偽物語  ◆BXnAdYmV9c



明かりの無い、ただ月のみに照らされた道を一人の少女が歩いている。
その足取りに力は無く、瞳に浮かぶのはただ迷いのみ。
いっそ足を止めた方が、疑心と恐怖に囚われ動けなくなる方が良かったのかもしれない。
ただ、とても不幸な事に少女は、そこで立ち止まっていられるような人間ではなかった。
他者に襲撃され、拒絶され、それでも少女は孤独に歩み続ける。
やがて、彼女は目前に現れた黒く巨大な箱の体内へと消えた。



「……なんなの、これは」
ユーフェミアがショッピングセンターに訪れた理由は単純だった。
付近にある施設の中で、参加者がもっとも集まりそうなのがここだったからだ。
危険な人物に出会う危険ももちろん感じていた。
危険でなくとも、話を聞いてもらえず再び拒絶されるだけかもしれないとも思った。
けれども、そんな人間だけじゃないと、そう信じたいと勇気を振り絞ってこの場所まで歩いて来たのだ。

そして今、彼女の目前にある大型モニターの中では、仮面をつけた人物が殺し合いを扇動している。

「なんなの、これは」
本来は客達の憩いの場なのであろう噴水のある広場。
そこに一人立ち尽くし、大型モニターを見つめる少女の口からは再び同じ言葉が漏れる。
あまりにも理不尽だった。
ようやく実現しようとしていた行政特区日本。
スザクが、ルルーシュが、ナナリーが、そしてユーフェミア自身が。
みんなが望んだはずの平和な世界は血に塗れた手で引っくり返されたのだ。
いったい、誰がそんな事を。
決まっている。
今、モニターの向こうでゼロの名を騙る主催側の人間にだ。

「止めなきゃ……!」
今、ショッピングセンター内で流れている映像もそうだが、
なによりゼロの名を貶め、利用しようとしている者を止めなければならない。

ゼロは日本人にとっての象徴のような存在である。
黒の騎士団を束ね数々の奇跡を起こした、日本人すべての希望。
そんな彼と同じ姿を持つ者が殺し合いを肯定し、他の参加者にもそれを強要している。
この映像を見てしまうと、日本人の参加者には絶望する者も出てくるだろう。
また、想像したくは無いが一部の者はその言葉に従ってしまうかもしれない。
それにもし外部からの救助、もしくは内部からの反攻で無事脱出したとしても、
この映像を口実にゼロを投獄、処刑するという動きが出てきてもおかしくはない。
(私が止めなければ……!)
ユーフェミアはモニターを管理しているであろう部屋を探すべく、走り出した。

一時間ほどの後、白みつつある空の下を一人の少女が歩いていた。
アスファルトを踏む足取りには力が張っており、瞳に浮かぶのは固い決意。
たしかにショッピングセンターに流れる映像は止めた。
二度と流れないよう、管理センターでみつけたビデオメール自体を消去した。
けれども、それだけでは止めた事にはならないだろう。
あのメールが送られたのはここだけでは無いだろうし、
ゼロを名乗る正体不明の人物が、それであきらめるとも思えない。
(私が……私ができる事をしなきゃ)
あれが本物のゼロでない事を知っているのは、たった二人だけなのだから。


額の汗を拭いながら少女は北にある駅を目指して歩く。
駅から電車を使い政庁を目指すためだ。
おそらく、政庁ならばそれなりの放送施設や通信施設があるだろう。
そこから全参加者に宣言するのだ。
あれは本物のゼロでは無いと。
殺し合いなど馬鹿げているからやめようと。
そして反攻の意志を持つ者達を集め、共に主催者を討とうと。

もちろん、危険性は重々承知している。
その美しい顔には疲労の影も浮かんでいる。
だが、とても不幸な事に少女の優しさが疑心と恐怖に囚われ動かない事を認めなかったのだ。
自分にできる事を誰かに背負わせる事をよしとしなかったのだ。
他者に襲撃され、拒絶され、それでも少女は果敢に歩み続ける。
その果てに待つものはなんなのか、少女はまだ何も知らない。


(スザク……私は間違っていませんよね)



【E-1北東部/路上/一日目/早朝】
ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:中程度の疲労、怒りと決意
[服装]:豪華なドレス
[装備]:H&K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数3/12発/予備12x2発)@現実
[道具]:基本支給品一式、H&K MP5K(SMG/40/40発/予備40x3発)@現実、アゾット剣@Fate/stay night
[思考]
基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する。自分にできる事をする
特殊:日本人らしき人間を発見し、日本人である確証が取れた場合、その相手を殺害する
1:偽ゼロの存在を全参加者に知らせる
2:D-2にある駅から東へ向かう
3:政庁で放送施設や通信施設を探し、全参加者に呼びかける
4:殺し合いには絶対に乗らない
[備考]
※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。
※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。
 会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間に影響が出ているかは不明。
※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。





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070:怒りと悲しみと ユーフェミア・リ・ブリタニア 113:過去 から の 刺客




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最終更新:2009年12月01日 06:12