月は出ているか(前編) ◆MQZCGutBfo
―――チーズくん人形を抱いた眠り姫が、人の気配に気が付きようやく目を覚ます。
「んん……ぐらはむ、もう朝なのか…?」
ふぁ~とあくびをひとつ。ゆっくりと起き上がる。
グラハム、少年、女性。数は一緒。でも何故だろう。
「ん……くろこはいつからおっぱいがおっきくなったのだ?」
寝ぼけまなこをコシコシとさすり、ハッとした後、てってってっとグラハムに駆け寄る。
―――ようやく別人であることに合点がいったのだ。
グラハムの足に隠れてちらちらと二人を観察する。
しろーより背が低い、無愛想な少年と。
くろこよりおっぱいがおっきい、タレ目のお姉さん。
「心配ない、
天江衣。こちらの二人は殺し合いに乗っている人間ではない。」
グラハムに促され、前に出てきちんと挨拶する。
「う、うむ。天江衣だ。こどもではないぞ、ころもだ。グラハムとは莫逆の友だ。」
うさぎのようなカチューシャをぴょこんぴょこんと跳ねさせながら元気に言う。
「………
ヒイロ・ユイ。」
「
ファサリナと申します。よろしく、衣さん。」
(こんな子も参加させられているのですか……)
一人は無愛想に、もう一人は優雅に挨拶を行う。
「既に私は挨拶をしているが、こちらも『よろしく』という言葉を、謹んで贈らせてもらおう!」
「は、はぁ……
(ヒイロ……この方達、大丈夫なのですか?)」
「問題ない。」
返って足手纏いではないか、と危惧するファサリナににべもなく答える。
この地に来てから他者と情報交換できる初めての機会であり、
尚且つ、ここまで生き残ったからにはそれなりに実力もあるだろうとヒイロは踏んでいる。
……のだが、そこまで饒舌には話さないヒイロなのであった。
「さて……情報交換をするのに立ち話という訳にもいくまい。
僥倖なことに到着までそれなりに時間もかかるだろう。卓を囲んで話すべきではないかな?」
「……了解した。」
―――グラハムと衣、ヒイロとファサリナがそれぞれ横に並んで座り、
二人ずつ向かい合う形で会議卓に着く。
「まずはそれぞれの『世界』についての交流から行うべきかな。」
「うむ。地の利は人の和に如かずと言う。帝愛に玩弄され続けるのも癪であるし。
戮力協心すれば魑魅魍魎どもが巣食うこの地も駆逐できよう。」
「(……ヒイロ、あの子は何を言っているのですか……?)」
「(…………協力して事に当ろう、ということだ。)」
西暦2307年の地球で『ユニオン』に所属する軍人―――国を守り、人々を守る為に戦う者―――
フラッグというモビルスーツ―――人型機動兵器―――を駆り、『ガンダム』を追い求める者―――
グラハムが誇らしく語るのと同様に、衣もまたふふんと誇らしい表情をしている。
「フラッグ……ユニオンフラッグ。ユニオンの主力MS。全長 17.9m、重量 67.1t、主兵装はリニアライフル。
空中変形もパイロットの技量次第では可能。
変形を伴う空戦機動は、最初に成功させたパイロット名から『グラハム・スペシャル(グラハム・マニューバ)』と命名されている。
…………なるほどな。」
「む、少年。知っているのか!?……いや、君は
ゼクス・マーキスと同じ『世界』の人間のはず。」
「……『これ』の情報は頭に叩き込んでいる。」
デイパックから、『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~
戦場の絆~』解説冊子を取り出す。
「こ、これは……!?すまない少年!借り受ける!
ああああ……!!!!な、なんという麗しさ!!愛しき『ガンダム』達の競演!!!
ああ…!奪われた!ああそうだ、奪われてしまった!!」
いきなり立ち上がり猛り始めたグラハムに、ヒイロを含めた3人が呆気に取られる。
―――そんな周りの雰囲気に気がついたのか、コホン、と咳ばらいをして席に戻る。
「グラハム……?」
心配そうな衣の表情にぽんぽんと頭を軽く叩き
「……失礼した。その冊子については後程詳しく見せて頂くとして。
つまり、その『ロボット』が存在する世界から、私は呼ばれている。」
頭をぽむぽむされて怒るよりも、いつもの落ち着いた佇まいのグラハムに戻ったことにホッとして、衣が続けて話す。
「次は衣の番だな。―――衣の『世界』では麻雀が大きな力を持っている。
老若男女、一般家庭においても広く普及しておる。
衣の所属する龍門渕高校は昨年は県大会優勝、今年も準優勝で、衣は大将を任されているのだ。」
どのような仕掛けか、ぴょこんとしたうさぎ耳のカチューシャをピンと張り、誇らしげに話す衣。
「麻雀を……私はやったことはありませんが、確か、負けた方が服を脱ぐ遊戯ですよね。」
「違う!いや、そういうたわけた輩が跋扈するのもまた事実ではあるのだが。麻雀はもっと誇り高い競技なのだ。」
「あらそうでしたか……失礼いたしました。」
ぷりぷりと憤る衣に対し、素直に謝るファサリナ。
そのまま自身の説明に入る。
「私はエンドレス・イリュージョン…あなた方の言う地球、恐らく『マザー』とは別の惑星に住んでいます。
そこで争いの無い、穏やかな世界を作るという偉大な方……『同志』と出会い、
同志の夢を守るため、みんなの夢を守るため、私の夢を守るため……
同志を守るという使命の元に働いておりました。」
「成程。未来人、超能力者と来て今度は宇宙人と言うわけか……まさに千客万来だな。」
グラハムが嘆息し、ヒイロを見る。
「…………ファサリナの話を受け入れるということは、お前達は既に他者と接触しているということか。」
「待て少年。まだ君の世界の話を聞いていない。
詳しく教えて頂きたいのだがな。特に『ガンダム』については。」
グラハムの発言に、今度はヒイロが嘆息する。
「執着があるようだが。ガンダムも所詮はただの兵器だ。それ以上でも、それ以下でもない。」
「違うな、間違っているぞ少年。ガンダムとは、戦場に咲く一輪の花。
既に何回、私がガンダムに想い焦がれたかわからぬ程に。正確には、182回と言わせて頂こう!
ガンダムとは……愛、そのものだ!!」
「愛だと……!?」
さらに言い募ろうとしたグラハムの袖がちょいちょいと引かれる。
―――見れば、衣がぷくーっとふくれている。
「…………すまなかった、天江衣。私とて人の子なのだ。
だが、決して君との約束を忘れているわけではない。」
「だから、な~で~る~なぁ~!」
なでなでされてじゃれる二人を見て、なるほどヨロイ愛好者でかつ幼児愛好者なのか、と一人納得したファサリナが話を戻す。
「……それで、それぞれの『世界』と仰っていましたが、他の方々とも交流できたのですか?」
「ああ、すまない。
我々は既に8名…いや、直接会ってはいないが、存在を認知しすれ違った者を含めると9名と出会っていることになる。」
「……その方々のお名前を伺っても、宜しいですか?」
―――ファサリナのタレていた目付きが鋭くなる。
「ああ……それでは、我々がここに来てからの歩みを伝えることとしよう。
私自身の整理にもなることであるしな。」
そう言いながら、メモ帳に何かを書き、ヒイロとファサリナに手渡す。
[首輪によって盗聴されていると思われる。重要事項は後程筆談にて。]
内容を確認したヒイロ。
―――何故か天江衣をじっと見た後、メモ帳に返答を記す。
[承知した。また、施設には盗撮カメラ等が仕込まれている可能性がある。]
受け取ったグラハムは、さもあらんと頷き、話を続ける。
最初に見せしめで殺された少女―――【
龍門渕透華】は、この【天江衣】をこそ守ろうとしたこと。
飛ばされた直後に【グラハム・エーカー】と天江衣が出会い、その後エスポワール船で
【
利根川幸雄】【白井黒子】【秋山澪】【衛宮士郎】【伊藤開司】【
八九寺真宵】【
明智光秀】
の9人が集い、それぞれの『世界』について情報交換を行ったこと。
グラハム・士郎・黒子の3人がジープで、光秀・澪の2人が馬で、集まった人間の探し人の捜索を。
衣・利根川・カイジ・真宵の4人がエスポワールで待機していたこと。
残った待機組は疑心暗鬼から、利根川が真宵を、カイジが利根川をそれぞれ殺害してしまったこと。
捜索に出ていたジープ組は【ゼクス・マーキス】と合流し、
2回目の放送で2人の死亡を聞き、即座に引き返したこと。
待機組で残った衣とカイジは、殺害の経緯の誤解を解き、友誼を交わした後に、
突如現れた【
ユーフェミア・リ・ブリタニア】にカイジが殺されてしまったこと。
ジープ組が船に戻り、ゼクスの機転でユーフェミアを船から連れ出したこと。
施設サービスで船を動かしたが、馬組の探索に士郎と黒子が飛び出していってしまったこと。
そして、海上でヒイロとファサリナに出会ったこと。
「……そうですか」
(同志とは、接触しなかったのですね……)
「……今挙げた名前の中で、信頼できる人間は誰だ。」
「そうだな……衛宮士郎、白井黒子の二人に関しては信頼できると、このグラハム・エーカーが保証しよう。
また、ゼクス・マーキスについては君の方がご存じだろうが、その行動からは信義を感じた。
明智光秀、秋山澪については挙動におかしな点は見受けられなかったが、
胸襟を開いて語り合ったわけではないのでな。保証まではしかねる。」
「……了解した。」
頷いた後、ヒイロは暫し考えを纏める。
「……その、ゼクスの書いた手紙を見せてくれないか。」
「ふむ、何か気になる点でもあったかな?……これだ。」
グラハムからゼクスの手紙を受け取り、内容を確認する。
信頼できる人物として、ヒイロの名前と特徴も書かれている。
(そうか……ゼクスもまた、リリーナが死んだ後も正気を保てているのか……)
また、ユーフェミアの名前と特徴もヒイロの知っている物と合致する。
―――そして、『日本人』への反応。
「ふ……なるほどな。」
ファサリナの方を見る。見られたファサリナは小首を傾げる。
手紙を渡し―――ファサリナの表情が変わる。
「ヒイロ、これは……」
言いかけたファサリナを手で制し
「……こちらの行動は、俺から話す。」
【ヒイロ・ユイ】自身が飛ばされた後、ユーフェミアと出会ったこと。
日本人かどうかを確認された後、銃で撃たれたこと。
その傷を、出会った【ファサリナ】に介抱して貰ったこと。
一回目の放送を聞いた後、【憩いの館】で休息したこと。
また、そこで先の"戦場の絆"を見つけたこと。
二回目の放送まで休息し、出た先で知人の死体を発見し、首輪を預かったこと。
【城】へ移動し、施設が倒壊していたこと、残骸から規格外の兵器を奪取できたこと。
その後【火口】【間欠泉】【心霊スポット】【敵のアジト】と移動を続けたが、
人との接触はできなかったこと。
そして、豪華客船が動いていることを見つけ、乗り込んだ後、グラハムと衣に出会ったこと。
「成程、少年もユーフェミアなる女性に襲われていたわけか。
しかし、それ以外の人間と全く接触しなかったとはな。」
「ああ……都合6時間以上【憩いの館】に滞在したが、人が寄ってくる気配はなかった。
夜を越す施設としては最適だろう。」
衣に目を向け、民間人を保護するには、夜間の安全を確保する必要があることを指摘する。
「確かに、そろそろ夜を越すことも考えなければならないか……。
時に少年、他に信頼できる人物というのはいるかな?」
「……【
デュオ・マックスウェル】と【
張五飛】、それにゼクス。ゼクスの手紙に書いてあった人物ばかりだが。」
「そうか……」
(張五飛は結局ソレスタル・ビーイングのメンバーではなかった。
ここには参加していないのか、或いは既に―――)
「あの……ヒイロ……」
「………………」
「ふむ……ファサリナ嬢は顔色が優れないようだ。
少し休憩としよう。―――して少年。先程の冊子を見せて頂きたいのだが。」
「衣も!衣も見るのだ!」
「ああ……スペックは既に頭に入っている。これは持っていていい。
―――ファサリナ、少し外に出よう。」
「ええ……。」
「感謝するぞ、少年!」
先に室外へ出るヒイロと、それを追うファサリナ。
冊子を広げ、覗きこむグラハムと衣。
□
「ヒイロ……これは、その……」
「確認する。―――ファサリナ、お前は『日本人』か?」
西の海に太陽が落ちていく中、コルト・ガバメントを片手で構え、問い掛ける。
「……私を、殺しますか。」
「日本人か、と聞いている。」
唇を噛みしめる。
桃色の髪の女性と会った後に、ヒイロと『世界』の違いについて認識したのだ。
飛ばされた時点で日本人かと問われれば、こう答えるだろう。
「………………………………違います。」
ここまでなのか。
先程の話で、『別の惑星』どころか『別の世界』から参加者を呼びよせていることが判明したのだ。
そんな技術を持つ主催者を相手に、ヒイロ無しではとても対抗できないだろう。
では。目の前の、この優しい少年を今更討てるのか。
違う。
生まれたときから独りだった自分。
あの男が言ったように、同志の為と、カロッサやメリッサを見殺しにした自分。
寂しいと思えるような心など持てない自分。
今更独りになったところで―――
「もうひとつ聞く…………お前は何の為に戦う。」
「………………同志の。……いいえ。―――私の、夢のためです。」
「……そうか。」
銃を収め、そのまま部屋に戻ろうとする。
「あ、あのヒイロ……?」
「何だ。」
困惑するファサリナに、背中を向けたまま無愛想に答えるヒイロ。
「私を、殺すのではないのですか……?」
「障害になるようなら、お前を殺すと言ったはずだ。…………先に戻っているぞ。」
「ヒイロ……」
信頼、してくれるというのだろうか。
―――せめてもう少し、口に出してくれると嬉しいのだが。
だがそれならば―――もう少し、その信頼に応えてみよう。
「待ってくださいヒイロ。私も行きます!」
□
「グラハム、二人乗りのロボットとかは無いのか?」
ぴょこぴょこと跳ねながら目を輝かせる少女。
「そうだな……我が軍が誇るユニオンフラッグには予備コックピットが付いているので、
二人乗れないことはないが……天江衣では目を回してしまうだろうな。」
ユニオンフラッグのページを衣に見せる。
「おお、これか。かっこいいぞグラハム!」
「フフフ、そうだろう。中々良い審美眼を持っているではないか、天江衣。
後はそうだな……この『IFX-V301 ガウェイン』という機体は複座型と書いてあるな。」
「ふくざがた?」
「二人乗りできる、ということだな。」
「おお、是非一緒に乗ってみたいのだ、グラハム!」
「ああ、そうだな。その憩いの館とやらに行く機会があれば一緒に乗ろうか。」
そんな会話をしていると、ヒイロとファサリナが戻ってくる。
「戻ってきたか。では再開といこうか。」
そんなことを言いながら、メモを渡す
[重要事項についての話に移るので、カモフラージュしながら筆談で行う]
「……了解した。」
「うむ、では良い方法があるぞ!」
いそいそと何かを取り出す衣。
―――当然、取り出したのは。
「麻雀牌セット!!これでみんなで麻雀をしよう!!」
「麻雀……先程言っていたものですね?」
「そうなのだ…………これでその……衣と友達になってほしいのだ。」
上目使いでもじもじと言う衣に、メリッサの姿を重ねる。
「"友達"……」
『ファサリナくん、人と人とはね、みんな友達になれるんですよ。
私はそのお手伝いをするだけ……争いの無い世界を作る為にね。』
(同志……)
「やっぱり、だめかな……」
しょぼんとする衣の手をとり、衣の目線となる為にしゃがみこむ。
「いいえ……麻雀しましょう。そして、私とお友達になりましょう。」
パァァと花が開くように喜ぶ衣。
「すまないな、少年。付き合って頂けると助かるのだが。」
「……了解した。」
□
「つまり、三つずつ揃えていけば良いということなのだな。」
「そうだ。そしてあと一牌で揃う前に、このリーチ棒を前に出し、リーチと言うのだ。」
「なるほど……ではこう叫ばせて頂こう。
―――リーチせずにはいられないな、と!!」
基本的にグラハムとヒイロが筆談で情報交換を進めつつ、
衣が全員に麻雀を教える、という形で進んで行く。
[首輪の金属というのは、恐らく『ガンダニュウム合金』だろう。]
[ガンダニュウム合金とは?]
[ガンダムの装甲に使われている金属だ。重量から薄い状態ではあるだろうが、普通の刃物で切れるような物ではない。
「…………それをロンだ、ファサリナ。」
「あらぁ、負けてしまいました……それでは……」
「脱がなくていい!脱がなくていいのだふぁさりな!」
[科学技術についての知識は持っている。]
[では二人の少年の力を合わせれば。]
[それと、解体の施設ないし道具が必要だな。]
―――そうして、纏めた情報は次のようなものとなった。
通称、『エスポワール・ノート』である。
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1.首輪について
- 盗聴機能がある。(推定)
- 脈拍や血圧など、何かしらのバイタルサインが送られている。(推定)
- 帝愛自身では首輪の操作はできないのではないか。(推定)
- 爆破に関しては、『範囲を限定した無差別な起爆信号』か、『設定されたプログラムによる自律起爆』である可能性がある。(推定)
- 禁止エリアに首輪のみ存在しても、爆発はしない。(確定)
- 外面には視覚による情報の偽装・抑制を行うことに特化した概念物・礼装が埋め込まれており、現在も機能している。(確定)
- 魔術行使に対する防御は現在機能していない。(確定)
- 金属が存在する。(確定)
- その金属はガンダニュウム合金を軽量化した物である可能性がある。解体するには普通の刃物では難しい。施設ないし道具が必要。(推定)
- トランシーバーに似た構造の装置が存在する。(確定)
- ICチップらしきものが存在する。(確定)
- 電磁石と共に液体が存在する。(確定)
- 首輪解除には【衛宮士郎】と科学技術に精通した者の協力が必要。(推定)
- 外面の魔術的な防御を解除できれば、技術者単身による解析も可能。(推定)
2.主催者について
- 帝愛の幹部だった【利根川幸雄】も事前の打ち合わせもなく参加させられている。(確定)
- この殺し合いは、帝愛が楽しむギャンブルの一つという名目で行われている可能性がある。(推定)
- 帝愛の裏には、黒幕として魔法の売り手がいる。そして、黒幕には何か殺し合いを開きたい理由があった。(推定)
- 参加者を最後の一人まで殺しあわせるのは、聖杯を使用するための儀式ではないか?(推定)
- 【天江衣】と同じ世界の住人である【原村和】は主催側が用意した《ゲスト》で、麻雀の腕以外のなんらかの能力を見込まれて選ばれた。(推定)
- 【原村和】はその計算能力を活かした仕事(超能力等)を請け負っている可能性が高い。(推定)
- 《清澄の嶺上使い》は【原村和】を拘束するための《人質》として島に来ている。(推定)
- 【忍野メメ】という主催者側の人物が、参加者寄りの工作員である可能性がある。(推定)
3.バトルロワイアルの地について
- 時代、惑星、世界を超えて参加者が呼び寄せられている。(確定)
- 本来通じないはずの言語、文章が通じるようになっている。(確定)
- 施設には監視カメラが付いている。(推定)
- 異世界からの人物転送や、参加者の能力を制限する為の魔力源は聖杯ではないか?(推定)
- 結界によってこの島の周囲が閉ざされている。(確定)
- 各施設には『結界』を制御する為の何かがある。(確定)
現時点で把握している情報は下記。
【敵のアジト】
両儀式により、消失
【城】
バーサーカーによる倒壊に伴い、消失
【神様に祈る場所】両儀式により、消失
【廃ビル】ヒイロ・ユイによる爆破に伴い、消失
【円形闘技場】
平沢唯のジャンケンカード投擲により、消失
《政庁》
荒耶宗蓮による補強を観測。しかし隠蔽されたかは不明。
【学校(E-2)】
浅上藤乃により、消失
〈太陽光発電所〉施設そのものが崩壊。代替地が必要
【心霊スポット】はヒイロ・ユイにより破壊済
- 結界の破壊により脱出できる可能性がある。無機物による結界の突破には成功。(確定)
- 主催側は太陽光発電所崩壊に伴い、エネルギー確保・発電機保護のため、“ジングウ”を火口より船底直下の海底に移送した。(確定)
- 主催側の緊急的措置として“電池”の使用許可が求められている。(確定)
- 【火口】と【間欠泉】は地下で繋がっている。(確定)
4.今後の方針について
- エスポワール船底にあるという『ジングウ』の存在確認。
- 首輪の解除の為、【衛宮士郎】との合流、または『外面の魔術的な防御を解除』できる人間との合流。
- 合流後、首輪解除ができそうな場所(【工場地帯】か【宇宙開発局】)へ行くか、それに類する道具を探し、首輪を解除する。
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「ふむ……こうなると、衛宮少年が出ていってしまったのが、如何にも痛い。」
あの鉄砲玉のような少年を思い頭を痛める。
言っても詮無き事ながら、あのまま居てくれれば首輪の解除は早まったのだ。
「[E-3]にある【象の像】に来るのを待つしかないか。」
「…………その【象の像】に集まるプランだが、あまり賛同できない。」
「ほう、何故かな、少年。」
ヒイロは衣の方を見た後、答える。
「……ひとつに、優勝を狙う人間が、集まった人間同士の離間工作を行う可能性がある。
もうひとつは、そこに集まった人間の殲滅を狙ってくる者がいる可能性もある。
…………仮に行くとしても、遠くから安全を確認してからで無ければ、危険だ。」
自身、工作員としていくつも工作を行ってきたからこそ分かる。
また、苦い経験ではあるが、OZの流した偽情報に惑わされ、和平推進派の人間を殲滅してしまったこともある。
万が一優勝を狙う者に情報が漏れた場合、格好の餌食だろう。
「成程……一理ある。」
ソレスタル・ビーイングも必ずどこかから情報を掴んで参戦してきていた。
安直に主催に対抗する人間だけが集まるとは考えるべきではない。
「だが、問題も同時に存在する。
その衛宮少年であれば、躊躇なくそこに突っ込んでくる、ということだ。
……これは同行している白井黒子が止めてくれることに賭けるしかないが。」
「その少年を先に回収することはできないのですか?予めルートが決まっているとか。」
「残念だが、明智光秀や秋山澪が島を反時計回りに探索していくこと、くらいしか情報がない。」
ぴょこんとカチューシャが跳ね上がり、衣が提言する。
「あるではないか、グラハム!しろーの場所が分かる方法が!」
「む……?」
「位置情報がわかる商品があったはず!」
「ふむ……いや、しかしあれは3000万ペリカもかかる。残念ながら、ペリカは既に残っていない。」
「麻雀だ。麻雀で稼ぐことができるぞ。現にカイジと共に稼いだこともある。」
「……?一体どういうことなのですか?」
首をかしげるファサリナ。
「ああ……この船のことは伝えていなかったか。」
エスポワール内にあるギャンブルルームでペリカを稼げることを話す。
ただし、元手がない場合は血液で支払うなどという下衆なルールであることなども。
「しかし、ギャンブルに強い人間はこの場にはいないのであろう?
他のゲームも海の物とも山の物とも判別できぬものであるし。
衣であれば麻雀ゲームは一度経験しているし、木偶人形如きに麻雀で後れを取ったりはせぬ。」
「却下する。」
「……衣は、とーかに、カイジに、そしてグラハムに守られてここまで来た。
でも衣は、子供ではない。自分にできる仕事くらいは、せめて果たしたいのだ。
お願いだグラハム。衣も皆の役に立ちたいのだ!」
「いや、しかしだな……」
そんなグラハムにファサリナが言う。
「グラハムさん。彼女の目は今、闘う者の目をしています。
―――心配するのはわかりますが、彼女を信頼してあげるのも、パートナーの務めではないでしょうか。」
「……確かに、この少女は今、戦士の目をしている。」
「ありがとう、ふぁさりな、ひいろ。……頼む、グラハム。」
「………………………」
「………………………」
じっと衣と目と目を合わせた後。
深く、嘆息する。
「………………………………………………わかった。信じよう、天江衣」
「ありがとう、グラハム!」
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最終更新:2010年03月07日 10:16