40話:安らぎと苦しみと
「う……」
「……! 気が付いたか?」
鈴木優衣が意識を取り戻すと、そこはどこかの民家の中だった。
痛む身体を上体だけ起こすと、自分の身体の至る所に包帯が巻かれているのに気付く。
そして自分を見て安心したように微笑むRPGゲームに出てくる戦士のような外見をした、
無精髭の男性を認めた。
「ええと、助けてくれたんですか?」
「ああ、そうだな……」
「ありがとうございます……あっ、栗田さん達、は……?」
「……」
レスターは詳しい事情を優衣に話す。
隠したとしても、どうせ放送で全て分かってしまう。
なら正直に話した方が良い。
「……ああ、そんな……折角仲間が出来たのに……」
「……」
「……レスターさんでしたっけ?
殺し合いには乗っていないんですよね? 私をこうして助けてくれたって事は」
「ああ。俺もこの殺し合いで、一人仲間を失った。だから君の気持ちは多少は分かるつもりだ」
「……」
「一緒に行動しないか? 失った仲間の代わり、何て訳じゃないけど」
「……そうですね、宜しくお願いします、レスターさん。あ、私は鈴木優衣です」
「ああ、宜しく優衣ちゃん」
「それで、ちょっとお話ししたい事があるんですが」
優衣はレスターに自分が首輪の解除を目指している事、そのために首輪のサンプルを入手したい事を話した。
首輪のサンプルを入手するためにどうするか――それを話した時、流石にレスターも顔色を変える。
「君が、死体の首を切断するって言うのか? 出来るのか……?」
「……やりたくないですよ、でもやらないと、首輪は手に入りません……」
「……俺がやろう」
「えっ、でも……」
「君には出来ないよ、死体とは言え、首を切断するなんてのはそうそう出来る事じゃない」
「……良いんです、か」
「……前に仕留めたモンスターの首を切った事もあるから」
「……」
結局、優衣はレスターに頼む事にした。
レスターが首の切断を引き受けたのは、切断に関する技術の事もそうだが優衣の事を考えての事でもあった。
首を切断すると言う行為は例え相手が死体であっても、非常に精神衛生上良く無い。
肉を切り裂き骨を砕く時の感触、溢れ出る血液、骨や気管、食堂が見える断面を嫌でも見る事になり、
それなりに修羅場を潜ってきたレスターでさえ、たまに気分が悪くなる時がある。
戦いの最中に、相手の首を一瞬で斬り飛ばす時とはまた違うのだ。
それを、自分より遥かに年下の少女が行うのは、とてもではないが知らぬふりをする事は出来なかった。
……
……
栗田雅博、秋山隆生、青砥日花里、滝口信方、コーディの五人の死体がある場所に二人は戻ってきた。
無惨な死体と化したかつての同行者を見て、
優衣は悲しみよりも先に、むせかえる血の臭いに吐き気を催してしまう。
「……こいつので良いか」
レスターは優衣から借りたベイダナを持ち、コーディの死体の元に歩み寄り、
頭を持ち上げ、刃を首に当てた。
「優衣、目を瞑ってた方が良いぞ」
「いえ、大丈夫です……」
「……分かった」
レスターはベイダナを持つ手に力を入れた。
数分もしない内に、血塗れのコーディの首輪がレスターの左手に持たれる事になった。
「……ありがとうございます、本当に」
予想以上にグロテスクな場面を見てしまったショックからか優衣の声が掠れていた。
だから見なければ良かったのに、とレスターが溜息をつく。
そして五人が持っていた武器もついでに回収しようとしたが、ほとんど無くなっている事に二人は気付く。
「誰かが持っていっちまったのか……?」
「多分、そうだと……私が気絶して随分時間が経ってるみたいですし」
「仕方無いな……」
首輪を手に入れると言う当初の目的は果たした、もはや長居は無用。
二人は元いた民家に一旦戻る事にした。
「安らかに……」
最後に優衣はかつての同行者と首輪を取るため首を切断した人狼、合わせて五人の死体に向け手を合わせた。
レスターも普段まずする事の無い十字を切り、犠牲者達の冥福を祈った。
【午前/E-4駐在所周辺の市街地】
【鈴木優衣】
[状態]全身傷だらけ(応急処置済)、少し気分が悪い
[装備]ベイダナ
[持物]基本支給品一式、工具セット、コーディの首輪
[思考・行動]
0:殺し合う気は無い。
1:レスターさんと行動。首輪を調べる。
[備考]
※御代田優太郎、皆川宏介、萩野美祐、萩野直重、藤森真海の情報を得ました。
【レスター・コリンソン】
[状態]健康
[装備]グルカナイフ
[持物]基本支給品一式、投げナイフ(1)
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。首輪をどうにかしたい。
1:優衣と行動。
[備考]
※知人はヴィヴィアン・ルーク、セシリー・バーンズの二人です。
最終更新:2012年05月27日 22:11