夢のまた夢

42話「夢のまた夢」

私、レイ・ブランチャードが銃に興味を持ち始めたのはいつ頃だっただろうか。
そうだな、確か5歳の時には既に前装式と後装式の違いを知っていた。
10歳になる頃にはリボルバー拳銃、オートマチック拳銃のノウハウ、扱い方をマスター。
14歳で初めて銃を自作、そして今では……恐らく大抵の銃器は扱えると言える。
それもこれもガンナーだった父の影響だろうな。

「重たいな……」

エリアD-1の市街地、とある空き地にて、私は自分に支給された武器の一つ、
超大型リボルバーの「フェイファー ツェリザカ」なる物を試し撃ちしようとしていた。
しかしこのツェリザカ、かなり重い。重過ぎる。こんな重量のある物を「拳銃」と呼んでいいのだろうか。
様々な銃器の名称や外見を知ってはいたがこれは初めて見た。
弾薬の薬莢の長さ、つまり発射薬の量、これはライフルの弾とほぼ同等だぞ……。

まあともかく撃ってみない事には何も始まらないな。
目の前のブロック塀に向け、向け、て……お、重い! 構えて保持するだけでも一苦労だ!
いかん、これは反動半端じゃないかもしれない。

しっかり構えて……引き金を、引いた。


ドゴオオオン!!


爆発音のような音と共に着弾地点のブロックが粉々に粉砕された。
確かに反動がきつい、が、思っていた程では無い。
しっかり保持してさえいれば何とか抑え込めるぐらいではあるな。
威力も高いし使用する価値は十分にあるだろう、が……主力には出来ないな。
使い勝手ならばもう一つの支給品であるオートマチック、Cz75の方が良い。

ツェリザカをデイパックの中にしまい、腰紐に差し込んでおいたCz75を装備する。
さっきの銃声で殺し合いに乗っている奴に気付かれたかもしれない。
とりあえずここを離れよう、そうだな。どこに行くとするか……。

……ん?


◆◆◆


……いつの間にか周りは民家やお店が建ち並ぶ閑静な住宅地。
私が人殺しを犯した森は、背後の遠くの方に広がってる。随分歩いたなあ。

私は――私はアイドルになりたかった。だから色々頑張ってきたけど、
結局何も実らず、一人のファンも出来ず、サインも求められず、
やっとサインを求められたと思ったらそれは連帯保証人の書類で、
言われ無き800万円以上の借金を背負う羽目になる。当然私はそんな大金持っていない。
出したCDも全く売れないし、久々に里帰りしたら両親のやってる弁当屋が潰れていたりして。

別に悲劇のヒロイン気取る気は無いけどかなり悲惨な目に遭ってるよね私。

そして今度は殺し合いと来た。もう、最悪を遥かに通り越してるよね。
知り合いが一人も呼ばれて無いのは良かったけど。
私の右手には鋭利なコンバットナイフ。これで知らない男を一人殺した。
でも、大丈夫だよね? これは殺し合い。それがルールなんだから、誰も咎めたりなんてしないよね。
私はまだ死にたくない。最後の一人にならなきゃ生きて帰れないって言うなら、
そうしてやるわよ。

ドゴオオオン!!

「! な、何!?」

突然爆発音のような音が周囲に響いた。
思わず地面に伏せる私。

「………」

しばらくして、何とも無い事を確認すると、辺りを気にしながらゆっくりと立ち上がった。
一体何だったのさっきの音は、しかも結構近くから聞こえたような気が…。

「あ…」

前方の工事用の塀に囲まれた場所から他参加者の姿を見付けた。
何だろう、どうやら女の人みたいだけど、まるでRPGの世界に出てくるような格好をしている。
凄いいいスタイル、私もあんなだったらなあ。
どうやらまだ私には気付いて無いみたい、殺るなら今…!
私は女性に向かって無言で走って近付き、コンバットナイフを振り被った。
1、2メートル手前で女性が気付いたけども、この間合いならもう私のもの。
コンバットナイフを思い切り振り下ろし、女性の首に刺さ――らない。

「えっ」

コンバットナイフを持った私の右手は女性の左手で受け止められていた。
と同時に私のお腹に何かが押し当てられる。
顔を下に向けて見てみると、女性の右手に握られた黒っぽい――。

ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!!

え?
何、今の音…え…何、何だか、お腹




うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

「ごぼっ、があ、あああああああ、痛い痛い痛い痛いっ痛いよおおおお」

血が、血が止まらない、止まらないよ!

ちょっと待って、そんな、痛い、痛い、痛いっ、あ、足から力が抜けっ、てっ

死、ぬの? わ、た、し、死ぬの??? い、嫌だ、死に、たくない、

嫌、嫌、嫌、お願っ、いい、だ、誰、かっ、た、す、けてっ助け、て。

い、いった、わたしが、何、した、て、言う、の? ねっえ、ど、してっわ、た、しがっ、こ、んな、目に、いっ、

助けて、助けっ、て、マネージャー、社長、お父さん、お母さん、だっ、誰で、も、いい、からっ。



もう、ア、イドルに、なん、て、なれ、なくて、も、いい、か、ら、生き、たい、よ



ドンッ!!


◆◆◆


――何も殺す事は無かっただろうか。しかしこの女は間違い無く私を殺す気でいた。
始めからそのつもりだったのか、それとも錯乱でもしていたのかは知らないが…。

腹に五発、頭に一発、Cz75の9ミリパラベラムを撃ち込んでやった。
腹部に受けた時点で女は苦しみながら撃たれた所を両手で押さえ地面に膝を突いた。
そして止めに頭を撃ち抜いた。見事に貫通部分から脳漿が噴出したな。
今までエンカウントモンスターの頭部を撃ち抜いた事は何度もあるが、
人間は……初めてだ。良い気分はしない。当然か。

気が引けるが、女の持っているデイパックの中身を調べる。
女が使ったコンバットナイフ以外にランダム支給品は無いようだ。
水と食糧、そしてナイフを貰っておこう。

「……すまんな」

地面の上に横たわる、最早頭部が直視出来ない程損壊した女の死体を見下ろしながら言う。
この女もこの狂ったゲームの犠牲者の一人、自分の日常があっただろうに。
最も、人生を終わらせたのは、私だが。

それでは当初の目的、これからの行き先を考える事に戻ろう。
地図によれば東に行けばホテル、南に行けば繁華街になるらしい。
仲間集め、及びリックの捜索をこなすためにはどこへ行くのが良いか。
それに、数時間前に拾った、惨殺された少女の首輪もよく調べたい。
上手くすれば首輪解除のヒントにも成り得る。

「…さて…これからどこに行くべき、か」


【牛山サキ@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和  死亡】
【残り  35人】


【一日目/黎明/D-1市街地】

【レイ・ブランチャード@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:Cz75(10/15)
[所持品]:基本支給品一式、Cz75の予備マガジン(5)、フェイファー ツェリザカ(4/5)、
600NE弾(10)、コンバットナイフ、牛山サキの水と食糧、西川のり子の首輪
[思考・行動]:
0:殺し合いには乗らない。ゲームの転覆を目指す。
1:これからどこへ行こうか。
2:リックを探す。同時に仲間も集める。
3:拾った首輪を調べる。
4:殺し合いに乗っている者には容赦し な い 。


※D-1に銃声が響きました。
※D-1市街地に牛山サキの死体とデイパックが放置されています。
デイパックの中身=水と食糧抜きの基本支給品一式


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最終更新:2010年02月13日 22:21
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