ぱらいぞうにまうづ

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45話「ぱらいぞうにまうづ」

ざわざわと草が風に吹かれる音がE-5の草原地帯に流れる唯一の音。
西日が少しずつ少しずつ夜空を明るくしていく。夜明けが近いのだ。

桃色の髪を持った、黒っぽい学校指定の制服に身を包んだ牛娘の少女、中村アヤは、
茂みの中で仰向けに寝転んでいた。
彼女は数時間前に参加者同士の戦闘、そして参加者の片方が殺されるのを目撃して以来、
下手に動くのはよそうと、ずっと茂みに隠れ続けていた。
時折、遠くから銃声らしき音が響き、その度にアヤは怯え両耳を塞ぐ。
銃声がする度、どこかでまた誰かが殺されたのかと思うと、たまらなく怖い。

「ひっ…」

また遠くから銃声らしい音が聞こえた、ような気がした。
いや、もしかしたら空耳かもしれないが、アヤには聞こえたような気がした。

(怖い、怖いよお……)

自分でも知らず知らずの内に目から涙が零れる。
もうずっとこんな調子であった。

(でも……ずっとこのままって訳にも行かないよね……)

下手に動かず一ヶ所に留まっているというのも常套手段の一つではあるが、
この殺し合いに呼ばれているクラスメイト二人の事や、
定時放送後に出現するという禁止エリアの事などを考えると、
全く動かない訳にも行かない。
それに、アヤの支給品は自転車のチェーンと百円ライター。何とも頼り無い。
誰かに襲われでもしたら非常に危険であるため早急に武器なりえる物の調達を必須とした。
そういう意味でも全く動かないという訳にもいかないのだ。

「勇気を出さなきゃ、駄目かあ……!」

アヤは決断する。移動するという事を。
荷物をまとめ、百円ライターを上着のポケットに入れ、申し訳程度に自転車のチェーンを右腕に巻く。
友達に見せてもらった何かの漫画で腕に鎖を巻いて防具にしていたのを見た事があったからだ。
申し訳程度だが何も無いよりはマシだろう。
そして茂みから出て、遠くに見える市街地に向けて歩き出そうとした時だった。

「ヴ…ぁ、あああ……あ、ア、あああ」

突然、男の呻き声のようなものが聞こえ、驚いたアヤは声のした方向へ咄嗟に振り向く。
そこには半袖のパーカーと思しき服を着た、20代前半ぐらいの人間の若い男。
覚束ない足取りで歩き、何故か顔は下を向いていて表情が窺えない。
しかし――。

「あ、あの~」
「あああううううおおおおおおおおお」

明らかに様子が変である、どう見ても、正常には見えない。
得体の知れない男にアヤが恐怖し始め、走って逃げようとした、時。
ゆっくりと男が顔を上げ――その顔を見た途端、アヤに戦慄が走った。

男の両目からは赤い、血の涙が止め処無く流れ落ち、よく見れば男の衣服は血で汚れていた。
それだけでは無い。男は――笑い始めた。

「……ふ……フフ、ハハハハハハ」

何かが楽しいのか、それともただ単に気が触れてしまっているのかは分からない。
とにかく、男は何の脈絡無く、笑い始めた。
しかも、男の声色は、どこか歪んでいるような、専用の機械か何かで加工されたかのように聞こえる。
そんな異様な様子の男にアヤはますます恐怖する。

(な、何なのこの人? 首輪付けてるしデイパック持ってるから参加者の一人みたいだけど、
何にしろ早いとこ逃げ――)

パアン!!

「ひっ!」

耳を劈くような銃声が周囲に響く。と同時にアヤの顔のすぐ脇の空気を音速の弾丸が突き抜ける。
アヤが再び男の方を見ると、男は銃口から煙を噴き出す小型のリボルバー拳銃をアヤの方に向けていた。

「あ…ああああっ!!」

男が銃を向けているのを確認した次の瞬間、アヤは市街地方面に向け全速力で走り出した。

「ヒャハハハハ…逃げるな、逃げるな、逃げるなあああああああ!!!」

男が歪んだ声音で叫びながらアヤを追走する。
アヤの恐怖心が最高潮に達し、頭の中はとにかく男から逃げる事で一杯になる。
普段、運動神経が鈍く、走る事も大の苦手のはずだと言うのに、
この時ばかりは自分自身でも驚くようなスピードで走る事が出来た。
アヤは思う。これがいわゆる「火事場の馬鹿力」という奴なのだろうと。


◆◆◆


石川清隆の目に映る世界は、正に幻想的そのもの。
空にはオーロラが輝き、何やら正体不明ではあるが、とても色鮮やかで美しい発光物体が宙を舞っている。
いつしかテレビで見たクリオネの事を、清隆は思い出していた。

いつから自分の目に映る世界がこのような美しい世界になったのだろう。
そう、それは確か、墓場で殺そうとした中年男性に妙な液体を注射され、
そして墓場から逃げ出した後、両目から血が流れ出た、その数十分後ぐらいからだ。
しかも、目に映る世界が綺麗なだけでは無い、清隆は今までに無い程、幸せな気分だった。
恐怖も、痛みも、悲しみも、絶望も何も無い。とても、幸福な気分。
違法薬物を使用した者は恐らくこのような感じなのだろう。

そして、ある欲求が清隆の心の奥底から湧き出てくるようになった。
いや、欲求と言うよりは、まるで何者とも知れない「誰か」に命じられているような。

「人を殺せ」
「殺すんだ」
「何も躊躇する事は無い。殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」

これは、欲求では無い。誰かが、誰かが命じているのだ。自分に。
それが「誰か」なのかは分からない。いや、分からなくてもいい。
元々殺し合いに乗るつもりだったのだし、今更、殺しをためらう気は無い。
むしろ好都合だ。今なら、何の迷いも無く、殺せる。

そして清隆は草原で発見した女子高生と思われる牛娘の少女に銃を向け、発砲した。
だが外してしまい、少女は全速力で逃走を開始した。
当然、清隆も追い掛ける。幸福感の余り、笑い声を上げながら。

「フハハハハハハハ………良い気持ちだああああ」



【石川清隆@オリキャラ  屍人化】



【一日目/黎明/E-4草原】


【中村アヤ@オリキャラ】
[状態]:市街地方面へ向け全速力で疾走中、恐怖(大)
[装備]:自転車のチェーン
[所持品]:基本支給品一式、百円ライター@SIREN(燃料残り:100%)
[思考・行動]:
0:逃げろ!! 逃げろ!! 逃げろ!! 逃げろ!!

【石川清隆@オリキャラ】
[状態]:屍人化、首筋に注射痕、中村アヤを追走中
[装備]:38口径短銃@SIREN(3/6)、ガントレット@FEDA
[所持品]:基本支給品一式、38sp弾(30)
[思考・行動]:
0:生きている奴を殺す。
1:目の前の牛娘(中村アヤ)を追い掛けて殺す。
[備考]:
※屍人化しました。正常な思考が出来ません。



※E-4に銃声が響きました。



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最終更新:2010年01月28日 01:50
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