41話:破滅への序曲
某国の軍に所属する兵器開発部門が研究を進めている、
「死体より不死身の兵士を作る」計画。
神をも恐れぬ、倫理観など完全に度外視した禁断のそのプロジェクトは当然極秘中の極秘で、
とある秘密の場所に存在する研究施設で大勢の研究者が研究に携わっていた。
長年の研究の末にBW-5466「小神さくら」と呼ばれるもっとも完成に近い個体が完成した。
実戦テストにて「大破」したが優秀な成績を収めた。
だが幾つかの問題点も指摘され、研究部はその問題点を改善すべく更に研究を進めた。
そして実験的に、ある物を使用した。
簡単に言うならばそれは――――寄生虫。
兵器開発部門とは別の研究機関にて開発されたそれは、宿主の身体能力、思考能力、耐久力を、
飛躍的に高める効果があったが、非常に不安定であり宿主の思考まで支配し暴走する恐れがある、危険な物だった。
だが、あくまで「実験」と、兵器開発部門はその寄生虫を使用し、新たな生体兵器の個体を生成した。
部門や軍の関係者、開発元からの反対や危惧の声も押し切って。
そして、試作体が完成した。
開発コードBW-5501「井本萌実」。
素体となったのは強姦された上殺害されたとある高校生の猫獣人の少女の死体。
研究所でのテストでは、身体能力、思考能力、耐久力全てにおいて「小神さくら」を凌いでいた。
寄生虫による思考の支配を防ぐために寄生虫自体にも多少手を加え、暴走する事も無かった。
研究員達、軍関係者達は上々の結果に喜んでいた、危惧していた者達も同様に。
そして「小神さくら」と同じように実戦テストの場へと出される。
即ち「バトルロワイアル」へと。
……
……
井本萌実は市街地をふらふらと歩いていた。
歩いている、と言うより「徘徊」していると言った方が良いだろうか。
今の彼女は上半身裸、しかし触手が身体の至る所から出て色気の欠片も無いと言った状態。
萌実の身体から生えている触手は、彼女の身体に寄生させた寄生虫が肥大化した物である。
開発部門によって手が加えられた寄生虫は宿主である萌実の思考回路を侵食するには至らなかった。
だが、彼女の脳髄が破壊された時、寄生虫に変化が起きた。
それは恐らく、開発部門による「改良」のせいかもしれない。
宿主が完全に死ねば、寄生虫そのものも死んでしまう。
それ故、寄生虫は宿主を死なせないために、その肉体を支配下に置いたのだ。
今の井本萌実は、寄生虫により生かされている、とも言えよう。
「な、何、こいつ……」
不運にもこの状態の萌実に遭遇してしまったのは、サキュバスの少女、クローイ。
触手を身体中から生やした不気味な猫の少女にたじろいだ。
しかも、頭部は半分程損傷し砕けた頭蓋骨から脳漿らしき物もはみ出ている、この状態でなぜ歩けるのか。
「……」
萌実は右手を前方のサキュバス少女に向け掲げる。
その手の平から、触手が飛び出し、クローイの身体に巻き付いた。
「! な、何するの、う、うわああ!!」
萌実は触手で絡め捕ったクローイを持ち上げる。
その時に持っていた拳銃をクローイは落としてしまった。
「は、放せ! この!!」
何とか触手の拘束から逃れようと、クローイは必死にもがく。
逃れる事さえ出来れば背中の翼で飛べば距離を取る事が出来る。
だが、拘束は固く、サキュバスの少女を逃さなかった。
その間に、萌実は身体から更に多くの触手を出現させ、それをクローイに巻き付ける。
クローイの身体は触手により雁字搦めになった。
「ぐ……ぎ……」
触手による締め付けで、まともに呼吸が出来なくなり呻くクローイ。
そして、締め付けは段々と強くなっていき、クローイの身体がミシミシと悲鳴を上げ始めた。
「ぎゃ、あ……! やめ゛、や゛めて、あっ」
バシュッ
周囲に血の雨が降り注いだ。
クローイ「だった」肉片が血液と共に辺り一面に飛び散る。
首輪とデイパックだけは原型を留めていた。
サキュバスの少女がミンチとなる様子を獅子獣人遠矢英教は物影から目撃してしまう。
「冗談だろ……何だあれは……あんな化物がいるとは」
いままで殺人を犯しても冷静でいられた英教も流石に、
身体から無数の触手を律動させている怪物にはたじろいだ。
何より人を一瞬で肉片に変えてしまう恐ろしい力を目の当たりにし、英教は本能的に恐怖を覚える。
「無理だ、やめておこ……!?」
早々に触手の怪物から離れようとした時、突然、怪物がこちらの方に顔を向けた。
片方だけ残った目と、自分の目が完全に合わさる。
その目には知性の光は宿っておらず、死人のそれのように濁っていた。
「――――!!」
次の瞬間には英教は伸びてきた触手に絡め取られていた。
ああ、終わりだ、と思った。
そして英教は一度宙高く持ち上げられ、アスファルトに力一杯叩き付けられ、脳漿が飛び散って死んだ。
苦痛を感じる間も無く絶命出来た事が英教にとって唯一の救いだっただろう。
そして一気に二人を屠った萌実は何の感想も言う事無く、何の感情も抱く事も無く、再び徘徊を始めた。
【クローイ 死亡】
【遠矢英教 死亡】
【残り 13人】
【昼/D-5市街地】
【井本萌実】
[状態]理性喪失、触手発露、上半身裸、胴体に銃創及び頭蓋骨左半分損傷、血塗れ
[装備]無し
[持物]無し
[思考・行動]
0:―――――――――――――
[備考]
※理性がほぼ無くなりました。
最終更新:2012年05月27日 11:57