運命の通り道~Dark Road or ○×Road ◆CgCz1GHD8o
一人、茜色に染まる中、女。いや、男―
荒耶宗蓮は歩いていた。
「…………」
その口から聞こえるのは規則正しい呼吸音。
男の耳に入るのは自身の足が土を踏みしめる、いつもより小さい音。
そうして歩いている間、荒耶は考える。
先ほどの出来事―小川マンションの崩落について。
(入ってきた参加者が誰だったのか……)
自分のアジトである小川マンションを崩した犯人。
その正体について荒耶が知ることは構わないが、なぜそうなったかには一つの推測があった。
(もしや、また抑止力だというのか?)
何度も荒耶の目的を阻んできたもの。
その名を抑止力。
それがまた働いているのかもしれないと荒耶は思っていた。
だがその考えに荒耶は否、と思う。
(ここは小川マンションと同じように作られた結界であるというのに、そのような事が働くと言うのか)
荒耶がその考えを否定した理由。
それは荒耶がこの会場にしかけた結界の効力。
小川マンションと同じく、抑止力を阻むために仕掛けたという役割もある。
なのに今現在、抑止力かは定かでは自分の行動のほとんどが失敗に終わってることに荒耶はまた一つの仮説を建てる。
その結界の効力が今や薄れつつあるという事だ。
(確かにこの体に移る前にいくつかの結界が消失しているのは感じられた。が、その時はまだ問題の無い程度だったはずだ。確かに、今それ以上の結界が失われつつあるのは確かなのは自分の体の具合からしてもそうだろう。しかし、それにしては抑止力の働きが弱いのではないだろうか……? 抑止力がもし完全にこの会場に介入できる状態になったのならば、とうにこの殺し合いを止めれるような力を誰かが得ているはず。なら、考えられる事はこれだけしかないか)
そこまで考え荒耶は先ほど会った男の事を思い出す。
(もしや、あの忍野がそれを修復しているということか。ありえない話では、ないな。遠藤達も結界が壊れるのは困るはず。私と一緒に結界の製作に携わった忍野なら確かに可能だろう。そして、忍野が作った結界だから上手く結界に対するリンクを行えないという訳だ。しかし、あの男が作った結界。……信用が出来ない。確かに実力があるのは共に仕事をした者として断言はできる。だが、そう。昔から力ある魔術師ほど変わり者が多いものだ)
掴みどころがない男。
何を考えているのかが分からない。
それが忍野に対して荒耶が感じてた事だった。
(ふむ、だがそれを考えたところでどうなるという話でもないな。忍野が作った結界に不備があるなら自分でまた手直しをすれば良い話だ)
そう思い荒耶はこの事について考えるのはやめて、新たに別の事を考えることにする。
(
両儀式。あれが今どうしているか、だな。この体になり何処にいるかが分からなくなったが、放送前の位置を考えるとD-6付近の建物か。しかし、それからもう5時間近くは経っている今、やはり予想がつかぬな。それに
黒桐幹也が死んだ今あれがどのような考えでいるのかが分からぬ。下手したら式という人格が壊れているという事もあると言う事か……その方が都合が良いのだがな。しかし、それは無いな。両儀式は『死』を恐れている。あれが自ら自分を殺そうとしたりすることはないはずだ。おそらく……壊れることもないだろう。だが流されるままに生きて、死のうとはするかもしれんが……それもない。同じように死んでいるという事もないな。あれにはアレがいるのだから。両儀式の三つ目の人格。いや、両儀式という人物の根源。『 』がな)
そうして、荒耶は更に思考を深める。
(しかし、そのまま両儀式が両儀式ではあるが今まで通りという事もないかもしれん。今度こそ本当の殺人鬼となっているやもしれんな。今後準備が整った後、接触する場合は注意が必要か)
ふと、荒耶は足を止める。
考えながら歩き、現在地はC-6。
小さいながらも死者の眠る場所が目視できる位置にいた。
(もう、ここまで来たか。確かここのサービスは断末魔サービスだったな。……だが私には関係の無い事だ)
そう思い去ろうとする荒耶の目の端に一つの物体が止まる。
(あれは……車か?)
荒耶がその物体に目を向けると、今まさに出発しようとする車が一台、そこにあった。
そうしてエンジンを鳴らしその車は遠くへと消えていく。
その光景を荒耶はただ無言で見ていた。
(遠すぎて誰かは分からなかったが、あの方向からして向かうはおそらく政庁。六時間前は
東横桃子達がいた場所ではあるが――)
何かが爆ぜる音がした。
その音を聞き荒耶は一度思考を中断し音の発生源を探る。
(今の音は、爆弾。この島に居る参加者の中でそれを使いそうなのは)
そう思い荒耶は自然に政庁の方向に目を送る。
そして荒耶の目の前でついさっき起きた事と似たような事が繰り返される。
(政庁が、崩れていくだと……)
そう政庁の崩壊。
そして、これが爆発音の正体。
崩れていく建物は基盤を失い、一つの凶器なり地上に降り注ぐ。
これは偶然なのか、また荒耶の工房への道は建物もろとも崩れ去っていった。
それを荒耶はただ静かに見ているしかなかった。
そして、崩落が終わったのを確認して、荒耶は心のなかである人物を思い浮かべる。
そう思った後、荒耶は最後にもう一度政庁を見て歩き出す。
元々行く気はなかったが政庁が崩れた今、もうひとつの展示場の方も無事とは断言しがたいからである。
さっきよりも歩く速度が早くなり、荒耶自身が感じてないにしても多少の焦りがその姿からは感じられる。
(本当に抑止力が干渉できるようになっているのか……?)
続けて壊れていった建物。
自分の行動を邪魔をするかのように物事が起きる。
その事について、荒耶は思考を打ち切り黙々と歩いていく。
(そうだ、工房までつけばいくらでも手はある)
「全ては、根源に至るために――」
そう呟き、荒耶は更に歩を進める。
そして一歩。禁止エリアへ近づいてきたところでで、荒耶の体に一つの無視することのできない悪寒がはしる。
(っ! この感触は……何だ)
そう思い荒耶は目の前に広がる禁止エリアを見つめる。
そこには何もないはずなのに、まるで何か混沌としたもがこちらに手招きしているかのような錯覚にもとらわれる。
そのように感じるのは、荒耶が進む先にこの世全ての悪(アンリマユ)を取り込んだ魔王、
織田信長居るからなのだろうか。
(何なんだ、この魔力は……。この量、この質、全てが負の力に埋め尽くされている)
荒耶はこれを見て考える。
このまま進むべきか。東の禁止エリアから迂回するべきか。
このまま進む事が危険なのは勿論荒耶は分かっている。
しかし、抑止力の存在を少しでも疑っている今できるだけ早く展示場につきたいの事実だった。
だから荒耶は立ち止まる。
目の前につづく、混沌を感じさせる道を通るか。
東の禁止エリアに迂回して安全な、しかし少しの遠回りになる道を通るか。
それとも、これ以外の選択肢を思い浮かべれるかも知れない。
荒耶がどのような道を行き、その先に何があるのかは今はまだ分からない――そう、全ては放送の後に
【C-6/D-6手前/1日目/放送直前】
【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:身体適合率(大)、身体損傷(中)、発現可能魔力多少低下、格闘戦闘力多少低下、蒼崎橙子に転身
[服装]:白のワイシャツに黒いズボン(ボロボロで埃まみれ)
[装備]:
[道具]:オレンジ色のコート
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は体を完全に適合させる事に専念する。
1:どのように展示場へと向かうか決める
2:なるべく参加者と出会わないように工房へ行く。
3:必要最小限の範囲で障害を排除する。
4:機会があるようなら
伊達政宗を始末しておきたい。
5:利用できそうなものは利用する。
6:可能なら、
衛宮士郎の固有結界を目覚めさせ、異界として利用する。
※B-3の安土城跡にある「荒耶宗蓮の工房」に続く道がなくなりました。扉だけが残っており先には進めません。
※D-5の政庁に「荒耶宗蓮の工房」へと続く隠し扉がありますが崩壊と共に使用不可能になりました。
※現在の状態で使用できる結界は『蛇蝎』のみです。常時展開し続ける事も不可能です。
※エリア間の瞬間移動も不可能となりました。
※時間の経過でも少しは力が戻ります。
※今現在、体は蒼崎橙子そのものですが、完全適合した場合に外見が元に戻るかは後の書き手にお任せします。
※
海原光貴(エツァリ)と情報を交換しました。
※エツァリに話した内容は「一応は」真実です。ただしあくまで荒耶の主観なので幾らか誤りのある可能性もあります。
※体の調整により多少適合率が上昇しました。どの程度回復しているかは後の書き手にお任せします。
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最終更新:2010年03月19日 00:24