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気づいた時には終わっていたという話

真庭鳳凰と云う忍者がいる。
ヨシュア・ブライトと云う暗殺者がいる。

片や、暗殺を得意として。
片や、暗殺を特異として。

一方は気配を消すのを長けていて。
一方は存在を殺すのに才が長けて。

優勝の座を頂くために人を殺し。
愛する者を守るために人を殺す。

似ているようで、圧倒的に違う。
同じなようで、絶対的に異なる。

一本の直刀が煌く。
一対の双刀が唸る。

血を求むべく。
血を奪うべく。

地を駆ける。
知を懸ける。

人を探す。
人を殺す。

単純明快。
直截簡明。

躊躇はない。
抵抗はない。

さあ、では物語を始めようではないか。
狂いに狂った人殺したちの話を。
血濡れた、埋もれた書物を開封する時が来た。


今回は、その傍らに偶然居合わせたある一人の人間の物語である。



 ◆


唐突な展開だが、
その少年は知らず知らずのうちに追われている。

少年は手にとある刀を携えてこそいるが、それまでだ。
名刀「小銃兼正・村田刀」とて、持ち主が初心者では甚だ意味を果たさない。

顔から提げるは陰険な現実に対する諦めを含む自嘲気味の顔。
やはり普通の高校生であるところの少年にとって、こんな殺し合いなど
馬鹿馬鹿しくて、アホらしくて。実を言うとこれは大掛かりなドッキリなんじゃないかとさえ思う。
されどどこかで、いやあんなものを見てしまうと、聞いてしまうとどうしてもそんな考えでは決めかねなかった。
少年は泣きたいに違いない。けれど泣けない。
決めたから。
一人の少女を守ろうと決めたから。
こんなところで泣いてちゃいけない。
泣いたら―――屈することとなる、この現実に、この行末を。
だから駄目だ。
決める。
心に、そう決める。
刀を強く握る。
――――強く――――強く。
歯がゆい思いを、刀に乗せて。
彼は歩いていたのであった。


さてともかくとして。
その少年を追っている人物の紹介の時間がやってきたようだ。
密やかに、ばれない様に、
こっそりと隠れ、ごっそり命を狩ってゆく。
そんな事が出来る人物。
仮に少年がなにかの達人であろうとも彼らの気配を気付くのはやはり容易ではなかろう。

彼ら。
わざわざここで代名詞を複数形としたのにはやはり一つの理由しか無かろう。


追っている人物が複数いるから。
複数―――二人。


一人はヨシュア・ブライト。
憂いな瞳は、まだ呪縛を解ききれていない―――失踪後の接吻直後のそれ。
彼自身としても忘れ去りたい……けれどそれは許されない禁断の記憶であるが、かつて彼は《漆黒の牙》と忌み恐れられ、暗殺を繰り返していた。
《身喰らう蛇》、執行者№ⅩⅢ《漆黒の牙》。
執行者としての能力は隠形に優れ隠密活動、対集団戦を得意とする。
その実力故に、意識こそしてないものの姿を隠すとなるとお手の物。

「…………」

静かに、身を潜める。
一対の双剣を両手に――――もう一人の存在に気付くこともなく、一人の獲物を狙う。


一人は真庭鳳凰。
憂いな瞳は、もう死んだはずの――――毒刀の猛毒を投与、刀与された頃のそれ。
彼自身が覚えている限りでは、うっすらとかの宿敵とも呼べる相手、とがめ―――次いで鑢七花に殺されたのを覚えている。
真庭忍軍十二頭領が一人、鳥組にして唯一の架空の動物を象る「神の鳳凰」。
いくら殺されたとはいえども、実力は果てしなく高く。よもよ死人の手足を思うように使うなど誰が考えつくものか。
そんな奇才もしくは鬼才な忍術を持つ彼にとって、いやそもそも忍者の在り方として姿を隠すなどお茶の子さいさい。

「…………」

静かに、息を潜める。
一本の直刀を片手に――――もう一人の存在に気付くこともなく、一人の得物を狙う。


むろん、繰り返すようだが少年は彼らの姿を捕らえるにあらず。
平凡なる―――いやその平凡もつい先ほど壊されてしまったが身体能力、潜在能力はごく普通の彼は、やはり駄目だった。


そんな彼は、一旦歩みを止める。
喉が渇いたようで――――ディパックから飲み物を取り出そうと考えたようだ。
このような極限状態に置かれていたら、当然ともいえる生理活動。
そりゃあ喉が渇くのも納得だろう。

しかし。
今に限ってはそんな事を考えたのが運の尽き。
本当に運が無かったとしか言えないだろう。
傍で二人の人間によって機会が窺われていたなどつゆ知らず、暢気に考えていたところで彼は何にも悪くない。
だが、運が無かったところでそれを助けてくれる善人などこの場に置いていなかった。

そして、ペットボトルの口を緩める。
刀をとりあえず、地に差し込み。
くるくると蓋は回されて、最後は左手に収まってゆく。
そんな左手を腰に当て、右手でペットボトルを口に付ける。


そして、ペットボトルが傾き始めた時、
イコールして完全に辺りに対する警戒が解けきった時。
二人はそれぞれ東と西から、狙ったように。


木の陰から同時に飛び出した。



 ◆


タイミングがあったのは、何のことはない。
互いに互いがその筋のプロであったからだ。

観るポイント。
出るタイミング。

それが単純に似通っていたから。
プロであるために、決まった枠に囚われるのはない話ではない。

よもや、もう一人。
同じ人物を狙っていたなんて思いもしなかった彼らにとって、奇抜な案を思案する必要もなく。
いつも通りに殺しを歩むつもりでいた。
手なんて汚しきっている。
故に躊躇いなどなかった。一瞬の迷いもなく首を狩ろうと足を動かす。
じりじりなんていわずに、盛大と。

だからこそ起こった、この衝突は。
だからこそ起こった、この衝撃は。

「――――ッ!」
「――――っ!」

両者共々、思ってみなかった出遭い。
そして立ち会わせ。当の狙われた本人を蚊帳の外に置き、睨みあう。

動きは止めれない。
否、止めたら最後。その隙をつき殺されてしまうかもしれない。
そんなオーラ。立ち振る舞いを両者が両者、共に同じことに感じ取り、そして動かざる負えないことに至ったから。

ヨシュアの手には、鳳凰剣、鳳のツルギと凰のツルギ。
真庭鳳凰の手には、この世にこの刀を折れるものは無し、そう謳う刀。絶刀『鉋』。

互いに武器に遜色はない。
やや、性能で言えば絶刀の方が軍配こそ上げるがそれでも手数で言えば双刀だ。
元々ヨシュアの専用武器と言えるそれは、異様までに手に馴染み思う存分振り回せる。

「うおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっっっ!?」

そんな集中力を途切せれない中。
少年が奇声を上げる。当然だ、知らない間に知らない男二人が武装を携え近くにいたのだから。
驚くなと言う方が無理である。

だが、この二人と言えば。
それに反応をしている暇さえなくなってしまった。
一見して楽な狩りかと油断していた節は多少なりともあったのだが、それもどこかに吹き飛ばされ。
神経を集中させる。
互いに逃げると言う案は既になく、背後を見せたが最後。
容赦無く背後から刺されるに決まっているからだ。


――――ならば、と。


「はぁああっ!」
「はぁっ!」

そうなのであれば、先手を打っておくに越したことはない。
だから彼らは、刃を振るう。

刃が交わる。

甲高い音が響き、火花が散った。
力は拮抗。多少ヨシュアの方が分が悪かったが、毎日の鍛錬とかつての彼のモノが負けると言う結果には致さない。

ついでに言えば、ヨシュアにとっての本領は力ではない。
彼の戦闘における長所は―――速さと、手数だ。

ヨシュアは空いた右手で隙だらけである鳳凰の腹を狙う。
まるで片手の力だけで振るっているとは思えない力強さと速さがそこにはあった。
が。
ここで人生の幕を再び閉ざすほど真庭鳳凰は腐っていない。
彼は、空いてる左手で――――そのツルギを受け止めた。

斬られることによって、勢いと止める。
鳳凰にとって身体の損傷、損失は――対して抵抗が無い。
彼が鳳凰と呼ばれる由縁たる忍法――「命結び」があるからだ。
白刃どりというにはあまりに不格好であったが、しかし刃の動きを止めるには至る。

再び拮抗。
だが、それも長くは続かなかった。

ヨシュアは左手にもつツルギを翻す。
今まで、押されるもんかと押し合っていた――要するに鳳凰は体重を相手側にかけていた。
故に体勢が少しばかりぶれる。
しかしそれでも、ヨシュアにとっては十分だった。

「――――せいっ! はぁっ!」

「双連撃」。
連続して繰り出される素早き連撃。
鳳凰の左手を貪りながら、巻き込みながら鳳凰の腹や胸を斬る。
容赦無く、遠慮なく。
事実、刃は――――深く斬り裂いた。
その後、少々ばかり鳳凰の身体は吹き飛んで行く。
明らかに重傷だ―――否、致命傷だ。
目で見るよりも、明瞭である。
耳で聞くよりも、鮮明である。
それでも。
それでも、鳳凰の命はまだ終わっていない!

「―――武装錬金」

鳳凰がそう呟く。
すると突如として、犬が―――機械的な姿をして犬を模す二つの鋼の塊が。
ヨシュアを襲うように飛びかかる。

「はっ」

ヨシュアの術技として、「魔眼」というものがある。
動きを鈍らせるほどの威圧、云わば眼光を一時的に放つ少々燃費の悪い技ともいえるが、そんな技がある。

ここはまだ躊躇う場面ではない。
そう、瞬間に判断したヨシュアはその技を発動する―――対象はその、二つの犬。
その目は、機械とて有効に作用する。
見事にその犬どもの動きが止まり、地に落ちてゆき。消えてゆく。

ヨシュアは、そこで一息を吐く。
そして早いところ元々の目的であるところの少年を殺そうと身体を向きを変えた。

次に、歩みを進めようと一歩踏み出したところで―――アクシデント。
ヨシュアにとって、想像外の事態が起こった。

「――――気を抜くのは………早かったようだな」

真庭鳳凰が、ヨシュアの背後に立っている。
絶刀『鉋』をヨシュアの心臓に突き立てて、胸に核鉄を添えながら。

核鉄の本領は無論ながら武装錬金だ。
その超人的な圧倒的な武力を前にしたら大抵の人間は跪く他あるまい。
しかし、こんなことも可能ではある。
本能に働きかけたら―――治癒力を向上させる。そんな能力を。
確かに微量だ。向上率は微量に過ぎない。
だがこの場合においてはそれで充分であった。

立ち上がるには、十分。


「………がはっ……」


血を吐き捨てる。
身体の奥底から湧きだしてくる血液を、口外へと。
そして、鳳凰が刀を抜いた時。

彼の心臓からは―――血が溢れ出す。
もう助からない、致命的、絶命的な出血量。
ダラダラと流れるその血液を見て、鳳凰は口角を上げる。

「まあ、せめてもの情けで、我が――――貴様の身体を頂いてやる」

勝ちを確信した。
一度、尻餅を吐いて直ぐ近くに座り込んでいる少年に一瞥をくれる。
逃げていない。
ならばそれは好都合だと。
その後、彼は勿論忘れていなかった

―――――ヨシュアに最後に止めを刺すことを。

故に刀を振りかざしす。
両手で刀を握り、上から振りかざした。
そんな時に―――やっと気付く。


「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」


渾身の叫び、それは背後から。
それは座り込んだ少年の叫びではない。


それは、ヨシュア・ブライトのものだった。
何時の間にか背後に立ち、ツルギを翳す。


「         」


もはや、心臓が機能してないせいで、まともに声が出ていない。
しかし彼は最後の大技を―――繰り出したのであった。


問答無用の割り込み技。
「断骨剣」という奥義を。


背後から袈裟懸ける。
前面から斬り上げて。


最後に頭上から――――、一閃。



「――――が、ぁ、あ? あぁぁ」

鳳凰は朽ちてゆく。
不死鳥の名を象るにしては、余りにも早すぎて、呆気ない終わりであった。
血が舞い散る。
辺り一面に、散らばる血液。
異臭が漂い始めた――――少年は思わず鼻をつむる。

咽返る吐き気。
溢れかえる不快感。

少年は咳き込む。
このいきなり起こった数刹那の出来事に戸惑いながら。

少年は咳き込む。
この唐突に繰り広げられた数瞬の物語に困惑しながら。

よく分からない間に人が存在する光景を見た。
よく分からない間に人が殺害する光景を見た。


「………うぇ………」


再度、吐き気を催す。
思い返すだけでも重労働。

そんな中に、まだ生きている。
――――否、生きているという描写は的を外している。

彼はもはや生きていないのかもしれない。

生きぞこない。

それこそ、まさに今の彼を表している。
それは皮肉にもかつての彼のように―――機械的な動き。ないしは奇怪な動き。
根性か、はたまた気力か、いやいや実力か。


血塗れ。
返り血は勿論のこと、自身の血で塗れている。
不気味な様相。
鋭き眼光は、確かに少年を突き刺す。
もうクラフトも使えないのに。いまはアーツも使えないのに。
ツルギすらロクに振るえる体力すらないのに。

けれど。
否――――だから。


「………エ、ス……テ…………」


彼はそのまま沈んでいった。
つまり―――――死んだ。
ミイラ取りがミイラになり、標的であるはずであった少年を一人残して。


二つの命が、儚く散った。


途端。
少年の意識が闇へと消える。



【一日目/深夜/E-6 森】

【真庭鳳凰@刀語:OUT】
[備考]支給品は死体の近くに放置されています

【ヨシュア・ブライト@空の軌跡:OUT】
[備考]支給品は死体の近くに放置されています




 ◆



とはいいつつも、意識が闇に消えたのはほんの一瞬である。
そう、一瞬。
紛れもなく一秒に満たない僅かな時間。

しかしそれでありながら、景色が一変していた。


「――――――え?」


【稲葉】は声を発する。
【稲葉】は自身の姿を確かめる。
それは間違いなく自分の知り合い、【稲葉】のもの。
自分の筋肉隆々(偽りあり)な姿とはまるで違う。

「あれ? オレ………」

少年―――青木義文は、そう呟く。
そして、気付く。


「――――――あ、ヤバ」


そして、気付く。
自身の身体の方が、とんでもなく素晴らしいぐらい誤解フラグが立ちそうなことに。

きっとあまり覚えていないが【青木】の姿は返り血も含み血塗れだろう。
傍らには、きっと同じく自分の支給品であった、返り血に濡れている刀があるだろう。
傍らには、血に濡れる二つの死体の姿があるだろう。


……………。


無論のこと、彼は被害者だ。
変わりない。
その事実自体は変わりない。


――――ただ。


――――それを信じれる状況ではないだろう。



「さ、最悪だ…………」


【稲葉】は声を漏らす。
その囁きを聞いている者は、まだ誰もいない。

最低であり、最悪であり、最下の予想。


地獄の様な彼のバトルロワイアルは――――まだ始まったばかりである。




【一日目/深夜/B-Ⅰ 平地】
【青木義文@ココロコネクト -ヒトランダム-】
[状態]【稲葉】、健康、精神疲労(中)
[装備]
[道具]KS×1、RS×(1~3)
[思考]
基本:………どうしよう
1:稲葉については保留
[備考]
※本編終了後からの参戦です
※入れ替わりについては本編とほとんど同様です
※稲葉姫子と入れ替わっている時間は不明です



ぼくのわたしの道化学 投下順 とある世界の交錯存在〈パラノイア〉
ココロコネクト-シトランダム- 青木義文
GAME START 真庭鳳凰 GAME OVER
GAME START ヨシュア・ブライト GAME OVER

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最終更新:2011年12月03日 22:15
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