彼の言葉は真実/そして、虚言/それぞれの事情 ◆YLoNiOIZ66



「うーむ…?」
「…」
「um...?」
「……」
「○×⇒※――?」

先程カイジが考えごとにふけっていたように……今度は少女…………八九寺が…八九寺真宵が思案顔を浮かべている…っ!
これまでの遣り取りから新たなるボケと推測し……………徹底的に無視を決め込んでいた………カイジ……!
しかし!しかし……っ!…執拗っ………あまりに執拗すぎるっ、八九寺真宵!!
ここでカイジは考えるっ!
………八九寺とて、ただの少女っ…!その上…幽霊を自称して……構ってアピールをするくらいの……………寂しがり屋っ……!
大口を叩いてはいるが…本当は不安なのではないか……!
もしや…会話中によく顔を覗かせる『阿良々木』とやらのことが心配で…………悩んでいるのではないかと…!

「なぁ…もしかして………本当に悩んで…?」
「失礼な言いかたですね。
 まるでわたしがいつも何も考えていないみたいじゃないですか!
 言っておきますがパイジさん、わたしはいつだって脳をフル回転させてボケのネタを考えているんですよ」

万が一の『一』に賭けたカイジっ!………だが、勝敗は……………哀れっ………!カイジ……敗北……っ!
カイジは決めた……!たった今っ………!二度と…二度とっ!……少女に話を振らないと…………心に誓った……!

「仕方ないですね、パイジさんが全裸で土下座までして言うのなら、
 ちゃんと話してあげますよ」
「…そんなことは……していない…!
 あと…その呼びかたはやめろっ……!
 それで……何だよ…?」
「本当にメイジさんのツッコミは中途半端ですね。
 まぁいいです。所詮、明治ブルガリアヨーグルト♪さんはその程度の人間もどきだったということで」
「おい………っ!」
「おや、もしやチョコレート派でしたか?奇遇ですね、わたしもメイジはチョコレート派でして」

募る………!募る…苛立ち………!だが!だが…っ!堪えた………噴火直前の…火山の如く………己の中で蠢くものを……………零してしまわぬように……!
震える拳を握り締め……カイジはただ、黙ったまま………八九寺の言葉に耳を傾け続けた…っ!

「で、実はわたし、ずうっと気になってたことがあるんです。
 カイジさんが初めて声を掛けてきたとき、わたしが何をしていたか覚えてます?」
「……荷物の………確認…?」
「まぁ…そうですね。そのときに気付いたことがありまして」
「何だっ………?何か………分かったのかっ…!?」
「はい、実はですね、
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………」


饒舌だった今までと違い………………吹き出し中に三点リーダを過剰に使用する八九寺………………!
恐らく……軽い話ではない…………簡単には口にできない………重大なヒミツを見つけてしまったのだろう……………。
まさか『魔法』に関する手がかり…………?
しかも、これだけ溜めるところを見ると……主催者の『魔法』という『嘘』を暴けるくらいの何か…………!?

八九寺が、次の言葉を吐き出そうと息を吸う……っ!
ゴクリ!
―――来るぞ!
カイジは唾を飲み込み…………こめかみから一筋、妙にひやりとした汗を垂らした…………!

「な」

──…………来た!

「んだか、わたしの顎と鼻、尖ってきてません?」
「…は?」

顎先と鼻の頭を指でこすりながら問うてくる八九寺………!
なんだ!どうした…………っ!?…何が言いたいんだ、八九寺真宵…………っ!?

(あっ……!?)

カイジの脳裏で………二人が出逢いを遂げた直後の会話が再生されるっ……!

『ええ。尖った顎に尖った鼻。ザワザワしてても仕方がない人相をしています』
『顎と……鼻……!? 尖ってるって……んなわけあるかっ……! はじめてだ……そんなこと言われたの……!』


「いえね、カイジさんと一緒に居たら、顎と鼻がこう…にゅうっと尖ってきたような。
 わたしのプリティーチャーミーなお顔は大丈夫でしょうか?」

ここで…………苛立ちが後悔の念に変わる………っ!!
けれどそれは………カイジ自身が……選択した行動………………っ!八九寺が悪いのではなく………カイジが愚かなだけ……………っ!
聞かなければよかった…………!悔やんだ…………心の底から…………カイジは自分の愚行を…っ!
カイジはわざと………歩行ペースを上げ……………彼女の先を行く………!大人げない!大人げない、カイジ…っ!
それでもなんとかカイジに歩調を合わせ……………隣に並ぼうとする………………八九寺………なんと健気…!



わたしはこの時、本当は『魔法』に関する手がかりになるであろうことを口にしようとしていました。
飽くまでも『魔法に関する手がかり』であって、誰かさんが期待している『虚言を暴く証拠』ではないのですが。

最初にわたしがしていたこと――カイジさんが言うとおり、荷物の確認。
たしかにあの時、わたしは荷物の確認をしていて、そこでカイジさんに発見されました。
でも違うんです。カイジさんが見たのは、本来の目的を達成するための、ただの途中過程。
本当は荷物を点検して、その後に、この目で確かめておきたいことがあったのです。とんだ邪魔ものが入ったおかげで中途半端になってしまいましたけれど。

わたしがカイジさんとの邂逅を果たした位置は地図で示すとA-1の丁度中間地点辺り。
しかしわたしはこの土地に転送された当初から、そこに居たわけではありません。遠くに海が見える場所でしたからきっと、上記エリア内の隅の方でしょう。
そこに強制的に送られてまずわたしがしたことは、荷物の確認。
中身をひととおり物色して、じっとしているのもアレですし、歩き始めました。特に行く宛もなく。目的は周囲の探索として。とりあえず。
で、何分ほどでしょうか、歩いていて思ったのです。
背中に背負っているリュックの中の荷物。思い出のアルバムやその他――乙女の領域なので詮索しないでください――それなりに重たいものが入っていて、担いでいるとやっぱりそれなりの重さを感じまして。
さらに今日はもうひとつ余計な荷物が増えているのですから、いつもの倍肩が凝ってしまうな、と。


思って初めて、意識しました。

デイパックが、あまりにも軽いことに。重さがない――ということではなく、ほとんどない。
名簿、腕時計や懐中電灯、デバイスとやら、食料に水、応急処置セット。支給品だってみっつ入っていたのに、最低限の重さがありません。
しかもよく考えてみると、おかしいんです。わたしの支給アイテムの中にあれだけ大きなキーボードが入っていたのに、どうしてこんな寸法の鞄に収まっているのか。
わたしは歩くのをいったん止めて、近くに生えていた大木の下に腰を降ろしました。もう一度荷物と―それからデイパックの中身を確認してみよう、と。

言いたかったのはこのことだったのですが――カイジさんは『幽霊』を否定するぐらいです、きっと主催者さん側の『魔法』だって虚言と思っているはず。
きっと先程の考えごともこれに関することでしょう。あれ以降悩む様子を見せていないところを見ると、どうやら答えは落ち着いたようですね。
『自称幽霊』であるわたしへの対応を見ている限り、恐らく無理矢理自分論をこじつけて納得しただけという感じですか。
となると――これを知らせるタイミングは間違えないほうがいいでしょう。
これだけ自分が見てきた世界に執着しているのです、もしもこれを知ってしまったら何をしでかすかわかりません。
まぁ、この人のヘタレ具合だと発狂とまではいかないかもしれませんが―生憎、わたしに未来予知の能力は備わっていません。一秒後のカイジさんなんて想像つかないんです。
ですから今はまだ黙っておいたほうがお互いのためかもしれませんね。

おや。

「つきましたね」

わたしはカイジさんの腕を叩いて、前方を指差しました。カイジさんは一拍遅れてその先を見ます。

波に踊る、威圧感を覚えるほどに巨大な船。
空を包む暗闇に飲み込まれず、煌びやかな光を着飾り異彩を放つ様が逆に不気味さを醸し出しています。


さて、カイジさん。
こういうおかしなこと…、いえ。正しくないですね。ちっともおかしくないこと。現実的なこと。日常的なこと。
あなたが見ていたのは、狭い狭い鳥かごの中の風景だけで、もっと周りをよく見たら、もっともっと多くの『日常的なこと』が見えてくるんです。
と言ったって、『魔法』とやらが『日常的なこと』の類であるとは断言できません。
ですが、もしもこの先に待ち受けるものが、主催者さんが言った『魔法』というものの真実があなたの望んでいるものと違っても。

「手間かけないでくださいよね、いい歳して」
「なんの話だっ…?」

【B-6/ギャンブル船前/1日目/黎明】
【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 疲労(中)
[服装]:私服(Eカード挑戦時のもの)
[装備]:シグザウアーP226(16/15+1/予備弾倉×3)@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考]
基本:人は殺さない……なるべく……なるべく人が死なない方向でっ……!
1:八九寺真宵と一緒に行動する。
2:ギャンブル船に向かい、待っているであろう利根川を倒し情報を引き出す。
3:『部屋から会場への移動方法』を魔法なしで説明可能にする。
4:『5分の退室可能時間』、『主催の観覧方法』が気になる。
5:八九寺のボケは基本スルー。
[備考]
※Eカード開始直前、賭けの対象として耳を選択した段階からの参加。
※以下の考察を立てています。
 ・帝愛はエスポワールや鉄骨渡りの主催と同じ。つまり『会長』(兵藤)も主催側。
 ・利根川はサクラ。強力な武器を優遇され、他の参加者を追い詰めている。かつギャンブル相手。
 ・『魔法』は参加者達を屈服させる為の嘘っぱち。インデックスはただの洗脳されたガキ。
 ・戦国武将はただの同姓同名の現代人。ただし本人は武将だと思い込んでいる。
 ・八九寺真宵は自分を幽霊だと思い込んでいる普通人。
※デイパックの構造に気付いていません。

【八九寺真宵@化物語】
[状態]:健康 疲労(中)
[服装]:私服、大きなリュックサック
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品×1~2 紬のキーボード@けいおん!
[思考]
基本:まずはお約束通り、知り合いを探してみることにしましょう。
1:伊藤開司と一緒に行動する。話し相手は欲しいので。でも微妙に反応がつまりません!
2:阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎを捜す。
[備考]
※「まよいマイマイ」終了後以降からの参加。
※デイパックの構造に気付いています。


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043:アンチファンタジー/井の中の蛙 伊藤開司 094:試練/どうあがけば希望?(後編)
043:アンチファンタジー/井の中の蛙 八九寺真宵 094:試練/どうあがけば希望?(後編)


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最終更新:2010年01月23日 10:42