「もう、なんなのよこれええっ!
わけわかんないわよ、なんでこんなことしなくちゃいけないのよ!」
ふたば幼稚園に通う園児、桜田ネネは一人憤慨していた。
5歳というまだ幼い年齢ではあるが歳以上に気丈なその幼女は、支給品が入っているモノクマポーチを放り投げ絶叫している。
その目には薄く涙をうかべていたのだが、ネネはそれに気づいてはいなかった。
泣いたら負けと思っていたのか、それともこんなところでないていたらダメとおもっていたのか。
明確な理由は分からない。が、彼女がこの
殺し合いに恐怖を覚えているのは明確であった。
「わけ……わかんないわよ……何よこれぇ……」
ネネは、何がどうなっているのも明確に理解できないまま地面に膝をついて泣きじゃくっていた。
彼女の中には、今まで体験した事のなかった恐怖が駆け巡っており、その恐怖はそのまま顔が表していた。
その顔は、涙と鼻水で顔中を濡らしているただの一介の女の子の顔であった。
「グスッ……うえぇ、しんちゃん、風間くんっ……ボーちゃん……マサオく」
マサオくん――そう言い終わる前にネネの思考は停止した。
幼稚園のみんな――そして母親である桜田もえ子の姿が一瞬脳裏に浮かび――そしてネネの意識は闇にフェードアウトした。
頭の中を激しくシェイクされたようなショック。そして頭の強烈な痛み。
それが、園児桜田ネネが最後に感じた感覚であった。
「ムゥ……しかし、こんな子供までいるとは……
アイツのためとはいえ、罪も無い子供をこんな風に殺すのは――気分が悪いな」
――桜田ネネは頭から血を流して息絶えていた。
死因は金づちでの殴打による脳内出血であろう。
そしてその幼女の死体の前には――血が滴っている金づちを手にした、赤いカエルの姿であった。
そのカエルは目に大きな傷をつけており、体には黒いベルトを巻いている。
そのカエルの名はギロロ伍長と云った。ケロン星という惑星に棲んでいる宇宙人である。
そしてまた、『ガマ星雲第58番惑星宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊突撃兵』という肩書きを持つ軍人でもあった。
彼が殺しを行ったのは――地球に降りてから始めてのことであった。
地球潜入後の初めあたりは、当然地球人は全て抹殺する考えを持っていた。
しかし、なんやかんやあって、皆に振り回されるうちに最終的にはそんな思考は消え、いつのまにか地球人とも普通に会話するようになっていた。
では、なぜそんな彼が殺し合いに乗ろうとしたのか?
その理由は単純明快で、ただ単に愛するものを守るための行動であった。
彼の愛するものの名は日向夏美といい、彼女はただの地球人であった。
ひょんなことからその少女に撃退され、そのままなんとなしに彼女と暮らしてゆくにつれ、彼にはその少女に対する恋愛感情というものが芽生えていたのだった。
共に暮らしてゆくにつれ、彼女を守りたいという気持ちが彼には芽生えるようになった。
その思いは今でも変わらず続いているし、これからも変わることはない事を彼の心の奥では自覚している。
しかしそれは無意識的な自覚であって、それはまだ表面化されてはいない。理由は人種の違いによる軋轢ただ一つであることは間違いないだろう。
いくら敵同士でも、思いがあればいつかは成就できるものだ。しかし人種の違いがそれをさらに加速させているのだ。
日本人とアメリカ人だからとかそんな甘っちょろい話ではなく、人間と宇宙人という明確で、何より大きな違いがある。
だから――彼は思いを伝えぬまま、いや伝えられぬまま愛する者を自らの手を汚してでも守りたい。そんな思いが生まれてしまったのだろう。
この殺し合いの始まりが引き金によって。
「支給品が金づち一つだったのには少し動揺したが、最初に会った人間がまだ子供で助かった。
……あまりいい気はしないが、それでも夏美を守るため……だ。俺はそう決めたはずだ。
手をかけるのが、たとえ仲間でも、昔からの友人だったとしても。俺は……俺が愛したヤツを守りたい。
ガルルやオヤジにこんな俺は見せられんな。最悪、ガルルにも手をかけなければいけなくなる、かもしれないがな……その時は、何がなんでも勝ってみせるさ」
ギロロはそういうとネネのモノクマポーチを拝借し、中身を確認する。
そこには、銃がひとつ入っていた。
それは黒光りする巨大な銃であり、とても常人には扱える代物ではないことが分かった。
当然、ギロロにも扱えるかどうかは分からないが、ないよりかはましかと思い、それを手にとった。
やはりずしりと重く、とても持ってられない。が、使えないわけではないと、そう感じた。
とりあえずその銃をポーチにしまい、彼は
再出発した――
「おめでとうギロロ君!」
「ヌッ!?」
ギロロの目の前に唐突に現れたそれ――それは自分たちを殺し合いの舞台に送り出した張本人――――モノクマであった。
「なんだクマ野郎。何が目的でこんなところに来た?」
モノクマに銃を突きつけるギロロ。その目には抑えきれぬ怒りが映っていた。
「おっと、そんな怖い顔しないでよ。あと、オシオキされたくなかったらそのあぶない銃は下ろすことだね。
ボクがここに来た理由はね。キミにボクからのプレゼントをあげたいからだよ!」
「プレゼント……だと……?」
ギロロは銃を下ろす。
モノクマはそんなギロロを見て、うぷぷぷといつものように笑って見せると、プレゼントの箱を出した。
「ジャジャ~ン!
これは、ボクからのささやかなプレゼントだよ。なぜならキミはこのコロシアイで初めて殺しを遂行した記念すべき者だからね!」
そういうとモノクマは嬉しそうにギロロへのプレゼントの装丁を緩やかに開けていく。
「……そういうことか。その箱には何が入っているんだ?」
ギロロがそう言うか否か、モノクマはプレゼント箱から何らかの機械を取り出す。
「……なんだこれは」
「参加者の位置を示すレーダーだよ。しかも名前判別式のね!」
名前判別式の参加者識別レーダー。
愛する者を捜しているギロロにとってはそれはとても重要なアイテムであった。
「それを使って、どんどん殺しちゃっていってね! その方が盛り上がるしね!
あと、これは言い忘れちゃったんだけど、三人殺すたびにボクからのささやかなプレゼントがあるから期待しててね!
それと、もう一ついい事を教えてあげるよ。ジョーカーの一人をね」
モノクマは笑顔でそう言うと、ギロロのすぐ側に寄り、一人のジョーカーの名を囁いた。
その名を聞いたギロロが愕然とするのに時間は少なくなかった。
日向夏美――ではなかったが、それでもかなりの動揺であった。
「じゃあ、頑張ってね! うぷぷぷぷ……」
モノクマはそう言い残すと、また唐突に姿を消した。
ただ一人取り残された赤き軍人は、動揺を残したまま立ち尽くすだけであった。
そしてふいにギロロは思う。
この選択は、本当に正しかったのだろうか。と――――
【静岡県・エリアC/道路隅の草むら/00:34】
【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】
[状態]:健康、動揺、やや後悔
[装備]:ジャッカル@HELLSING
[道具]:支給品一式、金づち、ジャッカル@HELLSING、識別レーダー
[思考]
基本:夏美を守る。そのためなら殺しも厭わない
1:これで良かった……のか?
2:夏美を捜す
3:まさかアイツがジョーカーとはな……
【桜田ネネ@クレヨンしんちゃん 死亡】
[残り344人]
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最終更新:2013年02月01日 12:47