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anko3330 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~(前)
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『HENNTAI達の日常~メスブタの家出~(前)』 33KB
愛で いじめ 変態 家出 飼いゆ 野良ゆ 希少種 現代 15作品目、前編。HENNTAIもの注意です。
注意書きです。
1 希少種ゆっくりが出ます。
2 このSSはHENNTAIな成分を含んでいます。
3 HENNTAIなゆっくりが出ます。
4 HENNTAIな人間が出ます。
それでもOKという方のみ、どうぞ。
そこは、とある街中の、とある三階建てのマンション。
そのマンションの三階の302号室の部屋の一室で、一人のお姉さんがクッションに座り、テーブルの上に置かれたノートパソコンと向かい合っていた。
「としあきは涙目でこちらを睨みつけるゆうかを見て、胸が高鳴った……」
お姉さんは何やらブツブツ呟きながら、カタカタとキーボードを打って文字を入力していた。
「サディストなゆうかが、性奴隷として全裸で亀甲縛りをされている姿を見て、並並ならぬ興奮を覚えていたからだ……」
何やら危なっかしい台詞を口にしながらキーボードを打っていると、ドタドタと誰かが廊下を走っている音が聞こえてきた。
「としあきはヒャッハーと叫びながら、ゆうかに鞭を……。うーん、なんかイマイチね……」
お姉さんが頭を掻きながら悩んでいると、突然部屋のドアが勢いよく開いた。
「おねえさんっ!!あそびましょうっ!!」
……部屋の入口に立っていたのは、一つ屋根の下でお姉さんと一緒に暮らしている、胴付きの飼いゆっくりだった。
その飼いゆっくりは、何故か布団叩きを手にしていた。
「……悪いけど、今忙しいのよ。また後でね、てんこ」
お姉さんにそう軽くあしらわれた飼いゆっくり……、ゆっくりてんこは、ポカンとした表情で数秒間固まり、そして……。
「ど……、どぼぢでぞんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
目から砂糖水の涙をボロボロ流しながら、そう叫んだ。
「だから言ってるでしょ?今忙しいのよ。あんたの相手をしている暇は無いの」
「そんなごどいわないでえぇぇぇぇっ!!おねえさん、このごろぜんぜんあいてしてくれないじゃないぃぃぃぃっ!!」
てんこはお姉さんのほっそりした足にすがりながら、イヤイヤと首を振って抗議した。
……もし、事情の知らない第三者が、お姉さんとてんこのやり取りを見ていたなら、てんこに同情していたかもしれない。
……が、てんこの言っている『遊び』とは、決してKENZENな内容では無かったのである。
「ちゃんとかまってるじゃない。この前だって蝋燭プレイしたでしょ」
「あれだけじゃ、ぜんぜんたりないでしょおぉぉぉぉっ!?ろうそくときたら、さんかくもくばとむちうちがじゃすてぃすってきまってるじゃないぃぃぃぃっ!!」
「昨日だって顔面をホットプレートで焼いたじゃないの」
「あれはよわびだったでしょおぉぉぉぉっ!?てんこ、あぶらをしいて、つよびでじゅーじゅーしてもらわないと、ぜんぜんいけないのよおぉぉぉぉっ!?」
てんこの言っている『遊び』、それは、自分を様々な道具やテクニックで痛めつけてもらう事である。
ゆっくりてんこ種は、虐められる事を一番のゆっくりと考えている、ゆっくりの中で特に異端の存在である。
このてんこもその例に漏れず、自他共に認める、ドMの淫乱メスブタ……、早い話が、変態であった。
「……!そ、そうだよ!おねえさん、おしごとしているんでしょ!?だったら、てんこがてつだうよ!」
てんこはそう言うと、いきなり自分のスカートを捲くり上げた。
それにより、薄い桃色の下着が露わになるが、てんこはその事を気にせず、お姉さんに向かって尻を突き出した。
「てんこがおねえさんのかいているしょうせつのもでるになるから、えんりょなくすぱんきんぐしてね!!したぎがやぶれるくらいでかまわないよ!!」
「ごめん、それ無理」
「どぼぢでぞんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
「今書いている小説は、いつもとはちょっと違う内容なのよ。今回は性根が淫乱メスブタのあんたをモデルにする気は無いの」
お姉さんの言っている仕事……、それは、ゆっくりがメインの官能小説の執筆である。
お姉さんは胴付きゆっくりが快感の渦に溺れる様を画いた官能小説を何十作品も出しており、その筋の世界ではちょっとしたカリスマ作家であった。
どんな作品があるのかと言うと、まず最初に、お姉さんが十数年前に、高校一年生の時に出版社に持ち込んだ『ナースうどんげの受難:やめて、座薬だけは』。
次に、お姉さんの作品が世間に認められ、初めて本になった際の処女作『背徳のけーね先生:淫乱な補習は放課後に』。
そして数週間前に書き上げた最新作『少女ゆかりんの性感開発:少女臭?いいえ、メスブタ臭です』。
他にも様々な作品があるが、全て取り上げるとキリが無い。
先程てんこが言った手伝いとは、お姉さんがネタで行き詰った際に、お姉さんがてんこを小説内のゆっくりのモデルとして様々な方法で虐める事であった。
「今私が考えている作品のメインのゆっくりは、ゆうかなのよ」
「ゆ、ゆうか?」
「そ。タイトルは『女王ゆうかの失墜:真の姿は性奴隷』。これが意外と手こずってるんだわ」
「お、おかしいよ、それ!ゆうかはどえすなんだよ!?じょおうさまなんだよ!?それがせいどれいって、いったいだれとくなの!?」
「まぁ聞け糞ビッチ。主人公のゆうかは、女王様でありながら、人間の手によって、痛みを快楽と感じる、ドMな体に調教されてしまうの」
「そ、それで?」
「ゆうかはドSとしての心を持ちながら、痛めつけられる事に快感を覚えてしまい、ドSとドMの境目でハァハァ喘ぎ、悶え苦しむの」
「な……、なんかいいねそれ!あたらしいじゃんるにめざめたきがしてきたよ!」
「でしょ?だから私のネタ出しの邪魔しないでね」
「お、おねえさん!おねえさんはいろいろとなやみすぎなんだよ!ここはてんこをいじめて、すかっとすることをおすすめするよ!」
「ええい、そんな言葉に騙される私では無い!」
「もうすぐみそじをこえそうだからって、かりかりしてちゃだめだよ!」
「誰が三十路じゃコラアァァァァッ!?私はまだ二十九歳四カ月だあぁぁぁぁっ!!」
どうやらてんこのその言葉が、お姉さんの逆鱗に触れたようである。
お姉さんはてんこの手から布団叩きをひったくると、それでバシリと、思い切りてんこの尻を叩いた。
「あひゃあっ!?ありがとうございますっ!!」
てんこは恍惚の表情を浮かべながら、次の一撃を期待していた。
「ええいっ!!出ていけっ!!この部屋は私のサンクチュアリじゃあっ!!」
「へっ!?ち、ちょっと、おねえさん!?」
お姉さんはてんこを部屋から追い出すと、中から鍵を掛けてしまった。
もっと虐めてもらえると思っていたてんこにとっては、たまったものでは無い。
「お、おねえさん!だめだよ!もっとすぱんきんぐしてね!これじゃ、なぶりごろしだよっ!!」
てんこは何度もドアを叩いたが、返事が返ってくる事は無かった。
「……いいもん、まだあてはあるんだもん」
てんこはそう言うと、お姉さんの部屋の隣の部屋『いくのへや』とプレートが貼られたドアを開けた。
「およ?どうしました?そうりょうむすめさま」
部屋の中には、てんこと同じ、胴付きのゆっくりがちょこんと座っていた。
「ねぇ、いく!いつものびりびりさんやって!さいだいしゅつりょくでかまわないよ!」
「もうしわけありません、いまてがはなせないのです」
てんこにいくと呼ばれたそのゆっくり……、ゆっくりいくは、深々と頭を下げた。
「どぼぢでそんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
「およよ、おこらないでください、そうりょうむすめさま。となりやしたのへやのひとにめいわくですよ」
これで本日何度目になるか分からない叫び声を上げたてんこを、いくがなだめた。
このいくも、てんこと同じく、お姉さんの飼いゆっくりであった。
このいくは礼儀正しく、家事手伝いなどを積極的に手伝い、様々な状況で空気を読んでくれる、一言で言えば、出来た子だった。
……が、てんこに対しては、少々遠慮を知らない対応をする事が多いのが、珠にキズ、であった。
「いく!いったいなにがいそがしいの!?ただすわっているだけじゃない!」
「そうりょうむすめさま、わからないのですか?ほら、ほら」
そう言っていくは、部屋に置いてあるテレビを指差した。
テレビの電源は付いており、有名なバラエティ番組が放送されていた。
「……ねぇ、いく。きくのがこわいけど、いちおうりゆうをききたいんだけど」
「てれびをみるのにいそがしいんです」
「そんなこったろうとおもったよ!」
「ならきかないでください」
このいくは大のテレビっ子で、いくの頭の中では、『てんこの頼み<<<<<<越えられない壁<好きな番組<お姉さんの頼み』という方程式が成り立っていた。
「てれびなんてあとでいいじゃない!そんなことよりも、いつものびりび」
「だめです!いまちょうど、『わらっていいのか?』がはじまったばかりなんですから!そうりょうむすめさまはひとりでかべにずつきでもしていてください!」
「それはあさにやったよ!」
「あ、やったんですか?」
「とにかく、はやくびりびりさんをやってね!てんこ、きょうはぜんぜんへぶんじょうたいになってないんだよ!」
てんこの言っている『びりびりさん』とは、ゆっくりいく種の特殊能力である、放電の事であった。
ゆっくりいく種は体内に電気を貯め込んでおり、その電気を放電させる事が出来るのである。
……が、いくのその特技は、今の所てんこを痺れさせてヘブン状態にする位しか役立っていない。
「えー……、ほうでんするのはつかれるんですよ。それにいま、いいところですし」
「じ、じゃあ、『わらっていいのか?』がおわったあとに」
「あ、それがおわったらこんどは『ごきげんいかが?』をみるのでだめです」
「じ、じゃあ、『ごきげんいかが?』のあとに」
「あ、それがおわったらこんどは『ごごのゆんやーげきじょう』をみるので……」
「いつになったらやってくれるの!?てんこにへぶんじょうたいになるのをがまんしろっていうの!?」
「まぁ、そうなりますね」
「……もういいわ」
「あ、そうですか?……あっ!きょうはしんやあにめの『まじょっこまりちゃ』があるんでした!よやくろくがしないと……」
「……」
てんこはうつむいて、肩をワナワナ震わせながらいくの部屋を出たが、いくは予約録画の設定に夢中で、てんこの様子には気付いていなかった。
「……いいわよ、いいわよ!おねえさんも、いくも、そんなといどをとるなら、てんこにだってかんがえがあるんだから……!」
てんこはグスグスと涙ぐみながら、いくの部屋の隣の部屋の、「かちくのすあな」とプレートが貼られているドアを開け、部屋の中に入った。
この部屋はてんこの部屋で、ドアのプレートは決してお姉さんの嫌がらせなどではなく、てんこの要望で付けられたものであった。
部屋の中は、三角木馬や鞭、積み石に蝋燭にライターなど、明らかに性的な目的で使用される道具が床一面にゴチャゴチャと散乱していた。
てんこは自分のベッドの隣の収納ケースからリュックサックを取り出すと、その中に衣服棚から出した服や下着、比較的軽い性的な道具をいくつか入れた。
そして部屋を出ると、再びいくの部屋へと戻った。
「およ?そうりょうむすめさま、そのにもつはどうなさったのです?」
いくは寝そべりながら、いつの間に持ち出したのか分からない、醤油煎餅をボリボリと食べながらそう尋ねた。
「……いく!てんこ、いまからいえでをするわ!」
「あぁ、そうですか。おやつのじかんまでにはかえってきてくださいね。ところで、きょうのばんごはんはなにがいいですか?」
「すぶたがいいわ。……じゃなくて!いく!てんこのはなしをきいていたの!?」
「あ、すみません、きいていませんでした」
「いえでするっていったのよ!」
「え……!?おねえさんがですか!?」
「てんこがよ!!」
「ははは、ごじょうだんを。えいぷりるふーるはとっくのむかしにおわりましたよ?」
いくは冗談言うなとばかりに笑い飛ばしていたが、てんこの目は本気そのものだった。
「じょうだんじゃないわ!てんこはほんきよ!」
「……そうりょうむすめさま、いったいどうしたんです?なんでいえでなんか……」
「いくも、おねえさんも、てんこにつめたすぎるのよ!おねえさんはてんこのこと、あいてにしてくれないし、いくだって、てんこのことそっちのけで、てれびにむちゅうになってるじゃない!」
「それはしょうがないですよ。おねえさんもいくも、いろいろといそがしいですし。いくも、かじすいはんをしていますので、いきぬきがしたいんですよ」
「う……!で、でも、てんこだって、いろいろとおてつだいしているのよ!?ふたりとも、てんこのありがたみがわかっていないわ!」
「うーん……、たしかにおねえさんはそうりょうむすめさまをいじめて、しょうせつのねただしをしていますし、いくもふぃーばーするときは、ひらいしんがわりになってもらってますね」
「でしょ!?てんこがいなくなれば、ふたりともこまるとおもうわ!そして、てんこをないがしろにするんじゃなかったって、のちのちおもうはずよ!」
「そ、そうりょうむすめさま?もしかして、ほんきなんですか?」
「ほんきもほんき、おおまじよ!」
「お、おやめください!そうりょうむすめさま!いま、そうりょうむすめさまにいえでをされては、とてもこまるのです!」
いくは先程の態度とは打って変わり、必死にてんこを説得し始めた。
「い、いく……」
普段てんこに対して、とぼけた態度しか見せないいくの必死な姿を見て、てんこの決心が少しぐらついた。
(こんなにひっしに、てんこのことをとめてくれるなんて……。や、やっぱり、やめておいたほうが……)
「きょうはごごよじから、きんじょのすーぱーまーけっとで、かんづめのたいむせーるがあるんです!」
「……は?」
「ひとりげんていさんこまでなので、そうりょうむすめさまもいっしょにいってほしいんです!でていくのなら、せめてあしたにしてください!」
「い……、いくのばかあぁぁぁぁっ!!」
いくのその言葉に失望したてんこは、いくの部屋を飛び出し、玄関の方へと走って行き、外へ飛び出してしまった。
「およよ……。ちょっとした、さたでーじょーくでしたのに。まぁ、そのうちきげんをなおしてかえってくるでしょう」
そう楽観的に捉えたいくは、再びテレビを見て、煎餅を食べるのだった。
「ぐすん……、いくのばか……。もうほんとうにいえでしてやるんだから……」
怒りに身を任せつつ、外へ飛び出したてんこであったが、あっと言う間にテンションが下がり、トボトボと階段を降りていた。
「……でも、どこにいこうかしら?」
てんこが行き先を悩んでいる間に、二階へと到達した。
そして、次の階段を降りようとした、その時。
「あら?てんこさん。どうかなさいましたか?」
後ろから、誰かが声をかけてきた。
「そのこえは……」
てんこがうしろをふりむくと、そこにはミニスカメイド姿の、てんこと同じ背丈の胴付きゆっくりが立っていた。
そしてその手には、何故かデジカメが握られていた。
「さくやじゃない。どうしたの?かめらなんかもって」
てんこに声をかけてきたのは、このマンションの二階の208号室に住んでいる青年の飼いゆっくりの、ゆっくりさくやだった。
さくやとてんこは気が合う友達同士で、時々お互いの家に遊びに行くほど仲が良かった。
「うふふ、これから『うーぱーく』にいくんですの」
さくやはうっとりとした表情でそう言った。
『うーぱーく』とは、てんこ達が住んでいるマンションから徒歩で約三十分程の場所にある、ゆっくりがメインのテーマパークだ。
うーぱーくには様々なゆっくりが見世物として暮らしており、つまり動物園みたいな施設だった。
……が、このうーぱーくはただの施設ではなく、見世物のゆっくりの七割近くが、ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんを占めている、変わり種の施設だった。
他にも希少種クラスのゆっくりが何匹かいるのだが、うーぱーくと聞けばれみりゃかふらん、というイメージが強く、もはやそれがメインと化していた。
「このでじかめで、おぜうさまといもうとさまのあいくるしいおすがたを、せんめいにとるんですの。……はぁはぁ、たのしみですわぁ」
さくやは恍惚とした表情で、口から軽く涎を垂らしながら、明後日の方向を見つめていた。
このさくやは、れみりゃとふらんがテラ大好きであった。
週に一度は必ずうーぱーくに足を運んでおり、れみりゃやふらんの姿を写真に撮る度に、ヘブン状態になる位に大好きであった。
彼女の部屋の中には、大量のれみりゃとふらんグッズが置いてあり、秘蔵のアルバム数は十を超えおり、抱き枕にはよく分からない染みが付着していた。
早い話が、変態であった。
「さくやも、れみりゃやふらんがすきねぇ」
「えぇ、それはもう!おぜうさまといもうとさまが、『しゃくやー!』なんてよんでくださったひには、おもわずくちからぷりんがでてしまうくらいですわ!」
「そんなにだいすきなら、よるもはぁはぁしてるんじゃない?『さくや』も、おたのしみでした?なんてね!」
「『さくや』も、だけでなく、まいばんよどうしですわ!このこうふんが、たったひとばんでおさまるわけがありませんもの!」
「わかるわぁ、それ!こうふんやかいかんは、さめたらまけだっておもってるもの!」
「ですよねー!」
二人はヒャホホ、デヘヘ、と笑いながら、変態話に華を咲かせていた。
仲良くお喋りをするその姿は中睦まじいものであったが、話の内容がそれを台無しにしていた。
「ところで、てんこさんはどこかへおでかけですか?」
「えっ!?……えぇ、まぁ、そんなところ、ね……」
いきなりさくやにその話を振られたてんこはしどろもどろになりながら、そう説明した。
「そうですか。それじゃあてんこさん、わたくしはおもいっきりたのしんできますので、てんこさんもゆうがないちにちをたのしんできてくださいね」
「あ、ありがとう……」
「はぁはぁ……、まっていてくださいな、わたくしのえんじぇるさまたち。いますぐげぼくがそちらへまいりますわ……」
さくやは焦点が定まらない目つきで、階段を降りて行った。
「……」
ポツンと一人残されたてんこは、数分間そのままじっと立っていた。
そして、先程の高かったテンションが遥か彼方へ去って行くのを感じていた。
「いいなぁ、さくやは。まいにちへぶんじょうたいになれるなんて、ゆめのようなせいかつだわ……」
てんこはさくやと自分の境遇を比べ、羨ましいと感じていた。
「……ま、まぁ、いいわ!さくやはさくや、てんこはてんこだもの!さ、さーて!どこにいこうかしら!?」
てんこは寂しさを紛らわすかのように、わざと大声を上げて、再び階段を降り始めた。
「き、きっと、おねえさんもいくも、てんこがいなくなれば、おおあわてになるわ!そうすれば、ひっしになって、てんこのことをさがすはずだもの!」
誰に聞かせる訳でも無いのに、そう大声を上げている間に、階段を降り終えて、一階へと到達した。
……が、それと同時に、再び心に迷いが生じた。
(ほ、ほんとうに、いえでしたほうが、いいのかしら?いくあてもないのに……)
勢いで出てしまった為、このまま本当に家出すべきかどうか、悩んでしまったのだ。
(どうしよう?どうしよう?たすけて、がいあさま……)
困った時の神頼みほど当てにならないものだが、てんこは頭を抱えてその場にしゃがみこみ、うんうん悩んでしまった。
と、その時である。
「オーウ、どうしたんディスか?てんこチャーン」
急に頭上から、野太い男性の声が聞こえてきた。
「え、え……?」
てんこが驚いて上を見上げると、目の前にピチピチのタンクトップに青いジーンズ姿の、ムキムキマッチョの黒人男性が立っていた。
「あ。ゆ、ゆかわさん」
てんこがそう呟くと、黒人男性はチッチッチと指を振った。
「ノンノン、違いマース。前から言ってるじゃないディスか。ボクの事は、フレンドリーに『オネィサン』って呼んでくれって」
黒人男性……、オネィサンは、白い歯をキラリと輝かせながらそう言った。
……彼、オネィサンは、てんこの知り合いで、このマンションの一階の1072号室の住人であった。
ちなみに本名は『オーネィ・湯川・サントス』で、黒人の男性と日本人の女性から産まれたハーフである。
他人からはミドルネームから湯川と呼ばれる事が多いが、本人は何故かそう呼ばれるのを酷く嫌っており、必ず自分の事はオネィサンと呼ぶよう言っていた。
また、彼はてんこの飼い主のお姉さんの小説の大ファンで、よくお姉さんにアプローチをかけているのだが、全く相手にしてもらえなかった。
「何か悩んでいるんディスか?良かったら、ボクが相談相手になりマスよ?」
「え、えーと、だいじょうぶよ、ゆか……、おねぃさん。なんでもないの」
「オゥ、そうディスか?何か悩んでいるようだったので、声をかけたんディスけどね。ところで、お出かけディスか?」
「え?う、うん!そんなところだよ!」
「そうディスか。ボクも、これからお出かけなんディスよ」
「どこにでかけるの?」
「HAHAHA、決まってるじゃないディスか。マウンテンディスよ、マウンテン。今日もユックリ達に愛を注ぎに行って来マース」
このオネィサンは、平日は加工所で汗水垂らしながら働き、休日になると、ゆっくり達が棲んでいる山や森へと出かけていた。
……その理由は、ゆっくりをレイポゥする事であった。
オネィサンはお姉さんの次にゆっくりをレイポゥする事が大好きで、普通のゆっくりから胴付きゆっくり、果てはドスまりさまでレイポゥした事がある、歴戦の猛者である。
早い話が、変態であった。
「おねぃさんもすきねぇ」
「ユックリ素晴らしいディス!子供の頃にいたアメリカには、ユックリ居ませんディシた。日本で初めてユックリを見た時、そりゃあもう驚きマシた」
オネィサンはグッと拳を握ると、どこか遠い目をしながら語りだした。
「あのフテブテしい面構え、あのヒャハりたくなる態度、あの具合の良いマムマム、どれを取っても最高ディス!もうボクはユックリ無しでは生きられマセんね!てんこチャンも、似たようなものでしょ?」
「そうねぇ、てんこもいっしょうほうちぷれいのままいきるなんて、かんがえられないわぁ。……あぁ、なんか、むしょうにいじめられたくなってきたわぁ!」
「オゥ、てんこチャン、もし良かったら、ボクがお手伝いしましょうか?」
「えっ!?いいの!?それじゃあここにむちがあるから、おもいっきりてんこをすぱんきんぐしてね!にくがそげるくらいのいきおいでかまわないよ!」
「お安い御用ディス。それじゃ、いきマスよ?……それっ!」
オネィサンはてんこから鞭を手渡されると、その鞭で思い切りてんこを叩いた。
「あひゃぁんっ!?」
「てんこチャン、大丈夫ディスか?」
「い、いいわぁっ!!もっと!!もっとちょうだいっ!!てんこたちのぎょうかいでは、ごほうびなのよぉっ!!」
「HAHAHA!やっぱりてんこチャンはビッチポークディスね!何か、ボクのオンバシラも興奮してきマシたよ!」
「あ、あぁぁぁぁんっ!!これよこれぇっ!!もっと!もっとすぱんきんぐしてぇっ!!てんこをめちゃくちゃにしてぇっ!!」
てんことオネィサンは、中睦まじくSMプレイに勤しんでいた。
もしこの光景を誰かに見られていたら、間違い無く通報ものだろう。
が、そんな事はこの変態達の頭の中には全く無かった。
……数分後。
「あひぃ……。なかなかよかったわぁ……」
「HAHAHA、喜んでもらて何よりディス。それじゃあてんこチャン、僕、そろそろ行きマスね。お姉さんに、よろしく言ってくださいね!それじゃ、バァイ!」
オネィサンはそう言うと、ビッと片手を上げ、爽やかに走り去って行った。
「はぁ……、はぁ……、おえぃさんのぷれい、あいかわらずなかなかのものだわぁ……。ちゃんとてんこのことを、いかせてくれるなんて、とってもしんしねぇ……」
てんこは恍惚とした表情で、そう呟いた。
「……それにくらべ、おねえさんといくは、いっつもちゅうとはんぱで、まともにてんこのことをいかせてくれないんだから……」
てんこはオネィサンとお姉さんといくの対応の違いに、差を感じていた。
「どうして、ふたりとも、てんこにかまってくれないのよ……。なんで、てんこにやさしくしてくれないのよ……」
てんこは俯きながら、トボトボと、フラフラと、当ても無く歩き出した。
てんこ!どうしよう!ネタが出なくなったわ!
おねえさん!てんこをおもいっきりぶってね!てんこがもでるさんになるから!
バシッ!バシッ!
あひゃあんっ!!やっぱりおねえさんのてくにっくははげしくて、さいこうねぇ!
いつもネタ出しに協力してくれて、ありがとうね、てんこ!
「おねえさん、てんこのこと、たくさんいじめてくれたのに……」
およよっ!!きょうはどようびですね!ふぃーばーしたくなってきましたよ!
いく!てんこにおもいっきりでんげきをあびせてね!てんこがすべて、うけとめてあげるから!
バリリリリッ!!
あびゃびゃびゃあっ!?これよこれぇっ!!このびりびりぐあい、とってもたまらないわぁっ!!
さたでーないとふぃーばーっ!!
「いく、むかしはたくさんてんこのことをしびれさせてくれたのに……」
てんこは思い返していた。
ほんの少しばかり昔の、心の底から楽しかった頃の思い出。
あの頃は放置プレイなんてものは、どこにも無かった。
それが今ではどうか。
良くて寸止めの嬲り殺しプレイ、普通ではお預けプレイ、悪くて放置プレイ。
全くゆっくり出来ないプレイばかりだ。
てんこは全く心の底からヘブン状態になる事が出来なかった。
一体、どうしてこうなってしまったのか。
てんこは何度もそう考えていたが、その答えは出て来なかった。
……数十分後。
「……はぁ」
てんこは、マンションから大分離れた場所にある公園のブランコに座っていた。
フラフラと歩いているうちに、いつの間にかそこに辿り着いていたのである。
ブランコが揺れるたびに、ギィギィと金具が錆着いた音が響く。
その音が、余計てんこの気分をより下げていた。
「……おなかがすいたわ」
昼食を摂っていなかったので、てんこは空腹だった。
てんこはブランコから降りて、近くの芝生に生えている雑草をむしり取り、それを口に入れた。
「むーしゃ、むーしゃ、げろまずー。でも、それがいいー」
てんこは気だるそうに、雑草を咀嚼していた。
普通、ゆっくりは雑草など苦い味のする物を極端に嫌うのだが、てんこは基本的に雑食なので、全く気にはならなかった。
むしろ、その気になれば生ゴミも食べる事が出来るので、雑草などてんこにとっては常食のようなものだった。
「むーしゃ、むーしゃ、げろまずー」
これから、どうしたものか。
てんこはボーッとしながら雑草を咀嚼し、そう考えていた。
「ゆっ!!なにをしているのぜ!?」
「みかけないゆっくりだね!ここでなにをしているの!?」
「へんなゆっくりだね!なんだか、ぜんぜんゆっくりできないよ!」
「……あ?」
後ろから何やら複数の大声が聞こえてきたので、振り向くと、そこには十数匹のゆっくり達がいた。
成体サイズのゆっくりから、ピンポン玉サイズの赤ゆっくりなど、大小様々なゆっくりがいたが、全員体や髪飾りが汚れていたので、一目で野良だという事が分かった。
「……なに?あんたたち」
てんこは気だるそうにそう言った。
「このこうえんは、まりさたちのなわばりなのぜ!よそものはさっさとでていくのぜ!」
「そうだよ!ゆっくりできないよそものは、さっさとでていってね!」
「でちぇいきぇー!」
「ぷきゅうぅぅぅぅっ!!」
対する野良ゆっくり達は、頬を膨らませて、てんこに威嚇(笑)をしていた。
明らかに、てんこに対して敵対心をむき出しにしている対応であった。
「あぁ、このこうえん、あんたたちのすみかなの?」
「そうなのぜ!よそものがかってにはいってくるんじゃないのぜ!」
「よそものはさっさとでていってね!」
「でていかないと、むれのみんなでせいっさいっするわよ!?」
(むれ……、ねぇ……)
てんこが周りを見回してみると、確かに滑り台やベンチの下、土管トンネルの中、公衆トイレの脇などに、段ボールハウスや紙などを集めて作った巣がいくつかあった。
この野良ゆっくり達の言う通り、この公園は野良ゆっくり達の縄張りなのだろう。
……が、てんこにとってそんな事は関係無かった。
「ふーん。……で?それででていけって?なにそれ?なんでてんこがでていかなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」
「「「「ゆっ!?」」」」
「べつに、てんこはだれにもめいわくはかけていないんだから、ここにいてもいいじゃない」
「ゆがあぁぁぁぁっ!?よそものがうろちょろしているだけで、ゆっくりできないのぜぇっ!!」
「へんなゆっくりがいていいばしょじゃないんだよ!?」
「まったく!ふつうならそっこうでせいっさいっものなのに、ありすたちがかんだいなのをいいことに!」
「とんでもないげすだね!まったく!」
「こうえんはみんなのものでしょ?それをひとりじめにするのは、どうかとおもうんだけど」
「ゆがあぁぁぁぁっ!!ごちゃごちゃとうるさいのぜえぇぇぇぇっ!!でていかないならちからづくで……!!」
「むきゅ!まちなさい!」
てんこに飛びかかろうとしたまりさを、一匹のぱちゅりーが制止した。
「ゆっ!?お、おさ……!」
「ここはぱちぇにまかせなさい」
まりさに長と呼ばれたぱちゅりーは、てんこの前まで跳ねて行った。
「むきゅ。ぱちぇのむれのなかまが、すこしいいすぎたみたいね」
「べつに。きにしてないわ。……で?あんたはどうなの?やっぱりてんこがここにいると、めいわく?」
「むきゃきゃ。とんでもない。ゆっくりしていってほしいわ」
「お、おさ!?いったいなにをいってるんだぜ!?」
「あなたはだまってなさい!」
「ゆぐ……」
ぱちゅりーはまりさを一喝すると、再びてんことの会話に戻った。
「ところであなた、てんこってなまえのゆっくりでしょ?」
「てんこのことをしってるの?」
「むきゃきゃ。それくらいふつうよ。……あなた、いじめられるのがとってもだいすきなんでしょ?」
「わかってるじゃない」
「それでね、てんこ。ひとつていあんがあるんだけど」
「ていあん?」
「むきゅ。ぱちぇのむれのいちいんにならない?」
「……は?」
ぱちゅりーのその言葉を聞いたてんこは、目が点になっていた。
いきなり群れの一員にならないかと言われれば、そうなってしまうのも無理は無いだろう。
……が、ぱちゅりーはてんこのそんな様子を気にせずに話を続けた。
「あなた、ぱちぇたちとちがって、てあしがあるから、いろいろとやくだつとおもうのよ」
「……で?」
「ぱちぇたちのむれのいちいんになって、いろいろとぱちぇたちをたすけてほしいのよ。もちろん、ただでとはいわないわ」
「なにをしてくれるっていうの?」
「あなた、いじめられるのがとってもだいすきなのよね?だったら、ぱちぇたちがおもいっきり、まんぞくするまであなたをまいにちいじめてあげるわ」
「……」
「もちろん、おいしいごはんをまいにちよういするわ。どう?わるいはなしじゃないでしょ?ぱちぇたちはたすかる、あなたはいじめられる、いいはなしじゃない」
「……」
ぱちぇのそのていあんに、てんこは黙り込んでしまった。
(むきゃきゃ。かんがえてる、かんがえてる。これはもう、おちたもどうぜんね)
てんこのその様子を見て、ぱちゅりーは内心ほくそ笑んでいた。
このぱちゅりーは元飼いゆっくりで、金バッジを取得しており、ゆっくり基準で比べると、結構頭の良い部類のゆっくりだった。
……が、内心では人間の事を、自分にとって都合の良い奴隷と考えている、隠れ金ゲスだった。
そして、ある日突然、飼い主から『飽きた』という理由で捨てられ、その際に金バッジもはく奪されてしまった。
ぱちゅりーもぱちゅりーで、自分をゆっくりさせないクズはこちらから願い下げだとばかり思っていた。
ぱちゅりーは新しい飼い主を探そうとしたが、捨てられゆっくりのぱちゅりーに対して、世間は厳しいもので、誰一人ぱちゅりーに見向きもしなかった。
結局、ぱちゅりーは人間に取り入る事を諦め、自分よりも馬鹿な野良ゆっくりを利用しようと考えた。
そしてぱちゅりーは持ち前の頭脳と、得意の話術と演技で、小規模ながら野良ゆっくり達の群れの長になる事が出来た。
捨てられゆっくりにしては、ちょっとした成功例である。
(てんこのことだもの、いじめてもらえるといわれたら、ぜったいにいえすとこたえるわ)
てんこを勧誘したのは、もちろん群れの一員ではなく、群れの奴隷としてこき使う為だった。
胴付き相手に真正面から敵わなくても、寝込みやしーしーの最中など、スキが出来た時に数匹で襲い掛かり、ゆっくりにとって命より大切な帽子を奪えば、泣きながら返してと土下座すると考えていた。
そしててんこを奴隷にすれば、自分達は色々と楽が出来ると考えていた。
(むきゃきゃ。にくたいろうどう、しょくりょうかくほ、にんげんへのみせもの、せいよくしょり、さんどばっぐ……、てんこさまさまね)
ぱちゅりーは、てんこ種は他のゆっくりと比べるとかなり頑丈だという事を知っていたので、多少の無理は大丈夫だと踏んでいた。
ぱちゅりーにとって、てんこは凡庸性の高い奴隷候補扱いだった。
「……ぱちゅりー」
「むきゅ?こたえはきまったかしら」
(むっきゃっきゃっきゃ!これでいろいろとらくができるわね)
ぱちゅりーは今すぐ大笑いしたいのを堪えていた。
(まず、なにをさせようかしら?さいきんたまりぎみだったから、すっきりー!あいてになってもらって、それから……)
ぱちゅりーはこれからのプランをあれこれと思案して……。
「……あんた、てんこのことでぃすってんの?」
てんこのその言葉を聞いて、現実へと引き戻されるのだった。
「……むきゅ?」
「むきゅ、じゃないわよ。あんた、てんこのことなめてんの?」
「ど、どういうことかしら?」
「てんこがそんなていあんのむとおもったの?ばかなの?しぬの?」
「ど、どうして!?あなた、いじめられるのがだいすきなんでしょ!?」
てっきりYESと言うとばかり思っていたぱちゅりーはかなり慌てながらそう言った。
「えぇ、そうよ。てんこはさんどのごはんよりも、いじめられるのがだいすきな、いんらんまぞの、めすぶたよ」
「だ、だったらなんで」
「でもねぇ!めすぶたにはめすぶたのほこりってものがあるのよ!」
「む、むきゅ!?」
「あんたたちみたいなくそまんじゅうにいじめられてこうふんするほど、てんこはおちぶれちゃいないのよ!それでこうふんするなんて、それこそだれとくよ!」
「む……、むきゅうっ!!だったらいいわ!ぱちぇたちのむれのどれ……、いちいんにならないなら、すぐにこのこうえんからでていきなさいっ!!」
「は?だれがでていくっていったの?」
「!?」
「てんこはいま、いえでちゅうなの。このこうえんはざっそうがたくさんはえているから、ごはんにはこまらないし、むこうにおおきなきがはえているから、そこでやすめるし、あんがい、いいばしょね」
「むきゅ……!?そ、それじゃあ」
「えぇ!!てんこ、しばらくここにいすわるわ!!」
てんこは貧相な胸を反らせながら、高らかにそう宣言した。
「むきゅあぁぁぁぁっ!?なにいってるのおぉぉぉぉっ!?」
「そうだよ!!かってなことをいわないでねっ!!」
「ここにいすわろうなんて、とんでもないげすだよっ!!」
てんこのその態度と発言に納得出来なかったぱちゅりー達は怒りをあらわにした。
「あらなに?なっとくできないの?ちからづくでてんこをおいだそうっていうの?じょうとう!かかってきなさい!」
てんこは右手を突き出し、中指を立ててそう挑発した。
「むきゅうっ!!むきゅうっ!!やりなさいっ!!このげすをすぐにおいだしなさあぁぁぁぁいっ!!」
ぱちゅりーが怒り狂ってそう命令すると、野良ゆっくり達は待ってましたとばかりに、てんこに飛びかかった。
「「「「ゆっくりしねえぇぇぇぇっ!!」」」」
……数分後。
「ぜぃ……、ぜぃ……」
「ゆひぇ……、ゆひぇ……」
「ゆぐぅ……、ゆぐぅ……」
「どうしたの!?もうおわりなの!?そんなんじゃ、てんこはぜんぜんこうふんしないよ!!」
「む……、むきゅうっ……!!」
あれから野良ゆっくり達は、何度もてんこに体当たりを仕掛けた。
……が、てんこは全く痛がるそぶりを見せず、それどころか『なんであしやおなかばっかりねらってるの!?どうせなら、むねかおしりをねらってね!』と言われる有様であった。
結局、野良ゆっくり達の方がスタミナ切れでリタイアしてしまい、あちらこちらで息絶え絶えになりながら寝転がっていた。
対するてんこは、どこも怪我などはしておらず、腕を組んで仁王立ちで立っていた。
「へい、どうしたどうした!かもんかもん!!なにいっかいせんでばててるの!?どんだけたいりょくがないの!?」
てんこは反復横跳びをしながら野良ゆっくり達を挑発したが、野良ゆっくり達は起き上がろうとはしなかった。
「まったく!これだからとかいのゆっくりは!やまやもりのやせいのゆっくりのほうが、もっとぱわふるよ!?どーぴんぐしろ、どーぴんぐ!!」
(むきゅう……!!まさか、こんなにたふなんて……!!)
てんこの耐久力を舐めきっていたぱちゅりーは、どうしたものかと悩んでいた。
もはやぱちゅりーは、てんこを奴隷にする事は諦めており、どうやっててんこをここから追い出すか、それを考えていた。
(むきゅ……!ちからがだめなら、ずのうでしょうぶよ!)
ぱちゅりーは力づくではなく、言葉でてんこを説得して、この公園から出て行ってもらうよう試みた。
「て、てんこ?このこうえんにいすわるのは、やめておいたほうがいいんじゃない?」
「あ~ん?なぜに?」
「だ、だって、いろいろとふべんだもの!ほら、ざっそうだって、すごくまずいわよ?」
「あぁ、ぜんぜんおーけー。むしろふつうにくえるし」
「う、うんうんやしーしーはどうするの!?」
「こうしゅうといれをつかえばいいじゃないの。しようきんしなら、そこらへんのしげみのなかで。みられたらみられたで、こうふんするし」
「ねるときだって、よるとか、さむいわよ!?ぱちぇたちは、だんぼーるはぜったいにかせないし……」
「ばかねぇ、あのはだをつきさすようなさむさからくるいたみがいいんじゃない」
「あめとかふったら、ぜんぜんゆっくりできないわよ!?」
「せいしをさまようようなぷれいなら、むしろどんとこいだわ」
……が、どれもこれも反論されてしまった。
と言うよりも、ぱちゅりー達のような普通のゆっくりの価値観が、てんこのような変態ゆっくりに通用する訳が無かったのである。
「む……、むきゅうぅぅぅぅっ!!」
「と、いうわけで、てんこ、あきるか、だれかむかえにきてくれるまで、ここにいるから。どうしてもおいだしたいなら、ぎゃくたいおにいさんをひゃくにんつれてきてね!むしろうぇるかむ!」
そう言うとてんこは近くの大きな木にもたれかかった。
「それじゃあてんこはだみんをむさぼるから。……あぁそうそう、ねてるあいだにぼうしをとっても、きにしないから。べつにしぬわけじゃないし。それじゃあおやすみなさーい。ぐー」
そしててんこはあっと言う間に眠ってしまった。
「む……、む……、むきゅうぅぅぅぅっ!!」
散々てんこにコケにされたぱちゅりーは、怒りでプルプルと身を震わせていた。
「……なんなんだぜ……、このゆっくりは……」
「ぜんぜんゆっくりできないよ……」
そうしている間に、先程まで倒れていた野良ゆっくり達が、徐々に復活し、起き上がっていた。
「……おさ」
その内の一匹の、空気を読めないまりさが、ぱちゅりーに話しかけた。
「なにっ!?」
「い、いや、あの、ひゃくにんって、いくつなのぜ……?」
「むきゅうぅぅぅぅっ!!さんいじょうかぞえられないくせに、そんなことをきいてどうするっていうの!?」
「ご、ごめんなのぜ……」
ぱちゅりーの剣幕に、KYまりさはすっかりたじろいでしまった。
「でも、どうするの?おさ?こいつ、このままほおっておくの?」
「いまなら、みんなでかかれば、きっとやっつけられるのぜ!」
「……むだよ。こいつには、なにをやってもむだよ。こうなったら、しばらくのあいだはがまんするしかないわね……」
力づくでも駄目、言葉でも駄目、ならば待つしかない。
このまま永久にここに居座る訳では無いので、しばらく待てば、きっといなくなる。
結局、様子見する事を選んだ野良ゆっくり達は、忌々しいとばかりの目つきで、てんこを睨みつけていた。
「うへへぇ……、だめよおねえさぁん……。ちくびにらいたーははんそくだってばぁ……」
そんな野良ゆっくり達とは正反対に、てんこはアヘ顔で涎を垂らしながら、幸せそうに寝ていた。
……こうして、てんこの家出生活は、幕を開けたのだった。
続く
愛で いじめ 変態 家出 飼いゆ 野良ゆ 希少種 現代 15作品目、前編。HENNTAIもの注意です。
注意書きです。
1 希少種ゆっくりが出ます。
2 このSSはHENNTAIな成分を含んでいます。
3 HENNTAIなゆっくりが出ます。
4 HENNTAIな人間が出ます。
それでもOKという方のみ、どうぞ。
そこは、とある街中の、とある三階建てのマンション。
そのマンションの三階の302号室の部屋の一室で、一人のお姉さんがクッションに座り、テーブルの上に置かれたノートパソコンと向かい合っていた。
「としあきは涙目でこちらを睨みつけるゆうかを見て、胸が高鳴った……」
お姉さんは何やらブツブツ呟きながら、カタカタとキーボードを打って文字を入力していた。
「サディストなゆうかが、性奴隷として全裸で亀甲縛りをされている姿を見て、並並ならぬ興奮を覚えていたからだ……」
何やら危なっかしい台詞を口にしながらキーボードを打っていると、ドタドタと誰かが廊下を走っている音が聞こえてきた。
「としあきはヒャッハーと叫びながら、ゆうかに鞭を……。うーん、なんかイマイチね……」
お姉さんが頭を掻きながら悩んでいると、突然部屋のドアが勢いよく開いた。
「おねえさんっ!!あそびましょうっ!!」
……部屋の入口に立っていたのは、一つ屋根の下でお姉さんと一緒に暮らしている、胴付きの飼いゆっくりだった。
その飼いゆっくりは、何故か布団叩きを手にしていた。
「……悪いけど、今忙しいのよ。また後でね、てんこ」
お姉さんにそう軽くあしらわれた飼いゆっくり……、ゆっくりてんこは、ポカンとした表情で数秒間固まり、そして……。
「ど……、どぼぢでぞんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
目から砂糖水の涙をボロボロ流しながら、そう叫んだ。
「だから言ってるでしょ?今忙しいのよ。あんたの相手をしている暇は無いの」
「そんなごどいわないでえぇぇぇぇっ!!おねえさん、このごろぜんぜんあいてしてくれないじゃないぃぃぃぃっ!!」
てんこはお姉さんのほっそりした足にすがりながら、イヤイヤと首を振って抗議した。
……もし、事情の知らない第三者が、お姉さんとてんこのやり取りを見ていたなら、てんこに同情していたかもしれない。
……が、てんこの言っている『遊び』とは、決してKENZENな内容では無かったのである。
「ちゃんとかまってるじゃない。この前だって蝋燭プレイしたでしょ」
「あれだけじゃ、ぜんぜんたりないでしょおぉぉぉぉっ!?ろうそくときたら、さんかくもくばとむちうちがじゃすてぃすってきまってるじゃないぃぃぃぃっ!!」
「昨日だって顔面をホットプレートで焼いたじゃないの」
「あれはよわびだったでしょおぉぉぉぉっ!?てんこ、あぶらをしいて、つよびでじゅーじゅーしてもらわないと、ぜんぜんいけないのよおぉぉぉぉっ!?」
てんこの言っている『遊び』、それは、自分を様々な道具やテクニックで痛めつけてもらう事である。
ゆっくりてんこ種は、虐められる事を一番のゆっくりと考えている、ゆっくりの中で特に異端の存在である。
このてんこもその例に漏れず、自他共に認める、ドMの淫乱メスブタ……、早い話が、変態であった。
「……!そ、そうだよ!おねえさん、おしごとしているんでしょ!?だったら、てんこがてつだうよ!」
てんこはそう言うと、いきなり自分のスカートを捲くり上げた。
それにより、薄い桃色の下着が露わになるが、てんこはその事を気にせず、お姉さんに向かって尻を突き出した。
「てんこがおねえさんのかいているしょうせつのもでるになるから、えんりょなくすぱんきんぐしてね!!したぎがやぶれるくらいでかまわないよ!!」
「ごめん、それ無理」
「どぼぢでぞんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
「今書いている小説は、いつもとはちょっと違う内容なのよ。今回は性根が淫乱メスブタのあんたをモデルにする気は無いの」
お姉さんの言っている仕事……、それは、ゆっくりがメインの官能小説の執筆である。
お姉さんは胴付きゆっくりが快感の渦に溺れる様を画いた官能小説を何十作品も出しており、その筋の世界ではちょっとしたカリスマ作家であった。
どんな作品があるのかと言うと、まず最初に、お姉さんが十数年前に、高校一年生の時に出版社に持ち込んだ『ナースうどんげの受難:やめて、座薬だけは』。
次に、お姉さんの作品が世間に認められ、初めて本になった際の処女作『背徳のけーね先生:淫乱な補習は放課後に』。
そして数週間前に書き上げた最新作『少女ゆかりんの性感開発:少女臭?いいえ、メスブタ臭です』。
他にも様々な作品があるが、全て取り上げるとキリが無い。
先程てんこが言った手伝いとは、お姉さんがネタで行き詰った際に、お姉さんがてんこを小説内のゆっくりのモデルとして様々な方法で虐める事であった。
「今私が考えている作品のメインのゆっくりは、ゆうかなのよ」
「ゆ、ゆうか?」
「そ。タイトルは『女王ゆうかの失墜:真の姿は性奴隷』。これが意外と手こずってるんだわ」
「お、おかしいよ、それ!ゆうかはどえすなんだよ!?じょおうさまなんだよ!?それがせいどれいって、いったいだれとくなの!?」
「まぁ聞け糞ビッチ。主人公のゆうかは、女王様でありながら、人間の手によって、痛みを快楽と感じる、ドMな体に調教されてしまうの」
「そ、それで?」
「ゆうかはドSとしての心を持ちながら、痛めつけられる事に快感を覚えてしまい、ドSとドMの境目でハァハァ喘ぎ、悶え苦しむの」
「な……、なんかいいねそれ!あたらしいじゃんるにめざめたきがしてきたよ!」
「でしょ?だから私のネタ出しの邪魔しないでね」
「お、おねえさん!おねえさんはいろいろとなやみすぎなんだよ!ここはてんこをいじめて、すかっとすることをおすすめするよ!」
「ええい、そんな言葉に騙される私では無い!」
「もうすぐみそじをこえそうだからって、かりかりしてちゃだめだよ!」
「誰が三十路じゃコラアァァァァッ!?私はまだ二十九歳四カ月だあぁぁぁぁっ!!」
どうやらてんこのその言葉が、お姉さんの逆鱗に触れたようである。
お姉さんはてんこの手から布団叩きをひったくると、それでバシリと、思い切りてんこの尻を叩いた。
「あひゃあっ!?ありがとうございますっ!!」
てんこは恍惚の表情を浮かべながら、次の一撃を期待していた。
「ええいっ!!出ていけっ!!この部屋は私のサンクチュアリじゃあっ!!」
「へっ!?ち、ちょっと、おねえさん!?」
お姉さんはてんこを部屋から追い出すと、中から鍵を掛けてしまった。
もっと虐めてもらえると思っていたてんこにとっては、たまったものでは無い。
「お、おねえさん!だめだよ!もっとすぱんきんぐしてね!これじゃ、なぶりごろしだよっ!!」
てんこは何度もドアを叩いたが、返事が返ってくる事は無かった。
「……いいもん、まだあてはあるんだもん」
てんこはそう言うと、お姉さんの部屋の隣の部屋『いくのへや』とプレートが貼られたドアを開けた。
「およ?どうしました?そうりょうむすめさま」
部屋の中には、てんこと同じ、胴付きのゆっくりがちょこんと座っていた。
「ねぇ、いく!いつものびりびりさんやって!さいだいしゅつりょくでかまわないよ!」
「もうしわけありません、いまてがはなせないのです」
てんこにいくと呼ばれたそのゆっくり……、ゆっくりいくは、深々と頭を下げた。
「どぼぢでそんなごどいうのおぉぉぉぉっ!?」
「およよ、おこらないでください、そうりょうむすめさま。となりやしたのへやのひとにめいわくですよ」
これで本日何度目になるか分からない叫び声を上げたてんこを、いくがなだめた。
このいくも、てんこと同じく、お姉さんの飼いゆっくりであった。
このいくは礼儀正しく、家事手伝いなどを積極的に手伝い、様々な状況で空気を読んでくれる、一言で言えば、出来た子だった。
……が、てんこに対しては、少々遠慮を知らない対応をする事が多いのが、珠にキズ、であった。
「いく!いったいなにがいそがしいの!?ただすわっているだけじゃない!」
「そうりょうむすめさま、わからないのですか?ほら、ほら」
そう言っていくは、部屋に置いてあるテレビを指差した。
テレビの電源は付いており、有名なバラエティ番組が放送されていた。
「……ねぇ、いく。きくのがこわいけど、いちおうりゆうをききたいんだけど」
「てれびをみるのにいそがしいんです」
「そんなこったろうとおもったよ!」
「ならきかないでください」
このいくは大のテレビっ子で、いくの頭の中では、『てんこの頼み<<<<<<越えられない壁<好きな番組<お姉さんの頼み』という方程式が成り立っていた。
「てれびなんてあとでいいじゃない!そんなことよりも、いつものびりび」
「だめです!いまちょうど、『わらっていいのか?』がはじまったばかりなんですから!そうりょうむすめさまはひとりでかべにずつきでもしていてください!」
「それはあさにやったよ!」
「あ、やったんですか?」
「とにかく、はやくびりびりさんをやってね!てんこ、きょうはぜんぜんへぶんじょうたいになってないんだよ!」
てんこの言っている『びりびりさん』とは、ゆっくりいく種の特殊能力である、放電の事であった。
ゆっくりいく種は体内に電気を貯め込んでおり、その電気を放電させる事が出来るのである。
……が、いくのその特技は、今の所てんこを痺れさせてヘブン状態にする位しか役立っていない。
「えー……、ほうでんするのはつかれるんですよ。それにいま、いいところですし」
「じ、じゃあ、『わらっていいのか?』がおわったあとに」
「あ、それがおわったらこんどは『ごきげんいかが?』をみるのでだめです」
「じ、じゃあ、『ごきげんいかが?』のあとに」
「あ、それがおわったらこんどは『ごごのゆんやーげきじょう』をみるので……」
「いつになったらやってくれるの!?てんこにへぶんじょうたいになるのをがまんしろっていうの!?」
「まぁ、そうなりますね」
「……もういいわ」
「あ、そうですか?……あっ!きょうはしんやあにめの『まじょっこまりちゃ』があるんでした!よやくろくがしないと……」
「……」
てんこはうつむいて、肩をワナワナ震わせながらいくの部屋を出たが、いくは予約録画の設定に夢中で、てんこの様子には気付いていなかった。
「……いいわよ、いいわよ!おねえさんも、いくも、そんなといどをとるなら、てんこにだってかんがえがあるんだから……!」
てんこはグスグスと涙ぐみながら、いくの部屋の隣の部屋の、「かちくのすあな」とプレートが貼られているドアを開け、部屋の中に入った。
この部屋はてんこの部屋で、ドアのプレートは決してお姉さんの嫌がらせなどではなく、てんこの要望で付けられたものであった。
部屋の中は、三角木馬や鞭、積み石に蝋燭にライターなど、明らかに性的な目的で使用される道具が床一面にゴチャゴチャと散乱していた。
てんこは自分のベッドの隣の収納ケースからリュックサックを取り出すと、その中に衣服棚から出した服や下着、比較的軽い性的な道具をいくつか入れた。
そして部屋を出ると、再びいくの部屋へと戻った。
「およ?そうりょうむすめさま、そのにもつはどうなさったのです?」
いくは寝そべりながら、いつの間に持ち出したのか分からない、醤油煎餅をボリボリと食べながらそう尋ねた。
「……いく!てんこ、いまからいえでをするわ!」
「あぁ、そうですか。おやつのじかんまでにはかえってきてくださいね。ところで、きょうのばんごはんはなにがいいですか?」
「すぶたがいいわ。……じゃなくて!いく!てんこのはなしをきいていたの!?」
「あ、すみません、きいていませんでした」
「いえでするっていったのよ!」
「え……!?おねえさんがですか!?」
「てんこがよ!!」
「ははは、ごじょうだんを。えいぷりるふーるはとっくのむかしにおわりましたよ?」
いくは冗談言うなとばかりに笑い飛ばしていたが、てんこの目は本気そのものだった。
「じょうだんじゃないわ!てんこはほんきよ!」
「……そうりょうむすめさま、いったいどうしたんです?なんでいえでなんか……」
「いくも、おねえさんも、てんこにつめたすぎるのよ!おねえさんはてんこのこと、あいてにしてくれないし、いくだって、てんこのことそっちのけで、てれびにむちゅうになってるじゃない!」
「それはしょうがないですよ。おねえさんもいくも、いろいろといそがしいですし。いくも、かじすいはんをしていますので、いきぬきがしたいんですよ」
「う……!で、でも、てんこだって、いろいろとおてつだいしているのよ!?ふたりとも、てんこのありがたみがわかっていないわ!」
「うーん……、たしかにおねえさんはそうりょうむすめさまをいじめて、しょうせつのねただしをしていますし、いくもふぃーばーするときは、ひらいしんがわりになってもらってますね」
「でしょ!?てんこがいなくなれば、ふたりともこまるとおもうわ!そして、てんこをないがしろにするんじゃなかったって、のちのちおもうはずよ!」
「そ、そうりょうむすめさま?もしかして、ほんきなんですか?」
「ほんきもほんき、おおまじよ!」
「お、おやめください!そうりょうむすめさま!いま、そうりょうむすめさまにいえでをされては、とてもこまるのです!」
いくは先程の態度とは打って変わり、必死にてんこを説得し始めた。
「い、いく……」
普段てんこに対して、とぼけた態度しか見せないいくの必死な姿を見て、てんこの決心が少しぐらついた。
(こんなにひっしに、てんこのことをとめてくれるなんて……。や、やっぱり、やめておいたほうが……)
「きょうはごごよじから、きんじょのすーぱーまーけっとで、かんづめのたいむせーるがあるんです!」
「……は?」
「ひとりげんていさんこまでなので、そうりょうむすめさまもいっしょにいってほしいんです!でていくのなら、せめてあしたにしてください!」
「い……、いくのばかあぁぁぁぁっ!!」
いくのその言葉に失望したてんこは、いくの部屋を飛び出し、玄関の方へと走って行き、外へ飛び出してしまった。
「およよ……。ちょっとした、さたでーじょーくでしたのに。まぁ、そのうちきげんをなおしてかえってくるでしょう」
そう楽観的に捉えたいくは、再びテレビを見て、煎餅を食べるのだった。
「ぐすん……、いくのばか……。もうほんとうにいえでしてやるんだから……」
怒りに身を任せつつ、外へ飛び出したてんこであったが、あっと言う間にテンションが下がり、トボトボと階段を降りていた。
「……でも、どこにいこうかしら?」
てんこが行き先を悩んでいる間に、二階へと到達した。
そして、次の階段を降りようとした、その時。
「あら?てんこさん。どうかなさいましたか?」
後ろから、誰かが声をかけてきた。
「そのこえは……」
てんこがうしろをふりむくと、そこにはミニスカメイド姿の、てんこと同じ背丈の胴付きゆっくりが立っていた。
そしてその手には、何故かデジカメが握られていた。
「さくやじゃない。どうしたの?かめらなんかもって」
てんこに声をかけてきたのは、このマンションの二階の208号室に住んでいる青年の飼いゆっくりの、ゆっくりさくやだった。
さくやとてんこは気が合う友達同士で、時々お互いの家に遊びに行くほど仲が良かった。
「うふふ、これから『うーぱーく』にいくんですの」
さくやはうっとりとした表情でそう言った。
『うーぱーく』とは、てんこ達が住んでいるマンションから徒歩で約三十分程の場所にある、ゆっくりがメインのテーマパークだ。
うーぱーくには様々なゆっくりが見世物として暮らしており、つまり動物園みたいな施設だった。
……が、このうーぱーくはただの施設ではなく、見世物のゆっくりの七割近くが、ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんを占めている、変わり種の施設だった。
他にも希少種クラスのゆっくりが何匹かいるのだが、うーぱーくと聞けばれみりゃかふらん、というイメージが強く、もはやそれがメインと化していた。
「このでじかめで、おぜうさまといもうとさまのあいくるしいおすがたを、せんめいにとるんですの。……はぁはぁ、たのしみですわぁ」
さくやは恍惚とした表情で、口から軽く涎を垂らしながら、明後日の方向を見つめていた。
このさくやは、れみりゃとふらんがテラ大好きであった。
週に一度は必ずうーぱーくに足を運んでおり、れみりゃやふらんの姿を写真に撮る度に、ヘブン状態になる位に大好きであった。
彼女の部屋の中には、大量のれみりゃとふらんグッズが置いてあり、秘蔵のアルバム数は十を超えおり、抱き枕にはよく分からない染みが付着していた。
早い話が、変態であった。
「さくやも、れみりゃやふらんがすきねぇ」
「えぇ、それはもう!おぜうさまといもうとさまが、『しゃくやー!』なんてよんでくださったひには、おもわずくちからぷりんがでてしまうくらいですわ!」
「そんなにだいすきなら、よるもはぁはぁしてるんじゃない?『さくや』も、おたのしみでした?なんてね!」
「『さくや』も、だけでなく、まいばんよどうしですわ!このこうふんが、たったひとばんでおさまるわけがありませんもの!」
「わかるわぁ、それ!こうふんやかいかんは、さめたらまけだっておもってるもの!」
「ですよねー!」
二人はヒャホホ、デヘヘ、と笑いながら、変態話に華を咲かせていた。
仲良くお喋りをするその姿は中睦まじいものであったが、話の内容がそれを台無しにしていた。
「ところで、てんこさんはどこかへおでかけですか?」
「えっ!?……えぇ、まぁ、そんなところ、ね……」
いきなりさくやにその話を振られたてんこはしどろもどろになりながら、そう説明した。
「そうですか。それじゃあてんこさん、わたくしはおもいっきりたのしんできますので、てんこさんもゆうがないちにちをたのしんできてくださいね」
「あ、ありがとう……」
「はぁはぁ……、まっていてくださいな、わたくしのえんじぇるさまたち。いますぐげぼくがそちらへまいりますわ……」
さくやは焦点が定まらない目つきで、階段を降りて行った。
「……」
ポツンと一人残されたてんこは、数分間そのままじっと立っていた。
そして、先程の高かったテンションが遥か彼方へ去って行くのを感じていた。
「いいなぁ、さくやは。まいにちへぶんじょうたいになれるなんて、ゆめのようなせいかつだわ……」
てんこはさくやと自分の境遇を比べ、羨ましいと感じていた。
「……ま、まぁ、いいわ!さくやはさくや、てんこはてんこだもの!さ、さーて!どこにいこうかしら!?」
てんこは寂しさを紛らわすかのように、わざと大声を上げて、再び階段を降り始めた。
「き、きっと、おねえさんもいくも、てんこがいなくなれば、おおあわてになるわ!そうすれば、ひっしになって、てんこのことをさがすはずだもの!」
誰に聞かせる訳でも無いのに、そう大声を上げている間に、階段を降り終えて、一階へと到達した。
……が、それと同時に、再び心に迷いが生じた。
(ほ、ほんとうに、いえでしたほうが、いいのかしら?いくあてもないのに……)
勢いで出てしまった為、このまま本当に家出すべきかどうか、悩んでしまったのだ。
(どうしよう?どうしよう?たすけて、がいあさま……)
困った時の神頼みほど当てにならないものだが、てんこは頭を抱えてその場にしゃがみこみ、うんうん悩んでしまった。
と、その時である。
「オーウ、どうしたんディスか?てんこチャーン」
急に頭上から、野太い男性の声が聞こえてきた。
「え、え……?」
てんこが驚いて上を見上げると、目の前にピチピチのタンクトップに青いジーンズ姿の、ムキムキマッチョの黒人男性が立っていた。
「あ。ゆ、ゆかわさん」
てんこがそう呟くと、黒人男性はチッチッチと指を振った。
「ノンノン、違いマース。前から言ってるじゃないディスか。ボクの事は、フレンドリーに『オネィサン』って呼んでくれって」
黒人男性……、オネィサンは、白い歯をキラリと輝かせながらそう言った。
……彼、オネィサンは、てんこの知り合いで、このマンションの一階の1072号室の住人であった。
ちなみに本名は『オーネィ・湯川・サントス』で、黒人の男性と日本人の女性から産まれたハーフである。
他人からはミドルネームから湯川と呼ばれる事が多いが、本人は何故かそう呼ばれるのを酷く嫌っており、必ず自分の事はオネィサンと呼ぶよう言っていた。
また、彼はてんこの飼い主のお姉さんの小説の大ファンで、よくお姉さんにアプローチをかけているのだが、全く相手にしてもらえなかった。
「何か悩んでいるんディスか?良かったら、ボクが相談相手になりマスよ?」
「え、えーと、だいじょうぶよ、ゆか……、おねぃさん。なんでもないの」
「オゥ、そうディスか?何か悩んでいるようだったので、声をかけたんディスけどね。ところで、お出かけディスか?」
「え?う、うん!そんなところだよ!」
「そうディスか。ボクも、これからお出かけなんディスよ」
「どこにでかけるの?」
「HAHAHA、決まってるじゃないディスか。マウンテンディスよ、マウンテン。今日もユックリ達に愛を注ぎに行って来マース」
このオネィサンは、平日は加工所で汗水垂らしながら働き、休日になると、ゆっくり達が棲んでいる山や森へと出かけていた。
……その理由は、ゆっくりをレイポゥする事であった。
オネィサンはお姉さんの次にゆっくりをレイポゥする事が大好きで、普通のゆっくりから胴付きゆっくり、果てはドスまりさまでレイポゥした事がある、歴戦の猛者である。
早い話が、変態であった。
「おねぃさんもすきねぇ」
「ユックリ素晴らしいディス!子供の頃にいたアメリカには、ユックリ居ませんディシた。日本で初めてユックリを見た時、そりゃあもう驚きマシた」
オネィサンはグッと拳を握ると、どこか遠い目をしながら語りだした。
「あのフテブテしい面構え、あのヒャハりたくなる態度、あの具合の良いマムマム、どれを取っても最高ディス!もうボクはユックリ無しでは生きられマセんね!てんこチャンも、似たようなものでしょ?」
「そうねぇ、てんこもいっしょうほうちぷれいのままいきるなんて、かんがえられないわぁ。……あぁ、なんか、むしょうにいじめられたくなってきたわぁ!」
「オゥ、てんこチャン、もし良かったら、ボクがお手伝いしましょうか?」
「えっ!?いいの!?それじゃあここにむちがあるから、おもいっきりてんこをすぱんきんぐしてね!にくがそげるくらいのいきおいでかまわないよ!」
「お安い御用ディス。それじゃ、いきマスよ?……それっ!」
オネィサンはてんこから鞭を手渡されると、その鞭で思い切りてんこを叩いた。
「あひゃぁんっ!?」
「てんこチャン、大丈夫ディスか?」
「い、いいわぁっ!!もっと!!もっとちょうだいっ!!てんこたちのぎょうかいでは、ごほうびなのよぉっ!!」
「HAHAHA!やっぱりてんこチャンはビッチポークディスね!何か、ボクのオンバシラも興奮してきマシたよ!」
「あ、あぁぁぁぁんっ!!これよこれぇっ!!もっと!もっとすぱんきんぐしてぇっ!!てんこをめちゃくちゃにしてぇっ!!」
てんことオネィサンは、中睦まじくSMプレイに勤しんでいた。
もしこの光景を誰かに見られていたら、間違い無く通報ものだろう。
が、そんな事はこの変態達の頭の中には全く無かった。
……数分後。
「あひぃ……。なかなかよかったわぁ……」
「HAHAHA、喜んでもらて何よりディス。それじゃあてんこチャン、僕、そろそろ行きマスね。お姉さんに、よろしく言ってくださいね!それじゃ、バァイ!」
オネィサンはそう言うと、ビッと片手を上げ、爽やかに走り去って行った。
「はぁ……、はぁ……、おえぃさんのぷれい、あいかわらずなかなかのものだわぁ……。ちゃんとてんこのことを、いかせてくれるなんて、とってもしんしねぇ……」
てんこは恍惚とした表情で、そう呟いた。
「……それにくらべ、おねえさんといくは、いっつもちゅうとはんぱで、まともにてんこのことをいかせてくれないんだから……」
てんこはオネィサンとお姉さんといくの対応の違いに、差を感じていた。
「どうして、ふたりとも、てんこにかまってくれないのよ……。なんで、てんこにやさしくしてくれないのよ……」
てんこは俯きながら、トボトボと、フラフラと、当ても無く歩き出した。
てんこ!どうしよう!ネタが出なくなったわ!
おねえさん!てんこをおもいっきりぶってね!てんこがもでるさんになるから!
バシッ!バシッ!
あひゃあんっ!!やっぱりおねえさんのてくにっくははげしくて、さいこうねぇ!
いつもネタ出しに協力してくれて、ありがとうね、てんこ!
「おねえさん、てんこのこと、たくさんいじめてくれたのに……」
およよっ!!きょうはどようびですね!ふぃーばーしたくなってきましたよ!
いく!てんこにおもいっきりでんげきをあびせてね!てんこがすべて、うけとめてあげるから!
バリリリリッ!!
あびゃびゃびゃあっ!?これよこれぇっ!!このびりびりぐあい、とってもたまらないわぁっ!!
さたでーないとふぃーばーっ!!
「いく、むかしはたくさんてんこのことをしびれさせてくれたのに……」
てんこは思い返していた。
ほんの少しばかり昔の、心の底から楽しかった頃の思い出。
あの頃は放置プレイなんてものは、どこにも無かった。
それが今ではどうか。
良くて寸止めの嬲り殺しプレイ、普通ではお預けプレイ、悪くて放置プレイ。
全くゆっくり出来ないプレイばかりだ。
てんこは全く心の底からヘブン状態になる事が出来なかった。
一体、どうしてこうなってしまったのか。
てんこは何度もそう考えていたが、その答えは出て来なかった。
……数十分後。
「……はぁ」
てんこは、マンションから大分離れた場所にある公園のブランコに座っていた。
フラフラと歩いているうちに、いつの間にかそこに辿り着いていたのである。
ブランコが揺れるたびに、ギィギィと金具が錆着いた音が響く。
その音が、余計てんこの気分をより下げていた。
「……おなかがすいたわ」
昼食を摂っていなかったので、てんこは空腹だった。
てんこはブランコから降りて、近くの芝生に生えている雑草をむしり取り、それを口に入れた。
「むーしゃ、むーしゃ、げろまずー。でも、それがいいー」
てんこは気だるそうに、雑草を咀嚼していた。
普通、ゆっくりは雑草など苦い味のする物を極端に嫌うのだが、てんこは基本的に雑食なので、全く気にはならなかった。
むしろ、その気になれば生ゴミも食べる事が出来るので、雑草などてんこにとっては常食のようなものだった。
「むーしゃ、むーしゃ、げろまずー」
これから、どうしたものか。
てんこはボーッとしながら雑草を咀嚼し、そう考えていた。
「ゆっ!!なにをしているのぜ!?」
「みかけないゆっくりだね!ここでなにをしているの!?」
「へんなゆっくりだね!なんだか、ぜんぜんゆっくりできないよ!」
「……あ?」
後ろから何やら複数の大声が聞こえてきたので、振り向くと、そこには十数匹のゆっくり達がいた。
成体サイズのゆっくりから、ピンポン玉サイズの赤ゆっくりなど、大小様々なゆっくりがいたが、全員体や髪飾りが汚れていたので、一目で野良だという事が分かった。
「……なに?あんたたち」
てんこは気だるそうにそう言った。
「このこうえんは、まりさたちのなわばりなのぜ!よそものはさっさとでていくのぜ!」
「そうだよ!ゆっくりできないよそものは、さっさとでていってね!」
「でちぇいきぇー!」
「ぷきゅうぅぅぅぅっ!!」
対する野良ゆっくり達は、頬を膨らませて、てんこに威嚇(笑)をしていた。
明らかに、てんこに対して敵対心をむき出しにしている対応であった。
「あぁ、このこうえん、あんたたちのすみかなの?」
「そうなのぜ!よそものがかってにはいってくるんじゃないのぜ!」
「よそものはさっさとでていってね!」
「でていかないと、むれのみんなでせいっさいっするわよ!?」
(むれ……、ねぇ……)
てんこが周りを見回してみると、確かに滑り台やベンチの下、土管トンネルの中、公衆トイレの脇などに、段ボールハウスや紙などを集めて作った巣がいくつかあった。
この野良ゆっくり達の言う通り、この公園は野良ゆっくり達の縄張りなのだろう。
……が、てんこにとってそんな事は関係無かった。
「ふーん。……で?それででていけって?なにそれ?なんでてんこがでていかなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」
「「「「ゆっ!?」」」」
「べつに、てんこはだれにもめいわくはかけていないんだから、ここにいてもいいじゃない」
「ゆがあぁぁぁぁっ!?よそものがうろちょろしているだけで、ゆっくりできないのぜぇっ!!」
「へんなゆっくりがいていいばしょじゃないんだよ!?」
「まったく!ふつうならそっこうでせいっさいっものなのに、ありすたちがかんだいなのをいいことに!」
「とんでもないげすだね!まったく!」
「こうえんはみんなのものでしょ?それをひとりじめにするのは、どうかとおもうんだけど」
「ゆがあぁぁぁぁっ!!ごちゃごちゃとうるさいのぜえぇぇぇぇっ!!でていかないならちからづくで……!!」
「むきゅ!まちなさい!」
てんこに飛びかかろうとしたまりさを、一匹のぱちゅりーが制止した。
「ゆっ!?お、おさ……!」
「ここはぱちぇにまかせなさい」
まりさに長と呼ばれたぱちゅりーは、てんこの前まで跳ねて行った。
「むきゅ。ぱちぇのむれのなかまが、すこしいいすぎたみたいね」
「べつに。きにしてないわ。……で?あんたはどうなの?やっぱりてんこがここにいると、めいわく?」
「むきゃきゃ。とんでもない。ゆっくりしていってほしいわ」
「お、おさ!?いったいなにをいってるんだぜ!?」
「あなたはだまってなさい!」
「ゆぐ……」
ぱちゅりーはまりさを一喝すると、再びてんことの会話に戻った。
「ところであなた、てんこってなまえのゆっくりでしょ?」
「てんこのことをしってるの?」
「むきゃきゃ。それくらいふつうよ。……あなた、いじめられるのがとってもだいすきなんでしょ?」
「わかってるじゃない」
「それでね、てんこ。ひとつていあんがあるんだけど」
「ていあん?」
「むきゅ。ぱちぇのむれのいちいんにならない?」
「……は?」
ぱちゅりーのその言葉を聞いたてんこは、目が点になっていた。
いきなり群れの一員にならないかと言われれば、そうなってしまうのも無理は無いだろう。
……が、ぱちゅりーはてんこのそんな様子を気にせずに話を続けた。
「あなた、ぱちぇたちとちがって、てあしがあるから、いろいろとやくだつとおもうのよ」
「……で?」
「ぱちぇたちのむれのいちいんになって、いろいろとぱちぇたちをたすけてほしいのよ。もちろん、ただでとはいわないわ」
「なにをしてくれるっていうの?」
「あなた、いじめられるのがとってもだいすきなのよね?だったら、ぱちぇたちがおもいっきり、まんぞくするまであなたをまいにちいじめてあげるわ」
「……」
「もちろん、おいしいごはんをまいにちよういするわ。どう?わるいはなしじゃないでしょ?ぱちぇたちはたすかる、あなたはいじめられる、いいはなしじゃない」
「……」
ぱちぇのそのていあんに、てんこは黙り込んでしまった。
(むきゃきゃ。かんがえてる、かんがえてる。これはもう、おちたもどうぜんね)
てんこのその様子を見て、ぱちゅりーは内心ほくそ笑んでいた。
このぱちゅりーは元飼いゆっくりで、金バッジを取得しており、ゆっくり基準で比べると、結構頭の良い部類のゆっくりだった。
……が、内心では人間の事を、自分にとって都合の良い奴隷と考えている、隠れ金ゲスだった。
そして、ある日突然、飼い主から『飽きた』という理由で捨てられ、その際に金バッジもはく奪されてしまった。
ぱちゅりーもぱちゅりーで、自分をゆっくりさせないクズはこちらから願い下げだとばかり思っていた。
ぱちゅりーは新しい飼い主を探そうとしたが、捨てられゆっくりのぱちゅりーに対して、世間は厳しいもので、誰一人ぱちゅりーに見向きもしなかった。
結局、ぱちゅりーは人間に取り入る事を諦め、自分よりも馬鹿な野良ゆっくりを利用しようと考えた。
そしてぱちゅりーは持ち前の頭脳と、得意の話術と演技で、小規模ながら野良ゆっくり達の群れの長になる事が出来た。
捨てられゆっくりにしては、ちょっとした成功例である。
(てんこのことだもの、いじめてもらえるといわれたら、ぜったいにいえすとこたえるわ)
てんこを勧誘したのは、もちろん群れの一員ではなく、群れの奴隷としてこき使う為だった。
胴付き相手に真正面から敵わなくても、寝込みやしーしーの最中など、スキが出来た時に数匹で襲い掛かり、ゆっくりにとって命より大切な帽子を奪えば、泣きながら返してと土下座すると考えていた。
そしててんこを奴隷にすれば、自分達は色々と楽が出来ると考えていた。
(むきゃきゃ。にくたいろうどう、しょくりょうかくほ、にんげんへのみせもの、せいよくしょり、さんどばっぐ……、てんこさまさまね)
ぱちゅりーは、てんこ種は他のゆっくりと比べるとかなり頑丈だという事を知っていたので、多少の無理は大丈夫だと踏んでいた。
ぱちゅりーにとって、てんこは凡庸性の高い奴隷候補扱いだった。
「……ぱちゅりー」
「むきゅ?こたえはきまったかしら」
(むっきゃっきゃっきゃ!これでいろいろとらくができるわね)
ぱちゅりーは今すぐ大笑いしたいのを堪えていた。
(まず、なにをさせようかしら?さいきんたまりぎみだったから、すっきりー!あいてになってもらって、それから……)
ぱちゅりーはこれからのプランをあれこれと思案して……。
「……あんた、てんこのことでぃすってんの?」
てんこのその言葉を聞いて、現実へと引き戻されるのだった。
「……むきゅ?」
「むきゅ、じゃないわよ。あんた、てんこのことなめてんの?」
「ど、どういうことかしら?」
「てんこがそんなていあんのむとおもったの?ばかなの?しぬの?」
「ど、どうして!?あなた、いじめられるのがだいすきなんでしょ!?」
てっきりYESと言うとばかり思っていたぱちゅりーはかなり慌てながらそう言った。
「えぇ、そうよ。てんこはさんどのごはんよりも、いじめられるのがだいすきな、いんらんまぞの、めすぶたよ」
「だ、だったらなんで」
「でもねぇ!めすぶたにはめすぶたのほこりってものがあるのよ!」
「む、むきゅ!?」
「あんたたちみたいなくそまんじゅうにいじめられてこうふんするほど、てんこはおちぶれちゃいないのよ!それでこうふんするなんて、それこそだれとくよ!」
「む……、むきゅうっ!!だったらいいわ!ぱちぇたちのむれのどれ……、いちいんにならないなら、すぐにこのこうえんからでていきなさいっ!!」
「は?だれがでていくっていったの?」
「!?」
「てんこはいま、いえでちゅうなの。このこうえんはざっそうがたくさんはえているから、ごはんにはこまらないし、むこうにおおきなきがはえているから、そこでやすめるし、あんがい、いいばしょね」
「むきゅ……!?そ、それじゃあ」
「えぇ!!てんこ、しばらくここにいすわるわ!!」
てんこは貧相な胸を反らせながら、高らかにそう宣言した。
「むきゅあぁぁぁぁっ!?なにいってるのおぉぉぉぉっ!?」
「そうだよ!!かってなことをいわないでねっ!!」
「ここにいすわろうなんて、とんでもないげすだよっ!!」
てんこのその態度と発言に納得出来なかったぱちゅりー達は怒りをあらわにした。
「あらなに?なっとくできないの?ちからづくでてんこをおいだそうっていうの?じょうとう!かかってきなさい!」
てんこは右手を突き出し、中指を立ててそう挑発した。
「むきゅうっ!!むきゅうっ!!やりなさいっ!!このげすをすぐにおいだしなさあぁぁぁぁいっ!!」
ぱちゅりーが怒り狂ってそう命令すると、野良ゆっくり達は待ってましたとばかりに、てんこに飛びかかった。
「「「「ゆっくりしねえぇぇぇぇっ!!」」」」
……数分後。
「ぜぃ……、ぜぃ……」
「ゆひぇ……、ゆひぇ……」
「ゆぐぅ……、ゆぐぅ……」
「どうしたの!?もうおわりなの!?そんなんじゃ、てんこはぜんぜんこうふんしないよ!!」
「む……、むきゅうっ……!!」
あれから野良ゆっくり達は、何度もてんこに体当たりを仕掛けた。
……が、てんこは全く痛がるそぶりを見せず、それどころか『なんであしやおなかばっかりねらってるの!?どうせなら、むねかおしりをねらってね!』と言われる有様であった。
結局、野良ゆっくり達の方がスタミナ切れでリタイアしてしまい、あちらこちらで息絶え絶えになりながら寝転がっていた。
対するてんこは、どこも怪我などはしておらず、腕を組んで仁王立ちで立っていた。
「へい、どうしたどうした!かもんかもん!!なにいっかいせんでばててるの!?どんだけたいりょくがないの!?」
てんこは反復横跳びをしながら野良ゆっくり達を挑発したが、野良ゆっくり達は起き上がろうとはしなかった。
「まったく!これだからとかいのゆっくりは!やまやもりのやせいのゆっくりのほうが、もっとぱわふるよ!?どーぴんぐしろ、どーぴんぐ!!」
(むきゅう……!!まさか、こんなにたふなんて……!!)
てんこの耐久力を舐めきっていたぱちゅりーは、どうしたものかと悩んでいた。
もはやぱちゅりーは、てんこを奴隷にする事は諦めており、どうやっててんこをここから追い出すか、それを考えていた。
(むきゅ……!ちからがだめなら、ずのうでしょうぶよ!)
ぱちゅりーは力づくではなく、言葉でてんこを説得して、この公園から出て行ってもらうよう試みた。
「て、てんこ?このこうえんにいすわるのは、やめておいたほうがいいんじゃない?」
「あ~ん?なぜに?」
「だ、だって、いろいろとふべんだもの!ほら、ざっそうだって、すごくまずいわよ?」
「あぁ、ぜんぜんおーけー。むしろふつうにくえるし」
「う、うんうんやしーしーはどうするの!?」
「こうしゅうといれをつかえばいいじゃないの。しようきんしなら、そこらへんのしげみのなかで。みられたらみられたで、こうふんするし」
「ねるときだって、よるとか、さむいわよ!?ぱちぇたちは、だんぼーるはぜったいにかせないし……」
「ばかねぇ、あのはだをつきさすようなさむさからくるいたみがいいんじゃない」
「あめとかふったら、ぜんぜんゆっくりできないわよ!?」
「せいしをさまようようなぷれいなら、むしろどんとこいだわ」
……が、どれもこれも反論されてしまった。
と言うよりも、ぱちゅりー達のような普通のゆっくりの価値観が、てんこのような変態ゆっくりに通用する訳が無かったのである。
「む……、むきゅうぅぅぅぅっ!!」
「と、いうわけで、てんこ、あきるか、だれかむかえにきてくれるまで、ここにいるから。どうしてもおいだしたいなら、ぎゃくたいおにいさんをひゃくにんつれてきてね!むしろうぇるかむ!」
そう言うとてんこは近くの大きな木にもたれかかった。
「それじゃあてんこはだみんをむさぼるから。……あぁそうそう、ねてるあいだにぼうしをとっても、きにしないから。べつにしぬわけじゃないし。それじゃあおやすみなさーい。ぐー」
そしててんこはあっと言う間に眠ってしまった。
「む……、む……、むきゅうぅぅぅぅっ!!」
散々てんこにコケにされたぱちゅりーは、怒りでプルプルと身を震わせていた。
「……なんなんだぜ……、このゆっくりは……」
「ぜんぜんゆっくりできないよ……」
そうしている間に、先程まで倒れていた野良ゆっくり達が、徐々に復活し、起き上がっていた。
「……おさ」
その内の一匹の、空気を読めないまりさが、ぱちゅりーに話しかけた。
「なにっ!?」
「い、いや、あの、ひゃくにんって、いくつなのぜ……?」
「むきゅうぅぅぅぅっ!!さんいじょうかぞえられないくせに、そんなことをきいてどうするっていうの!?」
「ご、ごめんなのぜ……」
ぱちゅりーの剣幕に、KYまりさはすっかりたじろいでしまった。
「でも、どうするの?おさ?こいつ、このままほおっておくの?」
「いまなら、みんなでかかれば、きっとやっつけられるのぜ!」
「……むだよ。こいつには、なにをやってもむだよ。こうなったら、しばらくのあいだはがまんするしかないわね……」
力づくでも駄目、言葉でも駄目、ならば待つしかない。
このまま永久にここに居座る訳では無いので、しばらく待てば、きっといなくなる。
結局、様子見する事を選んだ野良ゆっくり達は、忌々しいとばかりの目つきで、てんこを睨みつけていた。
「うへへぇ……、だめよおねえさぁん……。ちくびにらいたーははんそくだってばぁ……」
そんな野良ゆっくり達とは正反対に、てんこはアヘ顔で涎を垂らしながら、幸せそうに寝ていた。
……こうして、てんこの家出生活は、幕を開けたのだった。
続く