51話「病院血戦」
紫がかった黒い毛皮を持つ雌の獣竜、
レオーネは明朝の市街地の上空を飛行していた。
久々に自分の翼で空を飛び、また、先刻戦った聖徳太子と名乗ったトレンチコート姿の男に撃たれた腹部の傷もほぼ治り掛けていたので、レオーネは上機嫌だった。
「空を飛ぶって気持ち良いねー」
空から人気も無く明かりもほとんど無い市街地を見下ろし、獲物となる他参加者の姿を探す。
かなり明るくなり、視界も利くようになっていたが、道路や建物の屋上などに動く影は見当たらない。
「すぐ見つかると思ったけど、いないなあ…おや、あそこにある建物は病院では無いですか」
前方に緑色の十字マークが掲げられた白い建物を発見する。
あそこなら人がいる可能性が高いと考えたレオーネは、病院を着陸地点に定め、ゆっくり降下を開始した。
病院の正面玄関に辿り着いた和服姿の青年、曽良。
彼の生きる世界ではまだ存在し得ない白いコンクリート製の建物を見上げる。
そして、正面のガラス扉に近付き、取っ手に手を掛け押し開けた。
「暗いな…」
曽良を出迎えたのは非常灯しか明かりが灯っていない受付ロビー。
長椅子や雑誌、新聞が収められたキャビネット、観葉植物、テレビ、そして受付。
何もかもが曽良には初めて見る物だった。
だが今の彼はそんな事に気を取られている余裕など無い。
病院内を調べるために奥へ進もうと、数歩進んだ、その時だった。
「…誰だ」
「!!」
奥の暗闇に包まれた廊下から、男の声が聞こえ、曽良は咄嗟に身構える。
歩いて曽良から顔を視認出来る位置まで出て来たのは、白衣姿の男。
右手には曽良が持っている物より若干大型の刀が握られている。
「この
殺し合いの参加者か。その刀で、誰かを殺そうとしているのか?」
「…刀を持っている奴に言われたく無いが、ああ、そうだ。俺は殺し合いに乗っている。
アンタはどうなんだ? 見た感じ穏やかじゃないな」
「俺か…俺も、殺し合いに乗っている。今から外に出て他の参加者を探そうと思っていたんだ。
だが、そこにお前が現れた。丁度良い」
白衣の男は両手で刀を構え、戦闘態勢を取る。
「最初の獲物はお前にしよう」
「それはこっちの台詞だ。もっとも、俺はもう一人殺しているけどな」
応じるように、曽良も腰に差した刀を抜く。
そしてしばらく二人は互いに睨み合ったまま動かない。
お互いに隙を窺い、不意を突こうとしている。二人共、刀に関しては素人だったので打ち合いは避けたかったのだ。
「……せえいっ!」
「くっ!」
先に動いたのは曽良。刀を振り被り、男に斬り掛かる。
すかさず男は刀で防ぎ、鍔迫り合いが始まった。
ガチガチと刃と刃がぶつかり合い、擦れる嫌な音が静かなロビーに響いた。
「そう言えば名前を聞いていなかったな…俺は、曽良だ。アンタは」
「…宮田司郎」
「宮田、か。覚えた…!」
互いに自己紹介を終えた所で一旦双方が距離を取る。
そして曽良と宮田と名乗った白衣の男は再び、刀の切っ先を向け合いながら睨み合う。
正に生きるか死ぬかの真剣勝負。空気がとても張り詰めていた。
「お邪魔しまーす」
「!」
「何だ!?」
その張り詰めた空気を壊したのは、突如入口の方から響いた少女の声。
二人が声のした方向を向いた途端、その表情が固まった。
「な、何だあいつは? 人間、ではないな…」
「お前、何者だ!?」
「レオーネと言います。貴方達を殺しに来ました」
明るい口調で堂々と殺戮宣言を行うレオーネと名乗る雌の獣竜。
予期せぬ闖入者に曽良と宮田の二人はついさっきまで戦っていた事も忘れ、顔を見合わせる。
だがすぐにレオーネの方へ敵意剥き出しの眼差しを向けた。
レオーネは「殺しに来た」と言っていた。つまり、ほぼ間違い無く殺し合いに乗っている。
そして曽良はレオーネが右手に持っている火縄銃に似た武器らしき物を確認した。
(まずいな。このままだとあのレオーネとかいう化け物にやられるかもしれない。
…待てよ? アレが使えるんじゃ無いか…!?)
曽良の頭にある閃きが起きる。
懐に手を突っ込むと、曽良は小さなナイフを取り出し、切っ先をレオーネに向けた。
「ん? 何なの、それ――ガアアアッ!?」
次の瞬間、ナイフから刀身が音速の速さで射出され、レオーネの右肩に刃が突き刺さった。
衝撃と激痛で、レオーネは装備していた九九式小銃を床に落とし、傷口を左手で押さえて苦しむ。
その様子を見た宮田は今が好機と見たか、病院の裏口に向かって駆け出す。
しかし曽良は逃げなかった。今目の前に格好の獲物が転がっているのに何故逃げる事があるのか。
自分の師匠のために、少しでも参加者の数を減らさなければならないのだ。
「おりゃああああっ!!」
咆哮を上げ、刀を構えながら、悶えているレオーネに向かって突進する曽良。
そして大きく刀を振り上げ、一気に振り下ろし、レオーネの首を――。
「…調子に、乗るな」
曽良の繰り出した渾身の一撃は、レオーネの右手によってあっさり受け止められてしまった。
そして。
「……ぐあ…あ……!?」
ぐじゅ、というとても嫌な音と共に、曽良の背中から血塗れの毛皮に覆われた腕が生えた。
病院受付ロビーの白い床にドス黒い血液が飛び散り、曽良の口から大量の血が溢れ出る。
「ぎ……ぅ……」
ゆっくりと、顔を下に向けてみれば、レオーネの左腕が自分の腹に、肘まで埋まっていた。
その光景を見て、曽良は悟る。自分はもう助からないと。
一気に身体中の力が失せ、曽良の意識は急速に闇に飲まれていく。
「……ば……しょ…う…さ……」
最後に、自分の守ろうとしていた、師匠の名を口にし、曽良はその生涯を終えた。
「ふざけやがって…!」
痛みを堪え、傷口からナイフの刀身を引っこ抜き床に乱暴に放り捨てるレオーネ。
その表情は正に怒り狂った獣そのもの。眉間に皺を寄せ、牙を剥き出しにしている。
怒りの矛先はたった今殺した和服姿の青年。
思わぬ不意討ちを仕掛け、手傷を負わせた事にレオーネは憤りを隠せない。
「ぐちゃぐちゃにしてやるっ、お前なんか、ただの肉の塊にしてやる!」
怒気の籠った、乱暴な口調で言い放つと、レオーネは青年――曽良の死体を激しく損壊し始めた。
何度も鋭い爪で突き刺し、引き裂き、骨をへし折り、引き千切り、臓物を掻き出しては更にそれを踏み潰したり掻き回したり――。
病院のロビーのあらゆる物、天井、床、壁、その他諸々の調度品、全てに肉片や臓物のなれの果て、血液が飛び散り、
消毒液の匂いが漂っていたが、たちまち血の激臭に取って代えられた。
その間、レオーネはとても楽しそうな、まるで大好きな玩具を与えられたよ子供のような笑みを浮かべ、
涎と舌を垂らしながら死体の破壊を行っていた。
宮田司郎は病院の裏にある緊急搬入口から外に出た。
外は既に夜明け目前とあってかなり明るくなり、十分視界が利くようになっていた。
「あの開催式の時にちらほら見掛けたが、あんな化け物までいるとは…」
まるで空想の世界の「竜」のような外見をした生物。
見た目、雰囲気共にかなりの威圧感を放っていた。
まともに戦っても勝ち目は無いと判断し、無様だが逃走を図ったのだが。
曽良と名乗った青年はついては来ていないようだ。別のルートから逃げたのだろうか、それとも…。
「…俺が気にする事じゃ無いな。とにかく病院から離れよう」
病院内は一通り探索した上、強さや実力が未知数でしかも殺し合いに乗っている化け物がいる病院に戻るつもりは無かった。
宮田はやや小走りで病院から遠ざかって行った。
【曽良@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和 死亡】
【残り 30人】
【一日目/早朝/F-3病院付近】
【宮田司郎@SIREN】
[状態]:健康
[装備]:アインの刀@FEDA
[所持品]:基本支給品一式、応急処置セット(調達品)
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗る。但し優勝したい訳でも無い。
1:とにかく病院から離れる。
2:他の参加者を見つけ次第、殺す。
[備考]:
※初日0:00にサイレンを聞き、意識を失った直後からの参戦です。
従って幻視能力は目覚めていません。
※レオーネの名前と容姿を把握しました。
※どこへ向かっているかは今の所不明です。
【一日目/早朝/F-3病院ロビー】
【レオーネ@オリキャラ】
[状態]:激昂、腹部に貫通銃創(ほぼ治癒)、右肩に刺し傷、右手の平に傷、
口と身体が血塗れ、曽良の死体を弄んでいる
[装備]:九九式小銃(4/5)
[所持品]:基本支給品一式(水と食糧完全消費)、7.7㎜×58㎜弾(30)、
ワルサー カンプピストル(1/1)、26.6㎜炸裂弾(3)、64式小銃(20/20)、
64式小銃の予備マガジン(5)
[思考・行動]:
0:とりあえず出会った人から順番に殺していく。
1:あははは! 楽しい~♪
[備考]:
※聖徳太子の名前と容姿を把握しました。
※西川のり子のデイパックは放棄したようです。
※宮田司郎を追うかどうかは不明です。
※F-3病院ロビーは滅茶苦茶に破壊された曽良の死体によって血塗れとなっています。
また、曽良の所持品がロビーに放置されたままになっています。
曽良の所持品=焔薙@SIREN、ネイルハンマー@SIREN、デイパック(基本支給品一式、スペツナズナイフ(1))
最終更新:2010年02月21日 22:19