俺の名前は、伊達坂浩二だ。『太陽にほえろ』っていう刑事ドラマに憧れて、警官になった。
まぁ、今考えれば、そのドラマの刑事はほとんど殉職するわけだが。
それからちょっとして、加寿子と運命的な出会いによって、結婚して、それから娘と息子が出来たわけだ。
ちょうど俺も昇進して、刑事になって万々歳。息子も娘も健やかに育って行った。
数年前、長谷川雫という異常犯罪者によって、娘が聞くに堪えない暴行を受けたあと殺された。
妻も、精神が病んで、死んだ。家族を二人も殺されたんだ、二人もな。
俺は復讐するためだけに、仕事人間になっていた。残された、息子のことも何も考えずにな。
息子である拳は荒れた。髪を染色し、いつも喧嘩ばかりして、少年課にお世話になっている。
俺は、何をしていたんだ?
殺されて、ようやく分かったんだ。馬鹿な父親だ。
腹にでっかい穴を開けられてようやく分かったんだぜ。
走馬灯のように、家族と過ごした時間が思い出せた。最期の一時って奴さ。
後悔したさ。後悔しか残らなかったさ。
だが、俺は生きていた。平沢に殺される催眠にかかっていたらしい。
よく、分からない。最初のうちは、動揺していたが、異常性に気づいて、落ち着いた。
ひとまずはな。
息子である拳が
殺し合いに巻き込まれている。
ああ、名簿って奴に名前が載っていた。珍しい名前だ。同姓同名だとは言い切れない。
もう、家族は失いたくない。復讐だけを生きがいに生きていきたくは無い。
復讐は、何の意味を持たなかった。長谷川雫は、精神喪失で無罪となったからだ。
泣き叫んださ。神を恨んださ。だが、決定は覆らない。
ひとまず、思い出話と、俺の意思表明はここまでにしよう。
仮定と、結論を省いて説明しよう。
目の前には、片手にナイフを持った外国人の少女が立っている。
ぶかぶかで返り血の付着したシャツを着用しており、恐らく相当なことが起きたのだろう。
そのためか、叫び声を発しながら、飛びついてきた。怪我はしなかったが、まだ暴走している。
相手は子供だ。殺したくは無いのが、俺の追加の意思表明だ。
「だから、お嬢ちゃん。そんな危ないものは下ろすんだ。とりあえず落ち着こう。何があったか説明してくれないか?」
「知るかァァァァ!! 変な煙を浴びたら、いきなりガキになってたんだよ!!」
口が悪く、異常な事を言う。白髪のような銀髪が目立つ。発狂したように襲い掛かる。
この三転から結論を出すと、恐らく、麻薬中毒者。こんな幼女が麻薬中毒者というのは海外なら有り得るかも知れない。
もしくは、洗脳された少年兵。だが、ヨーロッパ諸国にそんな国があったか?
この御時世、悲惨な目にあってきた少年少女が社会問題となっている。
この子も、その被害者の一人だろう。
――――だからと言って、殺しは犯罪だ。
この返り血と、ナイフからすると、三人以上は殺害しているはず。
恐らく、彼女の精神状態は尋常ではないはずだ。つまり、思ったより危険なのかもしれない。
「俺は、伊達坂浩二だ。お嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?」
「名前なんてねェよ……強いて言うなら――――ジャック・ザ・リッパーだ」
誰でも知っている名前。切り裂きジャックのことだ。
コードネームにするなら、そのコードネームの人物は危険だということはすぐに分かる。
持っているのはナイフ。コイツで、大人三人を殺したんだ。よほどの腕前と見える。
危険だ。これ以上の接触は危険。
子供を殺したくないが、仕方ない。もう少し聞いてから、殺す。
仮に、もしも、息子と接触すれば、アイツに勝ち目は無い。確実に殺されるだろう。
「コードネームではなく、本名で聞いている」
「ああ? 名前がねェんだ!! イカれたマスコミがつけた名前くらいしかねェんだよォォ!!!」
「ロンドンで、娼婦四人を殺したあの殺人犯か?」
「ああ? 正確に言えば、軍医と憲兵とアホ共合わせて、12人だァァ!! ひゃはハハハァァァァァ!!!」
少なくともロンドンではない。イギリスに友人がいるが、そんな事件が起きるほど荒れていない。
デモがあったが、軍医も憲兵も死んではいない。そもそも、12人も死んだなら、ニュースに取り上げられるはず。
生憎ニュースに取り上げられていないということは、事故か事件か疑われている。
つまり、それは、暗殺ということを意味しているのだ。
中東や南米、アフリカなどの地域では、憲兵制度が採用されていないことから、欧米諸国の人間。
その国で虐殺を繰り返していたテロリスト。俗に言う、少年兵とか言う奴だ。
麻薬などで、餌付けされて、嫌なほど殺しをさせられてきたのだろう。
今の世界は荒んでいると思うと、虚しさが唐突にこみ上げてきた。
銃口を少女に向ける。殺す。仕方が無い。彼女もまた人を殺しているわけだ。
罪は償わないといけないが、これ以上の被害者を出すわけにはいけない。
少女は、呆然と立ち尽くすわけでもない。恐怖に顔を歪めて逃げるわけでもない。
奇妙な笑い声を上げながら近づいてくる。確実に殺すつもりだ。
だが――――
引き金を引けない。撃ったことがあるのに。
引き金を引けない。子供に対して撃ったことは無い。
引き金が引けない。撃たなくてはならない。
引き金を引けない。引かなければ、死ぬ。
引き金が引けない。引けば少女が死ぬ。
そもそも、引き金を引く必要があるのだろうか?
ここまで考えてきたことが、全て思い込みだったら。
もしかしたら、ふざけているだけかも知れない。
息子に会わす顔が無い。天国にいる、妻と娘にも。
殺すつもりが無い人を殺した、その返り血なのではないか?
ならば、彼女も被害者の一人だ。
助けれる余地があるのかもしれない。
「ひゃはハハハァァァァ!!! 詰んだなァァ!!!!」
そう叫ぶと、彼女は、ナイフを振り下ろす
ことなく、視界から消えた。
◇
瞬間移動か? いや、そんなこと出来る人間はいない。生憎、超能力は信じていない。
十二人も殺した殺人鬼。どんな、身体能力かは不明。
殺さずに消えるなど、何かが絶対にあるはずだろう。チャンスを窺っている。
相手は、殺人鬼。長谷川と同じ分類の犯罪者だ。
そうだ、ここで死ねば、奴に復讐が出来ない。それこそ、天国の妻と娘に顔向けできない。
探し出して、射殺する。それだけだ。
銃口を向けると、今度こそ支給品のS&W M39の引き金を引く。
迷えば死ぬ。ここでは真っ先に殺される。
「痛ェ!! クソっ、自分の服の袖で転んじまったか……」
って、あれ?
声が、何故か、足元から聞こえる。聞き間違いではない。
ぶかぶかなシャツが、俺の命を助けてくれたようだ。そして、少女は、ナイフを捨てて、膝を擦っている。
本当に、コイツが殺人鬼なのかと自分の脳味噌を疑っていた。
迷えば死ぬ、と先ほど思い知ったはずだろ。撃てなかったら、俺が死ぬ。
同時に、未成年者を撃つことに、恐怖を感じている。
何を躊躇う。長谷川を死刑に出来なかった時点で、俺は家族に顔向けできない。
何を躊躇う。息子を助けられずに死ねば、それこそ最悪の父親だ。
何を躊躇う。この少女が、未来ある若者に分類されるわけが無い。
何を躊躇う。殺されるかもしれないんだぞ。
何を躊躇う。コイツは、人を殺しているんだ。
何を戸惑う。撃つ必要なんてどこにある。
何を戸惑う。コイツが、これ以上人を殺せるような逸材には見えない。
何を戸惑う。人は平等であるはずだ。殺していい奴などいない。
何を戸惑う。この少女も、更正できるかもしれない。
何を戸惑う。銃声で他の奴に、場所を悟られるかもしれない。
何を戸惑う、何を躊躇う。
本当に殺すべきなのか?
俺は、子供を殺してもいいのか?
正義の象徴である警官が子供を射殺してもいいのか?
殺し合いなんて、俺が止めればいいんだろ。
それが、俺が家族に出来る、俺の罪滅ぼし。
「ひゃはハハハァァァァ!!!! 俺の能力を知らねェみてェだなァァァァ!!!」
少女は落ちていた大き目の石を握り締める。
身長の差があるわけだから、俺を撲殺することはまず不可能。
仮に少女が言う、能力が実在するならどうするべきだ。
いや、実在するわけが無い。俺は超能力を信じない。
ならば、平沢は俺をどうやって殺害した?
あれは、明らかな爆殺だ。手榴弾など、あいつは持っていなかった。
綺麗に、腹に大きな穴を開けることなど出来ない。
出来るとしても、俺はバラバラになっていた。
いや、あれは幻影だ。錯覚に陥っていただけ。
では、その錯覚とやらは、超能力の一つに当てはまるはず。
実在するというわけか。
ならば、ヤバくない?
「ハァァァァア!? 何で刃にならねェんだよォォ!!!」
結論――――
――――とりあえず、殺す必要はなさそうだ。
【ジャック・ザ・リッパー 生存確認】
【
第一回放送まで残り 8人】
【一日目/早朝/C-2・住宅街】
【ジャック・ザ・リッパー(暴食)@精霊】
[状態]健康、混乱、幼女化(残り??時間)
[装備]なし
[道具]ナイフ、ぶかぶかの服
[思考]
基本:強い奴と戦い、その肉を食べる
1:ハァァァァア!? 何で刃にならねェんだよォォ!!!
2:クソ!! 何で俺がこんな目にィィ!!!
※急激に能力が上昇したため、ルールに違反しました。
※ルールを破った特殊制裁により、傷や痛みなどは、直りましたが、幼女化しました。
※ルールを破ったため、能力が全て無くなりました。
【伊達坂浩二@伏線キャラ】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~3
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:平沢、長谷川の両名の警戒、及び、伊達坂拳の保護
2:幻影……切り裂きジャック……?
※固有能力、ジャック・ザ・リッパーについては信じていません
伊達坂浩二(だてさか・こうじ)
南雲市警察捜査係の刑事。階級は巡査長。海棠の相棒。伊達坂拳の父親。
長谷川雫に娘を強姦され殺害され、妻も失っており、仕事人間となっていた。
やる気がを失い堕落した生活を送っていたが、大事な物を徐々に気づいていく。
最終更新:2012年04月25日 22:52