阿良々木暦の暴走(後編) ◆1aw4LHSuEI



「っ……どういうおつもりですのっ!?」

 そして、彼女たち三人の中で最も早く反応したのは白井。
 中学一年生という年齢を感じさせない頭の良さ。
 それが彼女の強さの一因だということは、まだ僅かにしか付き合いの無い僕でも分かる。
 そして、だからこそ最初に声を上げて、最も早く攻略される。
 ―――こう見えても僕は、頭の回る女子中学生の扱いには慣れているんだ。

「どういうつもりもなにも……言った通りだよ。二手に別れた方が効率がいいのは当たり前だろ?」
「別に、チームを分けることに反対しているわけではありませんわ! わたくしが言いたいのは……!」
「―――どうして、自分が政庁側じゃないのか、って?」
「―――っ」

 ……まあ、情報収集の話っぷりから少しぐらいは推察出来る。
 衛宮士郎ってやつと白井は随分仲良しらしい。
 それを考えると、白井の心理としてはやっぱり自分が探しに行きたかったんだと思う。
 だけど、それはだめだ。ああ、全然だめだ。

「白井は、どうして政庁に行きたいんだ?」
「決まってますわ! 士郎さんを放っておけないからですの!」
「―――その気持ちはわからなくはないよ。僕だって戦場ヶ原を放っておけないから、行きたいんだ」
「だったら……!」

 急く彼女を制するように、片手を出して目を見つめた。

「―――衛宮士郎ってのはさ。お前にとってなんなんだ?」
「―――え」

 白井の動きが止まり、固まった。

「僕にとって戦場ヶ原ひたぎは恋人で、他のすべてより優先すべき存在だ。
 だから僕はあいつを迎えに行く。でも、お前にとってはどうだ。
 お前にとっての衛宮士郎は、僕にとっての戦場ヶ原ひたぎに匹敵するほどの理由なのか?」
「それは―――……」

 声のトーンが落ちる白井。
 ……ひどいこと言ってるなー。僕。

「悪い、白井。でもさ、それだけじゃないんだ。もし二組に分けるとしたら、この組み合わせ以外にはないと思うから。
 だから、こう提案させてもらった」
「……どうして、ですの?」
「まず、必要なのは天江の安全を出来るだけ確保することだと思う。それが、僕らにとっての一番身近な命題だ。
 これを遂行するなら、さっき言った白井、天江、浅上のチームが一番だと思う」

 ふむ、と今まで黙って僕の意見を聞いていたグラハムさんが口を開く。

「なるほどな。千里眼とテレポートか」
「ええ、そういうことです」

 顔を向け僕もそれに頷きを返す。
 白井も分かったようだ。
 浅上は……目を伏せていてよく分からない。
 天江は。……やばい、この子会話についてきてなくないか。

「……千里眼による索敵と、テレポートによる離脱。そういうことですの?」

 僕は、そのとおり、と言葉を返す。

 そう。取り敢えず危険人物の情報は大量に得たのだ。
 安全なやつと危険なやつは、今の僕たちなら大体わかる。
 参加者名簿を持っていた浅上なら容姿も問題なく判別可能ということもあるし。
 変装をされたらややこしいかもしれないけれど……。
 まあ、そこは取り敢えず怪しいやつは避けることにすれば、大きな問題はにはならないだろう。
 で、危険人物なら白井のテレポートだ。
 女の子三人程度なら一緒に移動可能というその能力。
 射程や疲労、精度という制限を考えても、これ以上逃げるのに適した能力もないだろう。
 こうして敵に気づかれる前に離脱を繰り返していれば、危険な目に合う可能性はずっと減らせるだろう。

「……わかり、ましたわ。わたくしもそれで構いませんの」

 うなだれるように了承する白井。ちょっとかわいそうだった。
 白井は頭がいい。つまり、それは理屈で折れてくれる、ってことだ。
 まず先に感情論を理屈で制してから、理論を見せて納得させる。
 というか、初めのはったりがやっぱり効いてるみたいだ。
 よく考えたら結構穴のある理論なんだけど……。
 まあ、うまくいったからよし。
 次は……天江、かな。

「天江は、これでいいか?」
「衣は…………」

 天江は分からないなりに話を聞いていたらしい。
 とりあえず、チーム分けがどうなるか、ということはわかっているようで。
 目に涙を溜めながら、僕を見る。

「衣は……、もう、グラハムと離れるのは……」

 うわ、泣きそうだ。
 どうしよう。天江に関して言えば、説得のために何も考えてなかった。
 チラリとグラハムさんの方を見れば厳しい表情。
 ……困った。どういうつもりでそんな顔なのか分からない。
 けど、取り敢えず、助けてくれはなさそうだ。
 仕方ない。頑張ってみよう。

「天江……」
「……ひゃ! あ、ありゃりゃ木!?」

 突然抱きしめられて驚いた声をあげる天江。
 名前、噛んでる噛んでる。
 ―――えーと、ここからは。

「……天江にはさ、危ない目にあって欲しくないんだ。だから言う事聞いてくれないか?」
「だ、だが……衣はグラハムと……」

 む。まだ無理か。
 仕方ない。こうなったら八九寺ばりの扱いで―――。
 ……いや、それはグラハムさんが怖いのでパス。
 正攻法にしよう。
 ていうか、あの、グラハムさん。
 心なしか、顔がさっきよりも厳しくなってるんですが……。

「その間、好きなこと……。そうだ、ギャンブル船に行ってればいい。たしか天江は麻雀が好きなんだよな?」
「……ギャンブル船? 麻雀?」

 ぴくりと天江が体を震わせる。
 抱きしめているから表情は見えないけれど、この感触は、行けるか?
 僕は天江の耳元で優しく言う。

「そう、ギャンブル船。たしか1000万ペリカ持ってるんだよな? だったらそれを元手にギャンブルしたらいい。
 それに、もう言ってた準備時間は過ぎてるし、ギャンブルルームにいる間は殺し合いは出来ない……。
 それがいいって! な、天江! ギャンブル船で待ってないか? 僕たちはちゃんと帰ってくるからさ」
「……ペリカをかけての麻雀」

 天江は一呼吸ぐらい黙った。
 それがどうしてなのか僕にはわからないけれど、天江には天江の葛藤があったんだろう。
 僕から身を離すと、まだ少しうるんだ瞳で、だがしっかりと頷きを返した。

「分かった……衣も、それでいい……」

 うん、いい子だ。
 できるならもうちょっと抱きしめていたいぐらいに。
 でも、それは時間が無いからまた今度ということで。
 そして、最後。
 グラハムさんは多分僕と同じ考えだろう。
 だから、これが最後の説得になる。
 ―――浅上藤乃

「浅上は、どうだ?」
「私は、別に、その、阿良々木さんが決めたことなら……」

 俯いたままで言う彼女に申し訳なく思う気持ちがある。
 こいつならきっと反対しないだろうとわかっていた。
 控えめで自分を押し通すことの無い浅上なら。
 それを分かっていて、僕はわざわざ浅上に尋ねた。
 ……やっぱりひどいことしてるな、僕は。
 だけど、きっとこれは浅上にとっていいことだ。
 多分、おそらく、きっと……。でも。
 だから。

「本当に、いいのか?」
「はい、大丈夫です……」
「そうか……」
「それに、阿良々木さんのこと、信じてますから」

 信頼してくれている、いや、信用されていると言うべきか。
 感情では納得できていないだろうに、彼女はそう言った。
 そう、頷いてくれた。
 僕を、信じてくれた。
 ―――だったら、僕も意志を貫き通すだけだ。

「だったら、ここで別れることになるな」
「はい……」
「でもさ」

 浅上が僕を見上げる。
 僕はそれを見返した。

「これが、今生の別れってわけじゃない。必ず後でまた会おう。
 浅上が今まで傷つけた人に謝るなら、僕もそれについて行く。
 一緒に謝ってやることは出来ないけど、側で支えてやることぐらいはできるから。
 だから―――」


「だから、生きてくれ。僕はお前に死んで欲しくない。生きて必ず、もう一度会おう」


 そして、そんな死亡フラグのようなことを口にした。
 浅上は、少しだけ涙を流して答えを返す。

「―――はい。阿良々木さんも、死なないでください。私はあなたに生きていて欲しい」

 そして、僕たちの運命は分岐する。
 なんて大層なことを言っても。
 この時の僕には先に何が起こるかなんて、予想もついていなかったのだけれど。


  ◎  ◎  ◎


「ひどい人ですわよね、阿良々木さんって」
「え?」

 先に出発したグラハムさんと阿良々木さん。
 表に出て、二人を見送った私に白井さんがかけてきた言葉がそれだった。

「そんなこと……」
「ありますわよ。……僕が浅上を守るだなんて言っておいてこの有様。
 甲斐性なしにも程があるというものですの」

 阿良々木さんを悪く言われるのは嫌だけど、彼女の言葉に怒りや不快感より先におかしさがこみ上げてくる。
 白井さんはきっと、私の立場になって考えて言ってくれている。
 私が人を殺したと聞いたとき、激しい怒りを見せた彼女も、こうしてみれば普通の女の子だった。

「……仕方ないですよ。阿良々木さんにはちゃんと恋人がいるんだから」
「そう! そこですわよ! あの男、恋人がいると言うのに、あんな思わせぶりなことを言うだなんて何を考えてますのやら。
 衣さんのことも抱きしめていましたし、全く、とんだすけこましの好色野郎ですわ!」

 大げさなリアクションをする白井さんが少し可愛くて。
 私は思わずクスリと笑う。

「……いいんですよ。私は別に阿良々木さんが好きなわけじゃありませんから」
「……そうなんですの?」

 先輩も、ライダーさんも、死んでしまった。
 私が好きになった人は、みんな死んでしまう。
 なんて、そんな思いが湧き上がる。
 だから、というわけでもないけれど。
 阿良々木さんのことを好きになっちゃいけない。
 ちゃんとした恋人のいる彼に恋してはいけない。
 だから、これでいい。
 あの人にこんなに心配してもらえるだけで。
 私には、充分すぎるぐらいだ。

「……ふふ、心配して下さってありがとうございます」
「……いえ、別に、わたくしは貴女を心配したわけではありませんのよ?
 ただ……あの方に腹が立っただけと言うか、今考えたらうまく言いくるめられてしまったことに対する怒りというか……。
 ……ああ、もう! 大体、わたくしはまだ浅上さんを信用したわけじゃないのですわよ? そこをちゃんと理解して欲しいものですわ!」

 ふいっ、と顔をそむける白井さん。
 なんだかどこかで聞いたことがあるような態度のような気がするけれど。

「出発はもう少ししたらしますので、お手洗いその他準備をしておいてくださいまし!」

 そう言って薬局に戻る彼女。
 ……阿良々木さんが私をこちらに加えた真意は掴みきれないけれど。
 こんなふうに、私が普通の女の子みたいに話す場を与えてくれるつもりだったのかな、と。
 勝手に感じて嬉しくなった。

「…………あら?」
「……あの、その、あ、あさがみ……」

 ふと気づけば、薬局の扉の端からウサギの耳のように長いカチューシャが出ていた。
 天江さんだ。
 知り合いを殺した私にまだなれていないのか、表情は固い。
 仕方ないことだと思う。私も、心を引き締めて彼女と向き合った。

「……なんでしょうか」
「……あさがみ、私と! ……私と、友達になってくれないか……?」

 そう言って、震えながら差し出される手。
 彼女なりの精一杯だろう勇気を振り絞ってだろう行動。
 私みたいな人殺しを、受け入れようとしてくれる。
 ……なんて、いい子なんだろう。

 ―――本当の意味で、阿良々木さんの言葉が分かる。

 ああ、この子を死なせちゃいけない。
 こんな子を死なせちゃいけない。

 だから、虫がいいことかも知れないけれど。
 人を殺した私が、言っていいことなのかわからないけれど。
 人を守ってもいいだろうか。
 この子を。大切にしてもいいだろうか。

「浅上……? あの……」

 返事をしない私に不安になったのか。
 天江さんは眉を下げた顔で私を見上げる。
 そんな彼女が可愛くて、思わずぎゅっと彼女を抱きしめ。
 私はそれの答えにした。

「わ、だ、だから抱きしめるな、撫でるな、子供扱いするな~!」

 ライダーさん。
 私、がんばります。
 あなたは私を利用していただけなのかも知れないけれど。
 私はあなたに会えてよかった。
 だって。
 私はあなたに生きていて欲しかった。
 その気持ちはきっと嘘じゃないから。

 私、がんばります。
 あなたはそんなこと望んでもいないかも知れないけれど。
 わたしが今こうしてここにいることは、きっとあなたがいてくれたおかげでもあるんだから。
 ライダーさん。
 本当に、ありがとうございました。

【E-4 薬局/一日目/夜中】

天江衣@咲-saki-】
[状態]:健康、首輪爆発まであと11時間(現在の負債:1億ペリカ)
[服装]:いつもの私服
[装備]: チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2
[道具]:麻雀牌セット、レイのレシーバー@ガン×ソード、水着セット@現実、エトペン@咲-Saki-
    ペリカード(残金1000万)、サンドイッチ@現実×10、ミネラルウォーター@現実×20
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、麻雀を通して友達を作る。
1:誰にもバレないように、負債を返済する。
2:白井、浅上と一緒にギャンブル船に行って麻雀をする。できればそこで一億ペリカを稼ぐ。
3:グラハムを信じる。
4:《はらむらののか》と《清澄の嶺上使い》を救い出したい!
5:ギャンブルではない麻雀をして友達をつくる。
6:チーズくんを持ち主である『しーしー』(C.C.)に届けて、原村ののかのように友達になる。
7:皆が望むとあらば麻雀に臨みペリカを入手する。
8:インデックスと友達になりたい。
9:浅上、白井とは友達になれた……?

[備考]
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※エスポワール会議に参加しました。
※ユーフェミアの外見的特長を把握しました。
※『黒子の仮説』を聞きました。
※ヒイロ・ファサリナと情報交換し、今まで判明した情報を『エスポワール・ノート』で整理しました。
※エスポワール船底に『ジングウ』が存在していることを知りました。
※ギャンブル船にて機動兵器が売られていることを知りました。
※帝愛グループに1億ペリカの借金をしました。借金は定時放送を迎えるごとに、倍額になります。
 7時32分までに借金を返済出来ない場合、首輪が爆破されます。
阿良々木暦らと情報交換をしました。


白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、睡眠中
[服装]:常盤台中学校制服、両手に包帯
[装備]:スタンガン付き警棒@とある魔術の禁書目録、
[道具]:基本支給品一式、ペーパーナイフ×6@現実、USBメモリ@現実、沢村智紀のノートパソコン@咲-Saki
[思考]
基本:士郎さんと共に生きてこの世界から出る。
0:士郎さん…約束…。
1:天江衣、浅上藤乃とともにギャンブル船に行く。危険はできるだけ避ける。
2:士郎さんが解析した首輪の情報を技術者へ伝え、解除の方法を探す
3:お姉さまを生き返らせるチャンスがあるなら……?
4:士郎さんが勝手に行ってしまわないようにする
5:士郎さんが心配、意識している事を自覚
6:士郎さんはすぐに人を甘やかす
7:危険人物を警戒
8:少しは士郎さんを頼る
9:イリヤって士郎さんとどういった関係なのでしょう?
10:浅上藤乃を一応警戒。
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限
 ・距離に反比例して精度にブレが出るようです。
 ・ちなみに白井黒子の限界値は飛距離が最大81.5M、質量が130.7kg。
 ・その他制限については不明。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※エスポワール会議に参加しました。
※美琴の死を受け止めはじめています。
※帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいるのではないかと考えています。
 そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があったのではとも思っています。
※衛宮士郎の【解析魔術】により、首輪の詳細情報(魔術的見地)を入手しました。
 上記単体の情報では首輪の解除は不可能です。
原村和が主催者に協力している可能性を知りました。
※バトルロワイアルの目的について仮説を立てました。
※衛宮士郎の能力について把握しました。
※衣の負債について、気づいていません。
※阿良々木暦らと情報交換をしました。

【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:頬に掠り傷(処置済み)、疲労(小)、全身に軽い刺し傷(処置済み)、力を使うことへの僅かな恐怖心・及びそれを克服する覚悟
[服装]:浴衣@現実
[装備]:軍用ゴーグル@とある魔術の禁書目録 、伊達軍の馬@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、
[思考]
基本:今までの罪を償っていく
1:天江衣、白井黒子とともにギャンブル船に行く。危険はできるだけ避ける。
2:今まで自分が殺してきた人の知り合いを探す。
3:阿良々木さん、天江衣、白井黒子を守る。
4:サーシェスを敵視。
5:人を凶ることで快楽を感じていた事を自覚し、その自分に恐怖する。
6:織田信長を警戒。
[備考]
※式との戦いの途中から参戦。盲腸炎や怪我は完治しており、痛覚麻痺も今は治っている
※藤乃の無痛症がどうなっているかは後の書き手にお任せします。
※魔眼を使おうとすると過去の殺人の愉悦の感覚 を思い出してしまいます。
 ですがそれらを克服する覚悟も決めています。
※阿良々木と情報を交換しました。
※グラハムらと情報交換しました。
※衣の負債について、気づいていません。


※移動手段には伊達軍の馬@戦国BASARAを用いる予定です。


  ◎  ◎  ◎


「―――それにしても、少年。君はなかなかにしたたかだな」
「……何を言ってるんですかね。グラハムさん」

 夜の道、ヘッドライトに照らされたアスファルトにどこか不気味な雰囲気を感じている中。
 軍用ジープを走らせながらの言葉に、一応僕はすっとぼけてみる。
 グラハムさんはニヤリと笑うと僕の方を横目で見た。

「阿良々木少年、君のやりたがっていることは一見理論的だがその実、大して衛宮少年と変わらない。
 ―――君は、少女たちを危険な目にあわせたくなかった。そういうことだろう?」

 ―――50%正解。
 まあ、つまりそういうことだ。
 わざわざあんなことを言って男女でチーム分けをしたことの理由としては。
 いや、別に女の子を馬鹿にしてるわけじゃない。
 白井も、浅上も僕よりずっと強いことは分かっている。
 彼女たちにしか出来ないことなら、僕は遠慮なく頼るつもりだ。
 何もかも自分でやろうというほどに、僕は自信家でも独善者でもない。
 だけど、今回やることは、戦闘じゃない。
 ただの知り合いとの合流で、必ずしも戦闘能力が必要というわけじゃない。
 だったら、わざわざ危険だと分かってる場所に女の子を行かせるよりも。
 僕が行った方が気が楽だって言う、ただそれだけの話。

「それがわかってたから、僕の意見に反論しなかったんですか?」
「そういうことだ。―――君が言い出さなけば私が言っていたかも知れない」

 もっとも、君ほど上手く言いくるめることが出来たかは分からないが。
 そう言って笑うグラハムさんは格好良い。
 こういうまともな大人は本当に久しぶりに会った気がした。
 いや、僕の両親とかも別に普通なんだけどさ。

 まあ、本当はもう一つ理由があるんだけれど―――。

「そして、浅上藤乃のため、か?」

 ……残り50%も正解だった。
 浅上の今までに迷惑をかけた人に謝りたい、っていうのは立派な行為だと思う。
 後ろめたくなって隠したくなってもおかしくない過去と、まっすぐに向き合っている。
 それ自体は責められることでも何でもない。
 だけど。あいつは殺人者だ。
 多分、あいつのせいで殺し合いに乗ってしまった東横が、あいつの謝罪を聞いたからってどうなる?
 殺意を向けられるだけだろう。
 そうでない参加者だって、誰もがグラハムさん達みたいに受け入れてくれるとも限らない。
 排除しようとするやつだっているだろう。
 そうなれば、生きるために殺すか、嫌悪感のために殺せず死ぬかの二択しかない。
 どちらにしても最悪。選ぶことになった時点でどうしようもない状況。
 あいつにはそんな目にあって欲しくない。
 だから、戦地から、人が多く集まる点から遠ざけた。
 できるだけ他の参加者と接触しない作戦を伝えた。
 浅上の最悪を、出来るだけ遠ざけるために。
 自分勝手な自己満足だと分かっているけれど。

「……天江と、白井には悪いことをしたと思っています」
「気にするな、少年。君の狙いがなんであれ、語られたメリットは嘘ではない。
 それに、説得の言葉だって嘘とは思えなかった。なにより、衣を案じてくれた気持ちは本物なのだろう?
 ―――だったら、構わないさ。君と私の利害は一致している」
「―――ありがとうございます」

 ―――さて、少し急ごうか!
 そう告げたグラハムさんはアクセルを強く踏み込んで。
 軍用ジープは加速した。

 ずっとずっと、守ってやらなくちゃって思ってた。
 お前はぼくの彼女だ。
 強くも無い僕だけど。
 それだけは他人には譲れない。
 待ってろ、戦場ヶ原。
 すぐに、僕が行くから。
 お前を迎えに行くから。
 脱出の目処が付いたんだ、だからみんな一緒に帰ろう。
 神原は、八九寺は、千石は。もう、いないけれど。
 そんなちっぽけな願いぐらい、きっと叶えてみせるから。
 だから。

グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30、軍用ジープ@現実
[道具]:基本支給品一式、、ゼクスの手紙、SIG SG552(30/30)@現実(予備弾30×3)
   『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~戦場の絆~』解説冊子、
   双眼鏡@現実、水着セット@現実、サンドイッチ@現実×10、ピザ@現実×10、ミネラルウォーター@現実×20
   ギャンブル船商品カタログ(機動兵器一覧)第3回放送分@オリジナル、1万ペリカ、手術用の針、手術用の糸、消毒用エタノール
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退。
0:阿良々木暦とともに衛宮士郎ら信頼できる知り合いと合流する。
1:天江衣をゲームから脱出させる。
2:衛宮士郎とヒイロ・ユイを会わせ、首輪を解除する。
3:首輪解除後、『ジングウ』を奪取または破壊する。
4:主催者の思惑を潰す。
5:ヒイロからもっともっとガンダムについて詳しく聞きたい。
6:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける。
 ※刹那の名を知らない為、相手が既に死んでいることを知りません。
7:衣の友達づくりを手伝う。
8:夜は【憩いの館】で過ごすべきか。『戦場の絆』も試してみたい。
9:モビルスーツが欲しい。できればフラッグ。更に言うならオーバーフラッグ。
10:死ぬなよ…少年。
11:浅上藤乃を完全に信用しているわけではない。が、阿良々木暦を信用して任せる。
【備考】
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました
※エスポワール会議に参加しました
※衛宮士郎の【解析魔術】により、首輪の詳細情報(魔術的見地)を入手しました。
 上記単体の情報では首輪の解除は不可能です。
※ユーフェミアの外見的特長を把握しました。
※『黒子の仮説』を聞きました。
※原村和が主催者に協力している可能性を知りました。
※ヒイロ・ファサリナと情報交換し、今まで判明した情報を『エスポワール・ノート』で整理しました。
※エスポワール船底に『ジングウ』が存在していることを知りました。
※ギャンブル船にて機動兵器が売られていることを知りました。
※ヒイロから【憩いの館】にある遊技台、『戦場の絆』について聞きました。
※衣の負債について、気づいていません。
※阿良々木暦らと情報交換しました。

【阿良々木暦@化物語】
[状態]:疲労(中)
[服装]:直江津高校男子制服
[装備]:マウンテンバイク@現実 拡声器@現実
[道具]:デイパック、支給品一式、ギー太@けいおん!、ピザ@現実×10
    毛利元就の輪刀@戦国BASARA、
    土蔵で集めた品多数
[思考] 誰も殺させないし殺さないでゲームから脱出。
基本:知り合いと合流、保護する。
0:グラハム・エーカーとともに戦場ヶ原ひたぎら信頼できる知り合いと合流する。
1:憂をこのままにはしない。
2:桃子、ルルーシュを警戒。
3:支給品をそれぞれ持ち主(もしくはその関係者)に会えれば渡す。原村和とは一方的な約束済。
4:千石……八九寺……神原……。
5:太眉の少女については……?
6:落ち着いたら【ホール】を再調査してみる。
7:浅上らの無事を願う。

[備考]
※アニメ最終回(12話)終了後よりの参戦です。
※回復力は制限されていませんが、時間経過により低下します。
※会場に生まれた綻びは、あくまで偶発的なものであり、今後発生することはありません。
※巨神像はケーブルでコンソールと繋がっています。コンソールは鍵となる何かを差し込む箇所があります。
※原村和が主催側にいることを知りました。
※サポート窓口について知りました。
※衛宮邸は全焼しました。小さく燻っているのみです。
※土蔵にあった魔方陣の効力が消失しました。
※土蔵にあったガラクタを多数回収しました。武器の類は入ってません。
 ひょっとしたらなんらかの特別な物が混入してる可能性もあります。
※藤乃と情報を交換しました。
※グラハムらと情報交換をしました。
※衣の負債について、気づいていません。


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257:阿良々木暦の暴走(前編) 阿良々木暦 266:奈落
257:阿良々木暦の暴走(前編) 浅上藤乃 259:Mobius Noise
257:阿良々木暦の暴走(前編) 天江衣 259:Mobius Noise
257:阿良々木暦の暴走(前編) グラハム・エーカー 266:奈落
257:阿良々木暦の暴走(前編) 白井黒子 259:Mobius Noise
257:阿良々木暦の暴走(前編) 伊達軍の馬 259:Mobius Noise


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最終更新:2010年09月07日 03:14