がんばれ聖徳太子

36話「がんばれ聖徳太子」


あの矢を発射する見た事も無い武器を持った少女に追われ何とかそれを振り切った後、
私はある高い建物の出入口付近で自分の支給品の確認していた。
基本支給品の他に入っていたのは「狩猟用狙撃銃」と予備弾、そして「トレンチコート」という変わった外見の衣服だった。
少し肌寒いからな、トレンチコートをジャージの上に着よう。
狩猟用狙撃銃を装備し、トレンチコートを羽織り、私は再び妹子を捜し始めた。
少しずつ空が明るくなり始めているようだ。現在の時刻は午前2時50分。
いつもなら完璧に寝ている時間だ……。

それにしてもこの街の住人は一体どこへ行ってしまったのだろう。
この殺し合いが開催されるという事で、皆避難したのだろうか。
いや、というよりこの殺し合いの会場は倭国のどこかなのか? しかし店の看板には倭国の言葉が書かれているしな。
むう……考えても仕方無いか。

妹子の奴はまだ生きているのだろうか? 私も妹子も戦いなどまるで無縁だ。
あいつは賢い部分があるから、殺し合いに乗っている奴と出くわしても上手く立ち回ると信じたいが。

「……!?」

ある曲がり角を曲がった瞬間、私はその場で硬直して動けなくなってしまった。

そこに、私の知り得る常識では考えられないような生き物が立っていたのだ。
紫がかった黒と赤の毛皮を持った、まるで角の生えた蜥蜴のような頭部と鳥のような翼を持った、異形。
身体付きからして恐らく女性、いや、雌と思われる。
首に街灯の光を反射する首輪がはめられている事や、デイパックを所持している事から、
どうやら参加者の一人であるらしい。

「……私はレオーネ
「何?」

目の前の怪物が言葉を発した。しかも少女の声だ。
私は少し戸惑ったが、どうやら意思の疎通が可能なようだ。
思い切って話してみる事にした。

「れ、レオーネと言うのか君は? 私は聖徳太子。これでも倭国の摂政だ。
名前ぐらいは聞いた事あるだろう?」
「……知らないなあ」

し、知らないだと!? 倭国の最高権力者であるこの私の事を知らないとは、
余程の田舎で生まれ育ったのか? 倭国語を話しているのだから倭国に住んでいると思うのだが。

「聖徳太子さん」
「ん? な、何だ?」
「私、お腹空いたの。だからちょっと前に、デイパックの中に入ってたパンと、女の子を食べたんだけど」

空腹なのか。パンと女の子……。

――今何て言った?

「え? 女の子、て?」
「だから、その辺歩いてた女の子を食べたの。おいしかったなあ。筋肉も内臓も新鮮で。
血もとても喉越しが良かったし」

よく見れば、レオーネの口元と胸元は、赤黒い液体か何かで汚れている。
ちょ、ちょっと待て、まさかこいつは……!

「人を、人を食ったのか!?」
「そうだよ。何? 何か変な事あるの?」

食人の事をさも当たり前のように語るレオーネ。
その表情からは罪悪感や後悔といった感情は全く感じられない。
私はもしや、非常に危険な人物と出くわしてしまったのか!?

「あ、そうそう、私の支給品の一つ見せてあげる」

そう言うとレオーネは自分のデイパックから何やら、私が持っている狩猟用狙撃銃と形状が似たような物を取り出した。

「九九式小銃だって。中々アタリの武器だと思わない?」
「う……」

そうは言われても、私は「銃」なる物についてよく分からないのでコメントしようが無いのだが。

「他にもあるんだけどね、とりあえずコレだけ。まだ試し撃ちしてなくてさ。だから……」

次の瞬間。
レオーネは左手に持った九九式小銃の銃口を私の方へ向けた。

「聖徳太子さん、あなたで試させて♪」


ダァァァン!!


数瞬前、私が立っていた地面に、小さな穴が空いた。

「あーん何で動いちゃうの~?」
「う、動くに決まっているだろ!! 私はまだ死にたくないんだッ!!」

叫びながら、私は狩猟用狙撃銃をレオーネに向けて構える。
さっきの言動とたった今の銃撃で私が導き出した答え。
このレオーネという獣竜は、殺し合いに乗っているか或いは殺人を平然と行う非常に危険な人物だ。間違い無い。
少なくとも私を殺す気でいる事は確かだ。だが黙って殺されるような私では無いぞ!
私はレオーネに向け、狩猟用狙撃銃の引き金を引いた。
銃声が響き、肩に反動が来る。

「ガアッ!!」

レオーネの腹部から血が噴き出した。
苦鳴を上げ、左手で腹部を押さえるレオーネだったが、すぐに怒りに満ちた獣の形相で私を睨んできた。

「痛い、じゃない。何するのよ」

先程までののんびりとした口調はどこへ。背筋が凍るようなドスの利いた声だった。
薄々予想はしていたが、やはり強靭な生命力を持っているらしい。一発じゃ無理か。
これは無理に戦わない方がいいかもしれない。

少々無様だが、私は左側方の道路に向かって走り出した。


意外にも、追ってくると思っていたレオーネの姿は無かった。
走り続けたため乱れる呼吸を整えながら、デイパックからデバイスなる小さな機械を取り出し、現在位置を確認する。
どうやら今自分がいる地点はエリアE-1とE-2ぼ境界線付近らしい。

しかしまさかさっきのレオーネのような怪物まで参加者にいるとは。
思想も身体能力も危険な奴が他にもいるんじゃないだろうか。
こうなるとますます妹子の事が心配だ。早い所見付け出さないとな。

「全く、本当に面倒な事になってしまった……」

狩猟用狙撃銃を構えながら、私はエリアE-2の方に続く道路を歩き出した。


【一日目/黎明/E-1とE-2の境界線付近】

【聖徳太子@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和】
[状態]:肉体的疲労(小)、烏帽子無し、E-2方面へ移動中
[装備]:狩猟用狙撃銃@SIREN(4/5)、トレンチコート
[所持品]:基本支給品一式、7.62㎜×51㎜弾(30)
[思考・行動]:
0:このゲームを滅茶苦茶にしてやる!
1:妹子はどこにいるんだ?
2:レオーネに注意。
[備考]:
※単行本第九巻第168幕「聖徳太子の持っている木の棒」より後からの参戦です。
※レオーネを危険人物と判断しました。


◆◆◆


私――レオーネは、さっきの聖徳太子と名乗った人間の男が作った、
腹部の貫通銃創をさすっていた。
血は止まったようだけど、治癒には少し時間が掛かりそう。
聖徳太子は逃げたけど、別に追わなくてもいいと思ったから追わなかった。
わざわざ深追いする気にもならなかったし。
撃たれた時はちょっとムカついたけど。

私自身の支給品は今装備している九九式小銃とその予備弾。
そしてこの殺し合いが始まってすぐぐらいに出会って、食べちゃった人間の女の子のデイパック。
中には基本支給品一式の他にワルサー カンプピストルと予備の専用炸裂弾三つと、
アサルトライフルである64式小銃と予備マガジンが五個入っていた。
水と食糧、そしてランダム支給品を抜き取って女の子のデイパックは捨てちゃった。

カンプピストルは高威力だけど予備の弾が少ないし、64式小銃は連射が出来るけど弾の消費が早いから、
余り乱用は控えた方がいいわね。
単発式の九九式小銃を主力に使っていこう。ちょっと装填とか面倒だけど。
予備弾をいつでも取り出せる状態にしておかなくちゃ。

「さてと」

私は九九式小銃を装備し、他参加者の姿を求めて再び市街地を歩み始めた。


【一日目/黎明/E-1市街地表通り】

【レオーネ@オリキャラ】
[状態]:腹部に貫通銃創(治癒中)、口と身体が血塗れ
[装備]:九九式小銃(4/5)
[所持品]:基本支給品一式(水と食糧完全消費)、7.7㎜×58㎜弾(30)、
ワルサー カンプピストル(1/1)、26.6㎜炸裂弾(3)、64式小銃(20/20)、
64式小銃の予備マガジン(5)
[思考・行動]:
0:とりあえず出会った人から順番に殺していく。
1:次はどこへ行こうかな。
[備考]:
※聖徳太子の名前と容姿を把握しました。
※西川のり子のデイパックは放棄したようです。
※聖徳太子とは別の方向へ向かっています。


※E-1一帯に銃声が響きました。


≪支給品紹介≫
【狩猟用狙撃銃@SIREN】
狩猟用として広く普及しているボルトアクション式狙撃銃。
ゲーム中においては主人公・須田恭也が終盤に入手し使用する。

【トレンチコート】
冬季用のコートの一種。ウエスト位置のベルトが特徴。

【九九式小銃】
第二次世界大戦開戦の年である1939年(皇紀2599年)に日本軍制式となったボルトアクション小銃。
初期型の評価は高いが後期型になるにつれ戦時急造型が目立ち総合的な評価は低め。
本ロワに登場する物は九九式長小銃で、性能が高いとされる初期型を忠実に復元した物。

【ワルサー カンプピストル】
1930年代に開発された信号拳銃を擲弾(グレネード)用拳銃に改良したもの。
「カンプ」とは製造国であるドイツ語で「闘争」という意味。

【64式小銃】
1964年に自衛隊制式となった国産突撃銃。
反動を抑えるため発射薬の少ない減装弾を使用している。
構造にクセがあり分解整備には熟練を要する。
現在は後継である89式小銃に更新が進んでいるが未だに現役。




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最終更新:2010年02月03日 00:10
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