ざわざわ時間(前編) ◆1U4psLoLQg



「あ……あれ?」

気が付けば、私は見慣れた学校の体育館の中にいた。
壇上に運ばれたキーボードの前に、ぼんやりと立ち尽くしている。

周囲を見渡すと、軽音部の仲間たちが各自の楽器の前で、緊張した面持ちを見せている。
壇上の幕はまだ上がっていない。
幕の外側から小さく、館内の喧騒が聞こえてくる。
今まで何度か経験した、ライブ直前の風景。

「先輩?どうしたんですか?」

傍らに立つ後輩が心配そうな顔で話しかけてくる。

「急にボーっとしちゃって……もしかして、熱でもあるんですか?」
「い……いいえ、ちょっと、考え事をしていただけだから」

私はとっさに、ぎこちない笑顔を作ってそう答えた。

「もう、しっかりしてくださいよ。今日は先輩達との初ライブなんですから、絶対に成功させないと!」

後輩との初ライブ……そうか、今日は高校生活二度目の文化祭だ。

「ええ……そうね、絶対成功させましょう!」

そうだ、何をボサッとしているのだろう、気合を入れなければ。

『それではこれより、軽音楽部によるライブを開始します』

館内放送が流れ、幕が上がる。
そして、演奏が始まった。
部員全員が自らの楽器でそれぞれの役割を果たす。
私もまたキーボードの鍵盤を一心不乱に叩いている。
楽しかった、ただ純粋に。

仲間と共に作り出した曲を盛大に披露する。
荒削りでも、一生懸命協力し合って完成させた一曲だ。
最高の曲だと胸を張り、全力で演奏できる。
この爽快感は他では味わえないだろう。
ああ、館内の熱気が気持ちいい。
額を流れる汗すら心地いい。
この瞬間なら、私も唯ちゃんみたいに叫ぶ事が出来るだろう。
軽音部は最高だ――と。

『こんにちは』

体育館後方、入り口の扉から。
突然、声が聞こえた。

「え?……ああ……」

長く綺麗な黒髪。
返り血を浴びた黒い制服。
小さく、冷酷に歪んだ口元。
そこには殺人鬼、浅上藤乃が立っていた。

体が凍りつく。
高揚感は消え去り、恐怖だけが私の胸中を満たす。

『やっと、見つけました』

距離的に彼女の声が聞こえるはずがない、まして今はライブの真最中だ。
けれど、私にははっきりとその声が聞こえていた。
直接、脳内に響くように。

『ずっと探していたんですよ』

近寄ってくる、一歩、一歩、確実に。
怪物が、私を殺しにやってくる。

「ああ……あああ」

逃げ出そうとして腰が抜けた、私は壇上の床に崩れ落ちる。
突然私の演奏が止まり、みんな驚いたのだろう。
演奏を中断し、たちまち部の仲間達が私に駆け寄ってくる。

「おいっどうしたんだよ!?」
「ムギちゃん!?大丈夫?」
「先輩!やっぱり熱が有るんじゃないですか?」

違う、そうじゃない、気づいてないの?だれも?
あんなに異常な風貌の人が、正面入り口から堂々と入って来たのに!

『また会えて、うれしいです』

浅上藤乃はいつの間にか壇上まで上がってきていた。
仲間達は私を心配するあまり、後ろの殺人鬼に気づけない。
必死に伝えようとしたが、どうしても声が出なかった。
どうやら私は彼女を見た瞬間に、まるで蛇に睨まれた蛙の如く、動く事も声を上げる事も出来なくなってしまったようだ。

『でも、またすぐにさようならですね』

もう観念して、私は気づく。
もはや目前まで迫る浅上藤乃の更に背後、客席の最前列に座る2人の少女に。
体中を捻じ切られ、私の目の前で壮絶な死を遂げた、加治木ゆみ
私がその手を放したばかりに転落死した、千石撫子
彼女達は何も語らない、ただ私を見ている。
彼女達と同じように、私が死ぬところを見ているんだ。
ただ、一言撫子ちゃんにあやまろうとして――ああ、声が出ないんだっけ。

『凶れ』

放たれる、赤と緑の螺旋軸。
私を殺しにむかって来る。


そうして私は、やっとその悪夢から開放された。
体中の倦怠感を振り切り、目を見開く。
最初に見えた景色は、灰色の天井。
そして、最初に聞こえたのは…。

「……ムギちゃんっ!?気が付いたの!?」

親しい友人の声だった。

「唯……ちゃん?本当に……?」

彼女がここにいる事が、なんだか信じられない。
私の好きだった日常の欠片は、この島の何処にもありはしないのだと思い込んでいた。
だから目が覚めて、最初に顔を見るのが唯ちゃんだとは、少し信じられなかったのだ。

「……むむむ。失礼な!わたしは正真正銘の平沢唯ですとも!証拠に見よ!このエアギター!!!」

けど、その応答を聞いてすぐに納得できた。
この子は、間違い無く唯ちゃんだ。最後に見たと時と、なにも変わっていない。
この狂ったゲームの中で、彼女だけは、何も変わらずそこに居た。

「……くすっ、ふふふ」
「ああ……ムギちゃん、ひどい、笑い事じゃないよぉー」

ひさしぶりに、本当に久しぶりに笑った気がした。
思えばこの『ゲーム』が始まってから、衝撃的な事がいっぺんに起きすぎた。
私はやっと、本当に心休まる場所にたどり着けたのかもしれない。

私は改めて周囲をぐるりと見回した。
どうやら、ここは島の薬局施設の中らしい。
なかなか広い店内の、商品棚の中にはぎっしりと薬品類が敷き詰められている。

そして店内には、唯ちゃん以外に二人の人物が居た。

一人はなんとなく胡散臭い気配のある中年のおじさん。
唯ちゃんの後方でこちらの様子を伺っている。
この人のことは覚えている、私が路上で気絶する直前に見た人だ。

もう一人は黒い衣服を着込んだショートボブの女の子。年は私と同い年か、一つ上くらいだろうか?
この人は始めて見る、先ほどからずっと片目を瞑っているようだが、何か事情があるのだろうか?

「ああ、この人は船井譲次さん。このなんだかよくわからない殺し合いが始まってすぐに出会った人で、ずっと助けてくれてるんだよ」
「船井や、よろしく」
「あ、はい……よろしくお願いします」

そう返事を返しつつも内心、私は驚いていた。唯ちゃんはこの殺し合いが開始されてからずっと、このおじさんと行動していたと言う。
正直私にはこのおじさんがあまり善人には見えない。
自分の事は世間知らずだと自覚しているが、それでも人を見る目はあるつもりだ。
悪い人にしか見えない、と言う訳でもないが、こんな異常な環境下で、すぐに見ず知らずのおじさんを信用する。
私にはマネできない。いやむしろ唯ちゃんだからこそ、出来たと言う訳なのだろうか?
しかし、結果的にこのおじさんは現在も私達に危害を加える気配は無い。
むしろ明らかに足手まといの私達を、抱え込む善人に見える。
唯ちゃんの判断は、吉と出た訳だ。

「それで、この人は……」
福路美穂子です、よろしくお願いします」

次に唯ちゃんは、私達を一番遠巻きに見ていた、黒い衣服の女の子を紹介した。
彼女――福路さんとは、唯ちゃん達もつい今しがた出会ったばかりなのだと言う。
私が目を覚ます前に、突然この薬局にやって来ていたらしい。
なんとも柔らかい雰囲気の人だった。
私も、この人ならばすぐにでも信用できるだろう。

一通りの自己紹介を終えた後、私は聞き逃した放送の内容を船井さんから聞いた。
10人を超える死者が出たことには驚いたけれどが、幸い軽音部のメンバーに死者はいなかったらしい。
私はそれに心からホッとした。
そして、唯ちゃんが恐る恐る本題に入る。

「あの…それでね、ムギちゃん…言いたくなかったら、無理に言わなくてもいいんだけど…」
「私の身に何が起こったか…ですよね?分かっています…」

私の身に何が起こったか聞きたいのだろう。

「無理……しなくてもいいんだよ?」
「いいえ、そういう訳にもいきません」
「でも、途中で嫌になったらすぐに言ってね?」
「ありがとう、唯ちゃん」

そうして私は語りだした。
自分がここに至る経緯、目撃してきた惨劇を――


「…………以上が私の、この島における今までの行動です」

私は、今日見てきた全ての出来事を、3人に話し終えた。
その間3人は一言も口を挟まず、ただ私の話を真剣に聞くだけだった。
私はつい自分の左手に視線を落とす。
千石撫子の手のひらの温もりを思い出す。
そして、突然――

「むぅぎぃぢぁぁぁんっ!!」

唯ちゃんが私に飛びついてきた。

「怖かったんだねぇっ、よくがんばったねぇ!」

私の顔に頬をすり寄せながら、頭をなでなでしてくる。
でも、その言葉は私には適さない。
なぜなら…。

「私なんか……全然頑張れてません!!」

つい叫んでしまった。唯ちゃんも他の二人も驚いて口を噤む。
でももういいや、ここでぶちまけてしまおう。

「私なんか……何もしてません。目の前で人が死んでいくのをずっと見てただけで、何も出来なかった……」
「ムギちゃん……」

四肢や胴体を捻じ切られる、おおよそ人の死に方とは思えない無残な惨状を前に、自分はただ怯えている事しかできなかった。

「なんの力も無いからなんて言い訳にもなりません。あの人は、それでもあんな怪物にたち向かって行ったのに!」
「……」

常識外の化け物に立ち向かう人を確かに見た。あの人が居なければ私はとっくに死んでいただろう。

「私はただ逃げてただけで、この手に掴んでいた命さえ手放した……」
「でもそれは…」
「しかたなくないんです!防げたはずなんです、私がもう少し注意深ければ、すべて!!」

そして、あの重さを覚えている。私が手放した、命の重さを。
あの瞬間を覚えている、掴んだ手のひらの温もりが、離れていく瞬間を。

「私はただ逃げ出しただけです……」

やっと会えた友人に、泣き言しかいえない自分が嫌になる。
でも、一旦吐き出したら最後までとまらない。

「私はただ生き延びただけです!誰も助けられずに、ただ……ただ一人で意味も無く生き延びて、何になるって言うんですか?!」

言い切って俯いた。
なんとなく福路さんが息を呑んでいる気配がしたが、そんなこと今はどうでもいい。
罪の意識で、友人に当り散らすなんて。
もう、最低だ…。

「意味なら…あるよ」

ギュッ……と唯ちゃんの両腕が、私の体を包み込んだ。

「え?」
「意味ならちゃんとある」

私を抱きしめ、背中をポンポンと叩いてくれる。

「ムギちゃんが生き延びてくれて、わたしは嬉しいな…」
「唯…ちゃん…」
「ねえ、そんなんじゃ……ダメかな?」

涙が溢れた。
彼女が居てくれて良かったと。
私は切に思う。
その言葉は救いだった。
精神が擦り切れそうになっていた私は、ここに彼女が居なければ、罪の意識で遠からず駄目になっていただろう。
大きく首を振って、私も唯ちゃんを抱き返す。

「あったかいね」

そんな唯ちゃんの言葉を聞きながら。
もしかすると今、唯ちゃんも泣いているのではないかと思った。
けれど、抱き合ったこの体勢では、唯ちゃんの表情が伺えない。

「そうですね…あったかい」

両の手に力を込める。

――この温もりだけは、絶対に失いたくない。

そう思った。


時間は少し遡る。
まだこの薬局のなかに、福路美穂子の姿が無かった時刻。
船井譲次は一人焦っていた。

(あかん……これ以上後手に回る訳にはいかん……!)

彼の予想を遥かに上回る、初期から殺し合いに乗る者の数。
完全に外している計算を何とか修正するため、彼はひたすら思慮に耽っていた。

(なにか……なにか策を……はよ行動に移さんと、いつか殺し合いに乗った奴等に行き当たる……!)

今、殺し合いに乗ったものに出会うこと、それがどういう事かは明白だろう。
船井は自身の力量をよく心得ている。
喧嘩が強い奴程度ならまだ何とかなるかもしれないが、現状の武装で銃を持った手合いを相手どるのは不可能だ。
手駒といえば、心底能天気で、ここがもし殺し合い激戦区だったなら、軽く百度は死ねるだろう天然女子高生のみ。
さらには、未だ気絶中の足手まといまで付いてきている。
一回目の放送であの数の死者、名簿外参加者の意義、自分が今まで無事だった事が奇跡に思えてならない。
だが、これからもその奇跡に賭ける訳には行かない。
故に彼は欲するのだ、策を。道しるべを。

ルルーシュと名乗った少年との情報交換は、期待したほど有意義な物ではなかった。
まずルルーシュはこのゲーム開始以来ここに至るまで誰一人として参加者に出会っていないと言うのだ。
この時点でほとんどこの情報交換はハズレだと判断した。
だが、気になる点は確かに有った。

ルルーシュが語った施設X群についてだ。
それと、唯の友人が知っているらしき、殺し合いに乗った者の情報。

(ルルーシュが去った今、最早それくらいしか考える指標があらへん)

だが、せめて戦う事に長けた人材が欲しい
船井がそう現状を嘆いていた時。

「あのー、ごめんください。誰か居ませんか?」

薬局の入り口に一人の女性が現れた。

(なんでや……)

「私は福路美穂子と申します。勿論殺し合いには乗っていません」

(なんで……オレの周りには戦力外女子高生しか集まってこんのやっ……!!)

船井の嘆きは深くなるばかりであった。


気が付けば、薬局はもう目の前だった。
福路美穂子は入り口から中の様子を伺ってみたものの、人影は無い。
もしかすると、誰か奥に隠れているのかもしれない。

「あのー、ごめんください。誰か居ませんか?」

美穂子は薬局内の奥、商品棚の陰になっていて、見えないあたりに呼びかけてみた。
だが返事は無い。

「私は福路美穂子と申します。殺し合いには乗っていません」

もう一度、呼びかけてみる。
美穂子はそこまでやってようやく、随分命知らずな事をしているなあと、自覚した。
これが、もう既に戦いに乗った者の根城だったならば、彼女はとっくに殺されているだろう。
今まで彼女は、こんな無計画には行動していなかった。
何か、彼女の中に明確な変化が有ったのか。

返事が無く、殺される事も無いのなら、きっとここは無人なのだろう。
そう判断して美穂子が踵を返しかけたとき……。

「あっ、ちちょ、ちょっと待ってくださいぃ~!」

突然、商品棚の陰から、学生服を着た一人の少女が飛び出してきた。

「すいません、聞かなかったフリなんかしちゃってて……」

あわてた様子で飛び出してきた彼女は、美穂子の声にすぐ応えなかった事を素直に謝った。

「いえ……かまいませんよ、でも出来れば事情を聞かせていただけませんか?」
「ああ、えっと……」

少女がチラチラと奥の棚を見やる。

「ああ…ホンマにもう、しゃあないな」

すると、その視線に呼ばれるように、奥の棚陰から胡散臭そうな中年の男が現れた。

美穂子の呼びかけに船井がすぐ応じなかった理由は二つある。
一つは、殺人者が隠れているかもしれない店内に、無防備に呼びかけるという行為を警戒した為。
そこまで大胆な行為をとるのは、何か裏があるかもしれないと思ったのだ。
もう一つは、これ以上お荷物を増やしたくないと言う船井の思惑だ。
だが堪え切れず飛び出した唯によって、彼は美穂子と接触せざるを得なくなったわけである。

三人は取り敢えずの自己紹介を行って、琴吹紬の意識が戻るのを待つことにした。

そして、紬の意識が戻る少し前。

「あの……ちょっと……考えがあるんですけど」

唯はあることを二人に提案する。
それに、美穂子はともかく、船井は少なからず驚いた。
船井は平沢唯を何一つ自分で考えない他人任せの平和ボケと認識していた。
船井にとって、彼女が何か提案をするという事自体が、最早怪奇の領域なのだ。
さらに、その提案がかなり理にかなっていた事に驚いた事は言うまでも無い。

その提案とは。

「あずにゃん……中野梓ちゃんの事、ムギちゃんには黙っていたほうが良いんじゃないでしょうか?」


5分後、琴吹紬が目を覚ました。


琴吹紬がその身の上に起こった出来事を話した後。
福路美穂子もまた、それまで自身が体験した様々な出来事を語りだした。
その内容に、船井は更なる焦燥感を抱く事となる。

(指一本触れずに人を殺す超能力者……?人間離れした眼帯の女……?果ては、それと互角に戦った戦国武将やて……?)

船井の期待通り、二人の話は殺し合いに乗った者の情報元となった。
だが船井にとって、その話が持つ実質的な価値は、殺人者の情報などではない。

琴吹紬が襲われたと言う、超能力者、浅上藤乃
福路美穂子が遭遇した、妙な格好をした超人、眼帯の女
そして、戦国武将

平沢唯はともかく、船井譲次には到底信じられない話だった。
これがもし、福路美穂子と琴吹紬のどちらか一人のみから聞き出した情報ならば船井は相手にもしなかった。
この異常な状況に、気が狂ったのだと判断しただろう。
だが、二人ともにこのような荒唐無稽な話を事細かに言い出されては、考えざるを得ない。

参加者の中に、人の力を大きく超えた異能者達が居る。

(あほな、そんな常識外の事が……せやけど、確かにそれやと全部つじつまが合う……!!)

疑問だった、第一回放送の死者が多すぎる事に、説明が付く。

船井は、こんなにも早く殺し合いに乗る者が多い事に疑問をもった。
だが、参加者に人の領域を超えた能力を持つ者が含まれているのなら、一つの仮説が立つ。
このゲームの参加者は大きく分けて二つに大別される。
能力を持つ者と、持たない者とだ。
言うまでも無く船井達は何の能力も持たない一般人。
だが、この殺し合いの場において、自分に超能力があると仮定する。
もし自分に、『死ね』と念じただけで人が殺せる力があるとして、まずこの島で何をするだろうか?
決まっている、試すのだ。その力がこの場において、どれだけ有効か。

能力を持つ者は、自分と同じように、このゲーム内に力を持つ者が居る事を知っている。
集団に紛れるのは、弱者を一人血祭りに上げて、自分の能力の現状を把握してからでも遅くは無い。
だから開始早々殺しを行う参加者が多かったのだ。

(第一回放送の犠牲者は皆、実験台にされたっちゅうことか…。‘能力持ち’共の…。)

恐らく、名簿外参加者達は格好の餌として凶悪な‘能力持ち’の近くに飛ばされたのだろう。
ならば…あの時名簿外参加者である自分の周囲にも‘能力持ち’は居たのであろうか?
船井は、今更ながら背筋が冷えるのを感じた。

だがこれでようやく彼にも行動の目途が立つ。

(まだや…恐らく殺人者達はもうすでに集団の中に身を潜めた後、ここから暫くはそう苛烈な殺し合いには発展しづらいはずっ……!)

船井の想像が正しければ、実験を終えた‘能力持ち’の殺人者達は、これから暫くは集団に紛れて冷静に期を伺うはず。
流石に、多人数相手に攻撃を仕掛けるよりも一旦、内側に溶け込んだ方がいいと判断するだろう。
琴吹紬のように逃がしてしまい、自身の悪いうわさを流されることを嫌うはずだ。

(オレは無意識の内に一番危険な時期を乗りきったんや、まだ勝機はある……!)

己が知力を駆使し、この殺し合いを生き抜く。その為のプランは既に船井の中で形を成しつつあった。

「みなさん、ちょっと聞いてくれ、これからの行動について相談したい事があるんや」

自らの頭脳をフルに回転させつつ、船井は手駒達に行動会議の発令を宣言した。





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114:夢を過ぎても(前編) 平沢唯 ざわざわ時間(後編)
114:夢を過ぎても(前編) 船井譲次 ざわざわ時間(後編)
114:夢を過ぎても(前編) 琴吹紬 ざわざわ時間(後編)
118:ひとりにひとつ 福路美穂子 ざわざわ時間(後編)


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最終更新:2009年12月07日 22:44