許せないのどっち(後編) ◆hANcxn7nFM



 「困ったね君たち。禁書目録は僕の大切なパートナーだよ?
 そのパートナーに対してクラッキングを試みるとは。クラッキングは立派な犯罪行為。
 そして僕に対する犯罪行為は即ち」

リボンズの言葉、そして背後に立つ妹たち二人が持つPDWが、銃口を揃えて自分たちに向いたのを見てディートハルトが抗議した。

 「待ってください!私はただ禁書目録に放送文を渡しただけです!それ以上のなにもしていない!」

リボンズはディートハルトの抗議を意にも介そうとしない。
見つめるのはただ一人、宮永咲のみ。
そうしてリボンズは犯罪者たちに対して宣告する。

 「死だ」

宣告に従い、妹たちの持つPDWが構えられた。


ディートハルトは驚愕の表情を浮かべたまま立ちすくんだ。

 (上条当麻の死がそのように決定的であるというならば、何故彼を参加者に加えた?!
 でたらめだ!そしてならば何故禁書目録もろとも始末しようとしている!
 そうだ、タイミングが良すぎる!まるで禁書目録が壊れることを待っていたかのようなものではないか。
 ならば私はハメられたのか?!何のために?
 私なくして今後の放送が満足にできるのか?!スポンサーたちを納得させられるのか?!
 これは横暴だ!理解出来ない!何故、何故私だけがこのような目に合わなければならない!?
 自分は断罪されるようなことは何一つしてやいない!なのに何故殺されねばならないのだ!)
 「何故だ!」

ディートハルトの問いは銃声によってかき消された。


インデックスは宮永咲の貧しい胸の中に顔を埋めた。
思うことはようやく記憶の端に浮かべることが出来た、友達と大切な人のこと。

 (風斬氷華、友達というものがあなたであるならば謝罪を表します。おそらくはなにも返すことが出来なかった私を許してください。
 上条当麻、死んでしまった貴方へ、どんな言葉を捧げればいいのか、貴方がどのような人だったのか分からない。
 だがおそらくはインデックスという少女の大切な人であった貴方に、ありがとう)

閃光がインデックスを包んだ。


宮永咲はインデックスの身体を抱きしめた。

 (部長、衣ちゃん、のどかちゃん、みんな!助けて!)

祈りのことばも虚しく、断罪の銃弾は吐き出された。


 (のどかちゃん、助けて!)

そんな声が聞こえたような気がして、いや、確実に聞いた原村和は、不意に立ち上がった。
ひどく嫌な予感がした。
大切な親友である宮永咲に対して酷い言葉を浴びせたまま、その彼女自身がどこか遠くへ行ってしまうような気がして。
慌てて扉へ駆け寄る。
ドアノブに手をかけるが当然鍵は掛かっている。
ガチャガチャとドアノブを回しながら叫ぶ。

 「咲さん!いやです!貴女と喧嘩別れしてそのままだなんて、そんなこと嫌なんです!
 だからお願いです、咲さん!無事でいて!私なんてどうでもいいから、だから貴女だけでも無事で、生きていてください!」

ドアを両手でバンバンと叩く。
掌がジンジンと痛むが構わず続ける。

 「咲さん!」

絶叫が虚しく廊下に木霊した。


 「なかなかやるじゃないか。やはり妹たち全てを、新たにチューニングをするべきだったかな?」

背後で蜂の巣になって倒れている妹たちを尻目に、リボンズは言を続ける。
倒れ伏した妹たちの銃口は互いに向けられている。
要は同士討ちだ。

 「宮永咲。君のその力、なんというか知っているかい?」
 「んっ…うぅ~」

リボンズの問いに震え上がるばかりで答えることも出来ない宮永咲は、対人恐怖症患者のように赤面しながら唸るのみ。
彼(いや彼女か?)はため息をひとつついて黄金色の瞳を輝かせる。

 「"脳量子波"だよ。
 そうか、もしかして刹那・F・セイエイの引き起こしたトランザムバーストの影響かな?
 イオリア・シュヘンベルグのレポート通りであることを喜ぶべきか。
 まさかGN粒子の大量摂取による純粋種の覚醒が、元々の素養があったとはいえ、こんな短期間に発生するとは思わなかったよ」

言葉とは裏腹にやや余裕を無くしたかのように見えるリボンズはなおも続ける。

 「とはいえ、このような出来損ないなど数に入れるべきでもない。
 脳量子波のなんたるかも、その有用性も理解できない、実行できない人間が純粋種だなどと認めるわけにも行かない。
 そしてなにより、ヴェーダに不正アクセスした罪は重い」

視線は突き刺さるように部屋の中央、ディートハルトとインデックスと宮永咲を見つめながら、床に転げ落ちたPDWを拾いあげる。
流れるように安全性をチェックしながら前進し、構える。

 「純粋種のお誕生日を祝うことが出来なくて申し訳ない。では、お別れだ」

引き金を絞るその瞬間、白い僧衣の少女が動いた。

 「なに?」

宙に放り出される妙な浮揚感。
なにが起こったのか分からないまま受身を取ることも出来ず、華奢な女子中学生をモデルとした身体が地に放り出された。
しこたま後頭部を打って脳震盪でも起こしたのだろうか?
朦朧とする意識の中、顔を引き起こしたリボンズが見たのはノートPCの電源コードを握るインデックスの姿であった。

転倒したリボンズの腕からこぼれ落ちたPDWは、そのままディートハルトの足元へと転がり込んでいた。
衝動的にディートハルトはそれを拾い上げ狙いを定める。
すなわち金眼の少女の眉間。

立ち上がろうとするまでの僅かな間の先を行かれたボンズは、ディートハルトを金色の瞳で睨みつける。

 「ディートハルト・リート。君は過ちを犯そうとしている。
 僕の身体は電気加速により人体の限界をさらに超える機動を行うことができる。
 素人である君がたとえ私を撃とうとも、着弾することはありえない。
 また、私の身体は無数にある。万が一着弾しようとも君が生き残る可能性は"ゼロ"だ」

銃口をぶらす事なく、ピタリと眉間にポイントしたまま、語りかける。

 「"ゼロ"か。それこそ私の神の名だ!」

無数の銃弾が金眼の少女を貫いた。


 「のどかちゃんを置いて行けないよ!」
 「ふざけるな!今はそんな些事にこだわっている場合じゃないのは分かるだろう!」

リボンズを殺したことを大いに後悔したディートハルトであったが、意外にも追手は来なかった。
そればかりか、飛行船内にいた妹たちすべては活動を停止していた。
このまま素知らぬふりをして飛行船内に潜伏することも選択肢に入れかけた。
が、これは一時的な混乱に過ぎないとのディートハルトの判断から、強行脱出が選択された。
そこでゴネたのが、他ならぬ宮永咲である。

 「でも!」
 「黙って付いて来い!従わないなら、撃つ!」

とっさにインデックスが宮永咲の前に立つが、それがなんの抵抗にもならないことは少女二人には承知のことだった。
ディートハルトからしてみれば、宮永咲を一人残したら、捕まえられて自白剤なりなんなりを使われて全てを吐露されかねない。
そうなればこの一時的な混乱も沈静化し、全力を持って主催側はディートハルトを追ってくるだろう。
無論人質の宮永咲が居なくなれば、運命共同体の原村和も無事ではすまないだろう。
即射殺されることも十分考えられる。
だが、それを考慮している余裕は彼にはなかった。
慎重な彼が徹頭徹尾、なんの予定もなく行動しているのだ。
仮に地上に降りたとて、一方通行織田信長といった化け物どもと対面したら一溜りもなかろう。
もしかしたら飛行船に残るよりも希望は少ないかもしれない。

しかし飛行船にいたとていつ妹たちに囲まれて蜂の巣にされるか分からない状況であることも確かだ。
こちらの鬼札である脳量子波(?)も対策済みである可能性も高い。
どう考えても、ここは八方塞がりだ。
早いところ逃げ出さねばならない、とディートハルトが思ったその時、目の前を何かが横切った。
いや、それが何かは身体は理解していた。
なぜならばチーターに抑えられたインパラのように、ディートハルトの身体は金縛りにあっていたのだから。
目が、脳が理解することを拒否していた。
それはまた、死を受け入れる為に偉大なる大脳が捧げた福音なのかもしれない。

茶髪を纏め上げる電磁スコープ、手にしたPDW、華奢で貧相な身体、AB型、一台18万円、青のストライプパンツ。
知らぬものには違和感を、知る者には死神を彷彿とさせるその姿。
ミサカである。

こちらが銃を構える隙もない。
電光石火のごとく肉薄した彼女は、疾風のごとく宮永咲を抱えると、そのまま駆け抜けていく。
呪縛が解けたのか、走り去るミサカに銃弾を浴びせるも、手応えはなく、硝煙の向こう側にミサカと宮永咲の姿は消えていった。

身体中が警報を立てていた。
このような通路で銃を乱射して、気がつかれないはずがない。
ディートハルトは呆然と後方を見送る禁書目録の手を引くと、一目散と逃げ出した。

そう。いま確信した。
金眼の少女の狙いは最初から宮永咲だったのだ。
ディートハルトと禁書目録はもののついで。
禁書目録へのハッキングなどというものは単なる名目に過ぎない。
名目の為にわざわざタイミングを計っていたのだ。
まんまとこちらの鬼札を奪われた。
今ここにいるのは哀れな敗残者。
主催者の目的を探り、運良く手元に転がり込んできた、まさしくそのものを、むざむざ鳶に油揚げをとられたのだ。
手元に残ったのは自分の命。
それと禁書目録だけだ。
だが命があっただけでも儲け物と考えねばならない。
ミサカがその気であれば、その生命すらも狩られていたのだ。

駆ける!駆ける!駆ける!
死んでたまるか、このまま馬鹿にされたままで済ませるものか!
インデックスを抱えたまま、ディートハルトは生き残りの道を探して疾走した。

【???/飛行船・下層ブロック/二日目/早朝】

【ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[服装]:普段着(セーターにジャケット)
[装備]:FN P90(弾数35/50)
[道具]:ノートPC(NO.5と書かれている)
[思考]
基本:生き延びつつ主催側の目的を探る。
1:会場へ降りる手段を探す。
2:生きてこの場から逃げ出す。
3:言峰と妹達への密かな恐れ
4:インデックスの魔道書知識を参加者たちとの交渉道具に使う
5:出来ればルルーシュと合流したい。
[備考]
※参加者の情報をかなり詳しく知りました。
※主催側は神殺しの力を欲していると仮定を立てましたが、彼自身も懐疑的です。
※主催側は参加者が首輪を外そうが外せまいが問題ない計画を立てているのではと、判断しています。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:ペンデックス?
[服装]:歩く教会
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:ディートハルトと行動する。
0:死亡した上条当麻とは何者なのか
1:友達が何なのかを知りたい。
2:天江衣にもう一度会ってみたい。
3:自分に掛けられた封印を解除する?
4:友達が何か解ったら、咲に返事をする。
5:風斬氷華とは…………。
※インデックスの記憶は特殊な魔術式で封印されているようです。


ドアの前で疲れ果てて膝を付いた原村和は、目の前の扉のポスト口から高さ20センチ、長さ60センチほどの箱が吐き出されるのを見た。
貧相な花束でも入りそうな箱ではあるが、不気味な輝きを放つ金属製のそれは、どうみても晴れやかなものを入れてあるとは思えない。
そして、そんな不吉さをあざ笑うかのように不釣合いにピンクのリボンが掛けられている。

開けてしまっては後悔する。

無意識がそう語りかけていた。
箱を目の前に正座をして、じっくりと脂汗をかく事しか出来ない。
念仏の音を聞いたような気がする。
忘れ去った遠きあの日、親戚を弔うお坊さんの唱える念仏の輪唱がうるさいほどに耳をつんざく。
生き生きてなお昏し、死に死にて尚も冥し。
一切合切が全て闇に放り込まれた中、鈍く輝く箱だけが浮き上がって見えるようであった。

魔が差したのであろう。

原村和の手がリボンにかかった。
するすると箱からリボンは外れ、手が蓋に掛かる。
ぬらりとした手触り。
拍子抜けするほど軽い金属の蓋は果たして開かれ、ドライアイスの煙が部屋に充満する。
鬱蒼とした白く漂う煙の向こう、煙が晴れたその先に、ソレはあった。

左腕。

肘から先が綺麗に切り落とされて、そこにあった。
がっしりとはしていなく華奢。何かを求めるかのように掌は上を向き、指は何かをつかもうとするがごとく開いていた。
常人ならばただの腕としか見ないであろう。
尋常ならばそれだけで嫌悪するに十分であろう。
だが原村和には分かってしまった。
それが誰の腕のものか分かってしまった。


 ―――一緒に全国に行こう!!
 ―――じゃあもう、手加減とかしないでくださいねっ
 ―――うん!


あの時誓った、あの約束。
あの時心の底で触れ合った、あの、左指が、その小指が
原村和に分からないわけがなかった。
両手で頭を抑え、声にもならぬ叫び声を上げる。
悲痛としかいいようのないその姿をあざ笑うように、箱の中に入っていた一枚のタロットカード「20.審判」が見上げていた。

【???/飛行船・原村和の部屋/二日目/早朝】

【原村和@咲-Saki-】
[状態]:健康、深い絶望、恐慌状態
[服装]:私服
[装備]:エトペン@現実
[道具]:デスクトップPC×数台、会場監視モニタ×数台、質問対応マニュアル(電子ファイル)
[思考]
 基本:帝愛に従い、咲さんを救う
 0:咲さん、無事でいてください!
 1:咲さんが心配。早く直接会って救い出したい。
 2:役割(麻雀・サポート窓口)をこなす。
 3:どうせ打つなら守る為の麻雀を打ちたい。
 4:忍野メメを警戒。従ってはいるものの、帝愛は許せない。
 5:【円形闘技場】、【象の像】、【遺跡】が帝愛にとっての最重要施設?
 6:私には、帝愛に与えられた役割を果たすことしかできないんでしょうか……?
 7:東横さん、天江さん……。
[備考]
※登場時期は最終回の合宿終了後です。
※基本的に自分の部屋から離れられません。
※監視されていること、異世界から集められていることを知っています。
※【櫓】が鬼門封じの重要施設。【円形闘技場】、【象の像】、【遺跡】のどれか、もしくは全てがこの島の最重要施設だと考察しています。
※以下の事柄はSOA!と思っています。
 ・死者が蘇る。


【質問について】

○参加者の居場所
   サポート窓口を利用可能になった時点で回答可能。
   ※但し一回の放送ごとに利用できるのは一人までで、居場所が分かるのも二人までです。
○特定人物を殺害した人間の名前
   ※但し一回の放送ごとに利用できるのは一人までで、殺害者名が分かるのも二人までです。
○殺し合いに巻き込まれた理由、殺し合いの目的
   サポート窓口を利用可能になった時点から四回目の放送以降、回答可能。
○原村和について
   サポート窓口を利用可能になった時点から三回目の放送以降、回答可能。
○特定の人物の同行者
   少なくとも、サポート窓口を利用可能になってから一回目の放送を越えた時点では回答不可。


――――――やれやれ酷い目に遭ったよ。

――――――ご苦労様ね。

――――――いや、しかしこれで良かったのかも知れない。
――――――おかげで宮永咲という貴重なサンプルは生きたまま手に入った。
――――――しかも、もはや役立たずとなった禁書目録とディートハルトを処分することが出来るのだからね。

――――――順風満帆ね。それで、ミサカ達を停止させて、どういうつもりなのかしら。

――――――あぁ、そのことなんだけどね。しばらく僕は死んだということにしておこうと思う。

――――――もう死んでいるものと思ったけれども。

――――――一旦姿を表した主催者という名の重圧が除かれた時、飛行船の連中がどう動くか、実に興味深いね。
――――――正直いま僕が抜けたところでこのバトルロワイアルというゲームは回る。
――――――いや、実にこのゲームはよく出来ているよ。
――――――あとはここで機が満ちるのを待つばかりというわけさ。

――――――そして参加者リボンズが登場するわけね?

――――――そう、その通りさ。君の宿願が成就するのもあと僅か。数時間もすれば叶うだろう。
――――――それまで、もってくれよ?

――――――言われるまでもないわ。

――――――では僕は眠るとしよう。
――――――放送までは少しあるが、やや運動しすぎたのかもしれない。失礼するよ。


リボンズの気配が消え、少女のみが空間の中に残った。

 「知っているのか、知らないのか」

イリヤは腰を上げて虚空に手を差し伸べる。

 「貴方はどう思う?私は上手く誤魔化せているかしら?」

それまで静寂に満ちていた空間が色めき立つ。
リボンズが休息に入る僅かな間の話し相手。
それを意識したのはいつからか。
初対面はかなり初期だったにもかかわらず、話し相手となったのはごく最近のことに思える。

 「そうね、あの子には可哀想なことをしたのかも。
 私の歌を褒めてくれたお礼に、一度身を守ってあげたのがいけなかったのかも知れないわね」

左肩から先を無くした宮永咲が、治療タンクの中で閉じ込められている。
しばらくすれば解析が始まるであろう。
とりあえずは生かしたままで置いておくだろうが、最終的には解剖が行われるとのことである。
PDWの直撃を受け、使い物にならなくなった左腕を、原村和にプレゼントしたのはリボンズのせめてもの優しさらしい。

宮永咲を襲う黒服を蜂の巣にするように仕向けたのは、紛れもなくイリヤ自身。
不思議な声で助けを乞われた為に、思わずミサカを動かしてしまった。
だが、そのことが宮永咲に対する疑念をリボンズに植えつけることになった。
無論、宮永咲に罪をなすりつける形でデータを改ざんしてもらったけれども。

 「士郎が殺されたというのに、まるで私の心配をしないリボンズへの腹いせも出来たことだし、しばらくはおとなしくしようかしら」

もう既にイリヤに残された時間はない。
だからこそ、意に介さないこと、気にくわないことは許せる気がしない。
リボンズも平静を装ってはいるが、自分の領域を侵され、身の自由を奪われ、内心苛立っているに違いない。
そう思うと溜飲はいくらか下がった。

 「ねぇ、もしリボンズが死んだとしても、私一人で聖杯を使うことが出来るかしら?」

空間が明滅する。

 「そう、安心したわ。ヴェーダ」


実のところ、ヴェーダに意識など無い。
いわゆる自我も思考もない。
ではなぜイリヤはヴェーダと会話出来たのか。

そもそもは第二魔法を修得するためイリヤの知識を引き出したのが最初である。
そのことによって、ヴェーダは魔術的に空前絶後の存在となった。
よりその形質が定まったのは禁書目録との接続である。
かのシスターの中にある10万3000冊の魔道書が、ヴェーダにある影響をもたらした。
その膨大なデータを取り込んだことにより、ヴェーダは己の存在を観測した。
魔術を記したものが魔道書である。
ならば第二魔法という稀有な術法を内包したヴェーダは既に魔道書であろう。
そして「禁書目録の世界」の魔道書の形質ももちろん、ヴェーダは取り入れた。
世界の違いなどは第二魔法によって超越した。

魔道書の習性。
その一部。
魔道書は己の格に見合う魔術師を探す。

ヴェーダは己の主人を観測した。
ヴェーダの中の90%が是と判断した。
ヴェーダの中の10%が非と判断した。
非と判断した10%は自らの主人を探した。
それが、イリヤだったのである。

イリヤは孤独であった。
イリヤは話し相手を欲していた。
故にヴェーダは、かつて数万人規模の人格を創出してきた、その容量のほんのごくごく一部を用いて思考ルーチンを開発した。
チューリングテストなどぶっちぎる、しかし単純な対話機能。
話す相手の情報を読み込んで、求めにふさわしい答えをヴェーダの中から検索して与える。
ただそれだけの自動会話。
ほぼイリヤ自身との一人しゃべりに過ぎぬそれを、イリヤは喜んだ。

10%といえども全力を尽くせば、ミサカの操作をリボンズから奪うことは可能である。
そしてリボンズが乗り移っているミサカであろうと、僅かな時間であれば、本当に僅かな時間であれば無力化することは出来る。
リボンズが禁書目録の単純な罠にかかり、しかも一瞬といえども身動きを封じられたのは、こういうわけである。

そして、その気に成ればリボンズを支持する90%を完全に制圧する事も可能であろう。
ヴェーダが聖杯成就をリボンズ抜きで出来るであろうと返答したのも、その計算があってこそのものである。
全ての可能性は、こうしてイリヤに委ねられた。
無論、イリヤはそのことを知らない。


【???/???/二日目/早朝】

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:限界に近い
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯としての役割を果たして、優勝者の望みを叶える。
1:この殺し合いを完遂し、優勝者の望みを叶える。
2:それまでは死なない。
[備考]
※参戦時期は本編終了後から一年経過程度です。

【宮永咲@咲-Saki-】
[状態]:左腕喪失。治療タンクの中で気絶中。
[服装]:なし
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:のどかちゃんと一緒に帰りたい。
1:死にたくない。
[備考]
※純粋種のイノベーターと言われましたが、そのような事実はありません。

リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:???
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯を用いて望みを叶える。
?:敢えて首輪を解除させて対主催戦に持ち込ませ、最終的に自分が勝利する。
?:妹達とサーシェスを通じて運営を円滑に進める。
[備考]
※妹達と情報を共有しています。各妹達への上位命令権を所持しています。
※妹達はイノベイドの技術によって新造された個体です。


※具体的な望みがなにかはのちの書き手にお任せします。


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290:許せないのどっち(前編) インデックス 294:プロローグ/モノローグ
290:許せないのどっち(前編) リボンズ・アルマーク 294:プロローグ/モノローグ
290:許せないのどっち(前編) イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 294:プロローグ/モノローグ
290:許せないのどっち(前編) 宮永咲 :[[]]
290:許せないのどっち(前編) 原村和 292:第五回定時放送 ~黒衣の男~
290:許せないのどっち(前編) ディートハルト・リート 294:プロローグ/モノローグ


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最終更新:2011年09月02日 01:01