鬼門 ◆5iKodMGu52



【A-7/櫓跡/一日目/放送直前】

 「参ったね、こりゃ」

ボサボサの髪をかきむしり、ドでかいクレーターの縁にアロハシャツの男が独り立っていた。
名を忍野メメ。自称ただの人間。
禁止エリアであるA-7に堂々と立っていることや、その首に枷が無いことから分かる通り、主催側の人間である。
そうは言えども所詮雇われ人である彼の立場は極めて低い。
彼に与えられたこのゲームに関する情報量は、雑用その他を行う黒服達に毛が生えた程度であろう。
尤も、それでも右も左も分からずこの場に放り出された参加者たちに比べれば、天と地ほどの差があるが。

無論、彼が「参った」と言ったのはそんな事に対してではない。
目の前の何もない、まさに何も無いクレーターに対してでもない。
憩の館でくつろいでいる最中に、無機質な声で櫓跡に強力な結界を最優先に張れと命令されたことに対してでもない。
追加報酬として、ちょっとツンデレ気味に命令してくれないか、と要求し見事にスルーされた事に対してでもない。

結界安定までの暇つぶしとレポートを兼ねて、連絡しようと通信装置をいじくり倒しても全く反応がないことに対して、である。
流石にいじくり倒して装置が暴走、コードが触手のように絡み付いてくる、などということはなかったが。
 「こんなデジタルありえませんってね」
この件が危急のことならば向こうから連絡が来るかも知れないなー、などと淡い期待を抱きつつメメは思考を巡らす。

ここに魔術的な何かがあった事は僅かな残滓から知ることが出来る。
だが、なにしろ徹底的な破壊を受けているものだから、此処になにがあったのか、詳細なことは断定出来ない。
ただなんらかのエネルギースポット、場であったことは確かなようだ。
それが何かから守護するためのものなのか、或いは『誰か』の保険として残されていたものなのか。
メメはざっと考えをまとめ、さてどうしたものか、と鳴らない電話に目を落とした。

【???/飛行船・原村和の部屋/1日目/夕方】

「これが権限の裏返しである責任、というものですか」

原村和は机に向かって独り言を吐いた。
目の前にはレポート用紙にびっしりと書き込まれた始末書。
天江衣にひとり勝ちさせすぎたことに対する責任を取る形である。
手加減はするな、というメッセージなのだろうと和は推測した。
エトペンぬいぐるみをさすりながら、和は物思いにふける。

確かに先程の天江衣の対局において、和は全力を尽くしていない。
対戦させたCPUは手持ちの中でも上位にはランクしているが、トップクラスにまでは研鑽していない。
さらに言えば最強の駒である、自身を投入していない。
事情を知る人間ならば、手加減しているのはハッキリと分かる。

だが天江衣は果たして原村和が全力を尽くしたところで止められる人間なのか。
答はノーだ。
あの時点での天江衣は気力十分。時刻は夕方。月も出ている。
万全とは言わないまでも、世界トップレベルの実力を遺憾なく発揮出来る体制に、天江衣はあった。
一方原村和はグラハムと衣のあの様子を見て、自らの傍らに宮永咲の存在がないことにひどく落ち込んでいた。
精神論を唱えるわけではないが、トップレベルの戦いにはメンタル面が大きく関わってくる。
あのまま天江衣との直接対決を行ったとしても、精彩を欠いたまま蹂躙されていたであろう。

そして和にとってみれば、たかが数半荘で勝敗が偏るのは当然の話しだ。
たしかにベストメンバーでは無いが、天江衣の相手をさせたCPUは十分な強さをもっている。
すくなくともラス確和了りや、点差を考えない全ツッパなどをさせるような馬鹿な思考回路はさせていない。
正統派、デジタル、鳴き主体とCPU個々の能力も含めて全体のバランスもいい。
天江衣の破天荒な和了は県予選決勝大将戦で何度も見てきたが、たかが2半荘の対局。単なる偏りでしか無い。
特殊な打ち筋と印象的な和了によって対局者の警戒心を強め、本来の打ち筋を失わせる。
大将戦の加治木ゆみ池田華菜の打牌などは、まさにそのケースにはまってしまった例に入るだろう、と和は見ていた。
故に精神面でのゆらぎのないCPUならば、対処は十分可能なはずである。
結果は天江衣のひとり勝ちではあったが。

 (それにしても)
天江衣のてんででたらめな牌譜に見切りをつけ、分厚いQ&Aマニュアルに目を通しながら原村和は思う。
 (果たしてゲーム内通貨にそこまで必死になるようなものでしょうか?)
そう考えてしまうのは、原村和がやはりゲームに直接参加してないためでもあろう。
ペリカは吸血麻雀においては命の残量にもなるのだ。
だが、当事者でないおかげで、俯瞰して帝愛側の思考に立って考えることもできる。
それは原村和にとって大きなアドバンテージであろう。

そもそもペリカなどという架空貨幣は、あの島のゲームでしか流通していない為、主催側の受ける被害は無きに等しい。
ギャンブル船などで売られている商品も、あらかじめ帝愛が仕入れたもので、あの場に陳列されている時点で市場からは切り離されている。
要するにペリカを巻き上げられた所で、帝愛側の損失はない。
強いて言えばゲーム運営に関して些細な支障が出る程度のもの。
天江衣を参加者とした時点で、この程度の事態は想像出来たことであろう。
ゲームバランスという意味でいうならば、帝愛は第二回放送でペリカの使い道を増やし、自らバランスを崩しているのだ。
首輪の回収が目的なのだろうが、その皺寄せが麻雀に降りかかってはたまらない。

そして、あの場でいくらペリカを稼いだ所で
 『優勝賞金ではないため、たとえ優勝したところで現金に換金することも出来ない』
その為、ゲーム内で流通するペリカが増えた所で帝愛としては痛くも痒くもない。

ひどいペテンだ。
和はQ&Aでこれを確認した時、心底帝愛という組織が信用ならないものだと確信した。
優勝商品という大前提ですらこれなのだ。開会式でインデックスという少女と遠藤という男が言っていた事全てがあやふやなものに感じてくる。
このゲームは優勝したところで参加者の望む事は起こり得ない。彼らが高らかに謳う死者の蘇生とてなんらかの詐術が関係しているに違いない。
一度検閲覚悟でこの事を『沢村智紀』に対してメールすべきであろうか。
そう考えた時、チリリリンと古びた黒電話がベルを鳴らした。

【???/飛行船・原村和の部屋/1日目/放送直前】

 「いやぁ悪いね。お邪魔じゃなかったかい?」

タイミング的には最悪だった。
まるで心の中に浮かんだ帝愛への反逆を見透かされたかのように鳴り響く電話。
帝愛は魔法を手にしたと言っていた。
デジタルの権化・原村和にとって、そんなオカルトなどありえはしないが、まるで魔法のような技術を手にしている可能性はある。
その中に深層心理や表層心理を読み取るようなものがあったとしたら?
そこまで考えて、なんと迂闊なことをしてしまったのだろうかと、和の心を後悔が支配した。
自分にある程度の権限を与えたのは、反逆の意志を抱いたら即ペナルティを課すことが出来るからなのではないのかと。

後悔はすぐに恐怖へと変わる。
自分に対するペナルティならまだいい。
 (もしかして、咲さんに対して…?!)
和がそう考えてしまうのも仕方の無いことだろう。
早く取れと催促する電話を前に、和が受話器をとったのは鳴り出してから二秒後のことであった。

 「…なにか御用ですか?」
そんな和であるから、こんな風に訝しげにやや不躾に尋ねてしまうのも、ある意味仕方ないことではある。
帝愛のことだ。朗らかな口調で宮永咲に対して既にペナルティを発動させたといいかねない。
和の警戒心は水をギリギリまでたたえたコップから、いつ水がこぼれてしまうのかを見守るかのごとく、極限にまで高められていた。

 「いやぁ随分長いこと出ないものだから、お取り込み中だと思ったよ」
 「そんなに待たせてません!へんな言いがかりはやめてください!」
 「おやおや、随分と機嫌がいいじゃないか。なにかいい事でもあったのかい?」
そして飄々とした口調でようやく気づく。
電話の主が忍野メメであることに。
見るからに不良なチョイ悪オヤジ。
そして、和の周りでかろうじて味方になりうる人物だと言うことに。
限界水域まで上がっていた水位は急激にその水面を降下していった。
 「…すみませんでした。ごめんなさい、考え事をしていて、つい」
 「いやいや。まぁただちょっと仕事と仕事の間が空いてしまってね。猥談でもしようかと思った次第さ」

【A-7/櫓跡/一日目/放送直前】

 「そうそう。そうやって年齢や身の丈にあったべしゃりが一番さ。背伸びなんてしなくたっていいんだぜ?」

恥らいと怒気が混ざった抗議の群れをしばらく受話器から耳を離してやり過ごしていたメメは、ある程度落ち着いたのを確認した後にのうのうと喋りだす。
 「身の丈に合わない背伸びした願いとか、身を滅ぼすだけだからね」
 「どういう意味ですか」
明らかに今までとは違う感情が込められた言葉。
ほぅ、と口の中でつぶやいてメメは続ける。

 「どういうってそういう意味さ。ただの女子高生が誰かを守りたいとか思ったりとかね。そんな願いは身に過ぎた願いさ。叶えようとすれば必ず歪みが生じるってもんだよ」
 「部長がそうだとでもいいたいんですか」
 「一般論さ。別に誰かのことを言ったわけでもない。それに部長って誰の事だい?」
 「…誰かを守りたいって、そんなに責められなくちゃいけないことなんですか? 理不尽な事態から誰かを守ってあげたいって、それは普通の事なんじゃないんですか?」
 「身の丈に合ってればそれもいいだろうさ。ただ、一般的な女子高生にはやや荷が重いと言わざるをえないんじゃないのかい?特にこのゲームに於いては、さ」

 「じゃあ私はどうしたらいいんですか!咲さんを置いてここから出て行くだなんて出来る訳ありません!」
 「そもそも順当に行けば、君みたいな女子高生がこのゲームを乗りきれるはずも無いさ」
 「そんなこと、やってみなければ分からないじゃないですか!」
 「まぁいいじゃないか。君は参加者じゃない。曲りなりとも主催者側の人間だ。黙ってお偉いさん方の言う事聞いてりゃ、もしかしたら釈放してもらえるかも知れないぜ?」
 「それでも私は、こんな殺し合いに加担なんてしたくはありませんよ…」

唇でも噛み締めているのか、急に電話の向こう側からの圧力が消えた。
やれやれ頑固なお嬢さんだ、とメメは頭を掻きながらため息を漏らす。
 「たしかにただの女子高生じゃこのゲームを生き残っていくことすら難しいさ。でもね、おっぱいちゃん。考えてもご覧よ」
 「おっぱいちゃんって誰のことです」
メメは軽くスルーして続ける。
 「君みたいな甘ったれた考えをしている人間が、無力な女子高生だけって事もないんじゃないかな」
 「…貴方が助けてくれるというのですか?」
 「別にボクが君を助けるだなんて言ってないさ。ただまぁ人間ってのは独りで生きてるわけじゃない。そんな当然の話しをしているだけだよ」

決まり文句を言わないのは盗聴されていることを懸念してからか。
メメと和を結ぶラインが警戒されていることはメメ自身にも分かっている。
だからどの程度まで踏み込めるかの、コレはちょっとしたテストだった。
思い立ったが吉日。
定期報告がてら和に電話をつなげてもらえないかと頼んでみたところ、メメ自身も拍子抜けするほどに快諾された。

ここまでは至極順調。だが、押し引きを間違えると原村和ごと始末されかねない。
当然和も咲に害が及ぶ真似はしたくないだろうから、慎重にはなるだろうが。

 (さてどうしたもんかね)
メメはさほど気にした様子も緊張した様子も見せずに、雑談を続けることにした。

【???/飛行船・原村和の部屋/1日目/放送直後】

「なんですか、今の音?」

第三回放送が読み上げられる中、突如として複数のモニターから言いようの無い音が響き渡る。
音源を辿るにどうやら政庁のようだが、いつの間にやら政庁ビル自体が消滅している。
しかしそこにも何も無い空間の中心で、一人の少女が立っているだけだ。
 「福路さん?一体何が…」
 「分からないかい。それが歪みさ」
まるでモニターになにが映っているのか分かっているかの如く、メメは答えてみせた。

 「身に過ぎた願いを叶えようとした人間の成れの果てだよ。第一、だ。願いを叶えてやるだなんて言う胡散臭い輩に、ホイホイ担保を渡すのが良くない」
メメの声は辛辣そのものだ。不快さを隠そうともしない。
 「あの優しそうな人が、なにを願ったと言うんです」
 「平沢唯って子を守りたいってことらしいぜ。身の丈に合わない物を全部自分で背負い込んで、結局背荷物に押し潰されたって所かな」
 「平沢唯…?」
名簿をポップアップして検索する。

平沢唯。
高校二年生。軽音部所属。ごく普通の女子高生。
一日目夕方、D-5政庁にて死亡。殺害者バーサーカー
関連:桜ヶ丘女子高校軽音部、平沢憂秋山澪田井中律琴吹紬、中野梓

福路美穂子となんの接点もない、ただの女子高生。
世話好きそうな福路美穂子がこのゲーム中に出会っただけの人物を守ろうとするのはまだ分かるが、あのように豹変するほどの何が彼女の中で起こったと言うのか。
やがて福路美穂子は発狂したかのように近付くもの全てをなぎ倒す勢いで暴れだす。
モニターの中の人物は最早人間とは思えぬ速度で動きまわるため、目で追うことすら難しい。
果ては全てを溶かす泥すら使役する。その姿は化物としか形容出来ない。

 「こんなオカルトありえません…」
目の前で繰り広げられる地獄絵図から現実逃避するかの如く呟く和の表情は暗い。
 「だがこれが現実さ。方相氏ってのを知ってるかい?」
 「いえ…なんですか、それ」
 「元々は隅を祓いて邪を退ける正義の味方。今じゃ節分で豆を撒かれて追い払われる鬼に零落してるがね。
 穢れに触れるものは穢れに染まる。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ、って奴だ。
 福路美穂子って子は、誰かを守ろうとする力を得るために、このゲームに潜む魔に触れすぎちまったのさ。
 そんな面倒なこと、専門家に任せておけばよかったんけどねぇ」

 「そんな事、分かる訳ないじゃないですか!これじゃまるでペテンです!何も知らない人間を騙して、仕立て上げて、堕落させて!」
原村和がこうして息を荒げるのも、どちらかと言えば意地悪なナゾナゾの答えを聞いてその理不尽さに腹を立てている感情に近い。
 「そいつぁ騙される方が悪いってもんだよ。君だって消化器詐欺やオレオレ詐欺くらい知ってるだろ?世の中誰かを騙したくって仕方がない人間ってのはいるもんなんだよ。
 ことに帝愛に関わる人間ってのはそんな人間だらけでね。そんな事は開会式時点で皆重々承知なのに、こうして騙される人間が出てくる。そういう人間を鴨って言うんだぜ。
 方相氏もそう。陰陽師によって鬼、追い払われる存在に仕立て上げられ、追い払う者、つまり陰陽師達の飯の種になってしまった。
 いつの時代も気のいい奴や、自分を犠牲にすることを厭わない、そんな奴が騙されて使い捨てられるのさ」

【A-7/櫓跡/一日目/夜】

 「騙されたくなけりゃ知識をつけることさ。基本は近づかないことだけど、ここじゃそうも言っていられないだろ?」

知識と言ってもメメの専門は占い呪い陰陽五行に風水奇門遁甲。
どこを切り取ってもオカルト一色。いっそ清々しい限りである。
こういったオカルト話は大抵の女の子にとって好物ではあるのだが、何事にも例外は存在する。
原村和はその例外だった。

 「ふと首筋に手をやると、ざりっという感触が。不思議に思って女が鏡を凝視してみると、首周りに爪がびっしりと…」
 「ひやああああああああああああ!ややややややややめてください!そ、そんな話がなんの役に立つんです!」
掴みとして怪談を披露した途端、コレである。
受話器を放り投げ、椅子がひっくり返り、絶叫がこだまする。
彼女がデジタル一辺倒になったのも、この異常な怪談嫌いが原因なのかねぇと思いながら、興が乗ったメメはさらに調子を上げて捲くし立てる。

 「う、うぅ、グス……ひっく…もう、終わりましたか…?」
 「いやぁなかなか良かったよ。忍ちゃんはイマイチ反応が薄いからねぇ」
おっぱいちゃんの気分転換も済んだようだし、残り時間も短いことだしね、とメメはようやく本題に取り掛かる。
無論そんな思考は口にも顔にも出さないが。

 「そうそう、方相氏について話していたね。彼らは陰陽師によって鬼に落とされた訳だけど、鬼は艮、つまり北東の方角より出づるって言われててね。
 この方角を鬼門として陰陽道じゃあ忌み嫌ってるわけさ。忌み嫌うからこそ鬼門とその反対側、裏鬼門の守りに対して神経質になるのが陰陽道でね。
 平安京じゃ比叡山延暦寺が鬼門、裏鬼門には石清水八幡宮が置かれたわけだ。
 平安京設立から800年、江戸でも南光坊天海によって平安京並の都市計画が練られてね。
 江戸城から鬼門の方向に東叡山寛永寺、裏鬼門の方向に三縁山広度院増上寺が置かれることになったわけさ。
 さらに江戸の場合は執念とも言えるほど鬼門の守りに強化が施されてね。
 神田明神や日枝神社、浅草寺なんかも鬼門封じの結界さ。あぁ日枝神社は明暦の大火で消失して、裏鬼門である現在の永田町に移されたけどね
 ちなみに裏鬼門の方角は申、つまり猿でね。鬼門の方角に猿の置物を置いて、鬼門封じにするっていうやり方も伝わっている。
 さらに申は午を靖んじるって言われていて、日光東照宮じゃ神厩舎に有名な見猿聞か猿言わ猿が彫られているわけさ。
 そんなわけで猿は神の使い、なんて言われててね。猿回しは江戸時代では珍しいことに帯刀を許されていたって話さ」

ちなみに秋葉原は皇居から見て北東の位置にある。どうやら東京の鬼門封じはまだ甘いと言えるのかもしれない。

【???/飛行船・原村和の部屋/1日目/夜】

 「つまり北東や南西には重要な拠点が置いてあると言うことですか?」

 「さてね。少なくとも陰陽道においてはそうしたほうがいいって言われてるね。…少し驚いたな。オカルトを受け入れるのかい?」
 「いえ、げんを担ぐ事くらいは誰でもしますから」

和はそう言って、勝負前にタコスを食べ散らかす片岡優希と、県予選決勝大将戦の途中で裸足になった宮永咲のことを思い浮かべる。
どちらもリラックスするための儀式のようなものだ。和自身もそういう意味ではエトペンを抱いて、家で麻雀を打っている時の感覚を呼び起こし集中力を高めている。
そうやってある一定の状況下におくことで、最高の精神状態に自らを導く事はオカルトでも何でも無い。ただの条件反射だ。
ただ和には、そうすることによって自分に都合のいい物事が起きたりだとか、運が傾いてくるなどと言う考えが受け入れられないだけである。

 「ただ、この場合においての方角っていうのは、どこそこから見た方角であってね。中心点こそが重要なのさ。
 平安京だったら大内裏、江戸だったら江戸城という感じにね。
 その中心点から正確に北東、または南西へと守護を行う。それが陰陽師の仕事の一つさ。そういう意味じゃ測量のエキスパートとも言えるかも知れないね。
 そして鬼門も裏鬼門も鬼門封じも、全てはこの一箇所を守るためのものだ。
 まぁいくら鬼門や裏鬼門に重要な拠点が置いてあるからって、お嬢ちゃんは近づかない方が賢明だろうね。強い魔術を敷いてるだろうから悪影響が出るかもしれないぜ?」

ザザザザァーザザザザァーザザザザァーザザザザ

受話器から雑音がひどくなり、和は思わず顔をしかめる。
 「どうしたんですか?いきなり雑音が…」
 「あぁそろそろ結界が閉じるからね。このA-7周辺は光も電波も音も人も何一つ中へ通さない空間になる。
 無論、この通信もそうさ。ボクもそろそろこのエリアからお暇するが、しばらくは電話をよこすこともできなくな…」

ザッ!

雑音がひときわ大きくなり、プツリと言って切れた。
ツーツーと鳴る受話器をひとしきり眺める。
自分になにをさせたいのだろうか。自分はなにをするべきなのだろうか。
そんな事を考えながらPCに向かう。
自分がなにをすべきなのかは分からない。
 (部長なら大胆に悪待ちを張るのかも知れないけれど、私は自分に出来ることをするまでです!)

忍野メメはA-7櫓跡に結界を張ると言っていた。
結界というオカルトはどうにも信じがたいが、アレほどの電波障害の起こる作業だ。
なにか重要な拠点であること自体は間違いがないだろう。
 (そして北東にある櫓跡が、仮にどこかの鬼門だと言うならば…)
地図を取り出して櫓から225度、つまり南西へと線を引く。
線上に当たる施設は三つ。

 (この三つの内どれか、もしくは全てが最重要施設だということですか?)

【???/飛行船・原村和の部屋/1日目/夜】

【原村和@咲-Saki-】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:エトペン@現実
[道具]:デスクトップPC×数台、会場監視モニタ×数台、質問対応マニュアル(電子ファイル)
[思考]
基本:帝愛に従い、咲さんを救う
1:役割(麻雀・サポート窓口)をこなす
2:咲さんが心配。一目だけでも無事な事を確認したい
3:どうせ打つなら守る為の麻雀を打ちたい
4:忍野メメを警戒。従ってはいるものの、帝愛は許せない
5:この三つ(【円形闘技場】、【象の像】、【遺跡】が帝愛にとっての最重要施設?

[備考]
※登場時期は最終回の合宿終了後です。
※基本的に自分の部屋から離れられません。
※監視されていること、異世界から集められていることを知っています。
※【櫓】が鬼門封じの重要施設。【円形闘技場】、【象の像】、【遺跡】のどれか、もしくは全てがこの島の最重要施設だと考察しています。
※以下の事柄はSOA!と思っています。
 ・死者が蘇る。

【質問について】
判明している質問

参加者の居場所
※但し一回の放送ごとに利用できるのは一人までで、居場所が分かるのも二人までです。

特定人物を殺害した人間の名前
※但し一回の放送ごとに利用できるのは一人までで、殺害者名が分かるのも二人までです。

殺し合いに巻き込まれた理由、殺し合いの目的
※但し起動してから四回目の放送以降なので第六回放送以降ではないと聞けません

原村和についての質問
※但し起動してから三回目の放送以降なので第五回放送以降ではないと聞けません

【B-7/一日目/夜】

 「さて、と。一仕事終わったことだしまた西側に戻るとするかね」

憩いの館に仕掛けた結界も、まだまだ儀式を始めたばかりだ。仕上げにいかなければならないだろう。
"門"を利用するがてら【神様に祈る場所】の結界を修復するのもいいかもしれない。
風水盤を取り出すと方角を確かめる。

 「やっぱり多少ずれているか。小細工をするねぇ」
デバイスに取り付けられた方位磁石は取り回しの点で非常に不便な作りになっている。
それでも徒歩ならば十分方角を推し量ることは出来る。
ただそれが飛行や長距離移動、例えば海路を通った場合などは、この地図は役に立たないだろう。
逆に言えば、海路を通った者ならば、この地図の異常に気がついていてもおかしくない。

この地図は方位が数°ずれているのだ。

仮に櫓が鬼門だとするならば、その225度線上には櫓以外のどの施設も存在しない。
あくまで地図にポイントされている施設には。
この島には地図上に○で示された施設の他にも多くの建築物が存在する。
その中のどれかかも知れないのだ。

そして、考えてみればいい。
そもそも主催者にとって最も重要な施設をわざわざ参加者たちに提示するだろうか。
たしかに闘技場や象の像、遺跡にはなんらかの重要なアイテムなどが隠れているのかもしれない。
だが、それは主催側が撒いた餌に過ぎないのだ。
そう、原村和の行動も全ては主催者の掌の内でしかない。

 (意地の悪い事だねぇ。まぁ彼女を使って試した僕が言えた義理じゃないかもしれないけどね)
しかし、このネタが他の参加者に知れたらどうなるか。
 (多少はこのバランスを崩すことは出来るかもしれない、か。まぁ、あまり期待せずに次の手に移るとするかな)
一つの手段に凝り固まっていたら、無理を通す為に歪みが生じる。
 (手を出せることには次々と手を出さなくっちゃね)
ズボンのポケットに手を突っ込んでぶらぶらと、"門"へ向かって不良中年は闇の中へと姿を消した。

【B-7/一日目/夜】
【忍野メメ@化物語】
[状態]: 健康
[服装]: アロハシャツ
[装備]:???
[道具]: 煙草、通信機
[思考]
基本:この場でのバランスを取る
0:【死者の眠る場所】、もしくは【神様に祈る場所】にある"門"へ向かう。
1:結界を修復する。
2:参加者が主催者を打倒する「可能性」を仕込んでおく。
[備考]
※参戦時期は不明。少なくとも、阿良々木暦と面識はあるようです。
※忍野の主催への推測があっているかは不明です。
※忍野への依頼、達成すれば一億円。
【敵のアジト】、【城】、【神様に祈る場所】、【廃ビル】、【円形闘技場】、【学校】の結界の修復
 及び〈太陽光発電所〉の代替地での結界作成、《政庁》での状況確認
※【ホール】に〈太陽光発電所〉の代替地として魔法陣を作成しました。
 ただし、従来通りの機能かどうかは判明していません。
※【敵のアジト】の結界は修復しましたが、直後に【敵のアジト】が崩壊しました。
※【憩いの館】に結界を敷きましたが、まだ不完全です。何らかの異常が生じているかもしれません。
※【櫓】を中心としたA-7エリア全体に進入不可能な強力な結界を敷きました。
※【櫓】がこの島における最重要施設に対する鬼門封じの施設だと考察しました。
※地図の東西南北がずれていることに気付いています(何度ずれているかは後の書き手にお任せ)


時系列順で読む


投下順で読む


211:建物語 忍野メメ 276:友達の定義
228:主催にさえなれば俺だってラスボスになりますよ猿渡さん! 原村和 264:残酷な願いの中で


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月09日 21:14