35話:beautiful human life
とある民家の中。
ドーグラスの知人二人、久木山凌河の父親の名前は放送では呼ばれなかった。
代わりに行動を共にしていた戸賀崎かれんとアルジャーノンの名前は呼ばれた。
尤も、目の前で殺されるのを目の当たりにはしていたが。
それでも「もしかしたら」と言う希望は多少は抱いていた、それも打ち砕かれる形となった。
「はぁ、平田の野郎はまだ生きてんのかよ」
「お父さん……早く会いたい」
「飯でも食おうぜ……もうちっと休んでから出発しよう」
「そうですね……」
二人はデイパックから適当な食べ物を引っ張り出す。
今一食欲が無かった凌河だったがそれでも無理矢理食べ物を口に放り込んだ。
(うう、全然美味しく感じない……今はもう僕の大好物食べても、美味しく無い気がするよ……。
どうして僕とお父さんはこんなゲームに参加させられてるんだろう。
悪い夢なら、早く覚めて欲しい……お父さんに一杯犯されて、虐められたい)
ドーグラスはビーフジャーキー(らしい物)をガリガリと食べる。
これが最期の食事にならない事を祈りながら。
(凛花の奴もまだ生きてるみてぇだな、まあ、良かった。
折角手に入れた性欲処理女だしな……それに……いや、何でもねぇ、とにかくあいつがまだ生きているようで良かった。
会ったら、まず何よりも先にマ*コに突っ込ませて貰うとすっか)
そして二人は食事を終え、畳の上に横になった。
……
片桐凛花がまだ生きていると知った時、平田洋明は素直に嬉しかった。
ドーグラスがまだ生きていると知った時、平田洋明は素直に残念がった。
「ドーグラス……しぶといな、でも、それならそれで僕が直々に手を下せる機会がまだあると言うもの」
他人の手によって死ぬのなら、それはそれで良い。
だがどうせなら憎き相手は自分の手で惨たらしく殺したい、と言うのが洋明の持論だった。
もはや想い人云々では無く危険人物の思想になっているが、
当の本人がそれに気付く事は無い。
「ああ、待っていて下さい、片桐さん、きっと、きっと僕が……」
どこかでまだ生きているはずの想い人を胸の内に浮かべ、決意を新たにする。
ダァン!!
想い人のために様々な思考を巡らせていたその脳髄が弾け飛んだ。
文字通りの意味である。
平田洋明の口から上が著しく破壊され、頭蓋骨、脳漿、肉片が辺りに飛び散り、
洋明の身体はうつ伏せに倒れた。
洋明の後方数メートルに、トカレフM1940自動小銃を構えた青猫少女が立っていた。
「……あったりぃー……えへへ」
嬉しそうに猫少女――井本萌実――は呟く。
洋明が所持していたデジニトクマッシSR-2短機関銃と予備弾倉、
キャリコM110拳銃と予備弾倉、ドスを回収しデイパックに押し込む。
「……近くにまだいる」
何かに導かれるように萌実は歩き出した。
……
「今……銃声聞こえましたよね?」
「ああ、かなり近いぞ……」
少し横になった後、民家から出発した凌河とドーグラスがかなり近場から響いたと思われる銃声を聞く。
一旦身を隠した方が良いと判断し、二人は隠れられそうな所を急いで探す。
ところが最適な場所が見付からない。どの民家の門も固く閉ざされ、
商店のシャッターもぴっちり施錠されていたりしており、隠れられない。
ならば裏路地は、と思ったが何とどの裏路地の入口も車が停めてあったり、
扉が施錠されていたりゴミで塞がれていたりして、入れなくなっている。
「おいおい、何でこんな時に……!」
急いでいる時に限ってどうして隠れられる場所が見付からないのか、と、苛立つドーグラス。
「いーたー」
無駄に楽しそうな少女の声が二人の耳に届いた。
二人は前方に青い猫の少女の姿を認める。
その少女は愉快そうに笑っておりその手には大きなライフルが握られその銃口は――――。
ダァン!!
「ぎっ」
ドーグラスの胸元から赤い華が咲いた。
そのまま彼は後ろに一メートル程吹き飛ばされ、ビクビクと身体を痙攣させ、
血溜まりを作ってやがて動かなくなった。
「ドーグラス、さん……!?」
何が起きたのか、凌河は理解するのにほんの少し時間を要した。
「次は君だねぇ」
理解したのとほぼ同じくらいに、猫少女が自分に銃口を向け直しているのを確認する。
良く見ればその少女は先刻廃集落で襲い掛かってきた少女だった。
「う、あ」
身体が強張り動かなかった。
間も無く自分は死ぬ――今度こそ本当に。
大好きな父に再び会う事も無く、ドーグラスのように撃ち殺されるのだ。
涙も、声も出なかった。
ただ、凌河は、猫少女が自分に対し理不尽な銃殺刑を執行するのを、見る事しか出来なかった。
ガチッ
だが、寸での所で判決は覆ったらしい。
「……あれぇ、詰まっちゃったのかな」
引き金を引いたが少女――井本萌実の持つトカレフM1940自動小銃から銃弾は放たれなかった。
弾薬の不発かそれとも故障かは分からないがとにかく弾は凌河に向けて発射されなかった。
「……うあああああああああああああ!!!!」
「!!」
機を逃すまいと、凌河は萌実に向け装備していた拳銃を乱射した。
シグザウエルP239から放たれた銃弾は萌実の足、腹、胸に命中し、傷口から血が噴き出す。
「いたたっ」
本来なら「痛い」の一言で済む筈は無いのだが、
萌実はそれ以上の反応を見せる様子は無い。
装弾数が八発しか無いP239はすぐに弾が切れてしまう。
スライドが後退し切り弾切れを知らせているが切迫している凌河はそれに気付かず引き金を引き続けた。
「えっ? あっ、弾切れ……!?」
「痛いなぁ、僕ぅ……女の子の身体に、傷を付けちゃあ……ゆ る さ な い よ ぉ 」
声のトーンを低くした萌実が、武器をアストラM902自動拳銃に装備を切り替え、
その銃口を凌河に向けていた。
「う、うわあああああぁあああ!!!」
今度こそ死ぬ――――恐怖の余り、凌河は叫んだ。
ダァン!!
「……え?」
銃声が響いた。だが凌河は無事だった。
代わりに萌実の頭部が弾け飛び、脳漿と血を撒き散らしながらその身体はうつ伏せに倒れた。
そしてその向こうに、黒い人狼と少年の姿が見えた。
凌河はその二人にも見覚えがあった。
「ば、バイロンさん、唐橋さん……?」
「凌河か、また会ったな」
「……お前一人か? 戸賀崎とアルジャーノンはどうしたんだ」
「……」
「……どこか別の所で、事情を聞こう」
凌河の様子から、ただ事では無いと察したバイロンが言う。
圭輔とバイロンは凌河を立たせ、彼の荷物と猫少女の武装、ドーグラスの荷物を持ち、
一先ずその場を去った。
◆
脳漿を撒き散らした猫少女の死体。
普通なら起き上がる事はもう間違い無く無い、と思うだろう。
だが、少女、井本萌実は起き上がる。
砕けた頭蓋骨からぼたぼたと脳を零しながら、ゆっくりと。
「グ……ウ、ギ、イイ」
だがその口から発せられる声音は歪み、元の声音が全く予想出来ない程になっている。
「ム……ク……ムカツク……ムカツク……ケス、ケス、ケシテ、ヤ、ル」
メキッ、ベキッ
萌実の頭蓋骨が砕けた部分から、三本の血に塗れた触手が生える。
同時に萌実の右手の平からも、触手が生えた。
「ウギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
邪魔だと言わんばかりに上着を剥ぎ取る。
豊満な乳房が露わになるが、腹や鎖骨の辺りから触手の一部が露出し蠢いており、
最早色気の欠片も無い。
「ウォォオオオオアアアアアアアアアアアア…………」
少女のそれとは思えない咆哮を発し、
井本萌実「だったもの」は獲物を探し始めた。
【平田洋明 死亡】
【ドーグラス 死亡】
【残り 19人】
【午前/C-5市街地】
【久木山凌河】
[状態]全身打撲、頭部より流血(歩ける位には治癒)、精神的疲労(大)
[装備]シグザウエルP239(0/7)
[持物]基本支給品一式、シグザウエルP239の弾倉(2)、ウィンチェスターM1912(4/5)、12ゲージショットシェル(10)、
馬のペ*ス型ディルド、サバイバルナイフ
[思考・行動]
0:お父さんを捜す。
1:……。
[備考]
※滅多な事では死にませんが、頭部を破壊されるか身体を焼かれるかすると死にます。
※深谷春那の情報を得ました。
※猫少女(井本萌実)は死んだと思っています。
【唐橋圭輔】
[状態]健康
[装備]ワルサーMPL(32/32)
[持物]基本支給品一式、ワルサーMPLの弾倉(5)、コルトパイソン(6/6)、.357マグナム弾(24)、ドーグラスの荷物
[思考・行動]
0:
殺し合いをする気は無いが自分の身を守るためなら武力行使は厭わない。
1:春那を捜す。バイロンと行動。
2:凌河から事情を聞く。
[備考]
※バイロンの知人、久木山忠則の情報を得ました。
※猫少女(井本萌実)は死んだと思っています。
【バイロン】
[状態]健康
[装備]コルトトルーパー(5/6)
[持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(24)、鉄の杖、ISRBウェルロッドMk.I(5/5)、井本萌実の荷物
[思考・行動]
0:殺し合いをする気は無いが襲い掛かる奴には容赦しない。
1:圭輔と行動。圭輔の知人を捜索。自分の知人は特に親しい訳でも無いので後回し。
2:凌河から事情を聞く。
[備考]
※知人はコーディ、アドレイド、クローイの三人です。
※深谷春那、久木山忠則の情報を得ました。
※猫少女(井本萌実)は死んだと思っています。
【井本萌実】
[状態]理性喪失、触手発露、上半身裸、胴体に銃創及び頭蓋骨左半分損傷
[装備]無し
[持物]無し
[思考・行動]
0:……ケス……。
[備考]
※理性がほぼ無くなりました。
最終更新:2012年05月27日 22:10