HELLO!!/幸村、妖怪を退治せんとするのこと ◆fQ6k/Rwmu.



「おお……ここが『エキ』なるもの……なんと面妖な屋敷か……!
 枢木殿! ここに『電車』なるものがおるのは誠でござるか!?」
「ええ、多分……ですけど、さっき説明したように電車っていうのは真田さんが考えているようなものじゃ――」
「うおおおおおおお! いざ、敵の本陣へぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっと!? 待ってください!!」


 D-6に存在する駅。
 そこへ向かう通りに2人の男の姿があった。
 『黒』と『紅』、並べばその服色のコントラストに一瞬目を奪われそうな2人組だった。

 枢木スザクと真田幸村。互いに主の為に行動している2人である。
 尤もスザクの主はここにいることが確実、幸村の主は不明、と状況は異なる。
 そんな中、幸村の定めた目的地が『敵のアジト』だった。
 どうにも単純思考な幸村が、『敵』ともろ名称が入っているここに向かう気持ちを抑えられないのはある意味仕方ない。

 当然スザクも説得は試みた。きちんと『アジト』の意味も教えて。
 だが……幸村は曲がらなかった。
 むしろ『アジト』が『隠れ家、潜伏地』という意味だと知ってなおさら行く気にブーストがかかってしまったのだ。
 そこが敵の本拠地に間違いないと。

 一方、冷静思考のスザクはそうはいかない。
 『敵のアジト』などと堂々と名称を書くような施設に、本当に主催たちがいるわけがない。
 これは罠。あるいは『敵のアジト』とは単なる名称に過ぎず、絶対に主催たちはここにはいないと何度も何度も言った。
 こんな勘違いで、地図の中では南寄りなここからよりにもよって北端まで行くのは正直非効率的だ。
 せめてこの辺りを調べつくして、ルルーシュもC.Cもここにいないと絶対の確信を得てから行きたい。

 もしかしたら、この真意をちゃんと幸村に伝えていれば彼は聞いてくれたかもしれない。
 ただ、言えなかった。どうしても自分の弱みを曝すようで。
 スザクはまだ幸村を信用しきれなかったのだ。それが、ここまでズルズルとなってしまった。

 幸村はスザクの説得にも全く折れず、わざわざ載せるわけがないという言葉にも。
『尋常にここで勝負をしたいという敵ながら天晴れな潔さでありましょうぞ!』
 という駄目な暑さで言い返され、『そんなわけがない』と言えば
『なれば枢木殿! 『敵のアジト』などというただの名称ならば、一体それは何のアジトなのでござるか!』
 と言い返された。


 これがスザクの心に迷いを生んだ。
 『敵のアジト』が主催の本拠地ではなく、ただの施設の名称、『学校』や『ホール』と同じだとしたら。
 これは『誰』のアジトなのか?

(まさか……いや、そんなはずが)

 もしそのアジトが他から移されてきたものだとしたら。
 『転送』という『魔法』をやってのけた帝愛だ。ありえない話ではない。

 その考えが一度浮かぶと、後はもう止めようが無い。
 どうしても、どうしても思ってしまう。その思考をとめられない。

 ここは『黒の騎士団』のアジトではないのかと。
 そして、ルルーシュやC.Cも同じことを考えていないかと。

(馬鹿な……あの2人が、こんな馬鹿らしい名称に目をつけるわけがない。
 絶対いない。絶対……でも……!)

「枢木殿!
 後生でござる!もし枢木殿の言うとおり、アジトに何もなかったならば!
 この幸村、心から謝罪申しあげますれば!どうか……!」

 さらに追随するのは幸村の懇願。
 迷いが生じ頭を下げ、ここまで頼み込まれては……スザクも折れるしかない。
 ここで意固地に断っても、彼と自分の間に溝が広がるだけだ。
 ここでグダグダとするよりは、やはり向かった方がいいのか。


「わかりました……ですがアジトに何も無かったら、すぐこっちへ戻りますよ」
「おお!かたじけないでござる! では、いざ参りましょうぞ敵のアジト!
 道のりは長くとも! この幸村にとっては!」
「……ちょ、ちょっと待ってください真田さん!」

 スザクは走り出そうとする幸村を頭のハチマキ掴んで止めた。
 急激に引っ張られ、一瞬変な姿勢になって跳ね上がる幸村、がすぐに着地。
 頭を抑えてこちらに怪訝な顔をする彼を見て、咄嗟に掴んだのを少し悪く重いながらスザクは言った。


「向かうって……電車、使いますよね?」
「デンシャ……とは如何様なものでござるか?」



 *****


(ここまで筋金入りだと……本当に戦国武将なのか、って信じそうになるな……)


 自分を武将だと思い込んでいるにしても、電車すらわからないとはかなりの筋金入りだ。
 それだけなりきってるという考えも出来るが、そうだとしたらこれはもう病的だ。
 だがそうでないとしたら……帝愛の魔法は時間すら遡ることができるというのか。


(……いや、まだわからない。まだ……)


「枢木殿!」


 スザクは幸村の声に我に返った。
 気が付けば、もう既にそこは駅の入り口。目の前には切符売り場。その横に改札口と別段変わった所ない普通の駅の入り口があった。

 で、そこで幸村は。


「こ、この面妖なものはなんでござるか……柵ではない。なのに異様に並んでいる……!
 しかも正面には円形の一つ目と細長い口! これはもしや……入り口にて門番をする妖!?」
「あ、いや……それは改札…」
「怪殺とな!! 名前からしてなんと恐ろしげな!」
「いやですからそれはただの」
「だが!この真田源次郎幸村!!妖怪如きに臆しはせん!!敵のアジトへの道をふさぐならば!
 この鉄球を持って貴様ら、吹き飛ばしてくれようぞ!!」


 勘違いの突っ走りっぷりについていけないスザクを他所に、幸村はデイパックからその『鉄球』を取り出した。
 赤色で、なぜか真ん中に横に線が入り目のような二つの丸、四つの楕円が上下に二つずつ配置されている。さっきは幸村が一目で『鉄球』だと判断し、スザクもそう思ったのだが――


 ひらり、とスザクの足元に紙が落ちてきた。
 それは幸村が鉄球を取り出した時に一緒に出てきたもので、幸村は気づかずそれが空気に乗ってスザクの足元に滑り込んできたらしい。
 ふとそれを拾ってみてみるスザク。それと同時に――


「くらええええええ!『怪殺』めがぁぁぁぁぁ!!」


 幸村が思いっきり振りかぶり、『鉄球』を改札目掛けてぶん投げた。


 ガン、と凄い音がして鉄球が改札から跳ね返り床を転がる。
 改札の方は少し凹んだだけで特にアクションはない。
 幸村はそれをまだ倒したと判断せずに。

「むううう! 未だ倒れぬか『怪殺』!
 なればもう一度……!」


 幸村が再び鉄球をぶん投げる為鉄球を拾おうと近づいた、そのときだった。


 幸村をもっと恐ろしい事態が襲った。



『ヨロシクネ!ヨロシクネ!』


「のうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 あまりの出来事に思わず腰を抜かしてしりもちを付いてしまう歴戦の武将幸村。
 それも仕方ないだろう。


 なぜなら、突然奇声と共に転がっていたはずの鉄球が突然二つの目を輝かせ、耳のようにパーツを展開させたのだから。しかも左右にころころ転がっている。


『ナゲラレタ!ナゲラレタ!』


「な、こ、こ、ここは坂道ではないのに……!鉄球が転がっている……!独りでに!勝手に!

 ! そうか! これは『怪殺』の妖術! この鉄球に別の妖怪を憑かせたのでござるな!?
 面妖な!」


 が、そこはさすが武将。すぐに気を取り直してステンレスの物干し竿を振りかぶる。
 もとは自分の持ち物だが仕方ない。妖怪となってしまったならばいっそ破壊するしかない!


『ボウリョクハンタイ!ボウリョクハンタイ!』
「ええいかどわかすな! さっきから訳わからぬことを!
 妖怪よ、今こそ滅して」
「待ってください真田さん」

 物干し竿を振り下ろそうとした幸村の前に今まで静観していたスザクが立ちはだかった。
 その行動に幸村はすかさず物干し竿を止めてスザクを咎める。

「な、なぜ止めるでござるか枢木殿! その鉄球は妖怪となってしまったのですぞ!?
 危険で御座る! どいてくだされ!」
「いえ……壊すにしても、それはコイツから話を聞いてからです」
「話……?」

 困惑する幸村を尻目に、スザクは鉄球に振り返ると手元の紙を見せつけながら言った。

「『ソレスタルビーイングによって作られた独立型マルチAIを搭載したサポートマシン』。
 『ハロ』……であっているかい?」
『アッテル!アッテル!』

 おそらく肯定だと思われる音声をどこか嬉しそうに発しながら小さく跳ねる『ハロ』。
 一体どうやって跳ねているのかスザクは少し気になった。

「枢木殿……今のそなたの言葉が全くわからなかったのでござるが……」
「簡単に説明すると、コイツは妖怪ではなくてカラクリです」
「か、カラクリとな!? しかし、カラクリ人形は喋らないでござる! もしや誰か隠れているのでは!」
「いや、AIってことから多分コイツ自身が話してるんだと思います」
「えーあい……とは、帝愛の仲間でござるか?」


 スザクはハロについてどう幸村に伝えたらいいのか悩みながらも別のことを思考していた。

(こんな高度なAI……僕はまるで知らない。
 ましてや『ソレスタルビーイング』なんて組織は聞いた事も無い。
 この説明文の『ダブルオーガンダム』や『オーライザー』という単語もだ。
 ダブルオーガンダム? オーライザー? KMFの亜種にしたって、僕が聞いた事くらいあるはずだ。
 この説明書に寄れば、コンピュータ端末に繋げられればハロの中の情報が閲覧できるらしい
 その前にも、まずこのAIから色々聞きだしておかないとな。もしかしたらそれが糸口になるかもしれない!)


 困惑する幸村、思考するスザクをさておき、当の元凶であるハロはただ小さくはね続けていた。


『クルルギドノ!サナダ!クルルギドノ!サナダ!』



 *****


(喧しいな)


 駅で電車を待っていた両儀式に、幸村の騒々しく暑苦しい声が聞こえていないはずがなく。
 式は一旦ホームから降りて入り口近くの物陰に潜んでいた。

 聞こえてきた声は明らかに男の声が2種類。男とも女とも取れない機械音声みたいな声が1種類。
 さすがにノコノコと姿を出す気もなく、距離が開いている為会話の中身までは聞き取れず姿も確認は出来ないが、3人はいると見ておく。


(こんなところであんなに騒いでいる馬鹿が真剣に優勝を目指しているとは思わないが……だからといって油断は出来ないな)


 ここで接触するべきか。それとも無視して次に来た電車にさっさと乗ってしまうか。
 接触するにしても相手は選びたい。
 無能な味方は悪意ある敵と同等に厄介だ。こんなところで大声で騒ぐ奴に、自らの姿を曝したり情報を流していいものか。
 最悪、敵に自分の情報が知れ渡ってしまうかもしれない。
 そんな悪手は踏みたくない。


(さて、どうするか。…………にしても、少し聞こえた『ハロ』と言う言葉……妙な感覚がするのはなぜだ?)







【D-6/駅入り口・改札前/一日目/黎明】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]: 健康、「生きろ」ギアス継続中
[服装]: ナイトオブゼロの服
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、バタフライナイフ@現実(現地調達品)、湿布@現実(現地調達品)、
     ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考]
 基本: ゼロレクイエム完遂の為、ルルーシュ、C.C.と共に生還する (特にルルーシュを優先)
 1: ルルーシュ、C.C.、名簿外参加者の中にいるかもしれないゼロレクイエムの計画を知る人間を捜して合流
 2: ルルーシュに危険が及ぶ可能性のある要素は排除する
 3: 確実に生きて帰る為の方法、首輪を外す方法を探す
 4: しばらくは幸村と共に行動
 5: 幸村と共に『敵のアジト』に電車で向かう。できれば止めたいが……
 6: ハロから情報を聞きだし端末で情報を閲覧する。あとハロをどう幸村に説明したらいいのか。
[備考]
 ※ラウンズ撃破以降~最終決戦前の時期から参戦。
 ※主催がある程度の不思議な力を持っている可能性は認めていますが、死者蘇生が可能という点は全く信じていません。
 ※少なくとも、『真田幸村』が戦国時代の武将の名前であることは知っていますが、幸村が本物の戦国武将だとは思っていません。
 ※もしかしたら『敵のアジト』が『黒の騎士団のアジト』ではないかと少し疑っています。


【真田幸村@戦国BASARA】
[状態]: 健康、右手に軽い打撲(治療済み)
[服装]: 普段通りの格好(六文銭の家紋が入った赤いライダースジャケット、具足、赤いハチマキ、首に六文銭)
[装備]: 物干し竿(ステンレス製)×2@現実、赤ハロ@機動戦士ガンダムOO
[道具]: 基本支給品一式(救急セットの包帯を少量消費)、ランダム支給品0~1(確認済み)
[思考]
 基本: 『ばとるろわいある』なるもの、某は承服できぬ!
 1: 武田信玄のことは何があろうと守る
 2: スザクと共に行動、恩義に報いる為にも協力を惜しまない
 2: 『敵のあじと』に乗り込む
 2: 怪我をしている伊達政宗、名簿に記載されていない参加者の中にいるかもしれない知り合い、 ルルーシュとC.C.を捜す
 2: 主催を倒し、人質を救い出す
 2: これは戦ではないので、生きる為の自衛はするが、自分から参加者に戦いを挑むことはしない
 2: 争いを望まない者は守る
 2: 織田信長と明智光秀は倒す
 2: 何者でござるかこの『波浪』とやらは!!
※武田信玄が最優先であること以外、本人には優先順位をつけるという発想がありません。矛盾もありますが気づいていません。
[備考]
 ※長篠の戦い後~武田信玄が明智光秀に討たれる前の時期から参戦。
 ※MAPに載っている知らない施設のうち、スザクにわかる施設に関しては教えてもらいました。
 ※スザクとルルーシュのことを、自分と武田信玄のような主従関係だと勝手に思い込んでいます。
 ※赤ハロの参戦時期は後続の書き手に任せます。機能や記憶情報、閲覧可能情報に制限が施されているかどうかも後続の書き手に任せます。
  デバイスでも情報閲覧できるかどうかは不明です。




【D-6/駅内/一日目/黎明】

【両儀式@空の境界】
[状態]:健康、光秀へのわずかな苛立ち
[服装]:私服の紬
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式 ランダム支給品0~2
[思考]
1:とりあえず、電車の到着を待つ。が、乗るかどうかは……。
2:改札前にいる3人(?)と接触するか、無視するかを決める。
2:黒桐は見つけておいた方がいいと思う。
3:光秀と荒耶に出会ったら、その時は殺す。
4:首輪は出来るなら外したい。
[補足]
  • 首輪には、首輪自体の死が視え難くなる細工がしてあるか、
 もしくは己の魔眼を弱める細工がしてあるかのどちらかと考えています。
  • 電車がいつ到着するかは、次の書き手さんにお任せします。
  • 荒耶が生きていることに関しては、それ程気に留めてはいません。
  • 藤乃は殺し合いには乗っていないと思っています。



【赤ハロ@機動戦士ガンダムOO】
 真田幸村に支給。
 ソレスタルビーイングで活動しているサポートマシン、ハロの一体でセカンドシーズンから登場。
 AIが搭載されており、ある程度独自な思考ができるようだ。同じ単語を2回ほど繰り返す口調が特徴。
 捕虜の時に預けられてから沙慈・クロスロードと共に行動しておりオーライザー搭乗後も付き合っていた。
 パソコンからコードを口に繋げる事で内部に記憶した情報を閲覧できる機能あり。
 また、沙慈がオーライザーを操縦する際は共にコクピットに乗り、操縦補助やドッキング機能補助を行っている。
 他の機能として、他のハロたちが皆専用MSでメンテナンス作業を行える為赤ハロもできると思われる。
 ちなみに手足のギミックが内蔵されていて、水に濡れても大丈夫と思われる(オレンジがそうであるため)。
 声はカティ・マネキンやバー○ーと同じ高山みなみ



時系列順で読む


投下順で読む


036:黒紅!偶然の邂逅 枢木スザク 090:こよみパーティー
036:黒紅!偶然の邂逅 真田幸村 090:こよみパーティー
035:嫌悪 両儀式 090:こよみパーティー


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年01月22日 23:55