ポーカーフェイス(Poker face) ◆X/RX3k8bNY
(さて、この先に居るのは鬼か悪魔か、それとも……)
数分前まで、ルルーシュは覚悟していた。
駅に到着した瞬間、待ち伏せていた襲撃者から突然攻撃を受けるという可能性――――
そして、ルルーシュ自身の目的の為に、あらゆるものを利用し、踏みにじり、
自らの手も血に染めたその結果―――
ブリタニア皇帝に即位した後には、彼が彼である理由―――
心の底から愛していた実の妹からすらも、憎まれ――謗りを受けるという
まるで喜劇のような境遇にすら、厭わなかったあの時のように――――
彼は出会った参加者には、ルルーシュ自身の駒として利用する為に、
ギアスを使う事を躊躇う気は微塵もなかった―――――
―――――――――――――――――――――――――
「読み違えたか…」
ルルーシュは無人の駅構内でポツリと呟いた。
駅構内には今現在、ルルーシュ以外の誰かがいるような気配がまったく感じられない。
もちろん、駅のどこかに潜んでるという可能性も考慮し、駅構内の調査も行ったが、
今現在持ちうる情報からの結論では、この駅は現時点で無人。
【どう動くにしろ、やはり他者との接触が必要】
先ほどしていた自身の思考を思い出し、ルルーシュは軽く自嘲する
(この一手は、チェスでいうなら[Bad move]『良くない手』だったのかもしれないな――)
悪手というほどではない。ただ機会が、タイミングが悪かった。
ルルーシュはそう考えることにした。
(他の参加者が、自身の移動に関して電車を利用するであろう、という推測自体は間違っていないはずだ…。
だが、もしも仮に自分以外の参加者全員に何らかの移動手段が支給されているという可能性も・・・。
しかし、こちらに関しては限りなく低いだろう。参加者全員にある程度安全な移動手段があるのなら、
このゲームにおける、参加者同士の殺し合いを促すという要素の阻害でしかない。)
ルルーシュは今の状況から、今後取るべき行動について改めて考察した。
現状ではこの二つの指針のうち、どちらを選ぶべきか。
1、駅構内に潜んで、他の参加者が来るのを待つ
2、このまま宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
(まず1についてだが―――、こちらについては不安要素も残るな)
ルルーシュの調査結果、この駅構内にはいくつか誰にも気付かれずに潜伏できるような場所を発見している。
さらに、ルルーシュに支給されていたミニミ軽機関銃
総重量7kg弱の兵器だが、彼自身自覚していたが、ルルーシュの腕力では、
突然の襲撃に対して、自身の身を守る為、とっさに使いこなすことは出来ないと結論を出していた。
だが、固定砲台としてなら。設置した後に標的に狙いを定めるという使用法なら彼にも充分取り扱える。
しかし―――、この武器だけなのだ。
彼が今持つギアス以外の力で、彼の身を守る為の他者を圧倒できそうな武器。
最低現、遠距離からでも相手を足止めし、ギアスを相手にかけるための隙を作る、
抑止力としても充分機能するであろう武器は。
支給品として与えられたゼロの剣―――
長さ90cm弱、両刃の西洋剣であるが、こちらについては、
ルルーシュが抱いている感想としては、ないよりはマシという程度の認識である。
相手を剣により殺傷できる距離、
それは同時に相手の攻撃もルルーシュに届く範囲であるという事だ。
ルルーシュ・ランペルージは彼自身の能力をしっかり把握していた。
女・子供―――、なおかつ、まったく戦闘経験の無いような相手であるのなら、
支給されたこの剣も彼の身を守る要素にはなるだろう。
だが、相手が明らかに戦闘において、ルルーシュを上回る身体能力を持っていた場合、
容易に剣を奪われ、逆に自分が窮地に陥る場合も考えられる。
もちろん、そうなる前にギアスを掛けてしまえば問題ないだろう。
だが、ギアスという能力は相手の目を見ないと発動できないという制約もある。
ギアスを発動させる間もなく、自身が殺害されるという可能性も考慮した場合、
安全が確認できる、もしくは相手の戦闘能力が把握できないうちに、
相手との接触を図るというのは、ある程度リスクも伴う。
そのリスクを加味するのであれば、
今現在持ちうるカードが、軽機関銃と一本の剣、絶対遵守の力―――ギアスだけという状況では、
ここに留まってまで、他の参加者との接触を図るという案について積極的に肯定できる要素が少ない。
つづいて、2の宇宙開発局へ向かうという案についてルルーシュは思索する―――
こちらの案についても、リスクは存在する。
仮に、宇宙開発局で殺し合いに積極的な参加者による、何らかの待ち伏せを受けた場合、
今この場で判明している駅構内の環境よりも、更に危険が伴う事も充分考えられる。
だが、逆に考えるのであれば、
その待ち伏せを看過、もしくは撃退し、
宇宙開発局を調査した結果、交渉の材料として使えそうな更に有用なアイテム、
もしくはこのゲームからスザクを生還させる要素が見つかる可能性がある。
(今持てる手持ちの札で勝負するか・・・・・・・・チェンジによって上の手を狙うか・・・・・・・)
彼の今の思考を、ポーカーに例えるのであれば、ルルーシュは今、
手持ちの札だけでもツーペアは完成しているようなものだ。
自分からツーペアを崩せば、更なる上の手も狙える状態である。
勿論、上の手を追求し手札を崩した結果、今より状況が悪くなるという事態も考えられる。
だが、彼の今の持ち手でこのゲームを勝ち抜けると思うほど、楽観視は到底出来ない。
(フッ―――、何を迷っているんだ。俺は。)
かつて、ゼロとして世界を支配としていると言っても過言ではなかったブリタニア帝国を打倒し、
皇帝の地位まで昇り詰めたルルーシュ・ランペルージ。
彼は常にリスクの少ない安全な策を取り続けた訳ではない。
時には、自分の命すらも天秤にかけて、目的を果たす為に邁進したからこそ。
その目的が達成できたのだ。
今のこの状況、彼が取るべき選択はもう決まっていたのかもしれない。
「カードチェンジだ。」
そう呟いた彼は駅構内から表に出る。
目的地は宇宙開発局。
だが、電車を降りた時のような、心の中での決意表明、は敢えてしなかった。
皇帝となった彼にも自らの思惑が外れた際に、それを恥じるというような感情は
まだ若干ではあるが、持ち合わせているようである。
深夜の街を移動する自転車が一台――――――
その自転車、辺りは街灯の少ない真っ暗な道だというのに、ライトも付けていない。
もしも今、誰かが急に飛び出してきたら、自転車に気付かず轢いてしまうかもしれないくらい、
ほとんど物音を立てずに移動を続けているのだが、
その運転者はルルーシュ・ランペルージ。
かつては、ブリタニアを打倒する為の革命闘士、ゼロと呼ばれ。
そして、若くしてブリタニア帝国の皇帝となった青年である。
その彼が運転するのは一般的にシティサイクルと呼ばれる家庭用自転車。
以前、アシュフォード学園において、ルルーシュが使用していたモデルに非常に似ている機種だ。
(ふむ、今の所、他の参加者と接触するような気配はないか・・・・・・)
ペダルを軽く漕ぎながら、ルルーシュは思索する―――――
先ほど列車から降下して、宇宙開発局を目指す事にしたルルーシュには、
途中で降りる目的もあった。
このゲームを勝ち抜く、いや、有利に進める為のアイテム調達である。
地図を確認した所、駅周辺は都市部となっていたので、ルルーシュは
何か使える物資がないか探索を兼ねて移動する事にした。
彼が都市部で期待した目下の探し物は、強力な兵器でも、
ましてや他の参加者との交流でもない。
駆動に燃料を必要とせず、静かに、かつ徒歩よりも早く移動できる手段。
つまりは自転車のようなものである。
そう考えて、駅周辺からしばらく歩くと、大型のスーパーマーケットのような店があった。
店内の非常灯だけ点いていて、うっすらだが店内の様子が外からもある程度確認できる。
もちろん、外から見る限りではあるが、中に人がいるような気配は感じられない
(入り口や内部に警報装置があると厄介なんだが・・・・・・)
そう考えたルルーシュは一度、店の裏手、一般的に商品の搬入口と呼ばれているであろう場所へと向かった。
店の裏口を見るとかすかにシャッターが空いている。
周りを観察してみるが、無理やりこじ開けたような形跡は無い。
どうやら元々いた従業員が閉め忘れたのだろうか。
できるだけ気配を消し、静かに中の様子を窺う為にシャッターまで近づくルルーシュ。
(これじゃまるで泥棒だな)
ブリタニア帝国の皇帝が、見知らぬスーパーでこそ泥紛いの真似とか、
スザクやナナリーや沙世子、会長やリヴァルが知ったらどんな顔をするだろうか。
自身の自虐的な考えに自嘲しつつ、ルルーシュはシャッターの中を覗き込んだ。
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その数分後、ルルーシュは目的の自転車売り場まで到達していた。
シャッター内部にもやはり人がいる気配は無く、売り場へと入るための通路は、幸運にも施錠されていなかった。
仮に施錠されていたとしても、ある程度穏便に必要最低限ではあるが、鍵を破壊する覚悟は出来ていたのだが。
店内に向かう通路の途中には、【警備室】と書かれた部屋も発見し、中の様子を覗いてみたのだが、
警備員はおろか、真っ暗になっているモニターを見る限り、今のこの店は防犯カメラすら動作していないようだ。
警戒していた防犯装置に関しても、まったく機能していないのを確認し、
ルルーシュは静かに売り場の探索を始める事にしたのである。
売り場に入って確認すると、一般的な自転車屋と変わらず、MTBやスポーツサイクルといった様々な種類の自転車が陳列されている。
売り場の中心に作業場のようなスペースがあり、そこにはどうやら販売予定であったのであろう。
組みあがった自転車が一台放置されている。
その自転車は、アシュフォード学園時代、ルルーシュが使用していたものと非常に似ている機種だった。
もちろん、細部には違いはあるが、一見するとほとんど同じような機種に見えるだろう。
ブレーキやタイヤの回り具合といった動作を確認し、
問題が無い事を確かめた上、ルルーシュはその自転車を拝借する事にした。
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そして、他にも店内を巡り、
医薬品や食料品・替えの下着類といった物資を調達したルルーシュ。
服に関しても、自転車屋の隣にあったスポーツコーナーからジャージを拝借した。
生地は主にポリエステル製、
一般的に上下になっており下をトレーニングパンツ、上をトレーニングシャツと呼ぶことが多い運動着である。
それをルルーシュは暗闇の中でも自身の存在が目立ちにくい黒を基調とした物を選んだ。
皇帝の衣装は、有事の際には自身の動きを制限する上、物陰に潜伏するにはまったく適していない。
むしろ、このバトルロワイヤルという舞台においては、皇帝としての権威を示すという事以外には何の意味もなさない物だ。
もちろん金銭的な価値でいうのであれば、
ブリタニアの一流仕立て職人達がルルーシュの為だけに持てる服飾技術を総て結集した祭事に使用する礼服である。
ここのジャージが100丁あっても釣り合わない程、珠玉かつ高価な一品ではあるのだが。
(ジャージを着るなんて、久しぶりだ)
皇帝に即位して以来、まったくと言って良いほど着る機会のなかったジャージ
ルルーシュの学生時代、体育の授業の際には必ず着用させられていたものである。
そもそも、ルルーシュ自体は体育の時間はあまり好きではなかったのだが。
着替えを終え、皇帝ルルーシュの衣装を丁寧に畳んでバックにしまい、
必要な物資を調達し終わったルルーシュはそのまま店内を出た。
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そして時間は先ほどに戻る
スーパーで商品を物色していたのもあり、時間も大分経過しているようだ。
自転車を手に入れた事により移動時間に関しては飛躍的に向上したルルーシュは
あえて表通りを避け、裏道を抜けるように移動を続けていた。
表通りを使わないのは、深夜とはいえ、無人の往来を堂々と走行し、
襲撃者の目に触れる可能性を減らす為でもある。
(地図によると、そろそろのはずなんだが・・・・・・)
空気が徐々に潮の香りを伴ってきた。
どうやら海の近くまで来ているようだ。
遠くの方に大きな橋が見える。
おそらく、あの橋を越えれば、宇宙局は目前だろう。
目的地まで近づいたことを感じながら、
ルルーシュはペダルを漕ぐ足に力を込めた――
【F-6/宇宙局に渡る橋付近/一日目/黎明】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:ジャージ(上下黒)
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、
ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
皇帝ルルーシュの衣装@コードギアスR2
シティサイクル(自転車)@スーパーマーケット
その他医薬品・食料品・雑貨など多数@スーパーマーケット
(何を拝借してきたかは後の書き手さんにお任せします)
[装備]:ミニミ軽機関銃(
200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる
1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
2:スザク、
C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:施設群Xを調査する?
5:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
6:他の参加者に会ったら『
枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
7:自分の生存には固執しない
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
アイテム
【シティサイクル(自転車)@スーパーマーケット】
ルルーシュがスーパーで手に入れた自転車
アシュフォード学園時代に使っていたモデルと非常に似ているが同じものではない
3段変則ギア搭載モデル。これで坂道も楽々。
買い物に便利な大きめな前カゴもGOOD
【ジャージ@スーパーマーケット】
前にチャックがついている一般的な黒いジャージ
PUMAというロゴが刻印されている
実は細部を良く見るとPOMAとなっているコピー商品なのだが
機能的にはまったく問題が無い為、ルルーシュは気付いていない
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最終更新:2009年11月22日 08:45