第三回定時放送~世界の外から眺めたるもの~ ◆0zvBiGoI0k



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インデックスです。ゲーム開始より18時間が経過しました。第三回定時放送を開始します。
放送は一度きりですのでお聞き逃がしのないようにご注意下さい。
例によって放送内容の質問、応対等は受け付けませんのでご了承下さい。

………………

…………

……

よろしいでしょうか。それでは連絡事項をお伝えします。まず電車の復旧についてです。
【B-4】駅から【C-6】駅間 、【F-5】駅から【D-2】駅間の電車の復旧が完了しました。
ただし【D-6】から【E-6】の区間に関しては現在復旧作業中です。
中継地点の【D-6】駅の復旧は放送より1時間後、午後7時からになる予定です。



続いて、禁止エリアの発表です。
3時間後、午後9時以降より立ち入り禁止エリアが3つ増加します。
今回の禁止エリアは【C-1】【D-7】【G-6】の3箇所です。
禁止エリアに入った場合、数秒後に首輪が爆発しますので侵入することのないようご注意下さい。



次に、前回の放送から今回の放送までの間に死亡した参加者を発表させて頂きます。
読み上げる順番はこちらで死亡を確認した順番からです。


以上、11名です。残りは26名となりました

私からの連絡事項は以上です。それでは最後に遠藤から皆様にメッセージがあります』


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『やあこんにちは。いや、それともこんばんはかな?
いけないな、この時間帯はどうも挨拶の選択に困る……!
まあどうでもいいことだな。

改めてごきげんよう……!遠藤だ。
首輪換金制度はどうだったかな?施設の特別サービスは満喫したかね?
手に入れた武器で危機を乗り越えることができたなら幸いだ……!

……何人の首を刈った?親しい者だったかっ……?憎い者だったかっ……?
隣で安心し切っている仲間から奪ったかっ……?既に物言わぬ死体から刈り取ったかっ……?
どちらにしろ首輪を得られたのなら結構だ……!有効に使い道を選びたまえ……!



いよいよバトルロワイヤルも中盤戦を超えたっ……!
この放送を聞いている者も僅か26人……!半分以下にまで減ってしまったっ……!
放送の度にパフォーマンスを考えている俺にとっては嘆かわしいものだが、
お前たちにとってこれはむしろ福音……!ゲームの終了に近づいてきてる証……!
優勝までもうひといき……!是非とも奮起してくれたまえっ……!



……それにしても、だ。我々が苦労して造った施設があちこちで倒壊するという事態が相次いでいる。
当事者達にはよくわかるだろうが実に節操無いな……!
所構わず施設を潰していくのは結構だがこちらの身にもなって欲しいな……!
電車が止まってお前たちだって困っただろう?公共物は大事にしないと他の皆の迷惑になるじゃないか……!
電車に限ったことじゃない……!何でも壊せばいいなんて考えてる奴がいたら止めておいてやれ……!
取り返しのつかないことになるかもしれないからなっ……!



……ん?『やけに親切だな』と思ったか?
なに、ここまで生き残った運の良いお前達へのプレゼントというやつさ……!
自分で倒したビルに潰されて死亡……!なんてマヌケな結末は俺達にしても望んではいないしなっ……!

ああ、施設といえば言い忘れていた……!前回の放送通りにこの放送よりギャンブル船、
および各地にある無人販売機の商品が追加されるっ……!
今までは銃か剣みたいな化け物連中にはクソの役にも立たない物ばかりだったが
今度からは少しはマトモな物が買えるハズだっ……!
商品追加は今後も放送毎に増えていく。施設はマメに見ておくことだな……!

それでは今回の放送はこれまでだ……!1人でも多く死に、1人でも多く次の放送を聞く者がいることを期待して、
諸君らの顛末を見届けるとしようっ……!』





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「……カット!お疲れさまでした」

暗がりの部屋で劇監督のように合図を出すディートハルト・リート
彼の目の前には今回のシーンの役者たる男が立っている。

「中々の好演でしたよ言峰綺麗。やはり私の見立てに狂いはなかったようだ」

「それは重畳だ。演説をするのは慣れているがなにぶんこのような形は初めてでね。
 上手く出来るかは正直心配だったよ」

男の名は言峰綺麗。このバトルロワイヤルの運営で裏方の役割を負う者。
ただ単純に務めをこなすだけの走狗の黒服などとは一線を画す得体の知れない男だ。

「ツボはきっちり押さえてましたよ。彼―――というより彼らの世界の話し方は特徴的ですからね。
 本人を良く知る人物でない限り見破られる心配はないでしょうよ」



今回ディートハルトが担当したのは放送の演説における編集だ。依頼したのは言峰だが。
遠藤の途中退場の穴を埋める形で企画の運営を任された言峰らの当面の問題は定時放送だった。
ここで常に嘲笑混じりに参加者に演説する遠藤が唐突に姿を現さなければ(声だけだが)誰でも不振に思うだろう。
だからといって言峰がそのまま出てきても結果は同じだ。
そもそも運営の代表も形だけだ。魔術分野はインデックス、情報分野はディートハルトに任せている。
残る技術分野は元々『あちら側』の管轄だ。遠藤の立場はいわば顔役、
物事を円滑に進めるための表向きの代表者という形でしかない。
今後も綺麗は背後で手を回す役を続けることになるだろう。

そのため時間も差し迫った放送の偽装工作が第1の仕事だった。
ディートハルトもそのことに気を使って遠藤の声を録音、編集しておいたテープを
黒服を通して渡しておいたのだが突き返された。
言峰曰く「臨場感が足りない」ということらしい。

それには、ディートハルトも理解できた。正体を隠すためならともかく本人の存在を偽装するなら
肉声でなければ気付かれる危険もある。ただでさえここにはそれを見抜くかも知れない男が残っているのだから。
そう考えると、やはり自分の差し金は余計なお節介だったというわけだ。
そして仕事とあればディートハルトに是非もなく、妥協せずに取りかかった。

吹き替え役は自然言峰になった。末端の黒服ではボロがでる恐れがあるし、
インデックスにそのような芸を期待出来はしない。今でも、本来の状態でも。
神父ということもあり衆人へ話すのは手慣れていると判断したためだ。
それにこの男もまた他人の苦痛を悦とできる人種なのだとディートハルトは当たりを付けていた。
遠藤などよりも、はるかに悪質な。

そういった経緯で変声機を用意してリアルタイムの生放送を行い、今回の放送は事なきをえられた。



「とはいえ、安心してばかりいられないのではありませんか?
 結界の綻びとやらは相変わらず続いたままなのでしょう」

気の緩んでるように見える言峰にディートハルトは進言する。心配などでなく、仕事の義務として。

この会場全体を囲っている結界の破損は時間を追うごとに増している。
度重なる施設の倒壊、刻一刻と数を減らす魔方陣、極め付けにこの土地の要石たる櫓の完全崩壊。
ましてや何であろうと侵入ならぬはずの外からの爆発となれば驚愕もひとしおだ。
魔術云々について見識が及ばないディートハルトであるが、それが望ましい事態でないことは十二分に把握していた。
それだけでなく織田信長の首輪の爆破信号の無効化、想定よりも遥かに早い原村和と参加者の接触、
多くの問題が山積みになっている。
いつの間にか参加者でも主催側の陣営でもない謎の侵入者の存在も無視できない要素だ。
小川マンションの崩落と共に姿は確認できていないが、厳重注意には変わりない。

「無論だ。荒耶宋蓮は既に亡く、忍野メメによる修復もままならない以上、手をこまねく暇はない。
 君の知識を引き出す場合もあるだろう。禁書目録よ」

「了解しています」

言峰の傍らにいるインデックスは、ディートハルトが初めて相対した時と変わらぬ、
無機質な表情で淡々と返事を返すばかりだ。
神父と修道女、何ら違和感のなさそうな組み合わせなものだが、
白と黒、矮躯と長身、何の感情も宿さない無機質な表情に、薄い微笑を張り付けた表情。
何もかもが対極であるこの2人にそれは当てはまらなかった。

『外』からの爆発は物理的な穴埋めを優先。第二プラン―――魔術的手段以外での閉鎖も考慮しておくべきだろう。
織田信長と原村和、侵入者の女は現段階では放置。ただし監視は怠らないように。
結界の修復は忍野メメ1人の手には余ってきたため、見習い課程を超えた程度だが魔術を修めた経緯がある言峰も加わることになった。
インデックスの助言があれば不足の分も補えるだろう。
ただし言峰の意向であくまで本来の仕事を優先させる、という条件を課した。
本来の仕事―――サーヴァントの死体の回収。
アーチャーはともかくバーサーカーは両儀式によって「殺され」た。
肉体が残ってる以上魂ごと殺されてはいないだろうが、最悪頭と心臓だけでもあればいいだろう。
それが、この場の3人、それと『あちら側』の意思も含めた会議の結論だった。



「―――そういえば、遠藤の遺体はどうするつもりなのです?」

ふと、思い出したようにディートハルトは尋ねる。

件のギャンブルにて死亡した遠藤たちは「観客」への視聴が終了したのち他の黒服が回収した。
2名の黒服は適当な場所に放り込んだか魔法とやらの触媒にしたかだろうが、
遠藤の遺体だけは他とは別の処遇がなされていた。

「たいしたものではない、サルベージの実験体にするだけだ。システムの試運転に使おうと思ってね」

そう、何でもないように返事をする声の主は言峰―――ではなかった。
少女の声だがインデックスでもない。薄暗い部屋の壁にいた、もう1人の少女のものだ。
短めの茶髪のその少女は、この殺し合いの中にもいたある参加者と瓜二つである。
違う点があるとすれば、まるで男性のような口調であること。
そして―――超然とした、目玉だけ別人と挿げ替えたような金色に輝く目。

「……今更実験の必要もないのでは?既に荒耶宋蓮という成功例がある以上―――」

質問をしたことを少し後悔しつつディートハルトは問い続ける。この少女「たち」は正直苦手だった。
正確には―――彼女「たち」の声の主だ。生理的嫌悪、ともいえるか。

ディートハルトがその存在を知ったのは遠藤が死んでからすぐ後だった。
遠藤の死と、度重なるトラブルにより運営を円滑に進めるべく『あちら側』から送られて来た使いだ。
既に数十名の彼女「たち」が、混乱する黒服に替わって仕事の指揮を執っている。
妹達(シスターズ)という、とある超能力者の体細胞クローンの少女達。
同じ顔の人間が何人も、群棲生物のような統率のとれた動きをする様は悪い冗談としか言えなかった。
それが冗談ではなく事実なのだからなおたちが悪い。

彼女らは『あちら側』の「目」であるらしく、彼女らを通じて『あちら側』は常に情報を共有出来てるらしい。
普段は人形のように無表情だがときおり目の前の彼女のようにこうして感情を露わにする。
特別な個体がいるわけではなく、全ての妹達が『あちら側』と意思を繋げられるようだ。

『あちら側』の声を直接届ける為のものであり、携帯電話か情報端末を想像すれば楽といわれたが、
まったく安心できない。
どこの世界に人間サイズで電撃を放つ携帯電話やパソコンがあるのというのだ。

「荒耶宋蓮のサルベージが成功したのは偶然という要素が大きい。実験を重ねるに越したことはない。
 特殊な力も強い意思もない俗な人間。死因は損傷の少ない失血死。死亡時刻、場所もほぼ把握済み、
 サンプルとしては適任だ。
 成功すればよし、失敗したならば原因を改善をすればよし。その程度の、くだらない些事だよ」

質問に、本当につまらなさそうに少女は答える。
義理でも義務でも愉悦でもない、単なる実験。それ以外の意味は悉く持たない。
それ以外に、遠藤勇次の意義はもうないのだとでもいうように。

そもそも、殺人ギャンブルを最終的に認めたのは『あちら側』の判断だ。
遠藤が選ばれたのは消去法でしかない。ある程度立場のあり、必要な人員を抜いたら
残ったのが遠藤だっただけ。
その気になればいくらでも替え玉でも代替案も提示しただろうにあっさり通したということは、
本当に遠藤勇次はどうでもいい存在だったということなのか。

「しかし、それでは八百長もいいところですな。スポンサー殿に知られたら『金返せ!』と叫ばれますよ?」

ディートハルトは苦笑する。自分でも少し、顔が引きつってると感じていた。
この殺し合いの出資者たちが求めたのは命を賭したギャンブルだ。
死にたくない一心でなりふり構わず足掻く者の滑稽さ、それを安全な天下から眺める自分達への優越感。
限りあるからこそ命は尊く価値がある。それを虫でも潰すかのような気軽さで消える様が彼らの美酒の肴になるのだ。
後で回収の利くものを賭けに出していたと知られたら、彼らに不満の声が出てくるのは想像に難くない。
出たところで、どうなるわけでもないが。

「問題ないさ。彼が『生き返った』という事実はより彼らに『魔法』の万能性を実証できる。
 損失した分などすぐに忘れ一層協力を申し出るだろうさ。その点に於いては彼は中々に運の良い男だ」

「……成る程。自分の死すらパフォーマンスに使えるということですか」

ディートハルトは納得する。もっとも遠藤本人にそんな殊勝な心構えも、ましてや死ぬ覚悟などなかったろうが。

突如現れた神の御使いの如き者に強大な権威を与えられ、このバトルロワイヤルの指揮を任されながらも、
金を持つ出資者の単なる暇潰しにその命を吸い潰された遠藤勇次。

その姿を『魔法』を買い取り死さえ乗り越える術をも手にした金の王者と見るか、
常識を超えた存在に翻弄され、自分が至上と信じ続けていた金によって絶命し、
死してなお体と魂を弄ばれる憐れなモルモットと見るかは、
それを見届けた者達によるだろう。



「質問は以上かね?それでは解散だ。ディートハルト・リート。そして言峰綺麗。
 君たちの働きには期待しているよ」

少女の声で会議は開きになる。笑みを浮かべたその顔は魅力的な様でいて、この上なく歪んでいた。

「……分かりました」

「承知した」

空恐ろしいものを感じているディートハルトとはうってかわって、言峰は表情一つ崩すことなく部屋を後にした。
言峰もディートハルト同様先程初めて妹達を見たはずだが、それほど驚いた様子もない。
彼の世界において同じ顔の人間がいくつもいることなど殊更珍しくもないからだ。

それにしても、こうして監視の「目」を直接送ってきたということは、
『あちら側』にしてもこの展開は少々予想外だということだろう。
少なからず、自陣に不穏分子がいることも感づいているかもしれない。

(さて、こうなっては露骨に手を出せんが……。どう出る荒耶宋蓮、君の救済を、私は心待ちにしているぞ)

さりとて言峰に変わりはない。場がどうあろうと彼は己の望みのために動くのみ。
悲劇に彩られたこの閉じた楽園の終着を見届けたいがために。



◇――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2人の男が消え、暗闇に残るは2人の少女のみ。
いずれも、人の身でありながら只人に在らざる魔術(かこ)と科学(みらい)の化身。

「6時間ほど予定は早まったが狂いはない。全ては順調だ」

亜麻色の少女は語る。瞳に宿りし金の眼を爛々と光らせて。
既に全ての妹達の意識は制御を手中に収めている。今の彼女たちは「彼」の意のままに目となり足となり、
腕になる道具に過ぎない。

「そちらの方面は君に委ねている。その知識も、記憶も、命も。その全てを僕のために捧げてくれ」

「…ザ―――……分かりました。―――――――――――――リボンズ・アルマーク





地上にて今も命をしのぎ合う者たちの天上で、人知れず思惑は交差する。
その因果も、行方も、結末も、誰も知らないまま、
バトルロワイヤルは、三たび再開する。




【第三回定時放送終了(ゲーム開始一八時間経過)@残り26人】



【リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:???
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:???
?:妹達を通じて運営を円滑に進める。
[備考]
妹達と情報を共有しています。各妹達への上位命令権を所持しています。



【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:ペンデックス?
[服装]:歩く教会
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:???
1:バトルロワイアルを円滑に進行させる。



言峰綺礼@Fate stay/night】
[状態]:健康
[服装]:神父服、外套
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:???
1:サーヴァントの死体(魂)を回収する。
2:荒耶宗蓮に陰ながら協力する。
3:この立場でバトルロワイアルを楽しむ。
4:結界の修復を手伝う。ただし1を優先する。



【ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]: 健康
[服装]:普段着(セーターにジャケット)
[装備]:???
[道具]: ???
[思考]
基本:カメラを回せ!全ての責任は俺がとる!
1:当面はディレクター作業に専念
2:言峰と妹達への密かな恐れ
[備考]
参加者の情報をかなり詳しく知りました。




【妹達(シスターズ)@とある魔術の禁書目録】
超能力者(レベル5)、御坂美琴の体細胞クローン。能力はレベル2~3程度の「欠陥電気(レディオノイズ)」。
総数は不明。現在確認できるのは数十体。00000号(フルチューニング)、00001号~10031号は欠番。
「ミサカネットワーク」という特別な通信機構で情報や意識、記憶を共有している。


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リボンズ・アルマーク 237:とある傭兵の戦争記録<レクイエム>
228:主催にさえなれば俺だってラスボスになりますよ猿渡さん! インデックス 249:とある月夜の友情物語
228:主催にさえなれば俺だってラスボスになりますよ猿渡さん! ディートハルト・リート 262:ディートハルト・リートの戸惑い
228:主催にさえなれば俺だってラスボスになりますよ猿渡さん! 言峰綺礼 238:世界の中心で愛を叫んだモノ



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最終更新:2010年05月26日 00:27