あっち側とこっち側の狭間

50話「あっち側とこっち側の狭間」

私はただ歩いていた。どこへ行くとも無く、宛ても無く、ただただふらふらと歩くだけ。

「……竹内さん……」

私は、殺してしまった。人を。
この殺し合いで初めて出会い仲間になり、少しの間とは言え行動を共にした、竹内多聞という男性。
私が殺してしまったのだ。

ふと空を見上げてみると、夜明けが近いせいかもうかなり明るくなっていた。
――それだけじゃ無い。
虹色に輝く、美しいオーロラが輝き、何か、無数の小さな発行体が宙を舞っている。
現実とは思えない程美しい光景が広がっているけど、これはいつからだったろう。
そうだ、確か、あの後教会を出てからだ。
いや、あの狂った男性に謎の液体を注射されてから、だろうか?
そしてその後、私は――。

今更、あの狂った男性を責めようとも思わない。
責めたってもう何の意味も無いし、竹内さんと狂った男性を殺したのは私自身なんだから。
ああ、それにしても、楽しかったなあ、あの撃った時の感覚。
いやそれだけじゃない、何だかとっても気分が良い。
もっと、もっと殺したいな。

……え?

ちょっと待って、今、私何を思ってたの?

「……やだ、分からない」

自分で自分の考えている事が時々分からなくなる。
まるで、自分が自分で無くなっているような……。

「だ、誰か助けて!!」

……あれ? 向こうから誰かが……。

「…………」

◆◆◆

夜明け前の誰もいない市街地を私は魔手から逃れるために走っていた。
普段運動神経鈍いと言われ続け、自分でもそれは自覚はしているけど、
何だろうこの自分でも驚くようなこの足の速さは。
体育の時でもこんなスピードが出せたらいいのに。
……そんな事言ってる場合じゃ無い。このスピードで走れている理由、それは。

バアン!!

「ひっ!」
「アーハハハハハハハ……」

銃を発砲しながら私をしつこく追い回す、両目から血を流した不気味な男の人。
出会うなりいきなり襲い掛かってきて、私はとにかく走って逃げてるんだけど、男の人はしつこく私を追撃してくる。
しかも拳銃を持っているから追い着かれたら紛う事無き死……ッ!

バアン!!

「あああああああああ!!」
「死ねぇ…さっさと死ねぇぇぇぇ」

今の所、まだ弾は一発も当たって無いのが幸いだけど、
もういい加減疲れてきたし息も上がってきた。
ちょっと、まずいかも。このままじゃ間違い無く……。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

し、心臓が、もう破裂しそう……。
ああ、もう、駄目かな。私、ここであの男の人に撃ち殺されて死ぬのかな。
脳裏に物心付いた時から今までの様々な思い出が蘇る。これが走馬灯ってやつ?
そう、あれは高校一年の時の宿泊学習の時の出来事だった。
夜寝ていたら同じ部屋だった伊賀さんに…………こんな時に何思い出してんのよ私!

ああ、伊賀さん、平池さん、死ぬ前にもう一度、会いたかったなあ……。

◆◆◆

もう少しだ。もう少しであの牛女を殺せる。
ああ、楽しいなあ。こんな気分、初めてだよ。
いくら走っても全然疲れねぇし、一体どうなってんだろ俺の身体。まあ、どうでも良いけど。

バアン!!

ああくそ、当たらないなあ。
畜生、牛女め、トロそうな見かけして案外早く走りやがる。
だけどそろそろ疲れてきたみたいだな。もう逃げられないぜ?

「きゃっ!」

ひゃはっ、牛女め、ついにコケやがった。いいねえ、スカートの中のパンツが丸見えだぜ。
――死ね。

バアン!!

「があっ!」

当たった。牛女の腹に命中した。
血が噴き出し、牛女が痛そうな表情を浮かべて悶え苦しむ。
俺はそんな牛女の様子を眺めながらゆっくり、もっと確実に弾が当たる距離まで近づく。

「い、嫌だあああ……殺さないでっ…死にたくない……」

涙目で俺に命乞いをする牛女の姿は何とも言えない優越感を俺に与える。
死にたくない、か。だけど、そりゃ無理な相談だなあ~。
俺はリボルバーの弾倉に残った最後の一発を、牛女の急所にぶち込むべく、銃を構える。
この引き金を引けば、牛女は、終わりだ。

「い、嫌あああああああああ!!!」


ドゴォン!!


「ぐっ、げ?」

な、何だ? 何だよ今の銃声は? 俺はまだ撃っていない、俺の銃の銃声じゃない。
……え? お、俺の腹に、大きな穴が空いて、血が大量に流れ出てんだけど?
痛くは無い。痛くは無いけど、いやいや、何が起きたんだ?
目の前の牛女では無い。地面にへたり込んで俺に撃たれた傷を押さえながら、
怯えた表情で俺を見ているだけでどこからか銃を取り出した様子は無い。
俺は視線を牛女よりもっと向こう、通りの奥へと向け――そして見た。
学生服姿の狼獣人の少女、多分この牛女と同年代、が、かなりデカい自動拳銃を俺の方に向けているのを。
そして、その狼女の両目からは、俺と同じように赤い血の涙が流れ出ていた。
暗く沈んだ、虚ろにも見える瞳はどうやら俺の方を向いている。

狼女がニヤリ、と笑った。

狼獣人の白い牙がよく、見えた。


ドゴォン!!


轟音、そして衝撃。俺の身体が大きく仰け反る、って言うか、後ろに吹き飛ぶ。
自分の喉元から、赤い血の噴水が噴き出している。

意識が無くなる――暗くなる――

――あ――マジか――これ――

◆◆◆

何が起きたか分からない。突然、男の人の腹部が轟音と共に弾けて穴が空いた。
男の方も何が起きたのか分からないといった驚愕の表情を浮かべていたけど、
次の瞬間また轟音が響いて、男の人の首輪が爆発し、男の人は穴の空いた喉元から大きく後ろに吹き飛んで仰向けに倒れ、やがて動かなくなった。
二回響いた轟音は多分、銃声。首輪が爆発したのは多分、弾丸が首輪に着弾したからだと思う。

後ろを振り向くと、そこには私とは違う学校の制服に身を包んだ、狼獣人の少女が立っていた。
右手には見た事無いような大きな自動拳銃が握られている。
さっきの轟音はあの銃からかな。

「あ、あの、助けてくれて、ありが――」

命を救ってくれたのだと思い、礼を言おうと思い言葉を走らせた時、私は気付く。
狼少女の目から、さっきの男の人と同じように、赤い血の涙が溢れていた。
よく見れば学生服の上着は血で赤く汚れている。

そして次の瞬間、狼少女は右手に持った大型拳銃の銃口を私に――え?


ドゴォン!!


轟音と、共に、私の胸、心臓の真上に当たる部分から鮮血が噴き出す。

喉の奥から…熱い……大量の……鉄錆の味のする液体が。

痛い……痛いよ……伊賀さん………平池…さ……ん…………。

◆◆◆

「フッ、ハ、ハハ、フ、ハハ、アーハハハハハ!!」

はあ、気持ちいい。なんて気持ちいいんだろ。こんな気分、生まれて初めて。
人を殺すのってこんなに気持ちいい事だったんだなあ。
何で前の殺し合いの時に、誰も殺さなかったんだろ。

「いい…い、いいい……もっと、もっとおおお……」

もっと、もっと、殺したい、なあ。

そう言えば、ノーチラスは、今頃どうしてるかな、かな?

会ったら――。

会ったら――。


――殺して、あげ、る。


「待ってて、ね…ノーチラス……フフ、アハ、ハ」



【石川清憲@オリキャラ  死亡】
【中村アヤ@オリキャラ  死亡】
【残り  31人】



【一日目/早朝/F-4市街地】

【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:屍人化(不安定)、首筋に注射痕、歓喜、屍人の意識
[装備]:IMIデザートイーグル(4/7)、
[所持品]:基本支給品一式、デザートイーグルの予備マガジン(5)、
グロック19(12/15)、グロック19の予備マガジン(5)、クリスの剣@ムーンライトラビリンス改造版
[思考・行動]:
0:もっともっと殺す。
1:ノーチラス…アハハ。
[備考]:
※本編死亡後からの参戦です。
※屍人化しました。但し不安定で、平常のエルフィの意識と屍人としてのエルフィの意識が混濁しています。



※F-4一帯に銃声が響きました。
※F-4市街地路上に石川清隆と中村アヤの死体及びそれぞれの所持品が放置されています。



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最終更新:2010年02月21日 22:20
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