたかのようだった。
―――ごめん、黒子……初春さん、佐天さん……婚后さん、と、うま……
良い、実に良い。
―――アンジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!
―――死にたくねええええええええええええええええええええ!!!!!
聞き心地のよい、協奏曲だ。
―――どうせ、無理なのかな 愛と勇気が勝つストーリーなんて……
―――私じゃ、やっぱり……
虫けらもいい声で泣く。
―――ちく、しょォ……ちくしょおおおおおおおおおおお!!!!!
終焉の鐘としてはこれ以上の締めはない。
最早、敵はいない。
最大の障害すらも滅び去った。
「さらばだ、鋼の錬金術師よ。貴様こそが私にとっての死神だった」
□
―――星(シン)?
□
何が起こった?
「あれ、オイ…………んだよ、オイ……生きてる、生きてるじゃねえか、こんなクソみたいな方法で、ハハッ……よっしゃああああ!!!」
今確かに、光の中で七人の死亡を確認した。
参加者は今度こそ、全員死にこの儀は完了した。不確定要素だったヒースクリフも、こちらで保管しているナーヴギアの本体ごと
扉の向こうへ送り込み、アンバーも抹殺した。
「エド、やったのか私達……」
「アンジュ、君が私を助けてくれたんだね。やはり、君は私が千年待った天使だった」
「勘違いでしょう」
「一体、何なのよ……ッ? 頭が」
間違いはない。首輪を外せるはずなどない。
アンバーは確実に殺し、この箱庭の製作者ヒースクリフも茅場の肉体ごと消し飛び、ナーヴギアによる電脳化は完全に妨害した上で殺害したのだ。
ならば広川か? 否そんな力も権限も広川にはない。最早主催にはお父様の息の掛からないものなどない。
こんな結末はない。ありえない。
なのに、何故、生きている? 全員が首輪を外し、その上何故この玉座へと辿りついている?
「何をした……錬金術師? 何故、ここへたどり着いた」
「首輪が練成陣になっていたんだ。解除に成功さえすれば、自動的に発動しこの空間へと対象者を転移させるカウンターのな。
恐らくヒースクリフ、いや茅場晶彦が設計した首輪の隠し機能だと思うぜ。俺もさっき気づいたばっかだけどな」
エドワードはアンバーから渡された資料を見て、一つきになっていた事があった。
明らかに構造上不要な部位、かつ練成陣のようなものが見受けられていた。
だが、この結末から逆算すれば簡単なことだ。茅場はゲームを作ろうとしていた。ゲームである以上、プレイヤーにも勝ち目がなければならない。
それでもまだ分からない。
何故首輪が外せた?
外せるはずがない。事実、物質変換は首輪に打ち消されていたはずだ。
どうやって首輪を無力化したというのだ。残り七人で外せる筈がない。まさか、奇跡が起きて参加者に味方したとでもいうのか?
まるで、全ての偶然が調和され、お父様の破滅へと繋がったあの時のように。運命に後押しされたとでも?
「……抑止力」
「もうゲームは終わった。その大層な椅子から引き摺り下ろしてやるよ、フラスコの中の小人」
あらゆる参加者が死に絶え、残る七人に偶然奴がいる。
まるで、かつて辿った正史をなぞるようだ。
その力は決して最強でも無敵でもない。むしろ、他にこの場に立ち得る者は幾らでもいた。しかし、奴はここまで辿り着いた。
「やはり、そうか……」
驚きはある。しかし、お父様の中である種の宿命染みた因縁を感じさせてもいた。
「お前如き超えられねば、真理に打ち勝つなど不可能というわけか」
玉座よりお父様は立ち上がる。
「私の背後にあるこの扉こそが、貴様らの元の世界へと繋がっている」
それが開戦の合図だった。
エドワードが手を合わせ、無数の柱を練成する。エンブリヲがパンプキンを抜き、トリガーを引く。杏子が槍を精製し砲弾のように射出する。
「来るが良い。その叡智と異能を以って挑んで来い、人間共」
□
首輪を外す、その前に黒は聞き覚えるのある声を聞いた気がした。
懐かしくて暖かい。優しさに満ちた少女の声だ。
「お前が、助けてくれたのか。白(パイ)」
返事はない。既に永遠の眠りに付いた彼女に答える術はない。
ただ、あの練成は複数人からネットワークを作り出し統一するといったものだったが、その際にエドワードは無意識の内に黒の中に眠る白の意識も引き出していたのではないだろうか。
BK201は元々、白の持つ能力だった。故に彼女の意識が目覚めたと同時に、能力の真価を遺憾なく発揮しお父様の想定すらも超えた奇跡を起こしたのかもしれない。
黒に真相は分からない。ただ、白が力を貸してくれたということだけ分かれば十分だった。
そしてこの先も、最も遠く最も近い場所から黒を見守り続けてくれている。
「行って来る」
本当の戦いはこれからだ。全ての元凶にして、最大の敵との戦い。
友切包丁を抜き、黒は優しく呟いた。
□
柱は分解され、光弾は消滅し、槍は粉砕される。
お父様の眼前に広がる弾幕は一つの漏れもなく、全て消失した。
更なる練成でエドワードは柱を次々と生み出してはお父様に叩きつける。
杏子も槍を握り、一気に肉薄し刃を切りつける。
「錬金術は、使える……!」
エドワードが最も警戒していた錬金術封じだが、それは杞憂に終わった。
あれは元々、お父様がアメストリス国土に賢者の石を挟み妨害していたに過ぎない。この箱庭にまで効果を及ぼす可能性は低いと考えていたが、当たりだった。
「ふん」
前兆もモーションもない、ただ睨むだけで端から柱が破壊され接近した杏子も吹き飛ばされる。並みの火力では傷一つ付けられない。
エンブリヲが背後に転移しベルヴァークを脳天に振り下ろす。お父様に触れベルヴァークはそのまま飲み込まれていく。
黒い渦が発生し、ベルヴァークを取り込みエンブリヲにまで迫る。
「出来損ない風情が」
獲物を手放し一気に後退しエンブリヲは舌打ちと侮蔑を漏らした。
液体とも知れない、生々しい音を放ち、紫電のような光を発するとお父様は背中からエンブリヲの背丈ほどはある斧を精製し放つ。
エンブリヲは瞬間移動して避ける。だが、ベルヴァークは軌道を修正し追尾する。
転移先へ向かうベルヴァークを引きつけエンブリヲは重ねて瞬間移動し、お父様の眼前へと転移した。
身を屈め、ベルヴァークはお父様へと吸い寄せられる。眉間をかち割り、肩を切り落とされたお父様は血の代わりに黒い影らしき物質を噴出する。
「インクルシオォ!!」
インクルシオを開放した杏子が天空より木霊する。
大槍を構え飛来し、重力と魔法少女と龍の腕力に任せお父様を両断した。
壮年の男性であったお父様の容姿は崩れていき、黒い影が更なる濃さをましてお父様を包み込んでゆく。
「せっかく再現した入れ物だというのに」
瞬間、影は剣山となり広がってゆく。エンブリヲは瞬間移動し、杏子は槍を盾にエドワードは地面を練成し盾代わりに攻撃を避けていく。
その影の中央には黒尽くめの異形が仁王立ちで佇んでいた。
全身を目玉が覆い、特に腹部でギョロリと見開かれた巨大な目玉はその異様さを象徴している。
攻撃が止んだのを見計らい、エンブリヲと杏子が攻撃を再開する。
お父様は鬱陶しそうに手を顔の部分についている一つ目を細めると、疾風が発生しエンブリヲはおろかインクルシオを纏った杏子すらも威圧し封殺した。
「まずは、お前からだ。鋼の錬金術師、貴様をまずは殺す」
エドワード本人からしてみれば理解の及ばない、憤怒を込めた声で呟く。そこでお父様は初めて、駆け出した。
間合いを詰め、その黒と目玉に染まった手を伸ばし―――
「閃光弾―――」
最初の御坂との戦いのときにパイプ爆弾を練成しなおしたものだ。
光が視界を遮り、その動きは止まる。
その閃光の中にランセルノプト放射光を纏い、黒が飛び込みナイフを突き刺した。
ナイフを通じ、高圧電流が流されお父様の全身が焼かれる。
再生の度、消費されていく賢者の石が悲鳴をあげているのか、練成光と共に異音が轟く。
(なんだ? こいつ、こんなに弱かったのか?)
お父様の真下から先を螺旋状にした柱を練成し叩き上げる。杏子の槍がお父様を串刺しにし、パンプキンの光弾がその顔面を突き破る。
しかし攻めているエドワードは不安を抱かずにはいられなかった。
錬金術封じを抜きにしても、スカーですら歯が立たない程の相手がこんなあっさりと攻撃を受けるものか?
「……いかんな、動きづらくて叶わん」
影が巻き上がり、エドワード達を煽る。
全員、退避し影を避けていき、またお父様も一気に跳躍し玉座へと飛び降りた。
「扉を開いたのが6人、残り1人か……丁度良い」
玉座へ腰を下ろし、その影を手元に集めお父様は呟く。
「扉を開くか? 御坂美琴よ」
「ッ……!」
戦況を傍観し、誰を殺すべきか思案し続けていた御坂へとお父様は手を翳す。
瞬時に電撃を纏い、御坂は影へと放つ。だが、雷を飲み干すように影はより質量を増やし電撃ごと御坂を捕縛した。
影は御坂を縛り、万力のように締め付ける。
「御坂ァ!」
エドワードの叫びと共に柱が影へ触れるが、尽く粉砕される。
お父様は手から一つの赤い液体を零し、それを影に乗せ御坂の眼前へと差し出す。
「何を……する気、なのよ」
「人体練成」
影が練成陣を刻み、御坂を中心に人体練成の術式を形作る。
「馬鹿な、それでも足りるはずが……」
エドワードは狼狽する。奴がやろうとしていることは、新たに人柱を作り出すことだ。
しかし、それでもエドワード含め二人だ。扉を開いた人間はこの場に二人しかいない。
以前の
エンヴィーの言うようにマスタングも含めれば、人柱は最低でも三人以上は必要のはずなのだ。
(何が何だか知らないけど、俺はこのまま帰らせてもらうよ)
足立は全員が御坂とお父様に気を取られている間に玉座の隅にある、扉へと手を掛ける。
これで生還だ。あとは馬鹿と化け物達だけで勝手に殺しあっていれば良い。真に笑うのは足立ただ1人だ。
「人柱が何処へ行く」
「あァ?」
金属音と衝撃音が爆ぜ、足立の足が赤く染まりバランスを崩して転倒する。
銃口から煙を上げ、広川は無表情で足立を見下ろした。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! クッソ、てめえ……」
足立がペルソナを出すより早く、広川は踵をその腕に乗せ踏み躙る。
「では、始めるか」
赤い練成光が御坂を包み、更にこの空間そのものが巨大な練成陣を写し出す。
「……あの時か? あの時、ヒースクリフを通行料に扉を開いたあの時―――」
「そうあの時だ。お前たちは扉を開き、帰還した。その精神、意識を共有した状態でな」
開いたのはエドワードだ。しかし、参加者は言語レベルの意識を共有していた。
扉を開き、その真理をエドワードが再び垣間見た際、その意識が他参加者に流れ込んでいた。
例えそれが、本来の膨大な情報量には及ばないとしても真理を見たことに変わりはない。
つまり人柱はこの場に7人。
黒が友切包丁を振るう。杏子が拳を槍を切っ先に突進する。
しかし、届かない。影はその強靭と柔軟さを兼ね合わせ、二人の猛者を軽くあしらう。
幾ら切り裂こうが、電撃を放とうが、叩き潰そうが、影は全てを受け止める。
エドワードとエンブリヲも柱とパンプキンを合わせて放つが同じだ。
『だったら、こいつはどうだァ!!』
アヌビス神を掴んだ雪乃が飛び込み、その刀身を透明化させた。
影をすり抜け、お父様へと刃は到達する。人とは思えないほど、軽い抵抗を感じそのままお父様の体を一刀両断する。
『やったの、かしら』
『いや、まだ―――』
お父様の分裂した体が触手に代わり、雪乃の華奢な四肢を掴み上げる。
手首を強く捻り、アヌビス神は零れ落ちる。全身を裂く様に圧力が掛かり、雪乃の体は大の字へと開かれた。
「ガッ……ァ、ああっ……あっ……」
「雪乃ッ!」
特に首を強く締められているのか、酸欠状態に陥り息を吸おうと雪乃の動悸は荒くなる。
黒は顔色を変え、切り合っていた影を払いながら駆け抜ける。
戸塚との約束が頭を過ぎったのが、彼を非合理な行動へと促した。お父様は影を隙だらけの黒へと放つ。
「ぐっ!」
急所を友切包丁で防ぎ、防弾コートが盾になり致命傷は避けたが黒は勢いのまま吹き飛ばされる。
「人柱諸君。扉を開いてもらうぞ」
赤の練成陣が発光する。この玉座を中心に次元を時を超えて、65の命を架け橋に全ての線は繋がり巨大な練成陣となる。
一つの星ではなく、15の世界の扉を同時に開く。
逆転の練成陣など最早張れない。まさしくすべてを掌握する神へと昇華するその瞬間がやってきた。
この時、15の世界が一つに繋がった。
□
始まりは小さなフラスコの中からだった。
そこで会った奴隷に知識を与え、名を与え、代わりに血を貰った。
そしてそれが終わりへの始まりだった。
―――私はどうすればよかったのだ
―――お前はその答えをみていただろうに
真理の言った意味をずっと考え続けていた。あそこで、あんな場所で。
二度と戻りたくなかったあの場所で。
永遠と帰ることのない、扉の向こうを思いながら。ふと、あの後ホーエンハイムはどうなったのだろうとかそんな他愛のない、そしてこれからの自分には関係のない事も考えた。
それは光だった。
扉の中を潜り、奴は現れた。
私に対し、再び力を与えるといった。奴がもたらしたシャドウという素材は実に人間に近い、いや人間を元にしてあるが故に賢者の石として有効的に活用できた。
私は再び、自由を得た。だが、やはり足りない。
扉は真理を見る、錬金術を使うといった他に更にその向こう側へと渡るという使い道があった。
“イザナミ”もそうして現れたのだという。
それから私は扉を介し、幾つもの世界を見た。
世界の数だけ戦いがあり、資源があり可能性がある。
思ったのだ。これらの世界を土台に練成陣を引けないかと。
国土練成陣の欠点は、その規模故に一度気づかれればそれをベースにカウンターなどの妨害を加えられやすいことだ。
しかし、世界そのものを一つに繋ぐ練成陣ならばどうだ?
最早概念的なものではあるが、物理的にでなくとも理論上繋ぎ意味のある術式として組み上げれば術は発動する。
それからはひたすらに異世界を見続けた。ただ、世界を繋げるのではない。それらを一つの術式として成り立てなければならない。
その条件に必要な世界の候補は最初は23だった。しかし、計算を重ねる内に15の世界を結ぶほうがより効率的かつ、膨大な力が得られることが分かった。
最後の大詰めとして箱庭が必要になる。意外にもイザナミが1人の男と私を巡り合わせた。
茅場晶彦。
奴は自らの思い浮かぶ、空想の産物を実現化させようと躍起になっていた。私はそれを叶え、茅場はゲームを作り上げた。
そのゲームこそが、私が望む練成陣の中心、15の世界の中心であり玉座となることも知らずに。
必要なのは世界を繋ぐ72の魂。
全てが死に絶えた時こそ、練成陣は起動する。
□
練成が収まり、視界がクリアになる。
肉の塊のようなものが転がっていた。顔がつき手足があり、辛うじて人間を作ろうとしていたのだと分かるが、失敗作だ。
顔は逆さに、手足はバラバラの箇所にくっつき二足歩行すらできない。人間どころか、生物としても致命的な生きた肉の塊。
それは声を発そうとしたのか、分からないが一度口の奥から泣き声のような悲鳴とも区別の付かない奇声を上げて死んだ。
「……御坂?」
その塊の横にもう一つ、肉の塊が落ちていた。血の海の中に横たわり、小さく震えながら地べたを這いずろうとしている。
御坂だとエドワードはすぐに察しが付いた。だが、おかしい。
彼女は一向に立ち上がらない。なぜか―――
「持って……いかれたのか……?」
御坂美琴の四肢が消えていた。かわりに血が噴出し、御坂の顔は青白く血の気を失っている。
「ご苦労、人柱諸君」
声が聞こえた。お父様の低い低音の声だが、その容姿は声に反していた。
「では消えて貰おう」
ツンツン頭の髪に、あどけなさの残る顔。
「―――んで……」
あの場で、殺し合いの始まりの場所で殺された―――
「なんで、お前がアイツの姿をォ!!!」
四肢を?がれ、生気を失っていた御坂が声を張り上げ木霊する。
電撃が沸き立ち、槍を形作りお父様へと向かう。
「鬱陶しいな」
埃を払うような軽い動作で、電撃は掻き消される。右手に触れたその瞬間に。
同じだ。かつて、御坂のレールガンを跡形もなく消したあの光景に。
「そ、んな」
嘆くも間もない。
お父様が左手をトンと叩く。光が集約し、そして炸裂する。
核融合を引き起こし、ミニチュアサイズの太陽を作り上げたのだ。
ホーエンハイムのいない、この場でお父様の攻撃を防げるものはいない。
「この瞬間を待っていたよ」
いや、1人だけ。この絶好の好機を待ちわびていた。
エンブリヲはパンプキンを構え、満面の笑顔で叫ぶ。この圧倒的不利な状況こそ、エンブリヲが狙った最大の好機。
パンプキンはピンチにより、その力を増大する。
トリガーを引き、隕石のような光を輝かせパンプキンはお父様に直撃する。
轟音と閃光を鳴り響かせ、空間そのものが揺らぐ。銃身は罅割れ自壊を始めるがエンブリヲは構わない。
「こんなガラクタで殺せると思ったか」
だが光は一気に収束する。
視界が真っ白にそまる。
パンプキンが崩壊しその余波にエンブリヲは煽られ、杏子は拳をお父様へと振るい、エドワードは手当たり次第に武器を練成しお父様へ放つ。
しかし、全ての攻撃が無へと帰す。
終幕だ。
神の鉄槌が下される。
今度こそ、本当にエドワード・エルリックは死ぬのだ。
我が運命の最大の敵であり、この身を一度は滅ぼした憎き怨敵を。
そして、同じく運命に愛されし者達も贄としてその役割を終える。
「うおおおォォォォ!!!」
太陽の元、余命数秒も残されない身でありながらエドワードは抗い続ける。
無駄であることを知りながら、滑稽でもある姿にお父様は嫌悪感を抱いた。
一刻も早い抹消を、この男の生存だけは何が何でも許せない。一秒でも早く目の前から消し去れねばならない。
踵で地面を軽く蹴り、地面を隆起させエドワードへと向かわせる。
どうせ太陽で死ぬはずのエドワードに対し、意味のない行為だ。だが、お父様はそれでもエドワードを殺すという衝動を抑え切れなかった。
それは怒りからなのか、あるいはもっと別の―――
「ッ、ぐあああああああああ!!」
体を打ちつけながら転がっていくエドワード。その直後、静寂が支配し、空間は綻び、全ての感覚が麻痺する。
遥か上空より振り落ちる太陽。全てが燃え、塵すら残らない。
残された時間はいくらだろうか。少なくとも、瞬き一つした瞬間には全員消し飛んでいるだろうに、体感だけはとても遅く感じられた。
「終幕だ」
終わった。
人間どもと、そして何処かでこちらを見てほくそ笑んでいるだろう神と真理との因縁も。
この太陽で全て燃やし尽くしてくれる。勝者はただ1人だ。この玉座に立ち得るのは、たった一人だけだ。
【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】死亡
【黒@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】死亡
【エンブリヲ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】死亡
【足立透@PERSONA4】死亡
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】死亡
【雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】死亡
【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】死亡
「――――」
1秒も要らなかった。
瞬きをしている間に、全ては焼き屑しか残らないはずだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
扉が再び開いていた。扉をこじ開け、1人の青年と小さな機体が勢いよく飛び出していく。
雪乃はそれを死人を見るかのような驚いた表情で見た。
いや、事実それは死人であるはずなのだ。先ほど名を呼ばれ、死んでいたとされていた。
「ホムンクルスゥ!!!」
にくき敵の名を叫び、死んだはずの
タスクは機体から飛び降りる。操縦者を失った機体は、お父様へと突っ込んだ。
ガスに引火し、機体は暴発しお父様を巻き込み炎上する。
「ァ、ああああああああああ!!!! こんなとこにいられるか!!!」
お父様の太陽はほんの一時的にだが動きが止まっていた。それを好機と見て、足立は泣き叫びながら足を引きずりタスクの飛び出した扉へとがむしゃらに走り出す。
後から我に帰ったエンブリヲも舌打ちと共に扉の元へと駆ける。
撤退だ。現状持ち得る術ではお父様は殺せない。この幸運を生かすにはそれしかない。
「みんな! 早く―――」
タスクは全員に呼びかける。杏子もまた撤退すべきだと察し、雪乃は黒に抱えられながら扉へと向かう。
お父様は燃え盛る炎の中から飛び出し、触手を練成した。鞭のように撓りながら生存者達を追う触手だが、僅かに生存者達の方が早い。
扉を超えようとしたその瞬間、触手は消し飛ぶ。
エドワードも皆に続く。生き残るために勝利を得るために扉へと――
「……ッ」
「…………く、そォォォ!!!!」
耳に入った御坂の呻き声、エドワードの思考は消し飛びその体は衝動のまま動く。
触手に練成した柱をぶつけ、牽制しながら御坂へと手を伸ばし抱き上げる。四肢のない体が非常に軽く、担ぎやすい。
そして、扉へと足を踏み入れた。
静寂だけが残された空間でお父様はその右手を強く握り締めた。
万全を期したかといわれれば否だ。計画に粗が合ったのは事実であり、それを修正する時間もなく功を急いでしまった自覚もある。
しかし、可能な限りの不穏分子を握りつぶしたつもりだった。だが必ず何処かで人間どもは盤上を引っくり返す。
「面白い」
かつてのお父様では見られなかった、それは怒りでもあり闘志といった感情の類。
「良いだろう。これが定められた運命なのか、人間達の力なのかは知らん」
人間達が抗った末の結果なのか、あるいは抑止力から後押しを受けているのか。またそれ以外なのか、何であろうと最早関係ない。
「私の障害になり得るのなら、全て捻り潰してくれる」
そして、神へ―――更にその先たる神上へ―――
「最後に天上の意思に辿り着くのはこの私だ」
□
扉を潜り抜けた先は、地獄門の目の前だった。
かつて黒が訪れた光景と同じ、違うのは一つロックのランプが全て青色に点滅していたことだ。
恐らくはロックの解除と首輪の解除が連動して、玉座へと送られる練成陣が発動する仕組みだったのかもしれない。エドワードはそう考える。
「お前、死んだんじゃ……」
「俺も死んだと思ったよ。変な扉に無理やり突き飛ばされて、黒い触手みたいのに絡まれたんだけど、光みたいなのが見えて気づいたらあの場所に出たんだ」
「多分、俺達が首輪を外すときにタスクの魂も引き上げてしまったのかもしれない。
魂は肉体と精神で繋がっている。それらが離れれば、引き合う性質が働く」
意識を共有した際にタスクがまだ存命でしかも扉の中という異空間に居たのであれば、あるいはそこから魂だけを呼び寄せたとも考えられる。
そこから後は精神を手繰り寄せ、扉が開いた瞬間に脱出したのだろう。
(なら、ヒースクリフも……?)
あるいはヒースクリフも生きているのでは?
ふとエドワードにそんな願望が浮かぶが、即座に切り捨てた。
(いや無理だ。タスクとは訳が違う)
無理やり扉に物理的に放り込まれたタスクと通行料で消費してしまったヒースクリフでは話が違う。
最早、ヒースクリフは文字通り“消費”された為に扉にも現実にも何処にも存在しない。如何な対価を払おうとも、呼び戻すことはできないだろう。
「そうだ……みんな無事か」
「おまえ、何連れて来てんだよ!! さっさと捨てて来い!!」
エドワードが安否を気遣う声を掛けるが、それを掻き消す声量で足立が怒鳴り散らす。その指先には御坂があった。
力なく横たわり、頬を地べたにつけた姿は無様でもあり、不気味でもある。立ち上がる手も足もない為、ただ御坂は目だけを足立に向け睨みつけるだけ。
それが更に足立の癪に障った。
足を振り上げ、頭を詰み潰そうと足立は詰め寄る。
「やめろ!」
「お前さ、こいつが何やらかしたか知ってるよね? 良いんだよこんな奴殺して―――」
足の傷は何処へやら、足立は頭に血が上ったのか騒ぎ立てる。
「エド、私も殺せとはいわないけどそのナリじゃもう」
杏子の懸念は御坂をどうやって救うかということだった。止血すれば助かるだろうが、問題はその後だ。
この先御坂はどうなる? 1人で歩くことも出来ない。願いのため殺し合いに乗った末、それを叶えるために手足を奪われ他人に命をゆだねられる。
これ以上の絶望と恐怖はない。ならいっそ、そう杏子が思うのも無理もなかった。
「御坂の寿命を半分削って、扉から体を取り戻す。大幅に寿命を削るが、それは……こいつの贖罪として背負わせる」
「寿命を削る?」
「一度やったことがある。生きた人間でも賢者の石として使えるのなら、通行料としても有効なはずだ」
ブリックズで死に掛けた時、応急措置とはいえ自身の命を利用したことがあった。
その時の応用で扉から四肢を取り戻せるはずだ。
「それで、お前は御坂を救った後どうするつもりだ」
「どうするって」
「俺はイリヤを殺せなかった。そして、あいつは銀を殺して穂乃果の友達も殺した。
今、御坂をどうにかしたとして、その後どうなる? また誰かを殺すんじゃないのか」
黒の言葉がエドワードに突き刺さった。
「分かってるさ。御坂が危ない奴って事は。だけど今は戦力が1人でも多くほしい」
「面白いじゃないか、好きにやらせたら良い」
エンブリヲは少し楽しげに言う。
最も反対するであろうと予想したエドワードは拍子抜けし、エンブリヲを凝視した。
「何か私の顔に付いているのか?」
「お前、何のつもりだ」
「さてね。ただ、君がどう彼女と決着を付けるのか見てみたくなっただけさ」
雪乃はそれまでの会話を聞きながら、彼女自身もどうすべきか決めあぐねていた。
出来れば、あまり意見を対立させたくはない。あのお父様が何時追ってくるかも分からない。
しかし御坂を生かすというのも、雪乃の心情的には同意しづらい。
(サリアさんのときのように……いえ、無理ね。泉君と
ヒルダさんの二人掛かりだったもの、ここにそんな事出来る人はいないわ)
現実的ではない。かといって、殺す選択もなしだ。それをすればエドワードとの致命的な溝になる。
「私は彼女を助けるべきだと思うわ」
もっとも荒波を立てず、まとめる方法は雪乃がエドワードの肩入れすることだ。
足立は口調こそ荒いが、自分の意見が不利になればコロコロ言うことが変わる。逆にエドワードはその意思を貫こうと考えるだろう。
だから、雪乃はこの内輪揉めの一刻も早い解消として、ここはエドワードを立てる方を選んだ。
「俺は、何も言えない。けど一度襲われたのは事実だ。大丈夫なのか?」
タスクは1人、事実だけを述べてそれを判断材料に雪乃へと託すが彼女の決意は変わらなかった。
「駄目だ。この女は危険すぎる。殺したほうが良い」
黒は声を荒げ、より感情的に反論する。
「いざという時は……私が責任を取るわ」
「お前1人の問題じゃない。責任を取ったところで、それが何になる」
「黒さんには、申し訳ないと思ってるわ。けど、ここで彼女を見捨ててどうなるの?
エルリック君の言うように、もう殺し合いがどうとかいう話ではないし、これ以上揉めても双方が納得する結果にはならないでしょう」
雪乃の言葉は的を得ていた。
このまま黒がエドワードと言い争ったとしても、これから先の崩壊に繋がる亀裂に繋がるだろう。
特にまだお父様も残っているのだ。そんな状況でわだかまりを残せば、後にどんな結末になるか分からない。
「一つ、教えてよ」
御坂が顔だけを上げて、声をひねり出す。
「アイツは……どうしてあの姿に……」
「どうしてあの姿になったのかまでは分からない。けど、上条って奴の遺伝子情報を奪って姿を再現してる。
恐らく、魂もお父様に捕らわれたままだ」
魂を捕らわれたという表現から、上条はこのまま優勝したところで生き返らないだろうと御坂は気づいた。
「分かってるだろ。あいつを倒さなきゃ、上条って奴は二度と戻ってこない。
これが最後だ。協力しろ、御坂美琴!! 等価交換だ、俺はお前の手足を取り戻してやる。お前はその力を貸せ!」
「……」
その沈黙を肯定と受け取り、エドワードは御坂を担ぎ上げた。
場所を変えるつもりなのだろう。
「もうやってらんないよ。俺はちょっと、出歩くから」
足立は眉間に手を合わせながら、溜息を付いた。
「足の手当ては?」
「いいよ、俺1人でやる」
足立はそう言うと、足を引きずりながらトボトボ当てもなく歩き始めた。
「雪乃、君も気分転換に散歩にでも行くといい。私の胸の方が落ち着くかもしれないが」
「その胸の二つの突起物が自爆スイッチだったら喜んで飛び込むわ」
「あのお父様とやらは、恐らくしばらくはあの空間から動けないはずだ。でなければ、既に我々を追ってきているよ。
その間に戦力を整え、策を練り、これまでの疲れを癒すとしよう。温泉でもどうかな」
「あら大変、お湯の中に大量の塩を撒いておかなくちゃ」
エンブリヲは鼻で笑いながら踵を返す。
「何処へ行く気だ」
「一度私を救った程度で、いい気になるな猿が」
引き止めるタスクを無視し、エンブリヲはそのまま姿を消した。
「俺も少し、1人で動かせてもらう。猫の奴とも探して、合流しておきたい」
「なら私も同行しようかしら」
黒も続いて、背中を向ける。
雪乃はその後を追うように駆けて横に並んだ。
「戸塚君や、それにイリヤさんの事教えてほしいのだけれど」
「イリヤを知ってるのか」
「ええ、少しだけね」
「分かった」
放送で名を呼ばれたときはブラッドレイとの交戦中だったが為に、気にする余裕もなかったが、雪乃はイリヤの安否を気にし続けていた。
彼女がどうして死んだのか、何より黒の言っていた殺せなかったとはどういう意味か。聞かないわけにはいかない。
黒も僅かに目を閉じて、思いつめたような表情を一瞬浮かべる。それから、無言で頷く。
二人は静かに歩み、黒は絞り出すようにそれまでの道中の事柄を語りだした。
「残ったのは、私達だけか」
二人残された杏子とタスクはお互い、視線を向けた。
「そういえば、君が俺を助けてくれたんだっけ。ありがとう」
タスクにその時の記憶はないが、タスクの治療に杏子が関わり一命を取り止めたのは知っていた。
しかし、その礼もまともにしていないのはすっきりしない。丁度良い機会だったのもあり、タスクは心から感謝を込めて声にした。
「それを言うなら、私も礼を言わなきゃな」
「俺、何かしたっけ」
「私と関わっといて、死ななかったじゃないか」
「え?」
二度も死に掛けながら、必ず生還してくるタスクには杏子は少し救われていた。
それが本人のせいではないにしろ、自分と関わった連中が死んでいった杏子だからこそ、タスクには勇気付けられる。
タスクは全く何のことだか、見当も付かない様子だが。
「良いんだよ。取り合えず、そういうことだから」
杏子はばつが悪そうにしながら、顔を背けた。
□
御坂を連れ、エドワードは練成陣を書き始めた。
止血され、最低限の手当てをしたとはいえ御坂の顔色は悪い。早急に事を成さねば、間に合わない。
焦りながらもエドワードは的確に陣を記していく。
脳裏にヒースクリフの顔が浮かぶ。
自身が通行料としてしまった、犠牲者であり、エドワードが意図せずして殺してしまった男だ。
御坂やアル等はあくまで術者であり、その対価を体で支払っただけでそれは扉側に残されていることをエドワードは確認している。
しかしヒースクリフは違う。通行料として消費された。その肉体と魂が扉側にどうやって処理されたか、考えるまでもない。エンヴィーの賢者の石を使ったのと同じだ。
完全にエネルギーとして消費され、消えてしまった。最早どんな対価を支払おうと、ヒースクリフは戻らない。
だが、御坂の失われた手足なら話は別だ。間に合う、まだ御坂は死なせずに済む。
「……呆れたわ。そこまでして、殺したくないの」
御坂の言うようにエドワードも我ながら、馬鹿かもしれないと自嘲したくなる。
あれだけ出し抜かれ、痛めつけ続けられた御坂をこうして必死に救おうとしているのは滑稽だ。
「かもな。ただ、それだけじゃねえ。力が要るんだよ」
「……」
「あのお父様をぶっ飛ばすためにはどうしても、お前の力も要る。だから、助ける」
御坂は練成陣の中心に安置され、エドワードは手を合わせる。
「行くぞ」
二人は練成光に包まれた。
□
「世の中クソだな」
本当にあっという間の数時間だった。
首輪が外れたと思えば、あのクソ広川にクソ爺にいいようにされて逃げ帰ってきただけだ。
全くとんだ笑い話だ。
「どうすっかな、ほんと」
エンブリヲはきな臭い、エドワードは頭がおかしい、杏子はウザイ、御坂は色欲に狂ったサイコ、黒は感情的、雪乃は口が悪い、まともなのはタスクだけだ。
どうしようもない。敵も糞食らえだが、味方も糞ばかりだ。
こんなパーティでどうしろというのだ。優勝も完全に可能性が潰えた。こんなことならコイツと―――
「なあ、お前そんなとこで寝てて良いの?」
そこに倒れる少年は何も答えない。
「いま、とんでもないことになってるんだけど。そろそろ起きたら?」
だが、コイツは立ち上がるのだろう。今までがそうであったように、またこれからがそうであったはずのように。
「ラスボスだよ? 君のお仲間が死んだ元凶だよ?」
真実などを求めて、こんなクソみたいな世界をそれでも生き抜く、眩いばかりの光を持ったコイツなら、
「良いのかよ、許せないだろ」
足立は執拗に顔を蹴り、背中を踏みつけ煽る。
「おら、どうしたんだよ。何か言えよ」
服はますます汚れて、皮膚が歪む。しかし、それだけだった。
答えるはずがない。これはもう生きてはいない。人の形をしているが、既に腐敗が始まり最後には骨しか残らない、ただの肉の塊でただ腐るのを待つばかりの死体なのだから。
死んだ人間は口を聞かない。これはもうモノだ。
玩具に飽きた子供のようにクールダウンし、足立は足を引っ込ませた。
「見せてみろよ、ご自慢の絆の力ってのをさ。あの偉そうに踏ん反り返ってる糞野郎に見せ付けてやれよ。寝てる暇なんてないだろ」
何故だろうか。
まるで、それが当然のように足立は口にしていた。
目の前の現実が嘘であるかのように、鳴上悠の敗北はただの夢だと言わんばかりに。
足立は何処かで確信していたのかもしれない。
必ず這い上がってくるのだと、強大な敵を前にして、それを破り未来へと突き進む鳴上悠の姿を。
「……立てよ。お前は俺とは違うんだろ」
【二挺大斧ベルヴァーク@アカメが斬る!】破壊
【浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!】破壊
【グランシャリオの破片@アカメが斬る!】消失
【千変万化クローステール】消失
【二日目/午前】
【
足立透@PERSONA4】
[状態]:鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感(極大)、全身にダメージ(絶大)、右頬骨折、精神的疲労(大)、疲労(大)、腹部に傷、左太腿に裂傷(小)
爆風に煽られたダメージ、マガツイザナギを介して受けた電車の破片によるダメージ、右腕うっ血 、顔面に殴られ跡、苛立ち、後悔、怒り、片足負傷、首輪解除
悠殺害からの現実逃避、卯月と未央に対する嫌悪感
[装備]:ただのポケットティッシュ@首輪交換品、
[道具]:初春のデイバック、テニスラケット、幻想御手@とある科学の超電磁砲、ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿 (足立のページ除去済み)、
警察手帳@元からの所持品
[思考]
基本:生きて帰りたい。
0:……。
1:生還して鳴上悠(足立の時間軸の)を今度こそ殺す。俺はまだ鳴上悠を殺してない。殺してないんだよォ!
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後。
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です。
※
DIOがスタンド使い及び吸血鬼であると知りました。
※ペルソナが発動可能となりました。
※黒と情報交換しました。
【エンブリヲ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、服を着た、右腕(再生済み)、局部損傷、電撃のダメージ(小)、参加者への失望 、穂乃果への失望、主催者とヒースクリフに対する怒り 、首輪解除
[装備]:FN Five-seveN@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品×2 クラスカード『ランサー』@Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ
各世界の書籍×5、基本支給品×2 不明支給品0~2 サイドカー@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[思考]
基本方針:首輪を解析し力を取り戻した後でアンジュを蘇らせる。
0:お父様を始末する。
1:舞台を整えてから、改めてアンジュを迎えに行く。
2:お父様への対策を立てる。
3:ヒステリカさえあれば……。
[備考]
※出せる分身は二体まで。本体から100m以上離れると消える。本体と思考を共有する。
分身が受けたダメージは本体には影響はないが、殺害されると次に出せるまで半日ほど時間が必要。
※瞬間移動は長距離は不可能、連続で多用しながらの移動は可能。ですが滅茶苦茶疲れます。
※感度50倍の能力はエンブリヲからある程度距離を取ると解除されます。
※DTB、ハガレン、とある、アカメ世界の常識レベルの知識を得ました。
※会場が各々の異世界と繋がる練成陣なのではないかと考えています。
※錬金術を習得しましたが、実用レベルではありません。
※管理システムのパスワードが歌であることに気付きました。
※穂乃果達と軽く情報交換しました。
※ヒステリカが広川達主催者の手元にある可能性を考えています。
※首輪の警告を聞きました。
※モールス信号を首輪に盗聴させました。
※足立の語った情報はほとんど信用していません。
※主催者とヒースクリフに対する怒りは殺害の域に達しています。
※黒幕の正体を掴みました。
【黒@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(大)、右腕に刺し傷、腹部打撲(共に処置済み)、腹部に刺し傷(処置済み)、戸塚とイリヤと銀に対して罪悪感(超極大)、首輪解除
銀を喪ったショック(超極大)、飲酒欲求(克服)、生きる意志
[装備]:友切包丁(メイトチョッパー)@ソードアート・オンライン、黒のワイヤー@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、包丁@現地調達×1
傷の付いた仮面@ DARKER THAN BLACK 流星の双子、黒のナイフ×10@DTB(銀の支給品)
[道具]:基本支給品、ディパック×1、完二のシャドウが出したローション@PERSONA4 the Animation 、
[思考]
基本:殺し合いから脱出する。
0:お父様を始末する。
1:銀……。
[備考]
※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『サイコパス』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。
※戸塚の知り合いの名前と容姿を聞きました。
※イリヤと情報交換しました。
※クロエとキリト、黒子、穂乃果とは情報交換済みです。
※二年後の知識を得ました。
※参加者の呼ばれた時間が違っていることを認識しました。
※黒がジュネスへ訪れたのは、エンヴィーが去ってから
魏志軍が戻ってくるまでの間です。
※足立の捏造も入っていますが、情報交換はしています。
【
雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、友人たちを失ったショック(極大) 、腹部に切り傷(中、処置済み)、胸に一筋の切り傷・出血(小) 、首輪解除
[装備]:MPS AA‐12(破損、使用不可)(残弾1/8、予備弾倉 5/5)@寄生獣 セイの格率、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、ナオミのスーツ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[道具]:基本支給品×2、医療品(包帯、痛み止め)、ランダム品0~1 、水鉄砲(水道水入り)@現実、鉄の棒@寄生獣
ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)
[思考]
基本方針:殺し合いからの脱出。
1:お父様を何とかする。
2:もう、立ち止まらない。
[備考]
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスク、
プロデューサー達と情報交換しました。
※槙島と情報交換しました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。
※
第四回放送をほとんど聞けていませんでしたが、杏子から大雑把に聞きました。
※A-1にロック解除の手がかりがあると考えています。
※首輪の大まかな構造について理解しました。
【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、精神的疲労(大)、全身に打撲、右の額のいつもの傷、黒子に全て任せた事への罪悪感と後悔、強い決意 、首輪解除
[装備]:無し
[道具]:デイパック×2、基本支給品×2、ゼラニウムの花×3(現地調達)@現実、不明支給品0~2、ガラスの靴@アイドルマスターシンデレラガールズ、
パイプ爆弾×2(ディパック内)@魔法少女まどか☆マギカ、千変万化クローステール@アカメが斬る!、学院で集めた大量のガラクタ@現地調達。
[思考]
基本:主催の広川をぶっ飛ばす。
0:お父様をぶっ飛ばす。
1:大佐……。
2:お父様対策を練る
3:御坂とはもう一度だけ協力する。
※登場時期はプライド戦後、セントラル突入前。
※前川みくの知り合いについての知識を得ました。
※ホムンクルス達がこの殺し合いに関与しているのではと疑っています。関与していない可能性も考えています。
※仕組みさえわかれば首輪を外すこと自体は死に直結しないと考えています。
※狡噛慎也、タスクと軽く情報交換しました。
※エスデスに嫌悪感を抱いていますが、彼女の言葉は認めつつあります。
※仮説を立てました。
※お父様が裏に潜んでいることを知りました。
※デバイスに各作品世界の情報が送られています。
【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)全身に刺し傷、右耳欠損、深い悲しみ 、人殺しと進み続ける決意 力への渇望、足立への同属嫌悪(大) 四肢欠損、首輪解除
[装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×1、回復結晶@ソードアート・オンライン、能力体結晶@とある科学の超電磁砲
[道具]:基本支給品一式、大量の鉄塊
[思考]
基本:黒子も上条も、皆を取り戻す為に優勝する。
0:……
[備考]
※参戦時期は不明。
※槙島の姿に気付いたかは不明。
※ブラッドレイと休戦を結びました。
※アヴドゥルのディパックは超電磁砲により消滅しました。
※マハジオダインの雷撃を確認しました。
※西へ参加者が集まっていることを知りました。
【
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、精神的疲労(大)、顔面打撲、強い決心と開き直り、左目負傷 、インクルシオの侵食(中)、首輪解除
[装備]:自前の槍@魔法少女まどか☆マギカ アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、医療品@現実、大量のりんご@現実、グリーフシード×2@魔法少女まどか☆マギカ、使用不可のグリーフシード×2@魔法少女まどか☆マギカ
クラスカード・ライダー&アサシン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、不明支給品0~4(内多くても三つはセリューが確認済み) 、
南ことりの、浦上、ブラッドレイ、穂乃果、ウェイブの首輪。
音ノ木坂学院の制服、トカレフTT-33(2/8)@現実、トカレフTT-33の予備マガジン×3、サイマティックスキャン妨害ヘメット@PSYCHOPASS‐サイコパス‐、
カゲミツG4@ソードアート・オンライン
新聞、ニュージェネレーションズ写真集、茅場明彦著『バーチャルリアリティシステム理論』、練習着、カマクラ@俺ガイル
タスクの首輪の考察が書かれた紙
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを壊す。
0:お父様を倒す。
1:後悔はもうしない。これから先は自分の好きにやる。
2:さやかも死んじまったか……。
[備考]
※参戦時期は第7話終了直後からです。
※DARKER THAN BLACKの世界ついてある程度知りました。
※首輪に何かしらの仕掛けがあると睨んでいます。
※封印状態だった幻惑魔法(ロッソ・ファンタズマ)等が再び使用可能になりましたが、本人は気付いていません。
※狡噛慎也、タスクと軽く情報交換しました。
※DIOのスタンド能力を知りました。
※シャドウと遭遇中に田村にデイバックから引きずり出されたため、デイバック内での記憶はほとんど忘れています。
※アヌビス神と情報交換をしました。
※首輪の大まかな構造について聞きました。
※時計塔からアヌビス神を回収しています。
【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大) 、アンジュと狡噛の死のショック(中)、狡噛の死に対する自責の念(中)、首輪解除
[装備]:刃の予備@マスタング製×1
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:アンジュの騎士としてエンブリヲを討ち、殺し合いを止める。
0:お父様を始末する。
[備考]
※未央、ブラッドレイと情報を交換しました。
※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。
※狡噛と情報交換しました。
※アカメ、新一、プロデューサー達と情報交換しました。
※マスタングと情報交換しました。
※不調で股間ダイブをアンジュ以外にするかもしれません。
※エドワード、杏子、ジョセフ、猫(マオ)、サファイアと軽く情報交換しました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。
※第四回放送をほとんど聞けていませんでしたが、杏子から大雑把に聞きました。
※A-1にロック解除の手がかりがあると考えています。
※魔法治療により、傷口だけは塞がりました。
※変わり身の術は連続しては使えません。また、体力を大幅に消耗します。
※首輪の大まかな構造について理解しました。
最終更新:2017年10月05日 20:47