全てはご主人様のために

40話「全てはご主人様のために」

夜空が徐々に白み始め、夜明けまで後数時間だという事を告げる。
F-2市街地住宅街の道路を歩く人影があった。
九五式軍刀を装備した学生服姿の男、太田太郎丸忠信である。

「銃声、だな……」

どこからか響いてくる銃声と思しき音に耳を済ませる太田。
彼にとっては特別な音では無い、むしろよく聞き慣れた音だ。
一瞬足を止めたが、それだけで、すぐに歩みを再開する。

(しっかしどうすっかねぇ。あの果樹園から遥々歩いて街まで来たはいいけど、
そうすぐにいい女に巡り合えるとは限らねぇし、何より銃を持った奴に襲われたらちぃーと厄介だ)

スタート地点である果樹園で自分より年下と思われる少年と交戦した後、
果樹園を出て街へと繰り出した太田であったが、彼の基本行動指針はあくまで「生き残る」事にある。
「女性の参加者に出くわしたら(容姿にもよるが)奴隷にする」という別の行動指針もあるが、
それはあくまで基本行動指針に付随してくるものであり、
故に太田は自ら進んで殺し合いをする気は今の所は無かった。

但し相手が男性であり尚且つ身体能力、武装が自分より劣っていると判断した場合は話は別である。
この殺し合いは人数が少なくなればなる程、生存率のアップに繋がるのだ。
なので自分より弱そうな他参加者は早々に始末し、頭数を減らしておくのが良いと太田は考えたのである。

そして太田がある小さな交差点に差し掛かる。
右方向の道路から、出会い頭に、太田自身が良く知る人物と遭遇した。

「太田君ではないですか」
「吉良かよ。生きてたのかお前」

普段の生活でよくつるんでいるクラスメイトの吉良邑子である。
前回参加させられていた殺し合いでは一度も会う事は無かった。
手にはかなり大型のボウガンらしき武器を装備している。

「もしかしてお前も前の殺し合いでくたばった口か?」
「その口振りはもしや太田君も!? そうなんですよ、私、前の殺し合いで広竜君と戦っている時に、
誰かに撃たれて死んじゃいまして。気が付いたら今度は別の殺し合いだなんて、驚きですよねぇ」
「そうだな……」
「でも残念です、この殺し合いには英人様はおられないみたいで」
「あ? 英人様??」

怪訝そうな顔で太田が吉良に訊く。
すると吉良はとても幸福感溢れる笑顔を浮かべながら言った。

「そうなんですよぉ、私が見付けたご主人様の英人様!
私は前の殺し合いの時、英人様のために戦っていたようなものです」
「おいおい、英人って、玉堤英人の事か?」
「それ以外に誰がいるんですかぁ、もう! 分かりきった事聞かないで下さいっ」
「……」

吉良が「誰かに尽くし『奴隷となる』ことに悦びを覚える真性のマゾ」というのは太田も知ってはいたので、
それ程驚きはしなかったが、いざ実際に目の当たりにすると、流石の太田と言えど、引いた。

「でも、この殺し合いには英人様はいません。
だから、私は早めに英人様の所へ戻らなければいけないのです。
なので――」

次の瞬間。

吉良が太田の心臓目掛けて、ボウガンの矢を発射していた。

「がっ……!」

自分の胸に突き刺さるボウガンの矢を目にして、太田の端正な顔が驚愕に歪む。
そしてそう間を置かずに、今度は腹にも衝撃と共に矢が生えた。
口から吐血し、太田がガクンとその場に膝を突く。

「私はこの殺し合いに優勝して、英人様の元へ帰ります。
ごめんなさい、太田君」

頭上から吉良が何かを言っていたが、最早太田はそれが何と言っているのか聞き取る事も出来なかった。
薄れ行く意識の中、太田は最期の力を振り絞り、言った。


「クソッ、タレ、が」





アスファルトの上に横たわり、今や物言わぬ屍と化した太田太郎丸忠信の荷物を漁る吉良邑子。
そして太田の装備していた九五式軍刀と、注射セット、水と食糧を入手する。

「まず一人目……次もこの調子で行けばいいんだけど」

吉良の心に太田に対する罪悪感や謝罪の念はまるで無い。
先程事切れる直前の太田に言った謝罪の言葉もあくまで建前のみ。
一応、学校生活で何度か行動を共にする事はあったので多少は思う所はあったかもしれないが、
それも吉良自身の大いなる目標の前では何の意味も為さない。

「少し疲れちゃったな……どこか、適当な民家で休もう」

そう言って吉良は身を潜めれそうな民家を探すために歩き始めた。



【太田太郎丸忠信@自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  36人】



【一日目/深夜/F‐2市街地住宅街表通り】

【吉良邑子@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:ドーラのボウガン@FEDA(0/1)
[所持品]:基本支給品一式、ボウガン予備矢(23)、九五式軍刀、
フォナ特製際淫剤注射セット@オリジナル(残り5本)、太田太郎丸忠信の水と食糧
[思考・行動]:
0:ご主人様(玉堤英人)のため、優勝し帰還する。
1:参加者を見つけ次第殺す。例えクラスメイトであっても容赦しない。
2:どこか適当な民家で休憩する。
[備考]:
※本編死亡後からの参戦です。


※F-2市街地住宅街の路上に太田太郎丸忠信の死体とデイパックが放置されています。
デイパックの中身=水と食糧抜きの基本支給品一式


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最終更新:2010年02月07日 10:38
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