待ち猫オーバーイート! ◆MQZCGutBfo
―――と、ひたぎに抱えられた三匹の猫の内、黒縁の一匹がぴょんと抜けだし、
レイが、そしてスザクが向かった方角を見つめ、何やら不安げに「にゃあ…」と鳴く。
「あら、どうかしたのかしら、アーサー?」
常のツンケンした声ではなく、どことなく角の取れた声で問いかけるひたぎ。
「ほう……その猫はアーサーというのか。」
通信の為、赤いハロを抱えながらC.C.が問う。
どこかで見たような猫だが……と、記憶を探り出す。
「別に貴女に話しかけた訳ではないのだけれど。……確か上条くんが置いて行ったバッグに」
上条当麻のデイパックから3枚の写真を取り出す。
―――まったくあの粗忽者は水や食料すら置いて出て行って、こちらが見つけなければどうするつもりだったのか。
「この写真にアーサーと……あら?」
表には猫の写真と名前が。―――そして裏をめくり目を丸くする。
そこには、アーサーに関する詳細が書かれていた。
【
枢木スザク】と【
ユーフェミア・リ・ブリタニア】がトウキョウ租界で出会った野良猫。
黒猫だが目には目立つ黒縁がある。枢木スザクの手を噛むのが癖。
アッシュフォード学園の生徒会、次いで枢木スザクに飼われることとなる。
また、スフィンクスには【上条当麻】が飼い主であること、あずにゃん2号には【
中野梓】が友人から預かっていたこと、等が書かれている。
「なるほどな、その『情報』も支給品に含まれるわけか。それで、あのツンツン坊やは気がつかなかったのか?」
「そうね、差し詰め『不幸だ~』なんて絶叫癖を一人で発散していて気がつかなかったんでしょう。
性癖を優先して確認を怠るシモ条くんらしい迂闊さと言えるわね。」
もう一度、にゃあ、と鳴いたアーサーを
「再会しても見向きもしないなんて、とんだ御主人さまね……」
と、ひたぎは片手で優しく撫でる。
「まったくだな……まったくとんだゴシュジンサマだ。」
ルルーシュをなんとなく思い出しながらC.C.も悪態をつく。
(……スザクに関して言えば、ユーフェミアとの関係を思い出すこの猫とは、真正面から向き合えなかったのか。
ルルーシュとスザクの関係改善に、このアーサーとやらが一役買ってくれると良いのだが……)
―――そんな待ち猫五匹に対し、三回目の放送が鳴り響く―――
□
ひたぎが外を監視し、C.C.がメモを取る体制に無言で決まる。
タイミング的にスザク達は戦闘中の可能性があり、後にこちらが伝えることになるだろう。
聞き洩らさないよう、注意してメモを取る。
―――列車の運行再開情報、禁止エリアのメモを行い、次いで死者の発表となる。
心なしか、ひたぎの身体が緊張で硬直しているように見えるが、特にC.C.は悪態をつくわけでもない。
ルルーシュの無事が遠目に確認できたC.C.と違い、
阿良々木暦の消息は未だに分からないのだ。
そして―――
「え……」
「な……」
そこで【阿良々木暦】が呼ばれることは無かった。
だが……
「……サイアクね。」
すぐにでもスザクとレイに連絡を取りたいが、交戦中の場合はその一動作が命取りになる場合もある。
向こうから連絡があるまでは迂闊に交信できない。
動揺を外に出さず、
インデックスに代わった遠藤が話す内容の要点をC.C.がメモしていく。
□
放送の後、互いに無言。
C.C.は、赤ハロを抱え、思考の海に沈む。
(結局……私だけが生き残ってしまうのか……)
御坂美琴。そしてアーチャー。
この地で出会った同行者は、駆けるように先に逝ってしまった。
望みの死ねる身体になったにも関わらず、結局これまでの出来事と大きく変わったわけではない。
皆、私を置いて先に死ぬ。
(フン……とんだ魔女だな……)
だいたい、殺しても死なないような顔をしておいて、あっさり死ぬとはどういうことなのだ、あの朴念仁は。
―――なんとなく、抱き抱えられた時の感触を思い出す。
頓着していないように見えて、十分に気を配した抱き抱え方。
所謂、お姫様抱っこというやつだ。
あの軟弱を絵に描いたような坊やでは確実に持ち上げられないだろう。
そうだな、もう一度くらいなら、お姫様抱っことやらをさせてやっても良かったと思うくらいには、悔いている。
そして……アイツが口癖のように言っていた言葉を弔いとする。
「たわけは一体どっちだ。このたわけが―――」
□
戦場ヶ原ひたぎは、前回放送時に上条当麻に悪態をついた時のようなことはせず、黙って猫達と共に外を見続ける。
―――神原が守ってくれたこの命、なんて、殊勝な台詞は口にしない、
理性を無くしても私を守ろうとした大馬鹿者。
宗教なんてものはそれこそ死んでも信じないけれど。
それでも、もし天国なんてモノがあるのなら、指を咥えて後悔しながら私を見ていなさい。
でもそうね……気が向いたら90年後くらいに、阿良々木くんと一緒に折檻しに行ってあげるわ。
だからこれは命令。勝手に暴走して勝手に死んでしまった貴女への罰。
「ずっと私を見ていなさい、神原駿河―――」
□
心の整理が終わった後、C.C.はデイパックからピザを取り出し、立ち上がる。
「……そろそろ交代しよう。そこにピザがある。夕食にするといい。」
ひたぎはC.C.の顔をまじまじと見た後
「……あら、一体どういう風の吹き回し?食べ物如きで私を釣ろうとでも?
ああ、もしかして露出狂さんが居なくなったので私にシフトしようと言うのかしら。
でも私は同性への恋慕は抱かないことにしているの。……残念ではあるのだれど。」
喋っている途中で何かを思い出した顔をし、威勢は弱くなる。
「フン。なに鬼の撹乱というやつさ。
それにあの鬼女は食事もロクに取らせてくれなかったなどと、後で泣き言を言われても困るしな。
……さあ、おいで。」
ひたぎに軽くジャブを打ち返し、促されたアーサーはぴょんと赤ハロの上に飛び乗る。
「ノリモノジャナイ!ノリモノジャナーイ!!」
赤ハロの抗議に意を介した風もなく、再び外に目を向けるアーサー。
「そ。では遠慮なく頂くわ。」
C.C.が座っていた位置に座り、ピザを食べ始める。
そして、物欲しげな目でにゃーにゃー鳴くスフィンクスと、ちらちらとひたぎを見つめるあずにゃん2号。
「……流石に、ピザは身体に悪いわよね…?」
「失敬な。ピザが身体に悪いわけがなかろう。」
ピザ馬鹿な女、通称ピザの戯言を聞き流し、上条くんのデイパックから乾パンと水を取り出す。
乾パンは叩いて細かくし、ピザの箱の上に。
文房具の中からカルトンをチョイスし、そこに水を注ぐ。
勢いよくがっつくスフィンクスと、おずおずと食べるあずにゃん2号。
そして目聡く見つけたアーサーもそこに参戦する。
なんとなく心安らぐ光景を目にしながら、阿良々木くんも今頃食事を取っているのかしら、と想いを馳せる。
私は俗に言うツンデレタイプであるらしいけれど、ヤンデレというものでは決して無いと思う。
でもそうね、阿良々木くんが食事にかこつけて他の女「を」食べていたりしたのなら、ついうっかり切り落としてしまうかもしれないのだけれど。
と、急に怯え出した猫達に気が付き、首を傾げ、食事を再開する。
じーっと注目し、ようやく安心した猫達も食事を再開する。
そしてふと、思う。
上条くんが想い人ではなく私の護衛を優先させたように、阿良々木くんもまた他の女を優先させているのではないかと。
―――もしもそうだったら、どうしてくれようか。
「どうしてくれようか、なんてはしたないわね。どうしてあげましょうか、かしら。」
さっさと食べ終えていたアーサーはいち早くC.C.の元に戻っており、
満腹で逃げ遅れたスフィンクスと、おずおずゆっくり食べていたあずにゃん2号がひたぎに捕まる。
「……やれやれ、全く女と言うのは度し難いな、アーサー。」
自身を棚に上げ、アーサーと共に外を伺うC.C.
未だハロに連絡はなく、日は暮れようとしていた―――
【E-5北東/六階建てビルの屋上/一日目/夜】
【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:ポニーテール
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、ヘアゴム
スフィンクス@とある魔術の禁書目録、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式 X2 不明支給品(1~3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
0:レイとスザク、そして上条当麻が帰ってくるのを待つ。
1:その後、なるだけ急いで象の像へ向かう。
2:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。
3:正直、C.C.とは相性が悪いと思う。
[備考]
※登場時期はアニメ12話の後。
※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。
※安藤の死亡によりギャンブル船に参加者が集められているかは怪しいと考えています。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、赤ハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語
ピザ(残り54枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
0:赤ハロを使ってスザクとレイのサポートをする
1:放送の内容、特に織田信長の生存をスザクとレイに伝える。
2:その後、おそらく象の像に移動したルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
4:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『
過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。
※赤ハロとオレンジハロ間で通信が出来るようになりました。通信とは言えハロを通しているため、声色などはハロそのものにしかなりません。
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最終更新:2010年04月13日 22:52