54話「Corpse of chapel」
夜が明けて、周囲の様子も明かりが無くとも見えるようになってきた。
ワシ――
アルソンズ・ベイルと同行者である章高は、墓場を出て、すぐ近くにあった教会を訪れていた。
今まで見てきた教会の中では小規模な建物だったが、それなりに歴史を感じさせる佇まいだ。
「う……」
墓場で発狂した男に謎の液体を注射されてから、どうも気分が悪い。
両目から流れ出した血は墓場の管理小屋で拝借したタオルで拭き取ったが、
時々意識が遠退く、めまいとはまた別の妙な感覚に襲われる。
「大丈夫ですか? アルソンズさん…」
「ああ…大丈夫だ。今の所は、な」
一体、あの液体は何なのだろうか。
今の所、めまい(と言っておこう)以外に特に変わった事は無く行動にも支障は無いが…。
発狂男が残していったデイパックには液体に関する手掛かりは無かった。
代わりに「参加者詳細名簿」なる、役に立ちそうな物を見付けたが。
「教会の中に誰かいるかもしれん。開けるぞ」
「はい…」
右手のリボルバー、マニューリンMR73を握り締め、ワシは重厚そうな両開きの扉を開けた。
まず目に飛び込んできたのは、奥に見える祭壇、パイプオルガン、ステンドグラス。
そして。
「ぐっ…何だこの臭いは……うおっ」
「え? どうしたんです――ああっ!」
ワシと章高が小さく悲鳴を上げた理由。
祭壇へと続く、絨毯が敷かれた道の上に二人の死体があった。
そして鼻を突く尋常では無い刺激臭。
恐る恐る死体に近付いてみると、どちらも頭を銃で撃ち抜かれ、頭骨が弾け脳漿が零れ落ちていた。
刺激臭の原因はこれみたいだな。
「うっ、ぐ……うえええええええ」
余りの刺激臭、そして無惨な死体を目にした章高は、とうとう胃の中の物を戻してしまう。
無理も無いな…こんな死体、普通の平和な日常ならまず見る事はあるまい。
「おいおい、しっかりしろ章高」
「す、すいません……あれ、アルソンズさん、この白っぽい和服着た死体って…」
「ん?」
章高に言われて手前側の死体をよく見ると、その死体には見覚えがあった。
忘れるはずも無い。この死体はあの墓場でワシに妙な注射をした発狂男――松尾芭蕉だ。
名前は参加者詳細名簿で確認した。間違い無い。
「殺されたのか……全く、捕まえたら一発殴ってやろうと思っていたと言うのに」
「ちょ、アルソンズさん……」
死んでしまっていい気味とは思わ無い……と言うのは嘘だが。
出来れば生きたままひっ捕らえて自ら制裁を下したかった。
発狂男の死体を通り過ぎ、奥に倒れているジャケットを着た男の死体に近付く。
こちらは右目から銃弾を撃ち込まれたようだ。右目のあった部分に黒々とした穴が空き、
そこから血と、何か正体不明の有機物の液体が混ざった物が絨毯と床の上に流れ出している。
参加者詳細名簿で調べると、どうやら「竹内多聞」という男の死体らしい。
刺激臭が近付くごとに確実に強くなってくる。いよいよワシも吐き気を催しそうになってきた。
そして章高は。
「……うっぷ」
礼拝堂の長椅子に伏してダウンしてしまった。
◆◆◆
22年生きてきて、遂に間近で本物のグロ死体を見てしまった。
この
殺し合いに巻き込まれてから、いつかは目にするだろうなと覚悟はしていたけど、
やっぱり実際に見るのは訳が違った。思い切り神聖な教会(俺は宗教が違うけど)に吐いてしまった。
あんな、頭がグチャグチャになってしまった死体が、つい数時間前まで、
生きて動いていたなんて、俺らと同じように泣いたり笑ったり怒ったりしていたなんて、正直信じられない。
俺も、あんな風に頭がグチャグチャになって死ぬのかな。
見た感じ(余り良くは見なかった、見れなかったけど)では銃で撃ち抜かれたっぽかった。
銃弾が頭の中、脳を貫通する時ってどんな感じなのだろう。
それとも痛みも何も、感じる前にもう死んでいるのだろうか。
怖い。怖くてたまらない。死にたくない。
「章高…」
「ああ、すいません、アルソンズさん。もう大丈夫です」
気分が悪くなってしばらく長椅子に伏していたが、気力を奮い立たせ立ち上がる。
その後、ジャケットを着た死体の脇にあったデイパックを回収し、アルソンズさんと一緒に礼拝堂奥の部屋に入った。
恐らく神父の控室と思われる部屋のテーブルに腰掛ける。
回収したデイパックの中には基本支給品以外何も入っていなかった。
恐らく二人を殺害した何者かが持ち去ったのだろう。
「そうだ、章高。お前の支給品にあった書類。あれを見てみよう」
「あれですか。そうですね…」
アルソンズさんに言われ、俺は自分のランダム支給品の一つ「自主製作映画企画書」をデイパックから取り出しテーブルの上に広げる。
「どれどれ……」
「何々……んー」
自主制作映画企画書
タイトル:自作バトルロワイアル(仮)
※しっくりくる名前募集中!
監督、脚本:卜部悠
演出、音楽:二階堂永遠
原作:若狭吉雄
製作協力:テト
出演者:
愛餓夫 、麻倉美意子、 壱里塚徳人、 W・N・スペンサー、 エヴィアン
海野裕也 、エルフィ、 追原弾、 貝町ト子、 太田太郎丸忠信、 神崎志緒里
加賀智通 、鬼崎喜佳、 片桐和夫、 北沢樹里、 神崎健二、 吉良邑子、 如月兵馬
銀鏖院水晶 、楠森昭哉、 久世明日美、 グレッグ大澤 、 朽樹良子、 ケトル
倉沢ほのか 、鹿和太平、 暮員未幸 、 宍戸亮太郎、 古賀葉子、 白崎篠一郎
サーシャ 、尻田堀夫、 シルヴィア 、鈴木正一郎、 添島龍子 、 玉堤英人
朱広竜♪ 、 苗村都月 、トマック 、仲販遥 、 内木聡右、ノーチラス 、間由佳
平田三四郎 、長谷川沙羅 、日向有人 、フラウ 、森屋英太 、松村友枝 、和音さん
※血沸き肉踊る衝撃のドキュメント!
※個人製作を超えたCGにない本物がここにある!
※出来れば朱広竜に頑張ってほしいな(はぁと)
「バトルロワイアルだって…? 正に今ワシらが行っているゲームもそれだが」
「でも見た感じ、多分学校の文化祭か何かの出し物じゃないですか?
『自主製作映画』ってありますし……どうも企画書を書いた人、多分この卜部悠って人は、
朱広竜なる人に思いを寄せてるようで……あれ? ちょっと待って下さい」
出演者の欄に書かれた名前の中に見覚えのある名前を発見し、俺はデイパックの中から参加者名簿を取り出した。
そして企画書に書かれた名前と参加者名簿の名前を照合してみる。
「…どうした?」
「やっぱり。何人か、この企画書に書かれた名前と同姓同名の人物がいますね。この殺し合いに」
「何…?」
照合出来た名前は全部で9人。
「エルフィ」「太田太郎丸忠信」「北沢樹里」「吉良邑子」
「サーシャ」「シルヴィア」「ノーチラス」「フラウ」「森屋英太」。
どれもこれも決して有り触れた名前とは思えないので同一人物の可能性が高い。
「ふうん…もしそいつらと遭遇したら話が聞きたいものだが」
「そういえば、アルソンズさんは小説家なんですよね。やっぱり、このゲームの事も本にするんですか?」
「フン……生きて帰れたら、そうするかもな。そうなったらお前も登場させてやる」
「ハハ…嬉しいですね」
生きて帰れたら、か……本当に、生きて帰れるのだろうか。
少し話し合った結果、アルソンズと章高はしばらくこの教会で休む事にした。
死体のある礼拝堂には出来る限り行かない事にして。
だが、アルソンズはまだ気付かない。同行している章高も、また然り。
アルソンズが、確実に「人ならざるもの」へと変わりつつある事に。
【一日目/黎明/G-4教会】
【アルソンズ・ベイル@オリキャラ】
[状態]:肉体的疲労(中)、屍人化進行中(進行度30%、血の涙流出(拭き取った)、軽度の感覚異常)、首筋に注射痕
[装備]:マニューリンMR73(5/6)
[所持品]:基本支給品一式、357マグナム弾(30)、参加者詳細名簿@
オリジナル
[思考・行動]:
0:殺し合いはしない。何とかして脱出したい。
1:しばらくはこの教会で休む。
2:殺し合いはしたく無いが、正当防衛ならば…………。
3:章高と行動を共にする。
4:…………。
[備考]:
※費覧という人物の特徴をおおよそ把握しました。
※屍人化が進行しています。いつ完全な屍人と化すのかは不明です。
※自主製作映画企画書に載っている9人の名前、
「エルフィ」「太田太郎丸忠信」「北沢樹里」「吉良邑子」
「サーシャ」「シルヴィア」「ノーチラス」「フラウ」「森屋英太」と参加者名簿に載っている同名の人物は、
同一人物であると確信しました。
【章高@オリキャラ】
[状態]:肉体的疲労(中)、少し気分が悪い
[装備]:小型催涙スプレー
[所持品]:基本支給品一式、小型催涙スプレー(2)、
自主製作映画企画書@自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]:
0:殺し合いはしない。とにかく生き残る。
1:アルソンズさんと行動。しばらく教会で休む。
2:もっとマシな武器が欲しい。
3:費覧には出来れば会いたくない。会いたくない。
[備考]:
※自主製作映画企画書に載っている9人の名前、
「エルフィ」「太田太郎丸忠信」「北沢樹里」「吉良邑子」
「サーシャ」「シルヴィア」「ノーチラス」「フラウ」「森屋英太」と参加者名簿に載っている同名の人物は、
同一人物であると確信しました。
※G-4教会礼拝堂に竹内多聞と松尾芭蕉の死体が放置されています。
※竹内多聞のデイパックはアルソンズと章高の二人が回収し、二人がいる部屋に放置されています。
最終更新:2010年02月18日 00:39