猫族ハーフと愛媛のチンパン

35話「猫族ハーフと愛媛のチンパン」


E‐3に存在するとある二階建ての民家。
今ここにはこの殺し合いの参加者二人が身を潜めている。
一人はシルヴィア。白髪ボブカットの猫耳猫尻尾が生えた学生服姿の美少女。
もう一人は永井浩二。30歳を目前にして無職の日本愛媛県在住の男の子。
二人は一時間程前に同じエリア内にある雑居ビルで遭遇した。
浩二が和服姿の青年に殺されかけている所をシルヴィアが自分のランダム支給品である麻酔銃を使って助け、
そして今隠れているこの民家に辿り着いた。

「何してんの浩二」
「いや煙草無いかなと思って」

そう言いながらリビングのダッシュボードを漁る永井。
シルヴィアはそんな永井の様子を半ば呆れた表情で見ていた。
と言うのもこの永井浩二という男、現在自分がいつ、誰に襲われるか、
いつ死ぬのか分からない「殺し合い」という状況下にいるというのにまるで緊張感や真剣さが感じられないのだ。

「お、あったあった……あー? 何か見た事ねぇ銘柄だけど、まあええか」

お目当ての煙草を見付け上機嫌になる永井。
すぐにリビングの椅子に座って煙草を吹かす。

「あーうまいわ。シルヴィアもどう?」
「私、まだ未成年なんだけど」
「あーそうか」
「……アンタさあ、本当緊張感とか恐怖心とかそういうの無いね」
「死にたくはないけどな」
「……」

こいつ、助けなくても良かったな、と、心の中でシルヴィアが愚痴る。
しかし助けてしまったものは仕方無い。

「でもアンタ、結構いい武器支給されてて良かったじゃん」
「そやけど……これ本物なん? エアガンじゃねーの?」
「本物だよ……見てみ、金属製じゃないの」

テーブルの上には二人のデイパックとシルヴィアの麻酔銃「ドミネーター」、
そして永井の前には二丁の自動拳銃とそれぞれの予備マガジンが置かれている。
「ベレッタM92FS」と「シグ ザウエルP228」である。
どちらも多装弾――ベレッタが15発でザウエルが13発――で、扱いやすい自動拳銃である。
この二つは永井の支給品であった。

「ベレッタの方欲しいんだけど? 麻酔銃だけじゃ戦えないし」

二つある自動拳銃の内、より装弾数の多いベレッタを譲ってくれるよう永井に頼む。
麻酔銃しか持っていないシルヴィアにとって護身用の武器は欲しい所。
棒術が得意なので棒状のような物があれば良かったのだが。
そして殺し合いにおける銃器の重要性を分かっていない永井はあっさりそれを承諾した。

「ええよ。じゃあ俺はこっちのザウエルとかいう奴か」

煙草を咥えながらザウエルを手に取り観察する永井。
硬い金属の質感と重量が手から伝わり、さしもの永井もこれがプラスチックのBB弾を使う玩具では無い事を悟る。
今自分の右手に握られているのは本物の銃。
引き金を引けば音速の速さで鉛の弾頭が銃口から発射され、目標を抉る。
そう考えると少し怖かった。

「それにしてもシルヴィア、お前前にも殺し合いした事あるって本当なん?
しかも一回死んでるって」

ザウエルをテーブルの上に置き、永井がシルヴィアに訊く。

「本当だよ。まさかこんな幸せゲームを二回も出来るとは思わなかったね」
「死んだ時って、どうなん? どんな感じなん? やっぱ走馬灯とかある?」
「……似たようなものならあったよ。アンタも一回死んでみれば分かる」
「遠慮しとくわ」

苦笑いしながら永井が言う。

「んで、これからどーすん? はっきり言ってこっから動きたく無いんだが」
「そりゃあ、勿論、この殺し合いを何とかして潰す気でいるよ。そのために仲間集めだな。
兎にも角にもこの首にはめられている首輪、こいつを何とかして外さないと。
それとこの殺し合いに呼ばれてるクラスメイトとも合流したいしさ」
「さっき話してくれた奴らか。こんなん言うのも悪いけど、そいつら信用出来るんか?」
「んー……太田と吉良以外は大丈夫だと思うよ。多分、だけど」

自信無さげにシルヴィアが答える。
と言うのも彼女は過去の自分の体験から、クラスメイトに対して非常に威圧的な態度を取る事が多く、
友人、と辛うじて言えるのは自分に積極的に話し掛けてきてくれた、
同じ猫族ハーフ――と言っても外見は完全に猫族そのものだが――のサーシャぐらいしかおらず、
他のクラスメイトとはあまり良い関係では無かったためだ。
今回の殺し合いに呼ばれているクラスメイトの中で、サーシャと森屋は何とかなるかもしれないが、
他の6人、エルフィ、太田太郎丸忠信、北沢樹里、吉良邑子、ノーチラス、フラウは、
自分に対してどういう対応に出るのか分からなかった(特に太田と吉良)。

「うーんまあええか。経験者のお前の言う事に従うわ」
「どうも……」

気付けば既に何本も煙草を吸い終わっている永井。
この男は相当なヘビースモーカーなのだろうと、シルヴィアは思った。

「んじゃ永井。後十分ぐらいしたらここを出発したいんだけど」
「えーどこに行くん? あんま遠いトコやったら嫌なんだがマジで」
「……お前さっき『経験者の言う事聞く』みてぇな事言ってただろうが!!」

この凸凹コンビの今後は如何に。




【一日目/黎明/E-3市街地民家一階リビング】

【シルヴィア@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92FS(15/15)
[所持品]:基本支給品一式、ベレッタM92FSの予備マガジン(5)、
ドミネーター(0/1)、麻酔弾(4)
[思考・行動]:
0:殺し合いはしない。ゲームを潰す。
1:永井浩二と行動。
2:クラスメイト(特にサーシャ、森屋英太)との合流を目指す。
3:もう少し強力な武器が欲しい。
4:着物の若い男(曽良)を警戒。
[備考]:
※本編死亡後からの参戦です。

【永井浩二@永井先生】
[状態]:健康、喫煙中
[装備]:シグ ザウエルP228(13/13)
[所持品]:基本支給品一式、シグ ザウエルP228の予備マガジン(5)
[思考・行動]:
0:殺し合いなんかしたくねーよ。死にたくも無いし。
1:シルヴィアと行動を共にする。
2:博之はおらんみたいやな。
3:着物の若い男(曽良)を警戒。
[備考]:
※2007年当時からの参戦です。
※シルヴィアのクラスメイト(エルフィ、太田太郎丸忠信、北沢樹里、吉良邑子、サーシャ、
ノーチラス、フラウ、森屋英太)のおおよその特徴を把握しました。


≪支給品紹介≫
【ベレッタM92FS】
多くの国の軍や警察といった公的機関で採用されている、信頼性の高い自動拳銃の名銃。
本ロワに登場するM92FSはスライド脱落事故防止のために耐久性向上がなされた改良版。
撃鉄部分が大きく露出しているのが特徴。

【シグ ザウエルP228】
スイスのシグ社の堅牢な自動拳銃・シグ ザウエルP226の小型モデル。
コンパクトかつ13発と多装弾で、信頼性も高い。





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最終更新:2010年02月09日 01:13
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