カケラ遊びの最後に ◆qwglOGQwIk
※引き続きひぐらしのネタバレ全開なので注意
「羽入、今日は昭和何年の何月何日?」
「昭和58年6月の……19日なのです。あぅあぅ……」
「…………そう」
「昭和58年6月の……19日なのです。あぅあぅ……」
「…………そう」
いつもの部屋、いつもの始まり。隣にはすやすやと眠る沙都子。
古手梨花の100年、あるいは千年に渡る終わり無き旅は、今まさに最悪のバッドエンドへと近づきつつあった。
梨花はとうに諦めきった様子で、一言呟いたきり羽入と話すのを辞めた。
梨花は食器棚からグラスを取り出す。
そして冷蔵庫へと向かい氷を取り出すと、押入れからお気に入りのワインを取り出す。
梨花は氷の入ったグラスにワインを並々と注ぎ、氷が解けるのも待たずに口へと運ぶ。
ぷはぁと息を付く古手梨花の顔は、怠惰と絶望に満ちていた。
羽入の顔もまた、苦々しい表情に包まれていたのは苦手なワインのせいだったのだろうか。
それとも――
古手梨花の100年、あるいは千年に渡る終わり無き旅は、今まさに最悪のバッドエンドへと近づきつつあった。
梨花はとうに諦めきった様子で、一言呟いたきり羽入と話すのを辞めた。
梨花は食器棚からグラスを取り出す。
そして冷蔵庫へと向かい氷を取り出すと、押入れからお気に入りのワインを取り出す。
梨花は氷の入ったグラスにワインを並々と注ぎ、氷が解けるのも待たずに口へと運ぶ。
ぷはぁと息を付く古手梨花の顔は、怠惰と絶望に満ちていた。
羽入の顔もまた、苦々しい表情に包まれていたのは苦手なワインのせいだったのだろうか。
それとも――
「梨花。まだ、まだ終わってはいないのです。あぅあぅ……」
「何をやっても無駄よ羽入、もう何もかもが遅い。今日は綿流しの日なんだからね。
今日もまた富竹が死に、仲間が狂い……」
「何をやっても無駄よ羽入、もう何もかもが遅い。今日は綿流しの日なんだからね。
今日もまた富竹が死に、仲間が狂い……」
――そして私が殺されて、永遠の時の牢獄へと閉じ込められる。
ここ数百回のやり直しは梨花にとっても不幸だったと思う。サイコロの1が連続して出たというべきだろうか。
圭一は再び仲間を疑いだした。暴走してレナと魅音を殴り殺した時もあれば、暴走を止めようとした私が殺されたこともあった。
レナが暴走すれば、いつものように学校を占拠し、私ごと学校を爆破して死んでいった。
ある時は鉄平が雛見沢に現れ、沙都子を拉致していった。その時は圭一やレナ、あるいは詩音が殺人を犯していった。
この数百回は、こんな顛末が続いていった。そうするうちに羽入の力はどんどん衰えていった。
圭一は再び仲間を疑いだした。暴走してレナと魅音を殴り殺した時もあれば、暴走を止めようとした私が殺されたこともあった。
レナが暴走すれば、いつものように学校を占拠し、私ごと学校を爆破して死んでいった。
ある時は鉄平が雛見沢に現れ、沙都子を拉致していった。その時は圭一やレナ、あるいは詩音が殺人を犯していった。
この数百回は、こんな顛末が続いていった。そうするうちに羽入の力はどんどん衰えていった。
例外は詩音、そして富竹だろうか。
詩音だけは何故かある時を境に二度と園崎家を疑うことなく、沙都子のねーねー役として雛見沢にやってくるようになった。
富竹が失踪したケースは、もしかしたら逃れられない運命を変えたのではないか? と梨花も羽入も考えていた。
その期待を裏切るかのように富竹の変わりとして北条鉄平が死に、少しばかり変わった運命は結局梨花を飲み込んでいった。
詩音だけは何故かある時を境に二度と園崎家を疑うことなく、沙都子のねーねー役として雛見沢にやってくるようになった。
富竹が失踪したケースは、もしかしたら逃れられない運命を変えたのではないか? と梨花も羽入も考えていた。
その期待を裏切るかのように富竹の変わりとして北条鉄平が死に、少しばかり変わった運命は結局梨花を飲み込んでいった。
再び活性化した大切な仲間の暴走、不活性化した詩音の暴走に考えを巡らせたって、梨花が望む最高の結末は手に入らない。
羽入だけが全てを知っていた。
ある世界で梨花は突如失踪し、梨花だけが永遠にその世界へと戻らなかった。
またある世界では圭一が、レナが、魅音が、沙都子が、富竹が失踪し、やはり梨花と同じように帰ってこなかった。
平行世界を移動し、『オヤシロ様』として超常的な力を持つ羽入でさえ、不可解な失踪は何が起こったのか分からなかったのだ。
分かってることは二つ、失踪は一人に付き一度しか起こらない。
そして、失踪した人間は、平行世界の記憶、経験を全て失っているのだ。
これは、全てを知る視点の羽入にしか分からない事実でもある。
梨花が失踪した次の世界では、梨花は全ての記憶を失い、最初の頃のような無垢な少女へと先祖帰りしていた。
最も、その表情は幾度かの繰り返しの末に、記憶を失う前へと戻っていった。
ある世界で梨花は突如失踪し、梨花だけが永遠にその世界へと戻らなかった。
またある世界では圭一が、レナが、魅音が、沙都子が、富竹が失踪し、やはり梨花と同じように帰ってこなかった。
平行世界を移動し、『オヤシロ様』として超常的な力を持つ羽入でさえ、不可解な失踪は何が起こったのか分からなかったのだ。
分かってることは二つ、失踪は一人に付き一度しか起こらない。
そして、失踪した人間は、平行世界の記憶、経験を全て失っているのだ。
これは、全てを知る視点の羽入にしか分からない事実でもある。
梨花が失踪した次の世界では、梨花は全ての記憶を失い、最初の頃のような無垢な少女へと先祖帰りしていた。
最も、その表情は幾度かの繰り返しの末に、記憶を失う前へと戻っていった。
圭一が失踪したときは特に顕著だった。
失踪直前の圭一は仲間を信じ切り、暴走することは無くなっていたのだ。
だが、失踪後は極めてレアなイベントである圭一の暴走が再び起こり出したのである。
レナのケースにおいても、失踪後では格段に発生率が上がったのだ。
羽入は梨花の事例、レナの事例、そして圭一の事例からそういった結論を導き出したのである。
失踪直前の圭一は仲間を信じ切り、暴走することは無くなっていたのだ。
だが、失踪後は極めてレアなイベントである圭一の暴走が再び起こり出したのである。
レナのケースにおいても、失踪後では格段に発生率が上がったのだ。
羽入は梨花の事例、レナの事例、そして圭一の事例からそういった結論を導き出したのである。
いずれは詩音も失踪し、再び過ちを犯すのだろうか。だが詩音の失踪は起こる前に、羽入の力は尽きた。
これが本当に最後の最後、もう二度と昭和58年6月19日より前へと時は戻らない。
惨劇を防ぐことが出来るのは、これが本当に最後の最後。
これが本当に最後の最後、もう二度と昭和58年6月19日より前へと時は戻らない。
惨劇を防ぐことが出来るのは、これが本当に最後の最後。
―昭和58年 6月22日
――その日梨花はいつものように、あっけなく殺された。
「くすくすくす。ごめんなさいね。……あなたは神に試されなさい。
私は今日を境に試す側となるのよ。」
「…………以上で、黙祷を終了する。」
私は今日を境に試す側となるのよ。」
「…………以上で、黙祷を終了する。」
「全小隊、滅菌を開始せよ。」
人がゴミのように殺されていく。ころころ、ころころと。
リングはそんな人を人とも思わない光景を最後まで見届け、報告文書に淡々と事の顛末を書き上げるしかなかった。
あのバトルロワイヤルさえ超える虐殺を、ただただ黙って見届けるしかない自分の力の無さに打ち震えるしかなかった。
リングはそんな人を人とも思わない光景を最後まで見届け、報告文書に淡々と事の顛末を書き上げるしかなかった。
あのバトルロワイヤルさえ超える虐殺を、ただただ黙って見届けるしかない自分の力の無さに打ち震えるしかなかった。
「なんで、なんでこんな歴史が……」
この日雛見沢村が消えるという歴史は、正史のものとなった。
鷹野三四という女は、神の高みへと昇った。
タイムパトロールの捜査方針に従い、バトルロワイヤルの影響下にあった各並行世界群の調査をするというのが今のリングの仕事だ。
その平行世界の一つ、『ひぐらしのなく頃に』と呼ばれる世界の調査に来てしまったのは、リングにとっての不幸だった。
リングはバトルロワイヤルの犠牲者である部活メンバーたちに手を差し伸べ、未来を変えるだけの力を持っていた。
しかしその権限はリングには無い。
歴史に不干渉であるべきという23世紀のタイムパトロールの方針から、各平行世界を本来あるべきであろう結末へと導くことが出来ない。
最も一部の世界を除けば、未開の平行世界のあるべき未来の姿など、誰にだって分かりはしない。
それでも、歴史は変わらない。リングがどれだけ歴史を変えようと願っても、願いは決して叶わない。
鷹野三四という女は、神の高みへと昇った。
タイムパトロールの捜査方針に従い、バトルロワイヤルの影響下にあった各並行世界群の調査をするというのが今のリングの仕事だ。
その平行世界の一つ、『ひぐらしのなく頃に』と呼ばれる世界の調査に来てしまったのは、リングにとっての不幸だった。
リングはバトルロワイヤルの犠牲者である部活メンバーたちに手を差し伸べ、未来を変えるだけの力を持っていた。
しかしその権限はリングには無い。
歴史に不干渉であるべきという23世紀のタイムパトロールの方針から、各平行世界を本来あるべきであろう結末へと導くことが出来ない。
最も一部の世界を除けば、未開の平行世界のあるべき未来の姿など、誰にだって分かりはしない。
それでも、歴史は変わらない。リングがどれだけ歴史を変えようと願っても、願いは決して叶わない。
惨劇は、永遠のものとなった。
どう? あなたは楽しかった?
梨花がまさかこの閉じた世界から居なくなるとはさすがの私も予想が付かなかったわね。
タイムパトロールとやらがこの閉じた世界に興味を示しているみたいだけれども、閉じた時の世界にどうやって干渉するのか見物ね。
もう私でも閉じた世界のカケラには触れても干渉は出来ないし、新しい私の妹『古手梨花』もやってこない。
あなたはどうか知らないけど、私としては出来ることなら梨花たちが帰ってきて欲しかったかな。
もしかしたらあの後梨花達は運命を覆し、昭和58年6月を超えるかもしれなかったかもしれないのだから。
最も、梨花が永遠に昭和58年6月19日に閉じ込められてしまった以上、私にはもうそのカケラは知覚できないんだけどね。
タイムパトロールとやらがこの閉じた世界に興味を示しているみたいだけれども、閉じた時の世界にどうやって干渉するのか見物ね。
もう私でも閉じた世界のカケラには触れても干渉は出来ないし、新しい私の妹『古手梨花』もやってこない。
あなたはどうか知らないけど、私としては出来ることなら梨花たちが帰ってきて欲しかったかな。
もしかしたらあの後梨花達は運命を覆し、昭和58年6月を超えるかもしれなかったかもしれないのだから。
最も、梨花が永遠に昭和58年6月19日に閉じ込められてしまった以上、私にはもうそのカケラは知覚できないんだけどね。
ねえ? もしかしたらあなたは知っているのかしら?
梨花達が見事苦難に打ち勝ち、運命を覆して昭和58年6月を超える世界を――
梨花達が見事苦難に打ち勝ち、運命を覆して昭和58年6月を超える世界を――