確定申告(後)

29◆確定申告(後)




「ぷはぁっ」

 もともと包帯の上からかけられた《ため息》だったからだろう、
 強制的につけられた《氷のマスク》は紆余曲折の腕力でもどうにか外せるものだった。
 マスクを地面に落とすと、紆余曲折はこれでもかといわんばかりに声を上げる。

「一刀両断、じゃなくてリョーコさん! どこに行ってたんですか!」
「あー、心配させてごめんな。ちょっと色々あって」
「そうだぞ一刀両断。それにその髪、傷も……そして日本刀、見つかったのか」
「あっと、日本刀はなんというか、これはまあ、えっと――あの待ってくれ、後で話すから」

 緑色のオーラによる《強化》がおさまった切磋琢磨も混ざり、
 二人は突然現れた一刀両断にくちぐちに質問責めをした。
 それもそうだ、刀を取りに行くといって彼女が二人の元を離れてから、
 少なく見積もっても一時間は経過している。
 何があったのか聞きたくあるのは至極当然のことだ。
 しかし、一刀両断が「後で話す」と言った以上、二人にそれ以上彼女を攻め立てる義理はなかった。
 死体となって再会したのならともかく、
 生きて帰ってきたのだから、問題はない。
 ところどころジャージが破れて紅い線が覗いていたり、
 長い髪をまとめ上げて作っていたポニーテールがまとめて消失したりはしているが、
 一刀両断は一刀両断のままで、再び彼らのもとに戻ってきた。それで十分だった。

「そんなことより今は、目の前の敵を殺すことが大事だろ」

 敵に向かって改めて向き直りながら、一刀両断が言う。
 切磋琢磨と、(見えないけれど)紆余曲折も、その言葉につられるように敵側を見た。

「……」
「……」

 銀髪の青二才――先手必勝は銃を一旦仕舞い、ポケットから銀縁のメガネを取り出して、
 耳にかけてくいくいと上げながらこちらを怖いほど冷徹な目で見ている。
 青いドレスの氷吐き――青息吐息はデイパックから拡声器を取り出して、
 怒りと焦りのこもったまなざしをこちらに向けて放っていた。
 両者ともに、無言で。
 こうなった以上、逃げるという選択肢もあるはずなのに、こちらを見ていた。
 あくまで見続けていた。
 最後まで戦おうというわけだ。

「左の銀髪は俺がやる」

 切磋琢磨が両拳を合わせ、先手必勝を見据える。一刀両断は頷いた。

「分かった。じゃああたしは右の女をやる。紆余はそこで胡坐でもかいてろ。
 見た感じお前のルール能力、もうネタバレしてるんだろ」
「……ですね」

 紆余曲折も頷いて、すっと後ろに下がり、なるべく銃の有効範囲内に入らないようしゃがみこんだ。 
 彼の《迂回》のルール能力は彼自身を狙った攻撃にしか発動できない。
 再び切磋琢磨におぶさっても、近く敵はその事実に気付くだろう。
 もしそうなれば、彼のルール能力はさらに運用が難しくなる。下手をすれば切磋琢磨の枷になりかねない。

「そうだな。悪いけど紆余は、俺たちを見守っていてくれ」
「タクマさん、リョーコさん、死なないでくださいね」
「当たり前だぜ」
「ああ。安心してくれ、俺は――《強い》。そして、もう折れない」

 さらなる《強化》でまた一回り、いや相手が二人だから二回りか、
 成長し逞しくなった背中を紆余曲折に見せつつ、切磋琢磨は力強く言った。
 一時はどうなるかと思ったが、
 これなら大丈夫だ。
 紆余曲折は自らの身の安全が完全に確保されたことを感じ取ると、
 誰にも知られないようにうつむいて、そっと心の中で安堵した。

「《はぁぁ・……ふぅう……》」

 そして。
 戦場に大きく吐息の音が漏れる。

「《はぁあ……》。まったく、嫌になっちゃうよね、センくん。
 こんなくだらない実験に巻き込まれて、あたしたちの前にはいつも敵ばっかりで。
 ため息の一つや二つつかないと、やってらんないよ、こんなの」
「ええ。そうですね。大体、本来ならこんな所で殺し合いなんてしている時点で”負け”も甚だしい。
 骨折り損でくたびれ儲けもないなんて、運が悪かったとしか言いようがありません」
「うんうん、ホントにそうよね。たったひとつのことを除いては」
「そうですね、たったひとつを除いては」

 はぁ、ふぅ、と。
 冷たい手を温めるときみたいにゆっくりと、《ため息》を青息吐息が吐いて。
 それを合図に、先手必勝は拳銃を懐から抜き、とんとんとフットワークのリズムを取り始める。
 口を開いた彼ら二人は、これまでのことを思い返すように、お互いに言葉を交わす。
 第一放送の後。
 遅まきに行動を開始してから、二人の間には様々なことがあった。
 禁止エリアから逃げのびたかと思ったら、鏡花水月に遭遇し。
 何度も死にかけ、幻想に惑わされ。
 絶望したり恐怖したり、本当に色々だ。しかも、どれもいい思い出とは言い難い。
 それでも、先手必勝は青息吐息を見て。
 青息吐息は先手必勝を見て、こう言うことができた。

「たったひとつ。あなたという仲間ができたことだけが、不幸中の幸いだった/でした」

 そしてお互いにほんの少しだけ、口角を上げてほほ笑んだ。
 次いで同じく、彼らの他の誰にも見られないように。その口で「なんてね」とひとこと、呟いた。

「――さあ、まだボクたちの闘いは終わっていません!」

 一転。
 空気を切り裂くようにして、先手必勝は取り出した拳銃を敵側に向ける。
 十メートルほど離れて向かい合う殺すべき三人に向けて、最期の宣戦布告をした。

「そちらが死ぬまで戦うというのなら。あたしたちは戦えなくなるまで殺すだけ。
 生憎、こちらには、最後の一手が残っているわ。――これで終わりにしてあげる」

 彼の動きに呼応するように、青息吐息は拡声器を構える。
 これは先の戦いで――彼女の《凍てつく吐息》を増幅することによってエリア内の何もかもを凍らせ、
 鏡花水月を《幻想》ごと実質的な行動不能に追い込んだ最終兵器だ。
 その時の反動で凍りついていた拡声機構も、切磋琢磨たちと戦っている間にどうにか溶けてくれた。
 だから、再び彼女は行使できる。
 最後の攻撃としては十分すぎる威力を持つ絶対零度を。

「はっ。終わらねぇよ。終わらせねぇ」

 息を吸い込む青息吐息に向かって、切り返すのは一刀両断。
 短くなった髪を微かに揺らしながら宣戦布告を鼻で笑い、一部の隙もなく日本刀を構える。
 状況は分からないが、ともかく一刀両断は、自身が行うことはひとつだけだと感じていた。
 紆余曲折の”盾”として――”刀”として。
 彼を危ない目に遭わせた殺すべき敵を一刀のもとに叩き斬る。彼女が生きている理由はただそれだけ。

「ああ、そうだ。――終わりにするのは、こちらの方だ」

 最後に、確定的な口調でそう言って、四点流”待機”の構えを切磋琢磨が取る。
 基本にして究極。すぐに攻撃態勢に移ることのできるオーソドックスな足の開き、拳の構え。
 ただしこの娯楽施設に連れてこられた最初とは違い、
 その姿にはある種の貫録と、驕りでない自信が備えられている。もう彼は折れることはない。

 これにて全員の準備は完了した。

 ……娯楽施設の中央、B-2のコンクリートの駐車場。
 空は変わらず薄曇り。風も弱く頬をなでる程度で、おそらく戦況には影響しない。
 東西に整然と並ぶ車列を背に、南側には先手必勝組、北側には切磋琢磨組が構える。
 そして十秒。
 十秒、そのまま時が流れた。
 戦闘に参加する四人とも、長くて短いここまでの時間を生き抜いて、体力はもうほとんど残っていない。
 わざわざ声に出さなくともあと一合で闘いは終わる。全員がそれを自らの肌で感じていた。
 だから重要なのは、タイミングだった。
 四人のうち誰かが気を緩めたり、気を取られたりして、
 氷のように張り詰めたバランスにとげが刺さり、崩れて隙が出来るそのときが来るのを、全員が待っていた。
 これ以上なく気を使う静寂を。また続けること十二秒。

「……」

 一刀両断の後ろに控えた紆余曲折は、地面に置いた手のひらに、熱の残る鉄の感触を知った。
 最初に《迂回》させた銃弾。
 巡り巡ってこの戦場に戻ってきたものの威力を失いコンクリートに転がったそれが、自らのそばに落ちていた。
 …………。
 ああ。
 僕の”役割”はこれなのか、と。
 最後まで蚊帳の外を貫き続けた少年は、心中で小さくそう思った。
 賽を投げるようにして。
 ぐっと握ったそれを、ぽい、と。
 戦場の中心めがけて力強く振り投げる。地面に落ちたそれは、始まりの音を立てた。

「――――おおぉぉおおおおおお!!!」

 そして戦場は動いた。
 腹の底から響くようにして咆哮を上げ、最初に駆けだしたのは切磋琢磨。
 二の型”突進”――バネ仕掛けのように全身で躍動し、十メートルの距離を二秒足らずで詰めにかかる。
 それを無言で見据える先手必勝は、狙いを定めて引き金を引く。
 四肢がどれだけ動こうが、直線的に走る人間は体幹がブレない、だから狙いは胸部……あるいは腹部!
 銃声。
 次いで衝突音。だが銃弾は――外れる。

「なっ」
「《……はぁあぁぁあぁ……!》」

 いや、先手必勝は《百発百中》の補助もあり、きちんと切磋琢磨の腹部に銃弾を叩きこんだ。
 だがそれは、当たらなかった。
 左手に。
 切磋琢磨が左手に隠していたのは《氷》だった。
 直線に横から添えるようにして――彼は先手必勝の銃弾をその《氷》にぶつけ、軌道を逸らしたのだ。
 そう、つまりそれは、先ほどまで紆余曲折の口を覆っていた《氷のマスク》だ。
 先手必勝自身よく知っている。青息吐息が放つ《ため息》が作り出す《氷》は、生半可な強度ではないことを。

「くっ……くそがあぁあっ!」

 決め手になるはずだったものを逆に相手に使われた、
 さらに再び先手を失ったという事実が、先手必勝の逆鱗に触れる。
 思わずか思わざるか、これまで発したこともない濁った言葉が口を突く。
 隣で拡声器により《ため息》を吐く青息吐息は、彼らしからぬその激昂に一筋の不安を感じた。
 だが今は、目の前の敵が問題だ。 

「……うそでしょ!」
「あたしは自分にウソはつかねぇ!」

 鏡花水月を葬った第一の奥の手。
 拡声器による《ため息》の広大な拡散は、こちらに向けて走ってくる一刀両断にも確かに”少しは”効いている。
 だが地面、車、空気まで凍らせる《ため息》が、一刀両断の身体を凍らせるに至らない。
 《迂回》しようのない広範囲攻撃、
 少し距離のある切磋琢磨のズボンやすね毛に霜が付き始めているくらいだというのに、
 もうあと数歩の所まで迫っているジャージの女はまだ寒がるそぶりすら見せないのだ。
 やせ我慢ではない。その機微が分からないのであれば、先手必勝の真意など推測できようもない。 
 ではなぜ? 疑問に答えたのは、隣で再び銃声を鳴らした先手必勝だった。

「日本刀です! そいつ、息吹を斬っているんだ!」
「えっ!?」
「おっと――でももう遅いぜ。そっちのお前もな」
「……二の型・突進」

 見ればそう、片手で持っていたから分かりづらかったが、一刀両断は日本刀を剣道のように立てて走ってきていた。
 その刀身で――青息吐息の《ため息》を左右に斬り裂きながら、だ。

「あたしの刀は全てを両断する。形のないものだって例外じゃない」
「そんな……!!」
「――”連拳”ッ!!」

 なおも差を詰める一刀両断の横、豪的な初動の合図を叫びながら、切磋琢磨が拳を振るうのが見えた。
 センくんがさっき放った二発目の銃弾は? どうなった?
 青息吐息は目を見張る。
 そしてその答えは、切磋琢磨の腹部からにじむ血の流線を見れば必然と分かった。
 良かった、当たっていた。
 辛うじて青息吐息たちはこれで《勝った》。
 すぐ《仕切りなおされる》とはいえ、そのすぐまでは死ぬことはない。

「ちっ」
「――っかはっ」

 一刀両断の日本刀が閃いた。
 横薙ぎにまず、拡声器が切り裂かれ。次いで喉に焼けるような感触があった。
 鮮血が噴き出したのが見えて。
 吐き続けていた《ため息》が、喉に空いた穴から漏れていくのが分かる。
 すぐ死にはしないし負けじゃない。
 でもだけれど、重症だって負うし言葉だってもう出せなくなってしまっただろう。青息吐息は冷静にそんなことを思った。
 舌打ちをした一刀両断は、叫ぶ。

「ちっ、ルール能力かよ。んじゃも一回――ん」

 叫びながら追撃を加えようとする。が、その足が動かない。下を向くと足が地面に張り付いていた。
 180度以上拡散している《氷の息吹》を日本刀で切り裂くのにも、限界はある。
 とくに足先などは。

「うーん・……ここまでか。冷え性にもほどがあるぜ」
「ぐああぁああああああっ!!」

 ふぅ、とため息をつく一刀両断の真横、地面に倒れゆく青息吐息の視界、
 ルール能力による暫定的な《勝者》に見合わぬ叫び声を上げる先手必勝が、右手から銃を取り落す。
 何とはなしにそちらを振り向いた一刀両断が見たのは、まるで格ゲーのハメ技を記録した映像のような光景。

「らぁっ! らぁっ! うららららっ!」

 切磋琢磨は真剣に。
 拳で押して、足で蹴り上げ宙に浮かし。
 懐を掴んで引き寄せて、さらに振りかぶり、鼻を殴り、また蹴りで宙に浮かし。
 横蹴りからその場で回転し、回し蹴りを叩きこんで、空中で人体を横に半回転させると、

「突進――”逆雷”ッ!!」 

 最後にとどめのアッパーを顎へと電光のごとく叩き込み、空へと持ちあげる。
 先手必勝の銃撃は通っていたが、その代償はあまりにも大きすぎた。
 切磋琢磨は銃弾をあえて受けることで差を限界まで詰め、自らの攻撃を当て、連撃へとつなげた。
 相手の意識をほぼ飛ばすほどに。

「――――っ!」
「……老師。今なら分かる気がします!
 俺だけの四の型。その初手は、俺自身のすべてを込めた一撃……」

 垂直に地面に落ち行く先手必勝に、青息吐息が声をかけようとする。
 だが斬られた喉はひゅうひゅうと音を立てるばかり、声帯が死んでいるのか、ただ吐息を漏らすだけ。
 ばたん、冷たい地面に倒れこみ。
 全身に力を蓄える切磋琢磨と、切磋琢磨を見比べた。
 先手必勝は意識を朦朧とさせている、しかしそれでも最後のあがきにと、ぴくりと足を反応させて動かす。
 鏡花水月戦で見せた得意の蹴りだ。
 脳天に突き刺すようにすれば、今からでも反撃のワンチャンスはある。
 ……なんてのは。甘い甘い、絵空事だ。

「リョーコさん、タクマさん、《仕切り直し》を!」
「《仕切り直し》を叫べ、タクマ!」
「ああ、分かってる――《仕切り直し》、そして」

 一人ならともかく、彼らには仲間がいる。
 青息吐息が倒れた今、先手必勝が生き残れる道理はゼロになった。
 それが悔しくて、申し訳なくて。なんどもなんども青息吐息は叫ぼうとする。でも斬られた喉は、
 やっぱり掠れた空気音をさせるだけで。

「……うぅッ! あぁああ――」
「四の型・爆発――初手」

 彼女は最後の言葉を、先手必勝に掛けることが、できなかった。

「”拳語り”ッ!!」

 ”待機”で力を蓄え、”防御”で筋肉を硬直させた状態より、”突進”ですべてを一転解放。
 切磋琢磨の全のパワー、全の想いを込めた四の型・爆発が、クリティカルに先手必勝の胸部へと叩き込まれた。
 ごう、と、大地を揺るがす音がして。
 凍りついた空気が地面から生やしていた数本の氷柱が、動いた空気の圧力だけで何本も破砕されて。

「……青息吐息さん」

 戦いの終了を告げる言葉が、先手必勝の口からこぼれた。

「ボクに付き合ってくれて、ありがとうございました」

 ――銀髪の青二才は宙を舞って。B-2を超え、車にぶつかりバウンドし、B-3まで飛んで行った。
 禁止エリアであるその場所で。十秒後、中規模の爆発音が響いた。
 そして戦場は静かになった。凍りついてしまったみたいに。静かになった。 


◆◆◆◆


 4×4。
 四角に並んだ十六の旧式テレビは積み上げられ、薄暗い”モニタールーム”の壁を少し圧迫している。
 狭い部屋の中、テレビの群れの真ん前に陣取るようにしてそれを見上げる白衣の女は、
 これまたレトロな木の椅子に座ってスナック菓子をほおばりながら、
 たった今決着がついたB-2の戦場を、いくつかの方向から多角的な視点で見ていた。
 奇々怪々は観測する。
 たった一人でこの部屋にこもり、”実験”の最期を見届ける。それが与えられた彼女の役目だ。

「第二放送、始めなければなりませんね」

 くるりと後ろを向いて椅子から立ち上がり、スナックでべたついた手をべろりと舐め。
 奇々怪々は反対側の壁にある机まで向かう。数秒もかからず、そこへ着いた。
 シンプルというよりは質素な金属製の机の上には、放送を行うための電話機に似た無線装置と、もう一つ。
 彼女がある私的理由で持ってきている一枚の写真立てが置いてある。

「……まだまだ。残り人数は七人です。”ルール通り”にいくかどうかは、まだ分かりませんよ、”軍鶏”」

 写真立てを一瞥し、彼女は小さくそう呟いた。
 そして数秒迷った後に、写真立てをパタリと倒して、映っていた人間を視界から消し去った。
 受話器を取り、数字のボタンを押して連絡線を繋げる。放送の前に、連絡をしなければならない。
 ひどく長く感じる四回のコール音のあと、繋がる。

「も、もしもし」
『――――』

 相手は喋らない。
 しかし奇々怪々はなぜか緊張に息のリズムを若干崩しながら、受話器に向かって報告を行う。

「”雷鳥”です。たった今、五人目が死にました。……第二放送を始めます。死んだのは、――先手必勝。
 先手必勝でした。残りは七人。実験は順調に進んでおります。では」

 プツリと切って受話器を置く。
 全身を舐められたかのように汗が吹きだし、彼女の顔色が一気に青ざめる。
 あの方に言葉を投げかける――それだけで奇々怪々はこんなにもどっと疲れてしまうのだ。
 それこそ、モニターを見続けることの比ではないくらいに。
 やはり五分。
 そのくらい休憩して、それから放送をしよう。
 倒した写真立てを見ながらそう決めた奇々怪々は、
 机の下からスナック菓子を一袋取り出すと、ふらふらと椅子の方へと歩いて行った。
 ふと、見上げた一つのモニターに見えるは、
 闘いの敗者の姿。
 泣きながら――死んだ先手必勝とは逆の方向へ駆け出している金髪の女、青息吐息の姿だった。


【先手必勝:死亡――残り七名】




確定申告(中) 前のお話
次のお話 第二放送

前のお話 四字熟語 次のお話
確定申告(中) 先手必勝 実験終了
確定申告(中) 青息吐息 第二放送
確定申告(中) 切磋琢磨 生員集合
確定申告(中) 紆余曲折 生員集合
確定申告(中) 一刀両断 生員集合
第一放送 奇々怪々 第二放送


用語解説

【先手必勝】
文字通り、戦いで相手よりも先に攻撃を仕掛ければ必ず勝てるという意味の四字熟語。
「先手」には先に戦いを初めて出鼻をくじくという意味もあるとか。
四字熟語ロワでは、人生において常に先手を打ってきたメガネ理系の青年。
文字通りのルール能力の裏をかき戦いを有利に進めたが、連戦の末に夢破れた。

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最終更新:2015年03月02日 01:22
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