7話「どうあがいても、絶望」
彼女――牛山サキはアイドルになりたかった。
歌を歌い、踊りを踊り、役者としても活躍し、皆から羨望の的となるアイドルになりたかった。
そのために、自分が出来る限りの努力をしたつもりだった。
だが、現実は時として残酷。事実とは大抵、人を裏切り、傷付ける。
サイン会を開いても一人としてサインを求める者などおらず、
やっとサインを求められたと思いきや、それは借金の連帯保証人の書類。
全く知りもしない赤の他人の借金を背負う事になり、借金取りに追われ、
発表した歌は買う者も聴く者も皆無だった。
そして、今、彼女は
殺し合いの舞台に立たされている。
最後の一人にならなければ、待っているのは、死。
彼女の手には、自分のランダム支給品であるマリーンコンバットナイフが握られている。
深夜の森林地帯を、特に宛ても無く歩き続ける。
(どうして、私はこんな散々な目に遭わなきゃいけないの?
一体私が何をしたって言うのよ? どうしてこんな……)
自分の境遇を恨まずには、呪わずにはいられなかった。
自分は精一杯の努力をしてきたのに、なぜ何一つ報われない?
なぜ、結果に結び付かない?
そういったネガティブ極まり無い思考を延々と頭の中で繰り返していると、
人によっては正常な判断力を失ってしまう事がある。
彼女もその例に漏れなかった。
サキは右手に持った、大きな刃を持ったナイフを見つめる。
見つめる瞳は、平時の彼女を知る者ならば、きっと違和感、そして畏怖の念を覚えたであろう。
「あっ……!」
「!」
気が付くと目の前に、スコップを持った若い男が立っていた。
暗い森の中なので、直前までサキの存在に気が付かなかったのか、
男は少し驚いた表情をしていた。
「え、えと、俺は殺し合いをするつもりは無い。信じて……くれるか?」
男は戦う意思が無い事を訴える。少なくともその表情と口調からは、嘘偽りという言葉は浮かんではこない。
「俺は
宮中秀也って言うんだけど、あー、君は?」
「……牛山サキよ。一応、アイドルやってるんだけど、知ってる?」
「え? うーんと……ごめん、分からない」
サキの問いに、秀也は困り顔で答える。
その答えは、サキが大方予想していた通りのものだった。
サキの表情が曇るのを確認した秀也は嘘でも知っていると言った方が良かったか、と後悔した。
「あ、いいの。いいのよ。そんな人気無いし、知らないのも無理は無いわ」
「う……その、すまなかった」
二人の間に気まずい空気が流れる。
気まずいだけなら、まだ良かったのだが。
「それにね、別にそんな事、今じゃどうでもいいんだ」
「え?」
ドスッ
「がっ、ああ、あっ」
次の瞬間、サキが秀也の懐に潜り込んでいた。
コンバットナイフの刀身が、秀也の腹の中に押し込まれ、赤い血がポタポタと滴り落ちる。
秀也が持っていたスコップを地面に落とすと同時に、サキはコンバットナイフを引き抜く。
「あ……ぐ……」
どす黒い血液が溢れ出る腹を押さえながら、フラフラと後ずさりする秀也。
腹だけでは無い、口からも血は流れ出ていた。
「な、何で、こんな……!?」
苦痛と目眩に苦しみながら、秀也はサキに疑問を投げかける。
しかし、その疑問にサキは答えない。答える代わりに、足早に秀也に近付き、
その胸をコンバットナイフで突き上げる。
「ぎゃっ、あ」
秀也が呻く。そして、それが最期だった。
間も無く秀也はその場に崩れ落ち、しばらくピクピクと痙攣していたが、
やがて草の上に赤黒い血溜まりを作り、動かなくなった。
サキは、血でぬらりと光るコンバットナイフを持ちながら、その様子をただただ見下ろすのみ。
殺人という禁忌を犯した事に対し、サキは何らリアクションを起こす事も無く、
秀也の衣服でコンバットナイフの刀身にべったりと付着した血液を拭い取ると、
後は見向きもせずに、その場を後にした。
◆◆◆
牛山サキと宮中秀也のやりとりから、サキが秀也を殺害するまでの一部始終を、
近くの木の幹の陰から目撃した一人の少女がいた。
いや、二足歩行の、若い雌の狼と言った方が良いだろうか。
「うっひゃ~……あのウシヤマサキって言う人間の女、大胆だなァ」
薄い水色と白の毛皮を持った、獣足型狼獣人の少女。
スマートながらも程良く肉が付いた、中々に魅力的な身体付き。
名前を
リーヴァイと言った。
「やっぱり殺し合いは始まってるんだなァ。お兄ちゃん、大丈夫かな」
彼女は殺人現場を見ても、特に動揺する事は無く、
同じくこの殺し合いに呼ばれている自分の兄の事を気にかける。
彼女と、彼女の兄にとって、人や動物の生き死になど、そう珍しい事では無いからだ。
「多分、簡単には死にはしないとは思うけど、早く見付けなきゃ……」
デイパックを背負い、会場のどこかにいるはずの自分の兄を探し出すために、
リーヴァイは歩き出した。
【宮中秀也@オリキャラ 死亡】
【残り 46人】
【一日目/深夜/C-1森】
【牛山サキ@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和】
[状態]:健康
[装備]:コンバットナイフ
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗る。だが特に優勝を目指したい訳じゃない。
1:私は……。
[備考]:
※単行本第五巻第72幕「家族会議」より後からの参戦です。
※リーヴァイの存在には気付いていません。また、リーヴァイとは別方向に進んでいます。
【リーヴァイ@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[所持品]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2個
[思考・行動]:
0:殺し合い? うーん別にするつもりは……。
1:お兄ちゃんどこカナー。
2:ウシヤマサキ(牛山サキ)には要注意。
[備考]:
※牛山サキの名前と容姿を把握しました。また、牛山サキとは別方向に進んでいます。
※C-1森に宮中秀也の死体、スコップ、デイパックが放置されています。
宮中秀也のデイパックの中身=基本支給品一式
≪オリキャラ紹介≫
【名前】宮中秀也(みやなか・ひでや)
【年齢】24
【性別】男
【職業】ネットカフェ店員
【性格】当たり障りの無い、基本的に善人
【身体的特徴】黒髪の青年。平凡な顔立ち
【服装】白いジャケットに黄色いYシャツ、ジーンズ
【趣味】インターネット
【特技】パソコンに詳しい
【経歴】平凡な家庭で育つ。これと言って特筆事項無し
【備考】一般人
【名前】リーヴァイ
【年齢】18
【性別】女
【職業】野生の人狼
【性格】朗らかで明るく、ちょっと子供っぽい
【身体的特徴】薄い水色と白の毛皮を持った獣足型狼獣人。魅力的なスタイル
【服装】全裸
【趣味】ボール遊び、兄と遊ぶ事(健全、性的共に)
【特技】兄から手ほどきを受けた格闘術。結構強い
【経歴】人間が捨てたエロ本で性の知識を養った
【備考】
ヴォルフという2歳年上の義理の兄がいる。
肉体関係を持っているが、本人曰く、血は繋がっていないので近親相姦にはならないとの事
≪支給品紹介≫
【コンバットナイフ】
ファイティングナイフとも呼ばれる大型の軍用ナイフ。
【スコップ】
穴を掘ったり土砂や雪をすくって持ち上げる時に使う道具。
ちなみに東日本では「スコップ」と呼ばれる事が多いが、
西日本では「シャベル」と呼ばれる事が多いとか。
最終更新:2010年01月18日 23:14