39話「警官でさえ敵わない」
警官の制服に身を包み、散弾銃であるウィンチェスターM1897を装備した一人の男が、
コッペパンを食べながら夜の市街地を歩いていた。
男――
朝倉清幸は数時間前、
エイミス・フロリッヒャーと名乗る、
ビキニ鎧の美少女剣士と交戦し振り切った後、この
殺し合いを潰すため共に戦ってくれそうな仲間を探して歩いていた。
しかし遠くから銃声と思しき音はすれど誰とも遭遇しない。
運が良いと言えば確かにそうなのかもしれないが仲間集めの側としてはこれは困り物。
小腹も空いてきたので支給品のコッペパンを食べているのだが……。
(味気ねぇ……まあ、当然だな。ジャムも何にも付いてないしな)
普通に焼いたパンの味しかしないコッペパンはお世辞にも美味しいとは言えず、
清幸の顔に不満の色が滲み出る。
この殺し合いという状況下において贅沢を言うつもりは無かったが、
せめてもう少し味気ある食糧を渡して欲しいと心の中で愚痴をこぼした。
そして最後の一欠片を口の中に放り込み咀嚼していると、
前方に何か人影らしきものを見付けた。
「!」
咄嗟にM1897を構え警戒態勢を取る清幸。
通りは街灯が点灯しているとはいえ、かなり薄暗い。
人影が徐々に接近してくるのは確認出来たが、容姿まではまだ分からない。
「そこに誰かいるのか?」
清幸は思い切って人影に声を掛けてみた。
人影は丁度街灯の明かりの当たる場所で立ち止まった。
「いっ……!?」
清幸がどういう訳が戦慄する。
人影の正体は「山姥」――では無く、まるで山姥のような強面の風貌をした中年女性。
手には――確かあれは蕎麦を切る時に使う蕎麦切包丁だったはず――を持っている。
「あなた、お巡りさん……?」
女性が清幸に声を掛ける。その鬼のような風貌とは裏腹に、とてもか細く弱弱しい声音に聞こえた。
「ああそうだ。俺は朝倉清幸。見ての通り警官だ。えーと、あなたは?」
「私は仁ママよ。本名じゃなくてあだ名だけど、名簿にはあだ名で登録されてるから」
「そうか、えー、仁ママさん、仁ママさんは殺し合いには乗っているのか?」
自己紹介も終わった所で、清幸は一番聞きたい、最重要事項を仁ママに尋ねる。
「乗ってるわ。もう一人殺した所よ」
「成程そうか……って、何!?」
ヒュッ
それはまさに刹那の見切り。一瞬の出来事。
仁ママの蕎麦切包丁の一撃が清幸の喉を薙いだ。
「ぐっ、ご」
清幸の真一文字に切り裂かれた喉笛から凄まじい勢いで鮮血が噴き出し、
目の前にいる仁ママの身体とアスファルトを汚す。
足から力が抜け、M1897をアスファルトの上に落とし、ガクンと膝を突く清幸。
それを仁ママはただじっと見つめていた。
清幸は何とか、何か声を発しようとしたけども、出るのはひゅー、ひゅーという安物の笛のような音のみ。
そして清幸の意識は遠退く。何も聞こえなくなる。視界は何も映さなくなる。
死は、それ自体は、この殺し合いが始まった時に覚悟こそしていたが、
こうも唐突に、呆気無い幕切れになるとは予想していなかった。
怖いと言うよりも、不思議と笑いが込み上げてくる。
(…呆気……無い…な………へへっ………)
最期に残された思考の中で、朝倉清幸が紡いだ言葉はそれだった。
間も無く朝倉清幸は静止する。永遠に。
仁ママは大きな血溜まりを作ってアスファルトの上で息絶える警官・朝倉清幸を見下ろしていた。
彼女がこの殺し合いで殺人を犯すのはこれで二人目である。
ただ、最初の時と違うのは警官が銃――しかも散弾銃と呼ばれる類の物――を装備していた事。
こちらには近接武器しか無いので、まともに戦ったら勝ち目は無かった。
なので、不意討ち戦法に打って出たのだが、上手く行った。
仁ママは蕎麦切包丁の刃に付着した血痕を清幸の制服で拭き取り、
傍に落ちているウィンチェスターM1897を拾い上げる。
現在持っている蕎麦切包丁とバールより何倍も良い武器である。
「いいわね。これで戦いも楽になるはずだわ」
上々の戦利品に気を良くする仁ママ。
そして清幸のデイパックの中からM1897の予備弾である12ゲージバックショット弾25発と、
水と食糧を入手する。
早速装備を蕎麦切包丁からウィンチェスターM1897に持ち替える。
ずっしりとした重量感が仁ママの手から脳へと伝えられる。
試しにすぐ近くにあった家電製品店のショーウィンドウガラスに近付き、
腰だめに構えて引き金を引いた。
ガシャアアアアアアン!!
銃口から発射された9個の小粒弾がショーウィンドウガラスを粉々に粉砕した。
「うっひょおう! こりゃあいいわあ!」
散弾銃の予想以上の破壊力を目の当たりにし、仁ママは第興奮する。
そして先台を動かし、空薬莢を排出し次弾を発射可能な状態にした。
仁ママの心の中に優勝への希望が、貧乏脱出への希望がますます膨らむ。
「うけけけけけけけ! 行けるわ! 優勝出来るわきっと!
待っててね仁ちゃん! うけけけけけけけけけけ!!」
奇怪な笑い声を上げながら、散弾銃と言う危険な得物を手にした山姥がまだ夜の明けぬ市街地を疾走する。
彼女の狂気じみた進撃は留まる所を知らない。
【朝倉清幸@オリキャラ 死亡】
【残り 37人】
【一日目/黎明/D-4市街地南部表通り】
【仁ママ@浦安鉄筋家族】
[状態]:健康、返り血(かなり多)、狂気
[装備]:ウィンチェスターM1897(4/5)
[所持品]:基本支給品一式、12Gバックショット弾(25)、蕎麦切包丁、
バール、サーシャの水と食糧、朝倉清幸の水と食糧(コッペパン一個消費)
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗り、優勝し、貧乏生活から抜け出す。
1:他参加者を片っ端から殺していく。
2:息子の友達(大沢木小鉄、西川のり子)とその担任(春巻龍)も容赦無く殺す。
[備考]:
※原作最終話の前後の時期からの参戦です。
※D-4市街地南部表通りに朝倉清幸の死体とデイパックが放置されています。
朝倉清幸のデイパックの中身=水と食料無しの基本支給品
※D-4南部周辺に銃声が響きました。
最終更新:2010年02月21日 12:48