右手に剣を左手に死者を 心に激しい殺意を抱き締め ◆Nfn0xgOvQ2
紅蓮の海を突き抜け北上し、ある工場の一角に狂戦士は腰を下ろす。
先程の乱戦にて失われた魔力を回復させる為、少々休息が必要だ。
ならば休息のついでに今後の事を思考しよう。
まずはあの焔の海より持ち出した少女の亡骸。
数多の弾丸によりその身を打ち貫かれ、全身を赤く染めている。
顔に傷が無いのが唯一の救いだろうか。
死者を無碍に扱う事が出来ぬゆえ、ここまで運んできた。
ゆえにこの場に捨て置くという思考はない。
かといって今の己では少女を十分に弔ってやる事はできない。
ならばせめて、この少女の亡骸がこれ以上の辱めを受けぬよう人気のない所に安置するとしよう。
首輪を解除しようとする輩が、その首を切り落とし首輪を手に入れ様とするかもしれないからだ。
だが自分の目的は一刻も早く、主であるイリヤの元にたどり着く事。その為に全ての参加者をせん滅する事。
一々人気のない場所を探している暇はない。
だからその場所自体はまたあとで考えるとしよう、それよりも優先する事が己にはあるのだ。
それはそれとして出来れば今は、他の参加者には会いたくないものだ。
会えば己は本能のままに殺戮を開始する、そうなれば戦いの余波で少女の遺体がどうなるか分からない。
少女の亡骸を気にかけながらの戦闘など、狂戦士たるこの身には不可能だ。
もし戦いの余波に巻き込まれてしまえば、どうなるかは目に見えている。
仮に今この場に力の無い参加者が表れたとしよう、そうなれどうなる?
決まっている、相手を破壊しつくす唯それだけの事。
『理性』より『本能』が勝る、それが狂戦士としての己の性であり枷なのだ。
だからこそ休息をしている今は、誰にも会いたくはない。
少女の亡骸の事はこれでいいとして、次は現状の己の武器だ。
先の戦いで手にしたこの剣。
己の本能が警告を発している、この剣を他者の手に渡すなと。
この漆黒の剣、いかな英雄の宝具かはしれないが一度その力を解き放てば、己の残りの命全てを根こそぎ奪いかねない力を秘めている。
それほどの神秘を内包している事を狂戦士は感じ取る。
それもその筈、“最強の幻想”として聖剣のカテゴリー内では最上位に位置する剣。
そこらにある、凡百の剣とは格が違う。
もし大英雄・ヘラクレスとしての己ならばこの上なく最上の武器にもなりえただろう、だが狂戦士・ヘラクレスにおいてはそうはいかない。
狂戦士たる今の己ではこの剣の真名の開放は行えない。
それはまだいい、最大の問題は己にとってこの剣はいささか小さいということだ。
バーサーカーからすれば短剣やナイフの様だとまでは言わないが、何となく物足りないきがしなくもない。
無論それで戦えないというわけではない、大英雄としての技術があるならば十二分に戦える。
だが狂戦士としてかつての技術が一部封印されている今は、忠勝に持っていかれてしまった斧の様に、自らの剛力を存分に生かせる獲物の方が好ましい。
己の培った業を封じられているならば、引き換えに手にした強力を越える剛力で補うのみ。
ならば武器を得る為にどこに向かう?
いや、そもそも武器を調達できそうな場所が近くにあるのか?
ないならば他の参加者を襲い、武器を奪った方が効率がよいだろう。
そう思いつつバーサーカーは跳躍する。
手頃な建物屋根を飛び渡り、あるいはよじ登りそこから辺りを見回す。
すると北の山に城が立っているのを見つける。
ヘラクレスの生きた時代の常識からすれば、城があるならばそこを守る兵士が存在する。
ならばその兵士が武装する為の鎧や武器があるやもしれない。
加えて、宝物庫には宝具が隠されている可能性もある。
真名が解放できずとも、宝具そのものは並みの武具より格段に優れた存在である。
むしろ宝具があるならば、他の参加者の手に渡るほうが危険。
さらに付け加えれば、見失った
キャスターがあそこに陣地を築いたならば、それこそ難攻不落の要塞になりかねない。
ならば次に目指すべきは城だ。
ここに呼ばれて既に三度も殺されている、なかなかに豪傑達が集まっているようだ。
血沸き肉躍る。
尋常なる戦いは望む所、拒む理由はどこにも無い。
だが己の目的を間違えてはいけない、自分の目的は兵達との決闘ではなく、主を救うために参加者たちをせん滅する事。
だと言うのに、まだ唯の一人も殺す事が出来ていないとは何たる無様。
それでも大英雄の名を頂いた者か、狂戦士の所業だと言うのか!?
ここは一度必殺を期す為に己の装備を整える。
確実に完全に、相手を壊して斃して滅して打ち破るため。
一刻も早く主の元にたどり着くために。
ふと視線を下げれば山の中腹に古びた洋館らしきものが……
あんな所にあの様な洋館があっても、わざわざ足を運ぶ者はおるまい。
…そうかそれならば、この少女の亡骸はあそこへ安置するか。
そう思考し、リリーナの亡骸を抱えなおすとバーサーカーは北へと駆け出した。
川を越えのを駆け抜けるその途中、一回目の放送が訪れるが
名簿外の参加者
死者
禁止エリア
だが、この狂戦士には殆どがどうでもよかった。
例え、その腕に抱き抱える少女の名が呼ばれていたとしても、さりとて気にする事もない。
ただ記憶の片隅に禁止エリアの位置だけを記憶した。
幾らか経ちバーサーカーは洋館の前にたどり着く。
この様な倒壊しそうな洋館ないに留まる酔狂はおるまい、それはそれで好都合。
だが自分の巨体では玄関から入る事は出来そうになく、無理に侵入すればそれを引き金にして洋館が倒壊する恐れもある。
しかたなくバーサーカーは、リリーナの遺体を館の玄関にそっと横たえる。
運が良ければ、心ある誰かがこの少女を弔うだろう。
ならばと、狂戦士は歩みを進める。振り返る事無く。
今の己が気にかけるのはただ一人。
その一人の少女の元へ確実にたどり着くため先を急ぐ。
全ての参加者を血の海に沈める為に。
「■■■■■■■■■■■■――!!」
咆哮
それは次なる死闘への期待か勝利への誓いか、バーサーカーは驀進する。
バーサーカーは気がつかなかった。目の前の館の地下に二人の参加者がいる事に。
だがそれは仕方がない事だ。
憩いの館にはある一つの仕掛けがしてあった、それは内部にいる参加者の気配を遮断するというものだ。
ここは名前の通り、憩いの場所なのだ。
戦闘行為の禁止の処置こそされていないものの、ある程度戦闘にならない様に、または回避する為の仕掛けがいくつかなされている。
館内の参加者の気配の遮断はその一つだ。
もしその処置がなされていなかったなら、バーサーカーは本能のままに殺戮を開始しただろう。
だが結果として戦闘は起きなかった。
それは今は亡きリリーナにとっては嬉しい事だろう、自分の亡骸を弔う事が起因してヒイロが命の危険に晒されてしまうなど、微塵も望んでいないのだから。
さて、ヒイロがこの洋館を出るときに、突如現れたリリーナの亡骸を見てどう思うかそれは神のみぞ知る。
【C-3/憩いの館付近/1日目/朝】
【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:健康、狂化
[服装]:上半身裸(デフォルト)
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、食料(缶詰セット)
[道具]:なし
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
1:城に向かい武器を探す。
2:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。
3:キャスターを捜索し、陣地を整えられる前に撃滅する。
4:次こそ
本多忠勝と決着を着けたい。
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3
・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。
現在残り蘇生回数4回。
・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
おもちゃの兵隊、ドラグノフ 大質量の物体
・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。
※参戦時期は14話 理想の果て直後です。
※エクスカリバーが黒く染まっています。
※E-2南西部から中央部にかけてバーサーカーが通った破壊跡ができました(多数の家屋・電柱・街路樹・線路の残骸あり)。
※銃撃により一度、コンテナにより一度、都合二度死亡しました。
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最終更新:2009年12月07日 22:55