ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2328 マッチ箱をポッケに入れて、公園へ
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ankoss
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マッチ箱をポッケに入れて、公園へ 11KB
いじめ ギャグ 小ネタ いたづら 飾り 野良ゆ まりさいじめ
----------------------------------------
※注意事項
・罪のない野良ゆっくりがいじめられます
・常識的に考えると火の扱い方が危険です
・人間がダメ人間です
----------------------------------------
『マッチ箱をポッケに入れて、公園へ』
ここに一匹のゆっくりがいる。
種族はまりさ。齢期はサイズからして子ゆの後期くらい。
キリッとした眉と、歯を見せて笑みの形を浮かべる口がほんのりゲスッぽい。
ぎゃいぎゃいと騒いでうるさいので
頭の上からひょいと大切なお帽子を取り上げてやった。
より一層騒がしくなったまりさを無視して
俺がポケットから取り出したのはマッチ箱。
シュッと小気味のいい摩擦音を鳴らして、マッチ一本に火をともす。
まりさの目の前に持っていってやると、
「……ゆ?」
とこのように寄り目で不思議顔をするので面白い。
野生にしろ野良にしろ、『火』のことを知識として餡子に刻まれていても、
実物を見たことがあるものはほとんどいない。
そして、目の前にあるものの危険性もわからずに
ぽわぽわとゆらめく火を見つめるまりさを見つめるのも面白いが、
これをお帽子に燃え移らせるともっと面白い。
くたり、とおそらくゆっくり的感覚からすると“イイ感じ”に
折れ曲がっているまりさのお帽子の先端を火の先端でゆっくりと撫でる。
ぼうっ、と燃え上がりだしたお帽子を舗装された地面に置いて、
すぐにまりさへと視線を戻し、心の中で秒数をカウントする。
…2、3、4、 「ゆわぁぁぁぁぁぁぁ! まりさのあたいせんきんなおぼうしがーっ!?」
5秒か。遅くも早くもない。うん。普通の餡子脳だな。
「“ひ”さんゆっくりしないでまりさのおぼうアヂッ、アヂッ!
まりさのおぼアヂッ! おぼうしからはなれでアッッッヅイ!!」
おお。さすがにこれが『火』だということは理解したか。と感心していると
何を血迷ったのかそもそも餡子脳は常時血迷い中だから仕方ないと言うべきか、
まりさは火に向けて舌を伸ばして消火を試みようとしはじめた。
当然、火に触れる前に熱さを感じて悲鳴とともに舌を引っ込めることになる。
バカだなあ、とってもおバカだなあ、とにこやかな笑みを浮かべて
慈しみのまなざしで観察していると、不意に火の勢いが弱まって消えてしまった。
ふわん、と炭化した部分から煙が立ち上る。
ああ、そうか。今朝がた雨が降っていたから、ちょっと湿っていたのかもしれない。失敗したな。
ま、でもいいか。お帽子のとんがり部分は半分は焼けたし、
「まり゙さのおぼうじざんっ!! ゆっくりじてな゙おってね゙!! まり゙ざのおね゙がいだよ!!
ぺーろ、ぺ……くっそにがっっっっっ!! これにがっ!! ゆっ、ゆげっ、ゆげえっ!!」
と、こうして地味だけどあんまり見たことのない自滅行動も見れたし。
お。今度は自分の大事なお帽子に向かってぷくーを始めた。
「ゆっくりできないおぼうしさんにはまりさいかりしんっとーだよ!!
まきしまむぷくーっするからね! ぷっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!!」
元より汚れきっていたのが半分近く焼けていよいよみすぼらしさ満開といった風体のお帽子と、
自分の大事なそれに向かって全力で威嚇をしているまりさ。(注:お帽子は生物ではありません)
今日は日差しこそ少し強いが風は涼やかで心地良い。
風に揺れてさやさやと鳴る樹木たちのざわめき。
じっとりと汚れたまりさの髪。まりさの作る歪んだ楕円の影。
そしてぎゅっと目をつぶってぷるぷるしてる、なんとも無力で無意味なその姿。
平和そのものだ。牧歌的だ。とてもゆっくりとした気分になる。
威嚇されているお帽子が何も言わず風に吹かれてそよと揺れている様が、
その気分によりいっそうの拍車をかける。
ああー、のどかだなあ。
うずうずしてきて、やんなきゃいいのについつい、まりさのほっぺたをぷすっと指で押してしまう。
「ゅぽっ!」 ひゅるるるる~
おっ、なんかいい音がしました。
「ぅぅぅ~……やめるんだぜ! いままりさはだいじなたたかいのさなかにあるんだぜ! じゃましないでね!」
はいはい、わかったよ。どうぞどうぞ続けて。
「わかればいいんだぜ! じゃあおぼうしさん、あらためて、ぷっきゅひゅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!」
今度はまりさが力んだ瞬間をねらって両頬をダブルぷすっ!した。
ぷくーのために吸い込んでいた空気が、勢い良くまりさの口から漏れ出ていった。
ふわんふわん、とまりさの前髪が揺れたのを見て、俺は思わず両手を叩いて満面の笑み。
「じゃますんななのぜ、じじいーっ!!」
うーん、でもさあ、まりさがぷくーってしてもお帽子さん、全然怖がってないじゃん。
それにそんなことしてもお帽子さんは直らないでしょ? ぺろぺろしてあげたほうがいいんじゃない?
「そ、そんなことないんだぜっ! おぼうしさんはこわくてうごけないだけなんだぜ!!
きっとすぐにはんせいしてなおってくれるんだぜ!! じょ、じょうしきなんだぜ?!」
そーかなー。もしかしたら自分を直してくれないまりさに愛想を尽かしてるのかもよ?
ほら、なんかゆらゆら揺れてるし(風で)。どっか行っちゃおうって思ってるのかもねー。
「ゆっゆぅぅ~……。お、おぼうしさん、ぷくーしてごめんなのぜ。
きげんなおしてほしいんだぜ。まりさ、ぺーろぺーろしてあげるのぜ」
ああ、なんてバカな子なんだろう! 餡子脳万歳!
と俺は心の中でまりさの中に詰まっている餡子さんたちに感謝した。
「にっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいのぜぇぇぇぇぇえ?! くっそにっがぁぁぁぁぁぁ!!」
またしてもまりさの絶叫が響く。
ぎゅっとつむった目に涙を浮かべながらぽんぽんと飛び跳ねている。
たぶん、地団駄を踏んでいるんだろう。きっと。
傍から見てると無邪気に喜んでいるようにしか見えないだろうけど。
ひとしきり喜びの小躍り風地団駄を楽しんだあと、
まりさは怒りに顔を歪めてお帽子をギンッと睨み付けた。
「もうおこったのぜ! ほんきのほんきでおこったのぜ!
まりさをバカにするおぼうしさんはせいっさいするんだぜ!!」
あ、じゃあ俺も手伝っていい?
「ゆ?」
とまりさがあっけに取られている間にお帽子を取り上げて
ススス…と5メートルほど後退してまりさに背を向ける。
取り出したるはマッチの箱……からマッチ棒全部!
「ゆ? ゆ?」
背後からぽいんぽいんとのんきな足音を立ててまりさが近づいてくる。
俺はマッチ棒を2本残して、他をお帽子の内側と表側に均等に配置していった。
「ゆ? なにしてる、のぜ?」
俺の横までやってきたまりさが、不思議そうに俺の手元を覗き込んできた。
ハイまりさ、これどうぞ!
と俺はまりさの口にマッチ棒の1本をくわえさせる。
「ゆ? ゆゆ?」
と目を白黒させているところに、
残った最後の1本のマッチに火をつけて
まりさのくわているマッチに着火してやる。
ポッ、と燃えて、まりさの唇と前髪がチリチリ言った。
「ゆあっづう?!」
叫んだ拍子にくわえていたマッチがぽーんと綺麗に飛んでお帽子に落着。そして着火。
ボウッ、と一気に火に包まれるお帽子。
唇の熱さに歪めた表情のまま固まり、燃え上がるお帽子を見つめるまりさ。
にっこにこしながらそれを眺める俺。
「……までぃざのおぼうじざんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ?!!」
今度は13秒かー。やっぱりショックがでかいほど反応が遅いんだねー。わかるよー。
というかさっきだってお帽子の先端を燃やしたのは俺なのに、
ちょっと苦いもん口にしただけでそれが頭の中からすっぱり消えちゃうのってさすがにどうなの?
それってもう生物として致命的すぎる愚鈍さなんじゃないかな。
いやだがそれがいい! 餡子脳ばんざーい!
「ゆわぁ……ゆわあぁぁぁぁ…………」
滂沱と涙を流しながら、燃えていくお帽子を見つめているまりさ。
時おり体がぴくっぴくっとしてるのは、お帽子を助けようとする気持ちと
炎への恐怖がせめぎ合っているからなんだねー、わかるよー。
その上、理性では自分がもうなにもできないって理解しつつあるんだよね。
つらいよね、うんうん、わかる、わかるよ!
なあ、まりさ……生きるってのは失敗の連続なんだ、
自分の力じゃどうにもならないってことはたくさんある。
これはお前のせいじゃない、お帽子さんもきっとわかってるさ……。
──と、俺はまりさの頭をぽんぽんと優しく叩きながら言ってやった。
そしたらどうしたことかまりさ大激怒。
「あ………………あたりまえなんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
おもいだしたんだぜ!! さいしょにおぼうしさんをにがにがにしたのも
じじい、おまえだったんだぜぇぇぇ!! よくもまりさのおぼうしさんをぉぉぉぉぉぉぉ!!」
え、そりゃ確かにそうだけど、まりさ、お帽子さんを制裁するって言ったじゃん!
俺はその覚悟を酌み取ってより確実に完遂できるようにお手伝いしただけだよ?!
「だれもせいっさいするなんていってないのぜぇぇぇぇぇぇ!! かってにきめるななのぜぇぇぇぇぇ!!」
あれ? そうだっけ? うーん……。
おかしいな、俺の頭が餡子脳になってきてるのかな。
まあいいや。どうでもいいことだから、いちいち本当に言ってたかどうかなんて覚えてらんないし。
「まりざは……ま゙りざはぁぁ……おぼうじさん゙のがだきをとる゙んだぜぇぇぇ…………!!」
あー、待った待った。なんかよくわからんけど俺が悪かった。
かわりのお帽子を持ってきてやるから、それで許してくれ、な?
「ゆ……? ゆぅぅぅぅぅ……でも、まりさのおぼうしさんはもどってこないのぜ……!」
それは本当に悪かったって! 俺のミス! な?
まりさだってさっき言ってくれたじゃんか。生きるのは失敗の連続だ、って。俺のせいじゃない、って。
「ゆ? ゆ……まりさそんなこといったのぜ? ゆ? なんかいったきもするのぜ?」
言った言った。すごく優しく言ってくれた。すごく格好良かったぞ!
「ゆう~。しかたないのぜ。まりささまのかんっだいさにかんしゃするのぜ。
でももしかわりのおぼうしさんをもってこなかったら……ちのはてまでおいかけてえいえんにゆっくりさせるのぜ……?」
うわわわわわ、まりさ怖い! すぐ持ってくるから! ここで待ってて! な!
「ほ、ほんとうにもってくるのぜ?! ちゃんとまりさにあたらしいおぼうしもってくるのぜーっ?!」
ぽいんぽいんと上下に跳ねながら叫ぶまりさに手を振り、俺は走り出した。
もちろん、そのまままりさを放置して逃げるため……ではない。
まりさに綺麗でかっこいいお帽子を調達するためである。
俺は約束は守る男だ。例えそれがゆっくりが相手であろうとも!
十分後、俺は服に木の葉をくっつけた姿で、約束どおりまりさの元に戻っていた。
(本文では言い忘れていたが舞台設定は郊外のでかい公園であるのだった)
「……ゆん、もどってくるってしんじていたのぜ」
お前は男と男(?)の約束を破るやつじゃないだろう?
とでも言いたげな顔で、まりさは俺を迎えた。
……俺の姿に気付くまで、今にも泣き出しそうな顔で
おろおろしていたことについては突っ込まないでおいてやろう。
ああっ、約束どおり、お前の新しいお帽子、持ってきたぜ……!
と俺も男の笑みを浮かべて親指を立てて見せる。
ちなみに親指を立てたのは右手。
左手は背中に回して隠してある。
さっきは本当にすまなかった、まりさ……!
俺のミスで、お前の大事な……大事なお帽子を……っ!
「いいんだぜ、すぎたことなんだぜ。おみずにながそうなのぜ」
まりさ……っ!
「さあ……やくそくのおぼうしを、まりさにわたすんだぜ!」
おうよ! これが……俺の誠意の、“新しいお帽子”だっ!
熱く叫びを返しながら、俺は左手に持っていたお帽子をまりさの頭の乗せてやった。
ちょこん、と。
「ゆ?」
ぴかぴかのお帽子……似合ってるぜ! まりさ!
俺は、もう行く。おまえに許されたとしても、俺はやっぱり俺を許せない。
これ以上、おまえの前に姿をさらしていることに耐えられないんだ。
いつかまた、お互いにでっかくなって巡り会おう!
「ゆ……?」
まりさが頭をゆさゆさと揺すっている。
何かを頭の上に置かれたのはわかるのだが、
その感覚に絶大なる違和を感じているのだろう。
おっと! 危ない、あんまりまりさが揺するもんだから転げ落ちそうだ。
もう退散しちゃおう。
じゃあな! まりさ! ゆっくりしていってね!!
「ゆ、ゆっくー……ゆ、ゆぅ?」
もはや俺など眼中に無い様子。
俺は猛ダッシュでまりさから離れて公園の出口へと向かった。
──ゆわわわわぁぁぁ!! これどこのおちびちゃんのおぼうしなのぜ?!!!
そんな叫び声が背後から聞こえてきたかどうかは定かではなく俺の気のせいかもしれない。
そして、俺が駐輪場で調子の悪いチャリのロックをかちゃかちゃしている時に、
──まりさじゃないのぜ!! まりさじゃないのぜ!! まりさがやったんじゃな……
ゆんぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
という叫び声が遠くから聞こえてきた気がするのも、きっと俺が疲れているせいだろう。
カチャリ、とロックが解除された。
よしっ、と俺はさっそうとチャリにまたがり、家に向かってペダルをこぎ始める。
あー。明日こそはハロワ行かなくちゃなー!
END
いじめ ギャグ 小ネタ いたづら 飾り 野良ゆ まりさいじめ
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※注意事項
・罪のない野良ゆっくりがいじめられます
・常識的に考えると火の扱い方が危険です
・人間がダメ人間です
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『マッチ箱をポッケに入れて、公園へ』
ここに一匹のゆっくりがいる。
種族はまりさ。齢期はサイズからして子ゆの後期くらい。
キリッとした眉と、歯を見せて笑みの形を浮かべる口がほんのりゲスッぽい。
ぎゃいぎゃいと騒いでうるさいので
頭の上からひょいと大切なお帽子を取り上げてやった。
より一層騒がしくなったまりさを無視して
俺がポケットから取り出したのはマッチ箱。
シュッと小気味のいい摩擦音を鳴らして、マッチ一本に火をともす。
まりさの目の前に持っていってやると、
「……ゆ?」
とこのように寄り目で不思議顔をするので面白い。
野生にしろ野良にしろ、『火』のことを知識として餡子に刻まれていても、
実物を見たことがあるものはほとんどいない。
そして、目の前にあるものの危険性もわからずに
ぽわぽわとゆらめく火を見つめるまりさを見つめるのも面白いが、
これをお帽子に燃え移らせるともっと面白い。
くたり、とおそらくゆっくり的感覚からすると“イイ感じ”に
折れ曲がっているまりさのお帽子の先端を火の先端でゆっくりと撫でる。
ぼうっ、と燃え上がりだしたお帽子を舗装された地面に置いて、
すぐにまりさへと視線を戻し、心の中で秒数をカウントする。
…2、3、4、 「ゆわぁぁぁぁぁぁぁ! まりさのあたいせんきんなおぼうしがーっ!?」
5秒か。遅くも早くもない。うん。普通の餡子脳だな。
「“ひ”さんゆっくりしないでまりさのおぼうアヂッ、アヂッ!
まりさのおぼアヂッ! おぼうしからはなれでアッッッヅイ!!」
おお。さすがにこれが『火』だということは理解したか。と感心していると
何を血迷ったのかそもそも餡子脳は常時血迷い中だから仕方ないと言うべきか、
まりさは火に向けて舌を伸ばして消火を試みようとしはじめた。
当然、火に触れる前に熱さを感じて悲鳴とともに舌を引っ込めることになる。
バカだなあ、とってもおバカだなあ、とにこやかな笑みを浮かべて
慈しみのまなざしで観察していると、不意に火の勢いが弱まって消えてしまった。
ふわん、と炭化した部分から煙が立ち上る。
ああ、そうか。今朝がた雨が降っていたから、ちょっと湿っていたのかもしれない。失敗したな。
ま、でもいいか。お帽子のとんがり部分は半分は焼けたし、
「まり゙さのおぼうじざんっ!! ゆっくりじてな゙おってね゙!! まり゙ざのおね゙がいだよ!!
ぺーろ、ぺ……くっそにがっっっっっ!! これにがっ!! ゆっ、ゆげっ、ゆげえっ!!」
と、こうして地味だけどあんまり見たことのない自滅行動も見れたし。
お。今度は自分の大事なお帽子に向かってぷくーを始めた。
「ゆっくりできないおぼうしさんにはまりさいかりしんっとーだよ!!
まきしまむぷくーっするからね! ぷっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!!」
元より汚れきっていたのが半分近く焼けていよいよみすぼらしさ満開といった風体のお帽子と、
自分の大事なそれに向かって全力で威嚇をしているまりさ。(注:お帽子は生物ではありません)
今日は日差しこそ少し強いが風は涼やかで心地良い。
風に揺れてさやさやと鳴る樹木たちのざわめき。
じっとりと汚れたまりさの髪。まりさの作る歪んだ楕円の影。
そしてぎゅっと目をつぶってぷるぷるしてる、なんとも無力で無意味なその姿。
平和そのものだ。牧歌的だ。とてもゆっくりとした気分になる。
威嚇されているお帽子が何も言わず風に吹かれてそよと揺れている様が、
その気分によりいっそうの拍車をかける。
ああー、のどかだなあ。
うずうずしてきて、やんなきゃいいのについつい、まりさのほっぺたをぷすっと指で押してしまう。
「ゅぽっ!」 ひゅるるるる~
おっ、なんかいい音がしました。
「ぅぅぅ~……やめるんだぜ! いままりさはだいじなたたかいのさなかにあるんだぜ! じゃましないでね!」
はいはい、わかったよ。どうぞどうぞ続けて。
「わかればいいんだぜ! じゃあおぼうしさん、あらためて、ぷっきゅひゅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!」
今度はまりさが力んだ瞬間をねらって両頬をダブルぷすっ!した。
ぷくーのために吸い込んでいた空気が、勢い良くまりさの口から漏れ出ていった。
ふわんふわん、とまりさの前髪が揺れたのを見て、俺は思わず両手を叩いて満面の笑み。
「じゃますんななのぜ、じじいーっ!!」
うーん、でもさあ、まりさがぷくーってしてもお帽子さん、全然怖がってないじゃん。
それにそんなことしてもお帽子さんは直らないでしょ? ぺろぺろしてあげたほうがいいんじゃない?
「そ、そんなことないんだぜっ! おぼうしさんはこわくてうごけないだけなんだぜ!!
きっとすぐにはんせいしてなおってくれるんだぜ!! じょ、じょうしきなんだぜ?!」
そーかなー。もしかしたら自分を直してくれないまりさに愛想を尽かしてるのかもよ?
ほら、なんかゆらゆら揺れてるし(風で)。どっか行っちゃおうって思ってるのかもねー。
「ゆっゆぅぅ~……。お、おぼうしさん、ぷくーしてごめんなのぜ。
きげんなおしてほしいんだぜ。まりさ、ぺーろぺーろしてあげるのぜ」
ああ、なんてバカな子なんだろう! 餡子脳万歳!
と俺は心の中でまりさの中に詰まっている餡子さんたちに感謝した。
「にっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいのぜぇぇぇぇぇえ?! くっそにっがぁぁぁぁぁぁ!!」
またしてもまりさの絶叫が響く。
ぎゅっとつむった目に涙を浮かべながらぽんぽんと飛び跳ねている。
たぶん、地団駄を踏んでいるんだろう。きっと。
傍から見てると無邪気に喜んでいるようにしか見えないだろうけど。
ひとしきり喜びの小躍り風地団駄を楽しんだあと、
まりさは怒りに顔を歪めてお帽子をギンッと睨み付けた。
「もうおこったのぜ! ほんきのほんきでおこったのぜ!
まりさをバカにするおぼうしさんはせいっさいするんだぜ!!」
あ、じゃあ俺も手伝っていい?
「ゆ?」
とまりさがあっけに取られている間にお帽子を取り上げて
ススス…と5メートルほど後退してまりさに背を向ける。
取り出したるはマッチの箱……からマッチ棒全部!
「ゆ? ゆ?」
背後からぽいんぽいんとのんきな足音を立ててまりさが近づいてくる。
俺はマッチ棒を2本残して、他をお帽子の内側と表側に均等に配置していった。
「ゆ? なにしてる、のぜ?」
俺の横までやってきたまりさが、不思議そうに俺の手元を覗き込んできた。
ハイまりさ、これどうぞ!
と俺はまりさの口にマッチ棒の1本をくわえさせる。
「ゆ? ゆゆ?」
と目を白黒させているところに、
残った最後の1本のマッチに火をつけて
まりさのくわているマッチに着火してやる。
ポッ、と燃えて、まりさの唇と前髪がチリチリ言った。
「ゆあっづう?!」
叫んだ拍子にくわえていたマッチがぽーんと綺麗に飛んでお帽子に落着。そして着火。
ボウッ、と一気に火に包まれるお帽子。
唇の熱さに歪めた表情のまま固まり、燃え上がるお帽子を見つめるまりさ。
にっこにこしながらそれを眺める俺。
「……までぃざのおぼうじざんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ?!!」
今度は13秒かー。やっぱりショックがでかいほど反応が遅いんだねー。わかるよー。
というかさっきだってお帽子の先端を燃やしたのは俺なのに、
ちょっと苦いもん口にしただけでそれが頭の中からすっぱり消えちゃうのってさすがにどうなの?
それってもう生物として致命的すぎる愚鈍さなんじゃないかな。
いやだがそれがいい! 餡子脳ばんざーい!
「ゆわぁ……ゆわあぁぁぁぁ…………」
滂沱と涙を流しながら、燃えていくお帽子を見つめているまりさ。
時おり体がぴくっぴくっとしてるのは、お帽子を助けようとする気持ちと
炎への恐怖がせめぎ合っているからなんだねー、わかるよー。
その上、理性では自分がもうなにもできないって理解しつつあるんだよね。
つらいよね、うんうん、わかる、わかるよ!
なあ、まりさ……生きるってのは失敗の連続なんだ、
自分の力じゃどうにもならないってことはたくさんある。
これはお前のせいじゃない、お帽子さんもきっとわかってるさ……。
──と、俺はまりさの頭をぽんぽんと優しく叩きながら言ってやった。
そしたらどうしたことかまりさ大激怒。
「あ………………あたりまえなんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
おもいだしたんだぜ!! さいしょにおぼうしさんをにがにがにしたのも
じじい、おまえだったんだぜぇぇぇ!! よくもまりさのおぼうしさんをぉぉぉぉぉぉぉ!!」
え、そりゃ確かにそうだけど、まりさ、お帽子さんを制裁するって言ったじゃん!
俺はその覚悟を酌み取ってより確実に完遂できるようにお手伝いしただけだよ?!
「だれもせいっさいするなんていってないのぜぇぇぇぇぇぇ!! かってにきめるななのぜぇぇぇぇぇ!!」
あれ? そうだっけ? うーん……。
おかしいな、俺の頭が餡子脳になってきてるのかな。
まあいいや。どうでもいいことだから、いちいち本当に言ってたかどうかなんて覚えてらんないし。
「まりざは……ま゙りざはぁぁ……おぼうじさん゙のがだきをとる゙んだぜぇぇぇ…………!!」
あー、待った待った。なんかよくわからんけど俺が悪かった。
かわりのお帽子を持ってきてやるから、それで許してくれ、な?
「ゆ……? ゆぅぅぅぅぅ……でも、まりさのおぼうしさんはもどってこないのぜ……!」
それは本当に悪かったって! 俺のミス! な?
まりさだってさっき言ってくれたじゃんか。生きるのは失敗の連続だ、って。俺のせいじゃない、って。
「ゆ? ゆ……まりさそんなこといったのぜ? ゆ? なんかいったきもするのぜ?」
言った言った。すごく優しく言ってくれた。すごく格好良かったぞ!
「ゆう~。しかたないのぜ。まりささまのかんっだいさにかんしゃするのぜ。
でももしかわりのおぼうしさんをもってこなかったら……ちのはてまでおいかけてえいえんにゆっくりさせるのぜ……?」
うわわわわわ、まりさ怖い! すぐ持ってくるから! ここで待ってて! な!
「ほ、ほんとうにもってくるのぜ?! ちゃんとまりさにあたらしいおぼうしもってくるのぜーっ?!」
ぽいんぽいんと上下に跳ねながら叫ぶまりさに手を振り、俺は走り出した。
もちろん、そのまままりさを放置して逃げるため……ではない。
まりさに綺麗でかっこいいお帽子を調達するためである。
俺は約束は守る男だ。例えそれがゆっくりが相手であろうとも!
十分後、俺は服に木の葉をくっつけた姿で、約束どおりまりさの元に戻っていた。
(本文では言い忘れていたが舞台設定は郊外のでかい公園であるのだった)
「……ゆん、もどってくるってしんじていたのぜ」
お前は男と男(?)の約束を破るやつじゃないだろう?
とでも言いたげな顔で、まりさは俺を迎えた。
……俺の姿に気付くまで、今にも泣き出しそうな顔で
おろおろしていたことについては突っ込まないでおいてやろう。
ああっ、約束どおり、お前の新しいお帽子、持ってきたぜ……!
と俺も男の笑みを浮かべて親指を立てて見せる。
ちなみに親指を立てたのは右手。
左手は背中に回して隠してある。
さっきは本当にすまなかった、まりさ……!
俺のミスで、お前の大事な……大事なお帽子を……っ!
「いいんだぜ、すぎたことなんだぜ。おみずにながそうなのぜ」
まりさ……っ!
「さあ……やくそくのおぼうしを、まりさにわたすんだぜ!」
おうよ! これが……俺の誠意の、“新しいお帽子”だっ!
熱く叫びを返しながら、俺は左手に持っていたお帽子をまりさの頭の乗せてやった。
ちょこん、と。
「ゆ?」
ぴかぴかのお帽子……似合ってるぜ! まりさ!
俺は、もう行く。おまえに許されたとしても、俺はやっぱり俺を許せない。
これ以上、おまえの前に姿をさらしていることに耐えられないんだ。
いつかまた、お互いにでっかくなって巡り会おう!
「ゆ……?」
まりさが頭をゆさゆさと揺すっている。
何かを頭の上に置かれたのはわかるのだが、
その感覚に絶大なる違和を感じているのだろう。
おっと! 危ない、あんまりまりさが揺するもんだから転げ落ちそうだ。
もう退散しちゃおう。
じゃあな! まりさ! ゆっくりしていってね!!
「ゆ、ゆっくー……ゆ、ゆぅ?」
もはや俺など眼中に無い様子。
俺は猛ダッシュでまりさから離れて公園の出口へと向かった。
──ゆわわわわぁぁぁ!! これどこのおちびちゃんのおぼうしなのぜ?!!!
そんな叫び声が背後から聞こえてきたかどうかは定かではなく俺の気のせいかもしれない。
そして、俺が駐輪場で調子の悪いチャリのロックをかちゃかちゃしている時に、
──まりさじゃないのぜ!! まりさじゃないのぜ!! まりさがやったんじゃな……
ゆんぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
という叫び声が遠くから聞こえてきた気がするのも、きっと俺が疲れているせいだろう。
カチャリ、とロックが解除された。
よしっ、と俺はさっそうとチャリにまたがり、家に向かってペダルをこぎ始める。
あー。明日こそはハロワ行かなくちゃなー!
END