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帰ってきた朝倉涼子

ふふ、なるほどね。
一度消滅させられた私をわざわざ再構築したということは、頭のお堅い主流派がようやく急進派に賛同したってことだよね。
つまり、殺し合いという題目の下、情報統合思念体自らが涼宮ハルヒに直接的なアプローチをかけたってわけか。
特に命令が下されないところを考えると、私の好きにしろっていうことかしら? 長門有希も同様? 上の方とのコンタクトが取れないからまだ何とも言えないけど、なんだか面白そうね。
――さて、涼宮ハルヒはこれにどう対処するのかな。
多分、彼女のことだからこの状況を楽しんでいるかもしれないわね。
だけどキョンくんや朝比奈みくるの存在が彼女の理性に枷を掛けている可能性の方が高いかな?
なら、そうよね。観測の邪魔になるような連中はやっぱり殺すしかないよね。
上の趣向はよく理解できないけど、こういう楽しそうなゲームって、一度やってみたかったのよ。
……思いっきり羽を伸ばせる機会なんて、長門有希のバックアップにしかすぎない私にはなかったからね。
観覧車の小さな格子窓から展望できる、みやびで芳しい遊園地の情景をのんびりと眺めながら、私は手元のデイパックを漁る。
一見して、とても凄惨な殺し合いなど起こりそうにもない、長閑な風景の狭間で、血で血を洗う駆け引きが行われていると考えると、何とも滑稽よね。
――あ、あったあった。
えーと、一つ目の支給品は「斬鉄剣」。
同参加者、石川五ェ門の愛刀。こんにゃく以外の全ての物質を技量次第で斬り伏せられる、か……有機生命体の生み出す武器って凄いのか凄くないのかよくわからないよね。
二つ目はなんの変哲もない「携帯電話」。
これも参加者の一人、カール・P・アッチョの所持品だったものらしいけど、私には宝の持ち腐れね。電波は通っているけど、かける相手なんていないもの。
そして最後は「通り抜けフープ」。
これは素晴らしいわね。どんなに厚い壁でも、空間をねじ曲げて貫通させるなんて。持ち主の有機生命体――ドラえもんとやらには要注意ね。
――それにしても、ずいぶんと有用な支給品が当たったね。素手なら兎も角、この刀さえあればキョンくんたちに致命的な損傷を与えることもできるし。

「ふふふ……ん?」
私が一人ほくそ笑みながらゴンドラを降りると、観覧車乗り場の前でうつ伏せになって倒れている一人の少女を見つけた。
小さな体躯に、まるでホラー映画に出てくる幽霊のように長い黒髪……校章のプリントされたジャージを着ているところを見ると、おそらく小中学生あたりなのだろう。
表情は窺えないが、彼女から2mほど離れた場所からでも聞き取れるほど呼吸が荒い――激しい動悸に見舞われていることがよくわかる。
「う……あ……」
「……あなた、大丈夫? しっかりして」
私は警戒しつつ少女の身体を抱き起こす。

――とりあえず、今のところは優等生を演じてようかな。
涼宮ハルヒの反応を窺うためにも、キョンくんと朝比奈みくるは確実に仕留めなければならない。
それなのに、ただでさえ驚異のオーバーテクノロジーを有した未知の存在が殺し合いに参加している中で、無闇に殺して回って余計な私怨を買ったんじゃ、ミイラ取りがミイラにされかねないもの。
最初は他者の信頼を勝ち取り、優等生として振る舞いつつ、キョンくんたちをゆっくりと捜す――これなら、安全かつ効率的に任務を遂行できるわ。
まあ、この娘が情報爆発の鍵として使えるようなら殺しちゃうけどね。
「あ……」
「どうしたの? どこか具合でも悪い?」
「……引き籠もりたい」
「え?」
「どこか……建物の中に……」
「よくわかんないけど、観覧車の中でもいい?」
「うん……」
変わった要求をするなぁと、有機生命体の不可思議さに感嘆しながら、私は彼女を胸元に抱えて元居たゴンドラに引き返す。

――あーあ、30分、無駄になっちゃうな。


「どう、落ち着いた?」
「うん……大分楽になった。ありがとう」座席にちょこんと正座しながら、少女は仰々しく私に向けて頭を下げる。その姿や、まるで可愛らしい日本人形のよう。
「どういたしまして。ところであなた、どうしてあんな所に倒れてたの?」
私が尋ねると、
「……私、全然外に出ないから、引き籠もってないと辛いの。
けど、この辺りってどこも屋外アトラクションばかりで……公衆トイレとかレストランは遠くにあるし、どうしようもなくて」
と、紅葉を散りばめたかのように顔を真っ赤に染め、はにかみながら言った。

――おかしな有機生命体もいたものね。
とりあえず「大変だったね」と愛想笑いを振りまき、私は自己紹介と並行して彼女の素性を聞き出すことにした。


彼女の名前は小森霧。
意外なことに涼宮ハルヒやキョンくんより一歳年上らしい。
何故自分が殺し合いに参加させられているのかわからないとのこと。ちなみに彼女のクラスメートも参加しているそうだ。
それと、彼女の支給品も、頼んだら気兼ねなく見せてもらえた。「THE LOCK」という奇妙なカードと、照射される光を浴びることによってどのような環境にも身体を順応させる「テキオー灯」の二つ。
しかし、ここでもドラえもんの名前が出てくるなんてね。ますます警戒しないと。


「――みんな、大丈夫かな」
「元気だして。きっと無事だよ」
「ううん。誰か殺してないか、心配なの」
心配そうに俯く小森ちゃんに私は微笑みかけるけど、予想だにしない答えにこっちが固まっちゃった。

――ふふ、なかなか刺激的なのね、昨今の有機生命体は。

「ユニークなんだね、あなたの友達って」
「うん……みんなおかしいんだよ。先生なんていつも自殺しようとするし」
「へえ」
「可符香ちゃんはメンヘラでしょ、千里ちゃんは猟奇趣味があるし、まといちゃんはストーカーで……奈美ちゃんは普通。他にも沢山いるんだよ?」
「ふうん……奇遇だね。私の周りにも、変な人が沢山いるんだ」
「そうなんだ。どんな人たちなの?」
「宇宙人に未来人に超能力者。それに神さまかな」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ぷっ……あはは! ほんとに変わった人たちだね?」
「ふふ、そうだね。でも真実だよ?」
「そうなんだ……それじゃあ可符香ちゃん、喜ぶだろうなぁ。ポロロッカ星人じゃないけど、宇宙人の知り合いがいるって知ったら」
「ポロロッカ星人って?」
「ああ、ポロロッカ星人っていうのはね――」


【遊園地/1日目/06:52】

【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:デイパック
[道具]:斬鉄剣@ルパン三世/携帯電話@うえきの法則/通り抜けフープ@ドラえもん
[思考]
第一行動方針:キョンくんと朝比奈みくるを殺さないとね
第二行動方針:長門有希と合流したいわね
基本行動方針:情報爆発を観測しましょ

【小森霧@さよなら絶望先生】
[状態]:精神的に辛い
[装備]:デイパック
[道具]:THE LOCK@カードキャプターさくら/テキオー灯@ドラえもん
[思考]
第一行動方針:涼子さんについていこうかな
第二行動方針:先生に会いたいな
第三行動方針:みんなを捜さないと
基本行動方針:みんなと一緒に学校に帰る

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最終更新:2008年09月24日 15:35
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