時系列さえもっと遅ければ…いや、言うまい。

暁美ほむらとランサーは、ひとつの惨劇の跡を訪れていた。
金髪の少女の頭は破砕し、近くには青髪の侍風の男が胴体に無数の穴を開けて絶命していた。何かマシンガンのようなもので撃たれたらしい。
ここまで明確な『死体』を初めて見たほむらは呆然としていたが、ランサーは苦虫を噛み潰したような表情で言った。

「この青髪の侍は俺と同じ英霊ーーーサーヴァントだ。確かクラスはアサシンだった。英霊を銃で殺すなんざ普通の人間じゃ不可能だ。相手はそういう事のプロだろうな」

「騙し討ちでもされたのなら有り得るわね」

口調こそ冷静ではあったが、英霊はほむら達魔法少女の最大の敵であり壁、『ワルプルギスの夜』さえ簡単に倒せるかもしれないほどの力を個々が有していると考えていたほむらは二人を殺した相手に明確な警戒心を抱いていた。


「……もうすぐ放送か」

浜面仕上もまた、片手にAK-60を片手に持ちながら敵を探していた。
俗に言う『危険派対主催』といえる浜面にとっては、自分にとって不都合な存在は例え同じ立場ーーー対主催側であっても殺すことは厭わない。
現に彼はそういう世界で生きてきた。
無能力者たちの秩序となった少年駒場利徳は死んだ。

正義などは所詮報われない。ならば悪になろう。浜面仕上はそう考えた。もしも、荒耶宗蓮を打倒できたとしても、もう仲間の半蔵たちと同じ世界には居られない。
そんなことは理解していた。理解しながら、浜面は戦うことにした。
同じ悪の道を歩む『最強』の怪物とは何もかもが違っていた。


「…誰か来るわ」

ほむらは視界に茶髪のチンピラ風の少年を捉えた。
少年とはいえ高校生くらいの、ほむらよりは幾つか年上だと思われる。
しかし、その手にはAK-60。
ほむらも戦いの中で魔法少女としては弱い彼女の力を補うために兵器に頼ったため、見覚えはあった。

「よう。俺は浜面仕上って言うんだがーーー」

「………てめえ、殺気を隠し切れてねえぜ」

ランサーが言った次の瞬間。何の前触れもなく浜面は発砲した。
弾丸はランサーの胸の中央へ飛んでいく。スキルアウト時代に少し銃については嗜んだだけであったが、火事場の馬鹿力だろうか、思いの他うまく飛んだ。

カキン、と音がした。
は?と浜面が口にした時には、発射された弾は地面に跳弾していた。

ランサーは浜面の戦ってきた相手ーーー風紀委員、警備員、能力者ーーーのどれにも属さないが、圧倒する。

結局、次元が違いすぎたのだ。

くそっ!と浜面は銃を構え直すが、ランサーは槍を既に構えていた。
しかし、浜面は経験で理解している。いくら強い威力の槍や鉄パイプなどでも、鉛弾の一発でもぶち込めば軌道はある程度逸らすことができるのだ。
もし槍を外せば、決定的な優位に立てる。
いくら超人じみた身体能力と胴体視力、更には学園都市製クラスの金属を用いた槍を持っていようとも、頭に撃ち込めば確実に殺害できる。

勝てる。浜面は心の中でほくそ笑み、槍で浜面を突こうとするランサーの槍の根元に、一発の弾丸を撃ち込んだ。ひゅん、と槍は空を切る。

だが。彼は疎すぎた。
科学では説明できない非科学の領域ーーー『魔術』に。

浜面仕上の胸を激痛が襲った。槍は確かに外れていた。
しかし、ランサーの槍は宝具『ゲイ・ボルグ』。例え刺突を外そうとも、ただ『心臓を貫いた』という事実だけを生み出す必殺の槍。
英霊の一人である弓兵でさえも、後退する以外に対処法がないというほどの。

「(くそっ……俺は、最後までただのやられ役かよ…)」

浜面仕上の脳裏を、いくつかの風景がよぎる。
それを走馬燈と認識することに時間はかからなかった。

今まで関わった人たちの顔がまるでスライドショーのように流れていく。

ーーー浜面!今が食い逃げのチャンスだぜーっ!

「(…悪い、半蔵。もうお前と馬鹿やることもできねえよ)」

ーーー女子供に暴力は、いかんぞ…

「(駒場のリーダー…あんたは本当に良い奴だったよ。俺も、もうそっちに行くぜ)」

ーーー浜面ぁ!まぁた補導されたじゃんよー?

「(黄泉川だったっけか…警備員の中でも、お前はあんまり嫌いじゃなかったよ…)」

もう終わりが近い。そもそも、即死級のダメージを受けて今まで生きていられたことがすでに奇跡であったのだ。
そして、彼が最後に見たものは。

ーーー結局、浜面は私たちのパシリってわけよ!

ーーー浜面はやっぱり超浜面ですね

ーーーはーまづらぁ!飲み物も満足に運べねぇのか役立たずがぁ!



ーーーはまづら、口づけと平手打ち、どちらをしたら目が覚める?



あるはずのない、日溜まりだった。






ーーー見たこともないのに。不思議と俺はそいつらを知ってる気がしたんだ。



浜面仕上は最期に心の中で呟いた。
死体の目からは、何か透明な液体が溢れ。どこか安らかだった。


「さすがにショックだったかい?」

ランサーは静かにほむらに聞く。ほむらはあくまで光の中で生きてきたのだと認識していたので、人が死ぬのはショックかと思ったのだ。

「見慣れているわ。…もっときつい現実だって」

まだ会えない大切な人、鹿目まどかを想い、暁美ほむらは空を見上げた。

【浜面仕上@とある魔術の禁書目録】   死亡
【残り31/40人】

【深夜/e-2】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・行動]
基本:殺し合いを転覆させる。
1:まどか…無事かしら?

【ランサー@Fate/stay night】
[思考・行動]
基本:ほむらの意向に従う。

"大切な人" 投下順 残酷歌劇
路地裏と舞台の反逆同盟 浜面仕上 GAME OVER
いつか君が瞳に映す 暁美ほむら 魔女演舞~槍兵~
いつか君が瞳に映す ランサー 魔女演舞~槍兵~

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最終更新:2011年07月09日 10:38
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