桐山唯は、最近悩み事の種が増えた。
しかもその悩みの種は尋常じゃないまでに
大きな花を咲かせそうな、それはそれは爆薬の様な種だった。
「…………」
『人格入れ替わり』の存在。
……正確に言うとそれだけでは無かったりするのだが。
それでも一先ずこの『人格入れ替わり』について語らせてもらおう。
<ふうせんかずら>による企みその一。
『人格入れ替わり』。
人物は決まった人物内でアトランダム。
時間はあらゆる場面でアトランダム。
場所もあねまく場合でアトランダム。
ただ、それだけ。
それだけにして出る悲劇、出た被害は膨大である。
「…………」
桐山唯という少女の場合にしたって、その魔の手は逃れきることは不可能だった。
彼女の場合の被害は、「実を言うと男性恐怖症」ということの暴露だった。
まぁ、それが問題というより―――――――いや、それも十二分問題なのだが、
そういった問題がばらされたという事実が以外と心に来るものがある。
「…………」
それによって、何が変わったかというと、やはり自分なのだが。
自分だけが変わるだけなのに、この罪悪感にも似たような気持ちは収まらない。
それでも、勝手に止まっていたのだが――――――。
しかし本来ならば、彼女一人の力ならば、これで収まることはなかった。
周りが、周りだった。
私立山星高校、文化研究部。略して文研部。
少し変わった人たちが。
少しずれている人たちが集う部活。
他称「自己満足野郎」、八重樫太一。
人間不信クールビューティー、稲葉姫子。
偽りの人格所有者、永瀬伊織。
悩めるメルヘンパワーファイター、桐山唯。
長身体格チャラ男系男子、青木義文と顧問の後藤龍善で結成する部活。
結局、彼女は周りに恵まれていた。
………勿論のこと。二次災害も起こってしまったわけだが、
そのことは彼女の問題とは、また別のお話。
時は少し流れ、『人格入れ替わり』は終了した。
そうして、日常は再び始動された。
ほんの僅かに、歯車の形は変形させられたが、廻り始めた。
同時に、非日常の到来も刻一刻と迫っていたが。
■□■□■
桐山が目を覚ましたのであれば、そこに映っていたのは、漆黒の世界。
というよりも目隠しがされていて視界が覆われていただけなのだが。
「起きて………くれたかな」
それは、唐突だった。
暗い視界の中だけで、声だけが嫌に体中に巡った。
不快な思いしか残して行かないのにもかかわらず。
ざわついた雑音は一切合切消え去り、無駄に静かな空間に無意味に響く女性の声。
桐山の不安な気持ちを増幅させるには十分だった。
「ご、ごめんね、皆……!でしゃばった私を許してぇ………。な、何でもするかさ、ほら服も脱ぐからさ」
どういった形で捕らえたところで、理解に苦しみそうなこんな発言を聞いて
桐山がまず思ったことは―――。
(<ふうせんかずら>―――――じゃなさそうね)
様々な思いも当たり前だが交錯はしている。
ただ、それでもどこをとっても、この思いが一本の筋となっていた。
そう確信したところで、問題の解決に至っていないことにすぐさま気付いた訳だが。
(じゃあ、今度は何よ――――!?)
そうして知らされた、今度の企みの真相。
まるで桐山は夢でも見てる気分に陥った。
まさに、夢見心地。
ただ、そんな悪夢の時間とて無限ではない。
一人の少年、幅野遊馬が口を開く。
そうして漏れ出したのは、最悪の開幕の予感。
「っつーわけで転送するぜ。ルールはメンドいから説明用紙でも読んでろ。
何も俺たちは束縛したくてあなたたちを島に送る訳ではないので。俺たちは
殺し合いを共生させるつもりもないので。ではいい生活を」
一人の少女、若葉美咲が口を開く。
そうして漏れ出したのは、場の雰囲気の崩壊。
「時々連絡してよ………。私をいじめないで………」
そして、空気が漏れだした。
睡魔と意識が混濁する中、何やら不思議な感覚が桐山の身体を襲う。
転送が始まった。
■□■□■
「…………はーい………。どうも……。起きてください………、と」
桐山は不愉快な声にて目が覚める。
声はついさっき知った場ばかりの女の声で、声の調子は、
もう二度と聞くことはあるまいなんて思ったものと酷似する。
―――――つまるところ、声は「若葉美咲」で、調子は「<ふうせんかずら>」。
「……ていうか時間がないんですから………。早く目を…………覚ましてください」
そして初めて気づいた。
知らぬ間には縛られていた手足に、巻かれていた目隠しが同じく知らぬ間に外れていたことに。
それによって、閉じられた視界からほんの僅かに光が滲んでいるのも、よく分かった。
「……………あたしは一体………」
そんな事を呟きながら、ようやく桐山は重たかった瞼を開く。
視界に映ったのは、5人の人間。
4人は良く知っている人物。
八重樫太一。
稲葉姫子。
永瀬伊織。
青木義文。
彼らは既に身を起こし、物音のした方―――つまるところ桐山の起きたほうに一瞥し、
仄かに笑みを浮かべるとすぐさま前にいた少女の方に振り返る。
それぞれがそれぞれに様々な表現で剣呑を浮かべ、不穏な雰囲気が、この空間を満たさせる。
そんな視線を浴びているのは、若葉美咲ならぬ、<ふうせんかずら>がそこにいた。
「………そんな視線浴びせないでくださいよ………。………別に僕は皆さまを食って取ろうだなんて半分ぐらいしか思ってないですよ…………」
元から掛けていたらしい賢そうな眼鏡の奥に潜む瞳が僅かばかりに開く。
まるでライトノベルの様なピンク色の柔らかな髪をボサボサと掻き荒しながら、面倒臭そうに<ふうせんかずら>は言う。
懐かしみたくもない懐古感。
そんな感覚が桐山を襲い掛ける。
「………お前、何の真似だ。殺し合い―――――だなんて」
文研部副部長、稲葉が目の前にある全くもって謎の存在、<ふうせんかずら>に問う。
その問いはやはり無意味で、<ふうせんかずら>の発言が曲がったり止まったりはしない。
「………何の真似って……、余計な真似としか……言えませんが。………もしくは<ふうせんかずら>の真似ですかね………」
「アンタ、何の冗談だ。まさかわたしの時の様に全てが嘘――――なんてありがた迷惑な展開を用意してるんじゃなないでしょうね。
そりゃ、それは助かるけどさ。―――――――今度ばかりは冗談でした。で終わらす気はわたしは無いわよ」
いつかの冷たい目に、凍える口調。
そんな澄み亘ったはっきりとした声は、味方であるはずの桐山ですら、ブルリとさせる。
生憎ならば、敵である<ふうせんかずら>には無意味であったが。
「…………あぁ、そうでした………。………また皆さん面白そうなことに巻き込まれていますねぇ………。
……どうしたらそんな波乱万丈な人生を送れるのでしょう………? 青木さんはどう思いますか……?」
と、そんな突然の指名に。
「―――――へっ!? お、オレ!?」
「………んぅ。そういえばあなたに聞いても時間の無駄そうですねぇ…………。話を戻しましょう」
と、うろたえる青木であったが、そんな様子を察したのか<ふうせんかずら>は、話を戻して先に進めた。
こんなときでもこういった扱いを受ける青木は―――――哀れであった。
「…………でぇ、………なんでしたっけ……? …………」
「何で殺し合いなんて真似をさせるんだ、の答えだ」
呆れたように八重樫はそう促す。
そんな反応で納得いったのか、その問いの答えを示していく。
「…………あぁ……。………そういえばそんな話をしてましたねぇ………。ではそれでいきますねぇ……」
示していったのはいいが、そこから漏れだす言葉は、
5人の予想をいい意味でも、悪い意味でも裏切ったものだった。
「……つまり言いますと………。これは僕の企みじゃありません………。
……僕は……何て言うでしょう? この4人…………じゃないですねぇ。………この2人にただ便乗しただけです……」
「意味がわかんねぇ。じゃあお前は何でここにいるんだ?」
「………ですから便乗ですよ……。この殺し合い……でしたっけ? ………その最中『人格入れ替わり』をもう一回します………」
何ともなしに、呟いたその言葉は、5人を痺れさせるのには十分十二分二十分だった。
結果的に、6人の間で一時ばかり、時間が止まった。
だが、本当に一時だけで、<ふうせんかずら>はそれでも面倒臭そうに喋り続ける。
「………おや、どうしましたか皆さん…………。……まぁ何だっていいんですが………」
「「…………………」」
文研部一行は沈黙以外の選択はない。
あの稲葉や、永瀬でさえも、沈黙を保っていた。
―――――桐山とて………。
いや、桐山だからか、その恐怖に打ちひしがれていた。
「……で、ルールはこの前と同様です………。変えるのもめんどくさいですし………」
「「…………………」」
「おや、………聡明な永瀬さんや稲葉さんならツッコミが来るかと思ったのですが………。良いですけど別に………」
それでも名指しされた二人は動かない。
震えているからなのか、それとも話し合うつもりすらなかったのか。
桐山には分からなかったが、それでも二人は動かない。
「「…………………」」
「………で、今回はそれだけじゃないんですよ。………人が死ぬんですよね………。……残念ながらあなた達とて例外ではありません……」
「「――――――――ッ!!」」
桐山にでも、分かる。
全員の、息を飲む音が、耳に響いた。
桐山だって、大きく息をのまざるを得なかった。
仲間が――――――死ぬかもしれないって言うのに、平然でいられる方が、おかしい。
「………で、あなた達が死ぬ時だって高確率で訪れますよね。そう言うルールですし………」
「………最後の一人になったら、島から出れる………ッ!」
代表して、八重樫がそのルールを答える。
―――――そう、最後の一人なのだ。
例えどんなにどんなに頑張ったところで、複数人で脱出することは、ルール上あり得ない。
「………太一、もう一つ忘れている。《願い》……だって重要なワードだ」
そして、八重樫に補足するように、稲葉が付けたす。
そう、そちらだって、十分に危惧しなければいけない単語だ。
主催は言った。
基本、何でも叶えてやる―――――と。
それが、意味するのは………やはり、血祭りに直結するであろう可能性。
「………その辺りは何だっていいんですよ………。……で、死んだ後の話ですが……。
これは先日の永瀬さんを巡る件と似たような感じでやることにします………。………死んだ時に肉体と一緒にそのとき這入っていた意識を殺します……」
「……また冗談とか言ったんじゃねぇよなぁ!?」
「……………いやぁ、これは案外本気ですよぉ…………。……ついでにいうとその人はもう『人格入れ替わり』ができません………。当たり前ですね……」
これを聞いた今。
八重樫は何を思っているのだろう。
稲葉は何を思っているのだろう。
永瀬は何を思っているのだろう。
青木は何を思っているのだろう。
桐山には、分からない。
でも、自分自身の気持ちは悟れた。
(もう…………いやよ………っ!)
いつかの様に、反射的にも身体は動かない。
ただただ小動物のように震えている。
桐山は、誰よりも女の子らしい。
――――ことを目指すだけはあり、その真実は、実に脆い。
「…………まぁ、これ以上は面倒ですしまた皆さんで頑張ってください…………」
「お、おいッ! 待てよ<ふうせんかずら>」
青木が吠えるが、それも無駄。
そうして――――。
「…………では、またいつか………。………まぁ逢う気もないんですが………。………雰囲気的で言っちゃいました………。
………言ってみたかったんですよねぇ…………。じゃあご武運を………。……………て、これも違いますね………」
沈黙は金、雄弁は銀とはいうものの、
こいつの、<ふうせんかずら>の前では、そんな格言は通用しない。
そんな一方的な情報提供は終わった……。
ボブカットにも似たようなピンク頭を揺らしながら、<ふうせんかずら>は右手を挙げた。
次の瞬間には、そこには二人の人間しかいなかった。
【八重樫太一@ココロコネクト -ヒトランダム-】
【稲葉姫子@ココロコネクト -ヒトランダム-】
【永瀬伊織@ココロコネクト -ヒトランダム-】
【青木義文@ココロコネクト -ヒトランダム-】
【計画再開】
■
…………ここはどこよ。
桐山は目が覚めた直後、そんな事を呟く。
眼が覚めると、そこは森の中だった。
森。
森。
森。
どこを見渡せど、森の中で、森の一部があり、森の全てがあった。
鬱葱と並ぶ木々は、風が吹けば演奏を始め、所々で葉が散っていく。
そんな暗き森の中、桐山は目を覚ました。
そういった状況を確認したのち、確認するは自身の身体だ。
―――――身体はまだ、あたしのままだ。
よかった。
………桐山は安堵する。
しかし、裏を返せば、もはや<ふうせんかずら>の言葉を信じている。
としか言い変えようがなかった。
だけど――――――。
桐山は直ぐに悟る。
《人格入れ替わり》はいつどこでどんな状況だって。
前ぶりなく行われることに。
だから、安心など無意味なことに。
………つまり意味するは。
彼女の中には、二重の絶望が協奏曲を奏でていることだ。
絶望にくれる小柄な少女。
そんな少女の前に、一人の少年がそれこそ前ぶりもなく現れてきた。
それは、希望。
「―――――あぁ、やっと人を見つけた。初めまして……だよね?
………ボクの名前は苗木誠だ。コロシアイには乗ってないよ、―――――キミの名前は、何かな?」
それは、超高校級の希望。
【一日目/深夜/C-8 森】
【桐山唯@ココロコネクト -ヒトランダム-】
[状態]【桐山】、健康、精神疲労(中)
[装備]
[道具]KS×1、RS(1~3)
[思考]
基本:コロシアイには乗らない
1:………どうしよう
2:目の前の男の子と情報交換
[備考]
※本編終了後から参戦です
※入れ替わりについては本編とほとんど同様です
※入れ替わりについては今は言う気はありません
【苗木誠@ダンガンロンパ】
[状態]健康
[装備]
[道具]KS×1、RS(1~3)
[思考]
基本:コロシアイには乗らない
1:目の前の少女と情報交換
2:知り合いと合流したい―――でも?
[備考]
※本編終了後からです
◇
「………おい! 美咲! 大丈夫かっ!」
幅野遊馬は、若葉美咲の肩を掴み、
ガシガシと揺らす。
「――――――っん! んんぅぅぅ!」
そんな熱烈な呼び声に応える様に、若葉美咲は眼を覚ます。
眼鏡は無様にズレ、口元には涎後が汚く残っていた。
その美咲の様子を見て、遊馬は。
「おい! いったい何があったんだ! 何故こんなとこで寝ていた!」
普段だったら、きつく言いつけるだろう。
それも常人であれば、立ち直れないほどの、苦痛を与えながら。
――――しかし、場合が場合であったのだから、いた仕方ない。
「ん~、何って言われてもねぇ(「てか、いつまで触れてんだ。変態セクハラ死ねばいいのに」)]
本音もきっちり漏らしづつ、目も摺りながら、
眠たそうに答える。
しかしこれは、当たり前の話で、今までは、<ふうせんかずら>に囚われていたのだから。
いくらこのずれている少女でも、超能力を使える彼女でも、記憶に残すことは不可能だ。
「てか遊馬こそ何してんのぉ? 暇だったら私の仕事つだってよねぇ(「このドーテーフノー役立たず野郎が」)」
「―――――――――ぁあ!?」
結果、この一言から始まった口論の所為で、
二人の中でこの問題は有耶無耶になってしまったのだが、
そんな事実があったのには変わりない。
それでもなお、
静かにゲームは進んでいく。
【幅野遊馬@オリキャラ】
[思考]:ゲーム遂行
【若葉美咲@オリキャラ】
[思考]:ゲーム遂行
◆
<ふうせんかずら>。
彼は、この計画を見守る。
とある5人に標的を定めて、静かに、ダルそうに、面倒臭そうに。
ただ、傍観する。
覇気と云う覇気はどぶに捨てたようなそんな態度で、
ただ、閲覧する。
まるで神様の如く。
まるで悪魔の如く。
ただただ、計画を見守り続ける
【<ふうせんかずら>@ココロコネクト -ヒトランダム-】
[思考]:………傍観する…………
最終更新:2012年01月21日 00:15