幻想(ユメ)の終わり(後編) ◆mist32RAEs
◇ ◇ ◇
ビルの向こう、遠くから轟々と音が聞こえる。
だが、この場は無音。
かつてレイと呼ばれたその死体を見つめる二人の青年は無言。
「…………」
「…………」
風の鳴る音。
変わらず無言。
無為に時間は過ぎていく。
「……………………なぁ」
「なんだ」
しばらくして、ようやくうっそりと動き始めたスザクはレイの亡骸へと近づき、ひざまずく。
それを見た
上条当麻は力の抜けた声で、ぼそりと呟くように語りかけた。
「何をしようとしてるんだ……?」
「レイさんの首輪を取り外す。血が怖いなら奥に引っ込んでいろ。済んだら呼ぶ」
スザクはその問いに対して、さも当然のことを行うと言わんばかりに言い放った。
そこに感情はない。合理的な判断に基づく結論に過ぎない。
「……おい」
「なんだ」
「なんだじゃねぇよ……! お前は……ッ!!」
だからこの期に及んで感情を顕にして怒る上条当麻に対しても無感情な声で、切って捨てるように言ってのけた。
「偽善者はお呼びじゃない。黙っていろ」
「んなッ……! てめぇ!!」
「首輪を取り外せば、内部構造を調べるためのサンプルになる。ひいては僕たちの首輪を解除するための調査につながる。
もし他の誰かがすでに解除する方法を見つけていても、換金してアイテムと引換にすれば無駄にはならない」
「違うだろ! そういうことを言ってるんじゃねえ!!」
ズレている。
スザクは全て分かった上で、まるで機械のナビゲーター音声か何かみたいに一方的な通告のごとき説明を続ける。
それに対し、上条は分かっていないのか、わかっていたとしても言い聞かせようと否定の言葉を返した。
「ああ……ならその御坂という子の首輪を使ってということか?」
「て……めェ――――――ッッッッ!!!!」
明らかな挑発。
だがまんまとそれにはまり、上条当麻は感情のままに右拳を振るう。
スザクは大振りなそれを軽くかわして逆に襟首をがしりと掴んだ。
鍛え上げられた腕力によって締め上げられ、もがく上条の顔から苦痛の色が伝わってきた。
「ぐッ…………っごぁ…………!!」
「どうやらレイさんがその命を懸けて伝えようとしたことを全く理解していないんだな、君は」
そうだ。
こいつはまるっきり分かっちゃいない。
「なんだってんだよ……わかんねぇ! わかんねぇよ! 死んじまったら終わりじゃねぇか!!
何で、どうしてそこで諦めちまえるんだよ……!! そうだ、何でお前は、止めなかった!?」
――諦め、か。
「……人はいつか死ぬ」
「だからって!!」
「聞け。死ぬことだけじゃない。何事にもいつか終わりは来る。学校からの卒業、友や恋人、家族との別れ」
それは誰のことだろう。
今のスザクの脳裏にはアッシュフォード生徒会の面々や、死別したという家族らの姿が浮かんでいるのだろうか。
「……いつまでもずっと同じようにいられはしない。君とその子のように、望まぬ形での別れを強いられる事はいくらでもある。
レイさんは、その終わりの形を自らの決断で選択したんだ。僕らが口出ししていいことじゃない」
「だからテメェは止めなかったっていうのかよ!! そうじゃねえだろ!! 違う……! 違うッ!! そうじゃねえんだ!!」
諦めが悪い。
この少年はつくづく諦めが悪い。
そして――自らを他の誰かと比べるということをしない。
それは美徳に聞こえるかもしれない。
だが、今はただの客観的な思考に欠けた子供の言い分にしか聞こえてない。
少なくともあの
枢木スザクの心には。
「なら聞こう……何がだ」
「もっといい方法があるはずだ! 生きてさえいればそれを見つけられる可能性はゼロじゃないはずだろ!!
諦めて、死んで、そうなったら、それすらなくなっちまうじゃねえか!!」
「……なぜそう思える」
「アンタは、なんでそう思えないんだ」
並行線。
二人はどこまでも交わらない。
スザクは子供の頃から、自らの持つ何かを大義のための犠牲にして生きてきたと聞いている。
上条当麻は、おそらくそういった経験がない。
いや、ひょっとしたら犠牲などという観念すらその思考には存在しないのではないかとすら思える。
「……なるほどな。君は強すぎる。だから他人の弱さを理解できないんだな」
「なんだよ……それ」
「君の言葉をそのまま返そう。誰かの気持ちを理解しようとすることを、なぜ諦められるんだ?」
その問いに対して、まるで見当はずれのことを聞かれたように。
「諦めるって、俺が?」
やはり、彼は何も変わらない。
二人が言い争う傍らの地に、金髪の男がピクリとも動かず横たわっている。
何が起こったのかはわからない。
だがこれだけは分かった。
上条当麻は――何も変わらなかったのだ。
「そうさ。いや、それすら気付いていないのか。君は自分が間違っているかもしれないと、僅かでも思った事は無いのか?
誰かのユメを頭ごなしに否定して、『その幻想を殺してやる』と断じて切り捨てるだけなのか?」
「それは……違う! だって、そのユメの先にあるのはみんなの幸せじゃねえだろ! 誰かが泣くことになるんなら……だったら!」
「それは間違いだ、と?」
「…………そうだ」
――みんなの幸せ。
――みんなの、優しい世界。
――ルルーシュ。
「――それこそが間違いだ」
「なん……だと……!!」
「君は相手の事なんか最初から考えちゃいない。ただ自分の思い通りにならないから相手を否定しているだけだ」
「ふざけんじゃねェ!!」
またもや上条当麻は激昂し、スザクにくってかかる。
自身の襟首をつかまれても無視して、逆にスザクの襟首をつかみ上げて問い詰めようと掴みかかる。
が、その右腕を捻り上げて関節を決め、柔術の投げのように地面へ叩きつけた。
「……ぐぁッ!!」
「ならば何故理解しようとしない。なぜ、どうして、その人物がそうせざるを得なかったのか、君は考えたのか!?
誰でもできることならばハッピーエンドを望むと、何故言い切れる!! そうではないかもしれないと考えたことはないのか!?
……いや、考えるまでもないか。君はその度に、その幻想をぶち殺す――と頭ごなしに否定してきたのだろうから」
その様をスザクは見下ろす。
「……」
上条当麻の四肢に力はなく、ただ地の上でだらしなく寝そべるだけ。
「……何が悪い」
ぼそりと。
「なんだと?」
「……何が悪い!! みんなの幸せを望んで、何が悪い!! 誰もが笑顔でいられる世界を望んで何が悪いってんだよ!! 俺は、俺は――――!!」
なあ――上条当麻、お前はどうしてそう思えるんだ。
「それも、間違いだ」
「………………が、ァッ……!!」
スザクは腕一本で上条の体を引き起こし、さらに襟首を締め上げる。
その腕を上条が引き剥がそうと両手で掴み、抵抗した。
そこに、突き刺すような言葉。
「君は――――自分にみんなが笑顔を向けてくれる世界を欲しがっているだけだ」
「ぁ……………………」
最初から誰かの事など関係はない。
みんなが自分の周りで笑ってさえいればそれでいい。
なんと、なんという、傲慢で、自分勝手な理想もあったものだ。
「――やめなさい」
女の声。
それはすぐ隣から聞こえた。
今まで物陰に隠れて観察していたが、姿を見せても構わないと判断したのだろうか。
先刻、銃声と言い争う声を聞いた二人組――
C.C.と戦場ヶ原は、それを知り合いの声かもしれないと考えて、そしてやや遠い物陰から様子を伺っていたのだ。
遠間から見た限りでは、確かレイという名前の男が血まみれで倒れ伏し、その傍らで上条とスザクが言い争っているように見えた。
または彼ら二人が仲間割れを起こしてレイを殺し、そしてその身ぐるみを剥ごうとしているようにも見える。
上条とスザクの性格を知っているC.C.は、彼らがそうなる可能性は低いとフォローすることも考えた。
が、男ふたりの意地の張り合いのような押し問答に対し、何が起こっているのか様子を見てからでも遅くはないと思ったのだ。
会話を聞いておおよその流れはつかめた。同士討ち、仲間割れということではないらしい。
そこでこの過激な同行者は、無防備にもいきなり前へ出て自分の姿を晒したのだった。
「戦場ヶ原さん……!」
「大丈夫かしら、上条くん?」
「がはッ……せ、戦場ヶ原!? ……ぐ、ゲホ……」
続いて姿を現す不死の魔女。
そしてもう一人の女子高生――
戦場ヶ原ひたぎが、倒れた上条へ駆け寄り、その容態を伺う。
「それにC.C.……君が、何故?」
「お前たちが無礼にも女を待たせすぎるので、こちらもいい加減に堪忍袋が限界でな。
二人で象の像へ向かうつもりだったのだが、その途中でお前たちの騒ぎを見つけたというわけだ」
レイ・ラングレンと
御坂美琴の死体を一瞥しながらC.C.はそう語った。
そのとき、爆発音。かなり近い。激しい戦闘の音も前後して聞こえてきた。
「これは……」
「近いな。何にしろ早めに場所を移したほうがよさそうだ」
「ああ、レイさんとこの子の死体はデイパックに入れて運ぶ方がいい」
「そんなことができるのか、大した技術力だな。戦場ヶ原に上条、とにかく動くぞ。立てるか?」
ええ――と戦場ヶ原は頷き、力なくうなだれる上条に手を貸そうとしている。
その光景と普段の毒舌ぶりに差がありすぎて思わず笑みがこぼれそうになるが、そうなればあの女は目ざとく見つけてきて毒舌を吐くのだろうな――とも思った。
「スザク。移動しながらでも構わん。とにかく――面倒だが聞いておかなきゃならない」
ふう、とため息。そしてスザクに向き直る。
言葉ではああいったものの、その両眼は鋭い光を覗かせていた。
剣呑な声が大気を震わせる。
「何があった。説明しろ」
◇ ◇ ◇
私は見てしまった。
レイという男が自らの命を断つ様を。
すべての終わりを告げる引き金を引いたその表情は、あまりに穏やかで羨ましく思えたほどだ。
私はなぜ、今までそうしなかったのだろう。
この島に来てから自分の不死性が弱まっているのはとっくに知っていたはずだ。
今なら、今なら死ねるかもしれない。
なぜそうしなかった?
自分を守ってくれた御坂や
アーチャーの気持ちを踏みにじることはできないとでもいうのか。
笑わせるな、魔女め。
マオも、ルルーシュも、今まで契約してきた者たち全ては、私の願いのために利用してきただけだ。
誰かを切り捨てることが惜しいわけがない。
そのはずだ。
それが私の長年の望み。
――死にたい。
私は――死にたい。
その、はずだ。
【E-5/倒壊した一軒家の庭/一日目/夜中】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、左腕骨折(処置済み)、脇腹に銃創、「生きろ」ギアス継続中
[服装]:ナイトオブゼロの服(マント無し)
[装備]:ベレッタM1
934(5/8)、GN拳銃(エネルギー残量:中) 、鉈@現実
[道具]:基本支給品一式×2、デイパック(サーシェスの死体入り)、ノートパソコン@現地調達、オレンジハロ@機動戦士ガンダムOO、9mmショート弾(14発)
救急救命セット@現実、柳刃包丁@現実、工具一式@現実、雑誌@現実×多数、
真田幸村の首輪、 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
タバコとライター@現実、ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、ドラグノフ@現実(10/10)、
GN首輪探知機@オリジナル、平バール@現実、麻雀牌@咲×31個、ユンケルスター@現実×8、パチンコ玉@現実×大量、
コンビニの商品多数(内容は後の書き手さんにお任せします)
[思考]
基本:この『ゲーム』を破壊し、ゼロレクイエムを完遂する。
1:ルルーシュと合流する
2:首輪を外せる技術者を探したい。
3:ルルーシュに危険が及ぶ可能性のある要素は排除する。
4:
明智光秀、
織田信長、平沢憂、
バーサーカー、
ライダー、黒服の女(藤乃)に用心する。
5:確実に生きて帰る為の方法を探す。
[備考]
※ラウンズ撃破以降~最終決戦前の時期から参戦。
※主催が不思議な力を持っていることは認めていますが、死者蘇生が可能という点は全く信じていません。
※もしかしたら『敵のアジト』が『黒の騎士団のアジト』ではないかと少し疑っています。
※三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランを政宗と神原から聞きました。
※政庁で五飛が演じるゼロの映像を見ました。また、ビデオメールの送信元と受信時間を確認しました。
※政宗、神原、レイ、アーチャー、
一方通行と情報を交換しました。
※飛行船についての仮説、ライダーの石化能力と藤乃の念動力についての分析を一方通行から聞きました。
※赤ハロとオレンジハロ間で通信が出来るようになりました。通信とは言えハロを通しているため、声色などはハロそのものにしかなりません。
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(小)
[服装]:学校の制服
[装備]:御坂美琴の遺体
[思考]
基本:
インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。
0:……………
1:一方通行を探し出す。
2:戦場ヶ原ひたぎと合流。
阿良々木暦を探す。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する。
3:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
4:壇上の子の『家族』を助けたい。
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。
【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:ポニーテール、戦う覚悟完了
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、ヘアゴム
スフィンクス@とある魔術の禁書目録、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式 X2 不明支給品(1~3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
0:象の像を目指す。
1:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。
2:正直、C.C.とは相性が悪いと思う。
[備考]
※登場時期はアニメ12話の後。
※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康、腹部に刺傷(応急手当済み、治癒中)、戦う覚悟完了
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、赤ハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語
ピザ(残り54枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
0:スザクを問い質す。
1:戦場ヶ原ひたぎと行動を共にし、彼女の背中を守ってやる。
2:スザクに放送の内容と特に織田信長の生存を伝える。
3:いずれルルーシュとは合流する。利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
4:阿良々木暦に興味。会ったらひたぎの暴力や暴言を責める。
5:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『
過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。
※赤ハロとオレンジハロ間で通信が出来るようになりました。
通信とは言えハロを通しているため、声色などはハロそのものにしかなりません。
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最終更新:2010年05月26日 00:29