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鋼鉄の咆哮 - (2021/06/23 (水) 23:22:09) のソース
**鋼鉄の咆哮 ◆XkQ1qdE.bE 「訳判んねー」 これがあたしの感想だった。 そりゃいきなり殺し合いをしろとか言われても判るわけがない。 それにグラーフアイゼンだって……どこ行ったのか判らない。 何でこんな事になったんだ。誰かあたしに説明してくれ。 ……なんて、愚痴を零しても仕方無い。あたしは支給品を確認する事にした。 中に入っていたのはまず、なんか爆弾みたいなのが五つ……これで一セットって訳だな。 説明書には「音と光で相手を無力化する兵器、所謂スタングレネードです」と書いてある。 …………アイゼンゲホイルみたいなもんか? よし、次。 次に出てきたのはハルバードだ。柄がアイゼンみたいに長いな……。 でも慣れてる長物で助かった。ハンマーじゃなくて刃物だけど、これで襲われた時に対処しやすい。 更に他には何か、と確認すると出てきたのは……なんだこりゃ。セーラー服……? 説明書には「北高の女子生徒用制服です」と書かれてある。どこだよ、北高って。 とりあえずかさ張るし、ハルバード以外の道具は袋に入れておいた。 これからどうするか……。 いや、答えは最初から決まってる。はやてを捜さないと。 こんな殺し合いがどうとか言われて、混乱しないはずが無い。 はやては優しいから……だから、あたしが護らなくちゃならない。 人を殺してでも生き延びようとする奴がいたら、あたしが倒すんだ。 そうだ、はやてを護る為にあたしが……人殺しになっちまった奴らを……。 ……大丈夫、落ち着け。あたしには出来る。ベルカの騎士なんだから。 それにここには、はやてだけじゃない……なのは達もいるんだ。 あいつらに降りかかるかもしれない火の粉は払わないと。 そうなんだ、あたしがそうしなきゃいけないんだ。 そうでもしないと、ここでは何が起こるかわかったもんじゃない。 ……そうなんだろ? ギガなんとか! ……と、あたしが決心を固めた瞬間だった。 あのとんでもない奴が来たのは。 「ヴルぁァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!」 本当にそれは突然だった。突然辺りに奇声が響いた。 更にその妙な叫びが合図みたいに、あたしがさっき立っていた位置に衝撃が走った様だ。 同時に鉄が鉄をぶッ叩いた様な音が響く。これは相当な攻撃だ、耳を劈く音が威力を物語ってる。 だけど、咄嗟にバックして回避したおかげであたしは助かった様だ。 多分運が良かった。ありきたりだけど「後数秒気づくのが遅かったら死んでた」と思う。 殺意を込めて攻撃を放ってきた相手が、まさかここまで気配を殺して近付いてたなんてな。 あたしもちょっと平和ボケしてたか……? だけど、丁度良い。 速攻で勝てるかどうかは判らねーけど、このグラーフア……じゃなかった、ハルバードで……倒す。 「随分と戦い慣れているのだね……ならば本気で行こう。Amen」 男がさっきとは打って変わって、落ち着いた声で何か言った。 そして言葉と同時に相手が右手を高く上げた。月明かりに相手の得物が照らされ、光る。 何を持っているのかをあたしが理解する暇も与えず、そのまま男は肉薄してきた。 命知らずな突撃のおかげで加速した、相手の右手の何かをハルバードで受け止める。 すると、まただ。またあの耳を劈くような音が聞こえた。 その時やっと判ったんだ。相手の得物は何の変哲も無い”鉄パイプ一本だけ”だって事に。 まさか……冗談だろ? こんな物であんな激しい攻撃をしてたのか!? 嘘みたいな話だけど、でもあたしが今そんな馬鹿力の人間と戦ってるのは現実だ。 こんな奴と鍔迫り合いを続けるわけにはいかない。あたしはすぐにバックステップで距離を置いた。 さぁこれからどうする。逃げるか……いや、でも……。 馬鹿かあたしは! 敵を倒すと誓ったばっかりじゃないか! はやてが身の危険に晒される前に摘み取らなきゃいけないんだろ!? はやてが死んじゃったり、笑わなくなったりしたら一番困るのはあたしだろっ!? よし、決まりだハルバード! お前を存分に振るってやる! このあたしにこんなに大事にされる事に感謝しろよ! その代わり、あんな鉄パイプなんかに音を上げたら承知しないからなっ!! あたしは意を決して接近。そのまま跳躍し、ハルバードを相手に振り下ろそうと振りかぶった。 …………それがまずかった。 「え……?」 あたしが男の構えの変化に気づいたのは跳躍した後。 右じゃない、左腕をこっちに向けていた。相手の腕の先にあったものは……筒? 月明かりで照らされて、男が笑みを浮かべた事に気づく。 ……それが、あたしが最後に見たこの男の姿だった。 「ドォゥゥゥカァァァァアアアアアアアンンッッッ!!!!」 男が叫んだ瞬間、あたしの体に何かがぶつかった。 あたしにぶつかったのは見えない何か……一体……何だ、これ。 まともにくらった所為か、痛い。 「うあッ!」 何かの塊みたいな何かは、漏れた叫びを無視してあたしの体を容赦なく吹き飛ばした。 空中でくらったのがまずかったのか、そのままあたしはボロ切れの様に飛んでいく。 吹っ飛ばされた先に地面が無いみたいだ。上にも下にも右にも左にも地面は続いてない。 つまり橋の上から吹っ飛ばされたって事……当然落ちる先は川だ。完全に不用意だった。 ……痛みに耐えて冷静に考えてみたけど、それもここまでみたいだ。 橋が視界から消えた。あたしの体が川へと沈んだ所為だ。 力を振り絞って浮き上がり、気合で離さなかったハルバードを袋に入れる。 泳いで岸へと移動したかったけど、突然の痛みと水の冷たさで体が思うように動かない。 これって、溺れて流されてるって言うんだよな……? やば……死ぬのかな、あたし。 それに……なんか……景色が、遠のいてき……た……。 はやて……ごめ、ん…………。 ○ 「死んだか?」 そう呟いたアンデルセンは、流されていくヴィータを案外あっさりと見失っていた。 深夜での外の暗さと水の流れによる作用だろう。完全に滅殺出来たか確認できない事を彼は残念がった。 だが、まあ良い。次に会った時に滅してしまえば良いだけの事なのだから。 心中で呟きつつ、アンデルセンは両手の得物を比べるように眺めた。 鉄パイプと空気砲、これがヴィータに奇襲を行う前に袋を開いた結果。 自分の最も得意とする武器ではなく、全く違うものが出てきてしまったという現実がそこにある。 まず浮かぶ言葉は「忌々しい」。 もしもバヨネットが、愛用の銃剣があればあの小娘を抹殺出来たというのに。 鉄パイプであった事の不運に、悔しさを飛び越え憤りすら覚える。 だが一方で感謝もする。左手に装着された空気砲とやらの性能は、なかなか目を見張るものがあった。 「”ドカンと叫べば空気の塊が発射され、相手を吹き飛ばす”……素晴らしいではないか」 戦闘能力、こと接近戦に重要である「間合い」を理解している自分なら、これは非常に利用価値を生む。 バヨネットを手に入れれば世話になる事も無くなるだろうが、これは良い。 喉を鳴らすように笑みを浮かべ、アンデルセンはその場に座った。 鉄パイプをいつでも構えられる場所に置き、再び袋を開く。 ランタンを取り出して辺りを照らし、地図とコンパスを手早く取り出す。 そしてコンパスの針の向き、地図をじっくりと確認した。 「B-3……」 アンデルセンが今いる場所は地図で言うと「B-3地点の橋の上」である。 ここから浮かび上がる選択肢は、西に行くか東へ行くか。 しかし西には大した物は無い。学校と駅があるが、ただそれだけだ。 「ならば、東だ」 東の方角には様々な建物がある。近い場所では映画館に図書館、病院と三つもの建物が点在している。 ならば人の集まるであろう東方向に行くべきだろう。アンデルセンはこう判断した。 本人には知る由も無いが、東には確かに人間が沢山いる。彼の読みは確実に当たっている。 「我は神罰の地上代行者。我が使命は全ての悪を塵に滅する事。 即ちこの世界を生み出した悪を滅する為、全ての存在を滅する事……Amen」 立ち上がり、呪文の様に唱える。 それはこの世界全てに対する敵対宣言であった。 彼は東へと歩き出す。塵を塵に帰す為。全ての存在を滅する為に。 ○ 「はぁっはあっ……ここは……うっ、げほっげほっ!」 咳き込みつつ、あたしは目を開いた。死んでなかった、助かった。 本当に良かった。ずぶ濡れになっただけで済んだんだ。ここまで悪運が強いなんてな。 とりあえず肩で息をしつつ、あたしは辺りを見渡した。 「どこだよ……ここ……」 急いで袋を開く……前に濡れた手を袋でよく拭いて地図を取り出す。 凄い、全然中のものは濡れちゃいない。って、感心してる場合じゃない。 辺りの風景と照らし合わせる。北を向くと、川が分岐しているのがわかった。 そうか、ここはこの地図で言うC-2……丁度川の分岐を生む岸に流れ着いたみたいだ。 でも橋で会ったあいつ、なんて強さだったんだ。 あの変な筒とただの鉄パイプだけでこのあたしに互角以上、いや……あたしよりも強かったかもしれない。 この状況じゃ……一人で戦っても負けるだけか。一対一ではベルカの騎士に負けはねーはずだったんだけど。 もしかしたらあんなのがまだ沢山いるのか? 更に強い奴が人を殺しにかかってたりするのか? ……まいった。一人で戦うなんて馬鹿な事、考えないほうが良かったかな。 こうなったら信頼できる人間を捜す事も頭に入れないとな。そしてもう一回あの男を倒してやる。 「ベルカの騎士は……こんな事じゃ倒れねぇっくしょん!!」 盛大にくしゃみが出た。寒い。当たり前だ、全身がずぶ濡れなんだ。 どうしようかと考えていると、ふと思い出した。 「そうだ、北高とかいう学校の制服があった……」 とりあえず着替えないとな。風邪ひいて動けなくなるわけにはいかないし。 ずぶ濡れでも服脱いで適当に水気取れば大丈夫だ。濡れた服のままより十分マシ! よし、思い立ったが吉日だ! ……誰も来ませんように。 【C-2川の分岐点の岸・1日目 深夜】 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:疲労、空気砲のダメージが現存、ずぶ濡れ [装備]:無し [道具]:支給品一式、ハルバード、スタングレネード(残り五つ)、北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱 [思考・状況] 1:北高の制服に着替える 2:信頼できる人間を捜し、PKK(殺人者の討伐)を行う 基本:元の世界の仲間を探す(八神はやてを最優先) 【B-3橋・1日目 深夜】 【アレクサンド・アンデルセン@HELLSING】 [状態]:健康 [装備]:鉄パイプ、空気砲@ドラえもん [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1:東方向に向かい、出会った人間を滅殺する 基本:ゲームに勝利し、ギガゾンビを滅殺する ※ダメージの程度 体は動かせますが、暫くの間は痛みによる身体能力への枷が発生しています。 ※空気砲の威力 威力がいくらか制限されている様です。 *時系列順で読む Back:[[飢えた獣と魔法少女]] Next:[[Fact or Fiction?]] *投下順で読む Back:[[飢えた獣と魔法少女]] Next:[[Fact or Fiction?]] |ヴィータ|66:[[悲劇]]| |アレクサンド・アンデルセン|61:[[神父 アレクサンド・アンデルセン]]|