急に、意識が元に戻る。スッ、と半身を起こして、辺りの様子を伺う……。
どうやら、どこかの屋上らしい。地面は汚れていて、所々に草が生えて、柵は錆だらけだ。
おそらく、廃墟かそれに近い物なのだろう。あまり体が汚れるのも好きではないので、すぐに立ち上がる。
体を軽くはたいて、自分の今の状況を整理する。
(
殺し合いと言う事は……合法的に人を殺れると言う事だな。ありがたい)
人を殺すと言う事は、すなわち警察に追われることにも繋がる。捕まってしまっては元も子も無い。
しかし、ここにはそれがない。つまり、何の気兼ねも無く人を殺めることができると言う訳だ。
そうなるとまず必要なのが、武器になる物だ。素手でも人を殺せない訳ではないが、反撃される等のリスクがある。
できるだけリスクは押さえなければ、話にならない。その為に欲しい武器は、銃だ。これなら遠方から攻撃出来る。
上手く使えばこちらの存在を知られる前に殺害できるし、反撃のリスクも高くない。
(そう都合よく、銃が手に入ればいいが………………・どうやら、俺は結構ツイてるらしいな)
自分に配られたであろうバッグから取り出したのは……自動小銃と靴べら。小銃はともかく、靴べらとは。
受け狙いなのか、大真面目に「武器」として入れたのか。受け狙いなら、正直スベっていると言わざるを得ない。
……それはともかく、この銃にはスコープがついているようだ。普通に撃つことも、狙撃銃代わりにも使える。
「いい物を手に入れたな。しかし……この暗さでは、狙撃はかなり難しいな」
時間までは分からないが、辺りの暗さから真夜中だと言う事は分かる。
幸いにも、月明かりのお陰で周りや手元くらいならぼんやりと見えるくらいの明るさはある。
それでも、遠くはよく見えないので、狙撃はかなり難しい事には変わりがない。
(靴べらは捨てていくか。どの道、役に立ちそうもないしな)
靴べらを柵から放り投げ、一息付く。上着の内ポケットを探り、煙草を取り出し火を点ける。
スーッと一気に煙草を吸って、盛大に煙を吐き出す。やはり、煙草はいいものだ。気分を落ち着かせてくれる。
……別に、感情が高ぶっていたわけではないが。そんなことより、これからの事を決めておかなければ。
まず、どこに行けば参加者が集まるか。しかし、ただ単に集まる場所を選んでも意味が無い。
この殺し合いに反対し、結託してあの男を討とうと言う人間も出てくるかもしれない。
そんな奴からすれば、俺は邪魔者以外の何者でも無い。そんな所に、わざわざ行くこともないだろう。
自身が殺し合いに乗っていると分かれば、十中八九集中攻撃されるだろう。そうなったら一巻の終わりだ。
ここに来ている全員が、全て手練れとは限らない。だが、数の暴力と言う言葉があるように、数が集まると厄介だ。
(銃が何丁あっても、一度に扱えるのはせいぜい2丁まで。その程度の数でできることなど、たかが知れている。
しかも、銃には当然だが反動がある。片手では、反動を十分に軽減できずに弾道がブレる……。
それから考えられることは……命中率の低下。どんなに強くても、当たらなければ意味が無い)
しかしそれはあくまで人の集まる所に自分が向かった場合だ。
こんな事態に絶対巻き込まれたくないなら、人の集まらない場所に行けばいい。しかし、それでは駄目だ。
なぜなら、人が来ない場所にいたら、参加者を襲うことが出来ないからだ(これは当然のことだが)。
……この問題を、どう解決すべきか。
(……イマイチ、名案が浮かばねえ……。ちっと思考を切り替えるために、持ち物を検めてみるか)
武器は今更チェックする必要もない。となると、バッグに入っている小物を調べることになる。
あの男の言葉に嘘がなければ、バッグの中には携帯電話と、メモ&筆記用具、懐中電灯があることになる。
実際、確認してみると、確かに入っていた。
(考えてみれば、持ち物について嘘をつくメリットが思い付かねえな……)
基本的なルールについてなら、嘘をつくメリットが少しは思いつく。
例えば、魅力的な条件を口先だけで提示し、それで戦闘意欲を高める事を狙うことも考えられる。
ルールをより厳しくして、嫌でも殺し合わなければならないように仕向ける事だって可能だ。
なにせ、こちらにはそのルールの真偽を確かめる術はないのだ。最高でも、疑惑を持ち、独自に分析するしかできない。
(……おおっと、思考がそれたな。持ち物を検めるつもりだったのに)
気を取り直して、携帯電話を手に取る。
形状は、最近流行っているスマホとか言うタイプのようだ。しかし、アイコンは4つしかない。
それぞれ、「ルールブック」・「マップビュアー」・「名簿リスト」、そして「通話」。
……通話?
(おいおい、電話なんかかけられるようにしてていいのか?こんなのがあったら、警察に通報されるぞ)
「殺し合いに巻き込まれた」と言って、警察が素直に信用するかどうかは、とりあえず置いておいて。
通話機能があれば、誰かが通報すると言うのは普通に思いつくはずなのに……。
もしかして、あの男はかなり愚かなのではないか?しかし、これほどの事をするには頭が必要だ。
参加者を、怪しまれないように集める。会場を用意する。武器を、お縄にかからないように集める。
……これらの事を、上手くやるにはかなり頭の回転が良くないと、世間に露見してしまうだろう。
(頭が良いのか悪いのか……よく分かんねえな)
しかし、これも結局は自分の想像に過ぎない。
この考えの確証を得られるような物が無い今、これらの「想像」を「真実」に押し上げる事はできない。
結局、今現在出来る事は自分の持ち物を検める事しかない。
(携帯見てみるか。ルールは今更確認する必要もないな。なら次は、地図の確認とでも行くか)
「マップビュアー」のアイコンをタッチすると、瞬時に地図が表示される。
とりあえず、地図と周りを見比べてここがどこだか考えてみようとするものの……イマイチよく分からない。
何しろ、辺りは暗くて遠くが良く見えないのだ、辺りを見回そうにも見えないのでは意味が無い。
(とりあえず、下に降りてここらを調べてみるか……そうすりゃ何か分かるかもしんねえし)
◇
「ここは一体どこなんだろうか……?」
未だはっきりしない意識。まるで、熟睡していた時に無理矢理叩き起こされた時のような。
そんな状態から抜け出すために、軽く頬をはたく……。少しは、すっきりした。
すっきりすると共に、再度ここがどこか、と言う疑問が首を擡げてきた。実際、ここはどこなんだろうか?
見た所、アパートのような間取りの部屋の中みたいだが……かなり古びていて、「廃屋」と言うのがふさわしいくらいだ。
(ゴミ屋敷程じゃないけれど、かなり汚いなあ……)
仕事柄、汚いのには結構慣れてはいるものの、それでも気分のいい物ではない。
……しかし、一体なぜこんな所に自分はいるのだろうか?さっきまで、家でスレにレスしようとしていたのに。
文を打ってる途中で、何だか意識が遠のいて行って、キーボードに突っ伏してしまったところまでは、覚えている。
その後は、変な場所で椅子に座らされていて、変な男の言っていることを、途中までは冗談半分で聞いていた。
……あの爆発が、起こるまでは。血生臭さと、焦げ臭さが、一気に自分に対して現実を突き付けた。
(殺し合い……こんな恐ろしい事を平然と行うなんて、間違ってる)
命の重みと言うのは、どんな物とも比べることはできない。
自分の職業が職業なだけに、人の死と言う物がどれだけ重くて辛いことかが、身に染みて分かっている。
だから、殺し合いなんて物を許すことなんか、絶対にできないし、する気もない。
(でも……一体どうすればいいんだろう……)
何か、この殺し合いを中止するために役に立つ物が入っていないだろうか?
そう思い、バッグの中を探ってみるも、出てくるのはメモや筆記用具、懐中電灯などの小物くらい。
他にも、よく分からない機械にブラシ、それに灰色のキノコが3本入っていた。
……この機械は一体何だろうか?ボタンがついておらず、大きな画面が表面を覆っている。
また、画面にはよく分からない絵が4つ表示されている。一体、どうやって操作するのだろうか……?
(うーん……今の所何も分からないな……これも、中止させるのには役に立ちそうもないし……)
試しにいじってみようにも、下手に操作して大変なことになったら、目も当てられない。
他の物も少し調べてみたものの、どれも現時点では殺し合いを中止させるのに役に立ちそうな物は無かった。
(……ここから、出てみようかな?)
この部屋に籠っていれば、つかの間の安全は保障されるかもしれない。だが、それでいいのだろうか?
こうしている内に、誰かが殺されてしまっては……。しかし、外を出歩くと言うのはリスクも伴う。
全員が全員、自分の様に殺し合いに反発するとは限らないかもしれないし……。
それに、今自分は身を守れるような物、つまり武器を持っていない。所謂、丸腰だ。
一応、バッグに入っているブラシなら、武器の代わりになるかもしれない。そこそこ長さもあるし。
だが、これはあくまで掃除道具。もともと武器ではないので、あまり期待出来そうにない。
(それでも、無いよりはまだいいけれど……)
【一日目・深夜/C-3:夜見島金鉱社宅:イ棟304号室】
【おそうじマン@オカルト】
[状態]:健康
[装備]:デッキブラシ@SIREN2
[所持品]:支給品一式、スパーッツァ@MGS3
[思考・行動]
基本:この殺し合いを、なんとしてでも中止する
1:どうしよう……
「……一応、外側を軽く見て回ってみた、が……なんだこりゃ?」
さっきまでいた屋上、これまで通ってきた1人が通るだけで狭くなる通路、途中覗いた部屋。
錆だらけのフェンス、草だらけの道。地面の整備もされていない、まさに筋金入りのボロさ。
見てみた限り、数十年は何の手入れもせずに放置されていたとしか思えない古さだ。
一体どうやってこんな物を……。まさか、本当に数十年も放置していた訳でもないだろうし。
考えれば考える程、謎が増えて行く。答えも無いのに、ただただ謎は増えて行くばかり。
(ま、おいおい考えりゃいいか。今のとこ、ここにはもう用がねえしどっか行くか)
……どこに行くか、結局決めていない。
地図によると、このアパートには4つ他の場所に繋がる道があるようだ。
1つ目は、南西に続く道。2つ目は、南東に続く道。3つ目は北に続く道。最後に、北西に続く道だ。
最後の道は、少し高い位置に存在している。大体、自分と同じくらいの高さだと思われるが……。
生憎、そこに登るために取り付けられていたであろう鉄製の階段が、壊れているのだ。
最初は誰かに壊されたのかと思ったが、よく見てみると老朽化して壊れた物らしく、結局大したことはなかった。
(南西に行けば、橋と街が。南東に行けば、川にぶつかる。北に行けば、森と工場が……)
それに、わざわざ行く気も無いが北西に行けば海に出るはずだ。
しかし、海に行った所で特に意味は無いだろう。
(……決めた。南西行ってみるか)
街なら、それなりに人が通るかもしれない。それに、もし腹が減った時にもすぐに食料を確保できるだろう。
なにせ、ルールに「食料も現地調達」とあるのだから、食べ物が置いてあるような施設があってもおかしくない。
コンビニなり、スーパーなり、レストランなり……考えてみると、案外多いものだ。
「……行くか」
【一日目・深夜/C-3】
【篠原惇平@
オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:64式小銃(狙撃仕様)(20/20)@SIREN2
[所持品]:支給品一式、自前の煙草、マガジン×3
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る
1:とりあえず、街に行ってみるか
2:いろいろ気になることが多すぎる……がおいおい考えて行くことにするか
※靴べら@SIREN2が、C-3のロ棟付近に落ちています
≪参加者紹介≫
【名前】 篠原惇平
【性別/年齢/職業】 男/25歳/会社員
【特徴】 身長・体重ともに平均的で、特に悪い部分もない普通の男。
【備考】 普通の会社勤めの好青年……かと思いきや、心の奥に、殺人願望を抱えている。
≪支給品紹介≫
【デッキブラシ@SIREN2】
おそうじマンに支給。
攻撃モーションは早いものの、攻撃力が全然無いので使えない。
敵にわざと拾わせると、攻略が楽になるかも……。
【スパーッツァ@MGS3】
同じくおそうじマンに支給。
食べると、眠くなってしまってその場で眠ってしまう。場所によってはゲームオーバーになることも。
【64式小銃(狙撃仕様)@SIREN2】
篠原惇平に支給。
64式小銃に、狙撃用のスコープを取り付けた特別仕様。三沢三佐御用達。
普通の64式小銃より狙撃がしやすくなり、またほんの少し攻撃力が高い。
【靴べら@SIREN2】
篠原惇平に支給……されたが、投げ捨てられてしまった。
武器として手に入るが、これを使うくらいなら素手で突き飛ばした方がいいかもしれない……。
最終更新:2012年08月26日 21:33