ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4386 ゆっくりゲスになってね!
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『ゆっくりゲスになってね!』 30KB
愛で ギャグ 日常模様 飼いゆ 失礼します
愛で ギャグ 日常模様 飼いゆ 失礼します
※ 人間さんがちょっと餡子脳です。
※ バッジ関係で独自設定が多めです。
※ バッジ関係で独自設定が多めです。
チートあきです。
しとしとと降る雨。
「ゆぅ……ゆっ……」
一匹の子まりさが涙を流しながら、灰色の空を見上げていた。あちこちが泥で汚れ、何
かにぶつけたのか所々アザになっている。目元からこぼれる涙は雨に混じっていた。全
身も薄く溶けかけている。頭にあるはずの帽子は無い。
アスファルトの上で死にかけている一匹の子まりさ。
ある意味どこにでもあるような光景である。
かにぶつけたのか所々アザになっている。目元からこぼれる涙は雨に混じっていた。全
身も薄く溶けかけている。頭にあるはずの帽子は無い。
アスファルトの上で死にかけている一匹の子まりさ。
ある意味どこにでもあるような光景である。
「お?」
そこに、傘を差した男が通りかかった。
目を開けると白い壁が目に入る。
まりさは霞む意識の中、周囲を眺めた。ゆっくりした場所である。先ほどまで身体を蝕ん
でいた苦しさはない。白いふわふわの上に、まりさは置かれていた。
まりさは霞む意識の中、周囲を眺めた。ゆっくりした場所である。先ほどまで身体を蝕ん
でいた苦しさはない。白いふわふわの上に、まりさは置かれていた。
「ここは……どこなのじぇ?」
「おう。起きたかまりさ」
「おう。起きたかまりさ」
視界に入った大きな影。人間の男だった。普段なら人間は恐怖の対象だが、今のまり
さには恐怖を感じる余力も残っていない。ただぼんやりと人間を認識する。
男はスプーンですくった冷めたお粥をまりさの前に差し出した。
さには恐怖を感じる余力も残っていない。ただぼんやりと人間を認識する。
男はスプーンですくった冷めたお粥をまりさの前に差し出した。
「とりあえずこれ食え」
「むーしゃむーしゃ……」
「むーしゃむーしゃ……」
言われるままに、まりさはお粥を口にした。
「ありがとうございますのじぇ」
無事回復し、男にお礼を言った。
「いやいや、いいってことよ」
ぱたぱたと手を振りながら、男が脳天気に笑う。
アパートの一室、まりさは卓袱台に乗せられていた。事故で両親を失い、帽子を失い、
他の野良ゆっくりにお家も奪われ、行くところもなく餌も取れず雨に打たれて死にかけて
いたまりさ。それをこの男が助けたのだ。
アパートの一室、まりさは卓袱台に乗せられていた。事故で両親を失い、帽子を失い、
他の野良ゆっくりにお家も奪われ、行くところもなく餌も取れず雨に打たれて死にかけて
いたまりさ。それをこの男が助けたのだ。
「ところで、おにーしゃん、だれなのじぇ。なんでまりしゃをたすけれくれのじぇ?」
「俺はいわゆる虐待お兄さんでな」
「俺はいわゆる虐待お兄さんでな」
まりさの問いに男はこれまたあっさりと頷いた。
「ゆっ……!?」
その単語に、まりさが固まる。
虐待お兄さん。ゆっくりを虐めるのが大好きなゆっくりできない人間。餡子に刻まれた知
識からその情報が引き出される。その虐待お兄さんが目の前にいる。
虐待お兄さん。ゆっくりを虐めるのが大好きなゆっくりできない人間。餡子に刻まれた知
識からその情報が引き出される。その虐待お兄さんが目の前にいる。
「大事に育てた飼いゆっくりがゲス化して、それを制裁っての一度やってみたいと思って
てなー。うん。そしたら丁度いいところによさげなまりしゃが落ちててたから拾ったってわ
けだ。ゆっくりは勝手に生えてくるって本当なんだなー」
てなー。うん。そしたら丁度いいところによさげなまりしゃが落ちててたから拾ったってわ
けだ。ゆっくりは勝手に生えてくるって本当なんだなー」
男は頷きながらにこにこと話している。何を言っているのかはよくわからないが、とんで
もない人間に捕まってしまったと、まりさは理解する。
ビシッとまりさを指差し、男が口端を持ち上げた
もない人間に捕まってしまったと、まりさは理解する。
ビシッとまりさを指差し、男が口端を持ち上げた
「とゆーわけで、これからお前は俺の飼いゆっくりだ。ちゃんと世話してやるから、しっかり
育って虐待しがいのある立派なゲスになってくれよ?」
「ゆんやああぁぁ!」
育って虐待しがいのある立派なゲスになってくれよ?」
「ゆんやああぁぁ!」
まりさは悲鳴を上げた。
「ここがお前のお家だ」
男の手の上の中でまりさは震えている。
男の部屋の片隅に、その場所は作られていた。畳半畳ほどの緑色のシート。飼いゆっく
り用の疑似芝生シートである。室内飼いでも外の気分が味わえるというものだ。
男の部屋の片隅に、その場所は作られていた。畳半畳ほどの緑色のシート。飼いゆっく
り用の疑似芝生シートである。室内飼いでも外の気分が味わえるというものだ。
「ベッドはここな。トイレはこっちだ」
折り畳まれたゆっくり用布団Sサイズ。飼いゆっくり用トイレを順番に示す。
男はまりさを芝生シートの上に下ろした。
男はまりさを芝生シートの上に下ろした。
「帽子はそのうち作ってやるから、しばらく帽子無しで我慢しろ」
「ゆぅぅ」
「ゆぅぅ」
まりさは一筋の涙を流した。
「むーしゃ、むーしゃ。しあわしぇー……」
夕方。男に出されたゆっくりフードを口に入れ、まりさは喜びの声を上げていた。無茶苦
茶美味しい。今まで主食にしていた草などとは比べものにならない美味しさである。
そして、まりさはもう草などの野良ゆっくりの食事は取れないと確信していた。
茶美味しい。今まで主食にしていた草などとは比べものにならない美味しさである。
そして、まりさはもう草などの野良ゆっくりの食事は取れないと確信していた。
「どうだまりさ、美味いだろ? これはそれなり味より一ランク上の、しあわせ味だからな。
しっかり舌肥やしてくれよ。ゲスになったあかつきには、げろまずフード毎日食わせてやる
からな。楽しみに待ってろよ」
しっかり舌肥やしてくれよ。ゲスになったあかつきには、げろまずフード毎日食わせてやる
からな。楽しみに待ってろよ」
ラーメンをすすりながら、男は笑顔で言ってくる。
めちゃうま味、しあわせ味、それなり味、いまいち味、げろまず味。用途から五段階に分
けられる、標準ゆっくりフード。しあわせ味は主に高級飼いゆっくり用である。
めちゃうま味、しあわせ味、それなり味、いまいち味、げろまず味。用途から五段階に分
けられる、標準ゆっくりフード。しあわせ味は主に高級飼いゆっくり用である。
「おいしいのじぇ……」
涙を流しながら、まりさはゆっくりフードを噛み締めていた。
「おそらをとんでるみちゃい!」
お下げを動かしながら、まりさは元気に声を上げた。
ゆっくりを手に乗せて頭より高く持ち上げる。おそらをとんでるみたいごっこ。道具も不要
でお手軽にゆっくりした気分になれる遊びだった。
男は持ち上げていた手を下ろす。
ゆっくりを手に乗せて頭より高く持ち上げる。おそらをとんでるみたいごっこ。道具も不要
でお手軽にゆっくりした気分になれる遊びだった。
男は持ち上げていた手を下ろす。
「結構面白いだろ?」
「ゆー」
「ゆー」
力無くまりさは頷いた。
男が再び手を持ち上げる。
男が再び手を持ち上げる。
「おそらをとんでるみちゃい!」
「ゆぅ。まりしゃはこれから……どうしたらいいのじぇ……?」
ぼんやりと窓の外を眺めながら、まりさは目蓋を下ろした。これからの事を考えると憂鬱
になる。あの日雨に打たれたまま死んでいた方が楽だったかもしれない。
になる。あの日雨に打たれたまま死んでいた方が楽だったかもしれない。
「このままじゃ、すっごくっゆっくりできないことなっちゃうのじぇ……でも、おそとにでられ
ても、まりしゃだけじゃ……いきていけないのじぇ……」
ても、まりしゃだけじゃ……いきていけないのじぇ……」
このままではいずれ虐待されて苦しんで死ぬのだろう。かといって逃げ出しても帽子の
無い子まりさが生きていけるとも思えない。いずれ野垂れ死ぬだろう。どちらに転んでも
まりさの未来には悲惨な末路が待っている。
何とか無事に生きる方法はないか。そう考えて。
無い子まりさが生きていけるとも思えない。いずれ野垂れ死ぬだろう。どちらに転んでも
まりさの未来には悲惨な末路が待っている。
何とか無事に生きる方法はないか。そう考えて。
「ゆ?」
ふと気付く。
ゲスにならなければ普通に飼いゆっくりとして過ごせるのではないか。
まりさはそう思いついた。
ゲスにならなければ普通に飼いゆっくりとして過ごせるのではないか。
まりさはそう思いついた。
「おにーしゃん」
のーびのーびしつつ、まりさは男に声をかけた。
「何だ、まりさ?」
「たすけてもらったおれいに、まりしゃはおにーしゃんのおてつだいがしたいのじぇ。おへ
やのおそーじのやりかたをおしえてほしいのじぇ」
「たすけてもらったおれいに、まりしゃはおにーしゃんのおてつだいがしたいのじぇ。おへ
やのおそーじのやりかたをおしえてほしいのじぇ」
男が仕事に行っている間、まりさは部屋で待っている。何もする事がない。その間に何
かして男の役に立てばゲスとは判断されない。まりさはそう考えた。そして思いついたの
が掃除である。きれいなことはゆっくりできる。
かして男の役に立てばゲスとは判断されない。まりさはそう考えた。そして思いついたの
が掃除である。きれいなことはゆっくりできる。
「ふむ、なかなか殊勝なヤツだな。ちょっと待ってろ」
男は頷いた。
目の前に置かれた皿とゆっくりフード。
「いただきますのじぇ」
まりさはそう言ってフードに頭を下げた。
それからゆっくりと食べ始める。
それからゆっくりと食べ始める。
「むーしゃむーしゃ、ごっくん。しあわしぇー」
きちっと噛んで呑み込んでから、しあわせーを口にする。子ゆっくりであるため礼儀作法
の知識は無いに等しい。それでも餡子の記憶から食事のマナーの知識を引っ張り出し、
丁寧に食べていた。
の知識は無いに等しい。それでも餡子の記憶から食事のマナーの知識を引っ張り出し、
丁寧に食べていた。
「ごちそうさまでしたのじぇ」
食べ終わったら、きちっとお礼を言う。
このまりさは、かなり優秀な個体だった。
このまりさは、かなり優秀な個体だった。
まりさが男の元で暮らすようになってからしばらくして。
「ようし、まりさ。お帽子作るぞ!」
「おぼうし?」
「おぼうし?」
まりさは男を見上げた。
ゆっくりのお飾りは一度無くしたら二度と復活しない。そうなっては他ゆのお飾りを奪うし
か方法が無い。奪うにしてもお飾りを失ったゆっくりは弱っていることが多く、成功確率は
非情に低い。まりさも帽子の事は半分以上諦めていた。
ゆっくりのお飾りは一度無くしたら二度と復活しない。そうなっては他ゆのお飾りを奪うし
か方法が無い。奪うにしてもお飾りを失ったゆっくりは弱っていることが多く、成功確率は
非情に低い。まりさも帽子の事は半分以上諦めていた。
「子ゆっくり用の生帽子は高いからな。だからこれで作る」
男が取り出したのは白い布だった。透明な袋に入ったA4サイズのフェルトのような布で
ある。それが三枚。そして、絵の具と糊のようなもの。それらにはデフォルメされたゆっくり
の顔が印刷してある。
ある。それが三枚。そして、絵の具と糊のようなもの。それらにはデフォルメされたゆっくり
の顔が印刷してある。
「おにーしゃん、それなんなのじぇ?」
「お飾り生地一枚三百円。そして、お飾り用絵の具&糊。これを使って俺オリジナルの素
敵なお帽子を作ってやるぜ! 期待して待っててくれよ」
「お飾り生地一枚三百円。そして、お飾り用絵の具&糊。これを使って俺オリジナルの素
敵なお帽子を作ってやるぜ! 期待して待っててくれよ」
男が得意げに答える。
加工所で作られる量産型のお飾り。その材料は綿のようなお飾りの素である。それを
加工所独自の技術で増殖させ、布状に加工し、型を取ったり着色したりして、生お飾りと
呼ばれるものが作られる。
基本種成体用のお飾りはひとつ五千円。子ゆっくり用のお飾りは八千円前後である。
この生地はお飾りの素を布状に加工したものだ。それに着色用の絵の具、接着用の糊。
主に破損したお飾りの補修、追加の装飾などに使われる。しかし、その気になればお飾り
の自作もできる。
加工所で作られる量産型のお飾り。その材料は綿のようなお飾りの素である。それを
加工所独自の技術で増殖させ、布状に加工し、型を取ったり着色したりして、生お飾りと
呼ばれるものが作られる。
基本種成体用のお飾りはひとつ五千円。子ゆっくり用のお飾りは八千円前後である。
この生地はお飾りの素を布状に加工したものだ。それに着色用の絵の具、接着用の糊。
主に破損したお飾りの補修、追加の装飾などに使われる。しかし、その気になればお飾り
の自作もできる。
「ゆわ~」
まりさは目を輝かせて男を見上げた。
男はエンピツと定規、コンパス、ハサミを用意し、座布団に腰を下ろす。生地を袋から取
り出し、工作を始めた。
男はエンピツと定規、コンパス、ハサミを用意し、座布団に腰を下ろす。生地を袋から取
り出し、工作を始めた。
「ベースはまずこれだよな。三角錐の本体」
生地にコンパスで円弧を書き、中心から線を二本引き、扇形を作る。ハサミでその扇形
を切り出してから、両端に糊を塗り、丸めて三角錐を作った。
を切り出してから、両端に糊を塗り、丸めて三角錐を作った。
「ちょっと捻って四角形のツバにしてみるか」
三角錐の円部分の直径を測ってから、それと同じ大きさの円をもう一枚の生地に書く。
それを囲むように正方形を書いた。ハサミでその形を切り出し、糊で円錐にくっつける。
それを囲むように正方形を書いた。ハサミでその形を切り出し、糊で円錐にくっつける。
「んで黒く着色、と」
絵の具の黒を水に混ぜ、それを布に塗っていった。
薄い黒色に染まった帽子が、徐々に色を濃くしていく。水に解いてお飾りに付けると、そ
の部分の色を変える絵の具である。元々色のある部分に塗ってもその部分の色が絵の
具意の色になってしまうので注意が必要だ。また髪や肌に付いてもその部分の色が変
わってしまうので、絶対に付けないで下さい。絶対だぞ。
薄い黒色に染まった帽子が、徐々に色を濃くしていく。水に解いてお飾りに付けると、そ
の部分の色を変える絵の具である。元々色のある部分に塗ってもその部分の色が絵の
具意の色になってしまうので注意が必要だ。また髪や肌に付いてもその部分の色が変
わってしまうので、絶対に付けないで下さい。絶対だぞ。
「リボンは端を赤く塗ってちょっとお洒落に」
生地の残った部分を細長く切り、両端を赤く塗った。
作ったリボンを帽子に巻き付け、蝶結びにする。
作ったリボンを帽子に巻き付け、蝶結びにする。
「星の飾りでも付けてみるか」
同じく生地の余りを星形に切り抜き、薄い灰色の絵の具を塗った。
それを帽子の横に貼り付ける。
それを帽子の横に貼り付ける。
「中のふりふりと」
三枚目の生地から円錐を作る。外側の帽子よりも一回り小さく。続いて、やや大きめの
扇形を切り出してから、細かく折り目を付けて両端をつなげる。シャンプーハットのような
形だ。それを白い円錐に貼り付け、さらに黒い帽子の内側に貼り付ける。
扇形を切り出してから、細かく折り目を付けて両端をつなげる。シャンプーハットのような
形だ。それを白い円錐に貼り付け、さらに黒い帽子の内側に貼り付ける。
「どうだ、まりさ?」
男は出来上がった帽子をまりさの前に置いた。
「我ながら会心の出来だと思うぞ。このままだと三角コーンみたいだけど、そのうち馴染ん
で良い具合にへなってくるだろ」
「ゆわー。ありがとうなのじぇー! すごくかっこいいのじぇー!」
で良い具合にへなってくるだろ」
「ゆわー。ありがとうなのじぇー! すごくかっこいいのじぇー!」
ぱたぱたとお下げを動かしながら、まりさは瞳を輝かせた。男が作った帽子は標準形と
は異なるが、かなりカッコいい形だった。
男は作った帽子をまりさの頭に乗せ、
は異なるが、かなりカッコいい形だった。
男は作った帽子をまりさの頭に乗せ、
「お前がゲスになった暁にはビリビリに破いてやるからなー。楽しみにしてろよー」
「………」
「………」
まりさは一筋の汗を流した。
およそ二ヶ月が経ち。
「おにーさん、おかえりなさいなのぜ」
帰ってきた男にまりさが挨拶をする。
まりさは成体ゆっくりとなっていた。帽子はまりさと共に成長し、先端も良い具合にへな
っている。今ではまりさ自慢の帽子だった。
まりさは成体ゆっくりとなっていた。帽子はまりさと共に成長し、先端も良い具合にへな
っている。今ではまりさ自慢の帽子だった。
「ただいま。良い子にしてたかー?」
「いいこにしてたのぜ」
「いいこにしてたのぜ」
きりっと眉を傾け、まりさは答える。
留守中にはきっちりと部屋の掃除を行っていた。普段から礼儀正しく何事にも真面目に
取り組む、お手本のような善良なゆっくり。ゲスになったら虐待するという男の言葉に、ま
りさはゲスとは真逆の方向に成長していた。
留守中にはきっちりと部屋の掃除を行っていた。普段から礼儀正しく何事にも真面目に
取り組む、お手本のような善良なゆっくり。ゲスになったら虐待するという男の言葉に、ま
りさはゲスとは真逆の方向に成長していた。
「よしよし。じゃ、この調子で立派なゲスになるんだぞー」
男がまりさに笑いかける。
「わかってるのぜ。まりさはりっぱなゲスになるのぜー」
まりさはのーびのーびしながら答えた。
もっとも、何度も言われたせいで、男と言葉を一種の挨拶としてしか認識しなくなってい
る。男がゆっくりを虐める姿を見たことが無いことも、そう考える理由のひとつだ。
もっとも、何度も言われたせいで、男と言葉を一種の挨拶としてしか認識しなくなってい
る。男がゆっくりを虐める姿を見たことが無いことも、そう考える理由のひとつだ。
「まりさ、バッジ取るぞ!」
男はいきなりそう言った。
「バッジさん?」
瞬きして、まりさは男を見上げる。
バッジ。ゆっくりのレベルを示すものである。地域ゆっくりバッジ、社員ゆっくりバッジなど
もあるが、普通は金銀銅の飼いゆっくりバッジを意味する。
もっとも完全室内飼いの場合はバッジを付けないことが多い。飼いゆっくりではバッジを
持たないゆっくりがほぼ半数である。
半野良ゆっくりや、外飼い、時々外に出す場合は銅バッジを付けることが多い。
バッジ。ゆっくりのレベルを示すものである。地域ゆっくりバッジ、社員ゆっくりバッジなど
もあるが、普通は金銀銅の飼いゆっくりバッジを意味する。
もっとも完全室内飼いの場合はバッジを付けないことが多い。飼いゆっくりではバッジを
持たないゆっくりがほぼ半数である。
半野良ゆっくりや、外飼い、時々外に出す場合は銅バッジを付けることが多い。
「まずは銀バッジを取る!」
男が手を持ち上げる。
銀バッジはマナーのしっかり躾けられたゆっくりを意味する。飼い主以外の人間と接す
る機会が多いなら、銀バッジは習得しておいた方がいいと言われる。
銀バッジはマナーのしっかり躾けられたゆっくりを意味する。飼い主以外の人間と接す
る機会が多いなら、銀バッジは習得しておいた方がいいと言われる。
「次に目指すは金バッジ!」
窓の外の空を勢いよく指差し、男は宣言した。
金バッジ。優秀なゆっくりを意味するバッジである。その習得は非常に難しい。普通の飼
いゆっくりが金バッジを取る利点は薄いが、お店でマスコットとして接客を行ったり、庭や
花壇のしっかりとした管理をするなど、何かしらの仕事をするゆっくりなら取得しておいた方
がよいと言われている。
金バッジ。優秀なゆっくりを意味するバッジである。その習得は非常に難しい。普通の飼
いゆっくりが金バッジを取る利点は薄いが、お店でマスコットとして接客を行ったり、庭や
花壇のしっかりとした管理をするなど、何かしらの仕事をするゆっくりなら取得しておいた方
がよいと言われている。
「そして最終目標はみんなの憧れ、金ゲスっ!」
ぐっと拳を握る。
ゲス化した金バッジゆっくりを金ゲスと呼ぶが、かなり希少価値が高い。ゲス化するよう
なゆっくりでは金バッジが取れないからだ。また飼いゆっくりをゲス化させるような飼い主
も金バッジゆっくりは飼えない。
それでも最高級の虐待素材として、虐待お兄さんお姉さんの憧れの的である。
ゲス化した金バッジゆっくりを金ゲスと呼ぶが、かなり希少価値が高い。ゲス化するよう
なゆっくりでは金バッジが取れないからだ。また飼いゆっくりをゲス化させるような飼い主
も金バッジゆっくりは飼えない。
それでも最高級の虐待素材として、虐待お兄さんお姉さんの憧れの的である。
「わかったのぜ、おにーさん。まりさがんばるのぜ」
まりさは大きく頷いた。
市役所の一室。
机の上に乗せられたまりさ。その正面にバインダーを持った女が立っている。長い黒髪
の、どこか人形のような雰囲気を持つ女だった。管理課の職員である。
現在まりさは銀バッジ試験の真っ最中である。銀バッジ試験はゆっくりショップや役所の
ゆっくり管理課で受けられる。試験料は一回五千円。
まりさの前には四枚のカードが裏向きに置かれている。
机の上に乗せられたまりさ。その正面にバインダーを持った女が立っている。長い黒髪
の、どこか人形のような雰囲気を持つ女だった。管理課の職員である。
現在まりさは銀バッジ試験の真っ最中である。銀バッジ試験はゆっくりショップや役所の
ゆっくり管理課で受けられる。試験料は一回五千円。
まりさの前には四枚のカードが裏向きに置かれている。
「ひだりから、さんかく、しかく、まる、ほしがたのじゅんばんなのぜ」
女がカードをめくると、まりさの言った図形が書かれていた。
三枚から六枚のカードの絵柄を記憶する記憶試験である。
何事においても記憶力は重要なことだ。大体四枚のカードを間違わずに記憶できること
が、銀バッジゆっくりの最低水準である。
三枚から六枚のカードの絵柄を記憶する記憶試験である。
何事においても記憶力は重要なことだ。大体四枚のカードを間違わずに記憶できること
が、銀バッジゆっくりの最低水準である。
「4+2は?」
「6なのぜ」
「7-3は?」
「ゆ……。4なのぜ」
「6なのぜ」
「7-3は?」
「ゆ……。4なのぜ」
続いて簡単な足し算引き算。数字を理解し、その増減を理解する。一桁のものの数をた
くさんで一括りにしてはいけない。
また数字は頭を回転力を見るために最適の問題である。
まりさの様子を、女がバインダーの記録用紙に書き込んでいく。
くさんで一括りにしてはいけない。
また数字は頭を回転力を見るために最適の問題である。
まりさの様子を、女がバインダーの記録用紙に書き込んでいく。
「おはようございます」
「いってらっしゃい」
「おやすみなさい」
「いってらっしゃい」
「おやすみなさい」
カードに書かれた文字を読み上げるまりさ。
いただきます
おかえりなさい
こんにちは
おかえりなさい
こんにちは
鉛筆を咥え、紙に文字を書くまりさ、
平仮名の読み書きができることも、銀バッジゆっくりにとっては必要なことである。何の
訓練も受けていないゆっくりでも平仮名は不思議と読めることがある。だが、訓練無しで
平仮名を書けるゆっくりは少ない。
平仮名の読み書きができることも、銀バッジゆっくりにとっては必要なことである。何の
訓練も受けていないゆっくりでも平仮名は不思議と読めることがある。だが、訓練無しで
平仮名を書けるゆっくりは少ない。
まりさの前に置かれた時計の模型。
女がその針を動かす。
女がその針を動かす。
「この時間は何時でしょうか?」
「6じ50ぷんなのぜ」
「6じ50ぷんなのぜ」
まりさは答えた。
時計の時間を読む試験である。
女の問いにしばらく考えてから、まりさは答えた。
時計の時間を読む試験である。
女の問いにしばらく考えてから、まりさは答えた。
「では、この一時間後は何時?」
「ゆー……ぅー……。7じ50ぷんなのぜ!」
「ゆー……ぅー……。7じ50ぷんなのぜ!」
時間の計算問題。時計の示す時間から何時間経つと何時になるのか。人間の元で生
活するには、時間を理解することが必要となる。足し算の感覚に時間の感覚も加わるの
で、意外と難易度は高い。分まで計算できる能力はこの時点では求められない。
活するには、時間を理解することが必要となる。足し算の感覚に時間の感覚も加わるの
で、意外と難易度は高い。分まで計算できる能力はこの時点では求められない。
「では、このスペースを掃除してみてください」
部屋の一角に千切った紙が撒かれ、積み木が転がっている。
「わかったのぜ」
まりさは頷いた。
そして。
「きれいになったのぜ!」
紙は一枚残らず一ヶ所に集められ、積み木も一ヶ所に四角く詰まれている。
散らかったものを片付けることも人間の元で暮らすには必要なことだ。ここで視られる
のは、千切った紙の集め残しが無いことと、積み木をある程度積めること。また途中で片
付けを止めない真面目さが試される。
散らかったものを片付けることも人間の元で暮らすには必要なことだ。ここで視られる
のは、千切った紙の集め残しが無いことと、積み木をある程度積めること。また途中で片
付けを止めない真面目さが試される。
「ではこのあまあまを食べてみて下さい」
目の前に置かれた小皿と、三枚のビスケット。甘さ控えめのあまあまである。
「いただきますのぜ」
一礼してから、まりさはビスケットを口に入れた。
女は黒い瞳をまりさに向けていた。記録用紙にシャーペンを走らせている。
女は黒い瞳をまりさに向けていた。記録用紙にシャーペンを走らせている。
「むーしゃ……むーしゃ……。ごくん。しあわせー」
急がずにゆっくりと食べる。
「ごちそうさまでしたのぜ」
食べ終わってから一礼。
食事の礼儀作法。いただきますを言え、散らかさずに食べ、ごちそうさまを言える。この
時、がっついたり散らかしたりすると不合格である。
食事の礼儀作法。いただきますを言え、散らかさずに食べ、ごちそうさまを言える。この
時、がっついたり散らかしたりすると不合格である。
「やったのぜー! まりさ、ぎんばっじなのぜ!」
まりさの帽子に付けられた銀色のバッジ。
無事銀バッジ試験を合格し、まりさには銀バッジの許可証が発行された。それをゆっくり
ショップに持って行くと、IDが記された銀バッジを売って貰える。
ぱちぱちと男が拍手をする。
無事銀バッジ試験を合格し、まりさには銀バッジの許可証が発行された。それをゆっくり
ショップに持って行くと、IDが記された銀バッジを売って貰える。
ぱちぱちと男が拍手をする。
「おめでとうまりさ、これで金バッジに一歩近付いたな」
「ちかづいたのぜー」
「ちかづいたのぜー」
まりさが男の元に来てから、半年が経つ。
『ゆっくり金バッジ試験飼い主用テキスト』
男はそう書かれた本を読んでいた。
部屋の壁には、額縁に入れられた銀バッチ証明書が飾られている。
部屋の壁には、額縁に入れられた銀バッチ証明書が飾られている。
「何でゆっくりに金バッジ取らせるのに、飼い主の方も試験受けなきゃならんのだ……。
法律とか医術とか難しい事書かれてるし。金ゲスの道は遠いぜ……」
法律とか医術とか難しい事書かれてるし。金ゲスの道は遠いぜ……」
シャーペンの頭を囓りながら呻く。
金バッジ試験は各地の公餡支部で行われる。書類による一次選考が行われ、二次選
考試験ではゆっくりと飼い主の試験と面接が行われる。書類選考は無料だが、試験は有
料であり、試験料金は一万二千円とかなり高い。さらに最終合格率は二割程度と低いた
め受ける者は多くない。
まりさはゆっくり用座布団に座ってテレビを見ていた。
テレビに映る飼いゆっくり専用のゆーちゃんねる。
金バッジ試験は各地の公餡支部で行われる。書類による一次選考が行われ、二次選
考試験ではゆっくりと飼い主の試験と面接が行われる。書類選考は無料だが、試験は有
料であり、試験料金は一万二千円とかなり高い。さらに最終合格率は二割程度と低いた
め受ける者は多くない。
まりさはゆっくり用座布団に座ってテレビを見ていた。
テレビに映る飼いゆっくり専用のゆーちゃんねる。
『あなたの街のプラチナさん』
全国のプラチナバッジ持ちのゆっくりを紹介する番組である。放送されるのは不定期だ
が、毎回個性豊かなプラチナバッジゆっくりが登場する。
が、毎回個性豊かなプラチナバッジゆっくりが登場する。
「ぷらちななのぜ。すごいのぜ……」
まりさは食い入るように画面を見つめた。
プラチナバッジ。金バッジのさらに上のランクのバッジである。バッジを持つゆっくりなら
誰でも一度は夢見るものだ。その試験は相当に難しいものであるらしい。
参考書を持ったまま、男もテレビの画面に目を向ける。
プラチナバッジ。金バッジのさらに上のランクのバッジである。バッジを持つゆっくりなら
誰でも一度は夢見るものだ。その試験は相当に難しいものであるらしい。
参考書を持ったまま、男もテレビの画面に目を向ける。
「またせたのぜ、やろうども……! オレがまりさサマなのぜ……!」
登場したのは胴付きのオレまりさだった。箒を背負い、首に赤いマフラーを巻いている。
目付きが鋭く表情も獰猛だった。両腕には包帯が巻かれ、帽子の縁や上着の袖口、スカ
ートの裾はボロボロになってる。それらは獣のような風貌を作り出していた。
腕を組み、仁王立ちしているまりさ。
おもむろに背中の箒を取り、真上に放り投げる。
目付きが鋭く表情も獰猛だった。両腕には包帯が巻かれ、帽子の縁や上着の袖口、スカ
ートの裾はボロボロになってる。それらは獣のような風貌を作り出していた。
腕を組み、仁王立ちしているまりさ。
おもむろに背中の箒を取り、真上に放り投げる。
「いくのぜ、だちこう!」
そして自分も跳び上がった。
数メートル高々と跳んでから、空中で箒を掴み身を翻して跨る。さらに凄まじい勢いで空
へと飛んでいく。箒型すぃーを駆るまりさだ。
数メートル高々と跳んでから、空中で箒を掴み身を翻して跨る。さらに凄まじい勢いで空
へと飛んでいく。箒型すぃーを駆るまりさだ。
「す、すごいのぜ……。まりさもがんばれば、ぷらちなさんとれるのぜ?」
テレビを見つめながら、まりさは男に尋ねた。
参考書を眺めながら、男はやる気無く答える。
参考書を眺めながら、男はやる気無く答える。
「あー。無理だろ……さすがに。お前は普通の元野良ゆっくりだし。プラチナ取るのは努力
でどうこうできる領域じゃないし」
でどうこうできる領域じゃないし」
プラチナバッジの取得方法はいまいちはっきりしない。プラチナバッジはその取得方法を
見つけ出す部分から試験は始まっているとも言われる。ゆっくりの努力と才能は無論、飼
い主の才能と努力も必要となってくる。
見つけ出す部分から試験は始まっているとも言われる。ゆっくりの努力と才能は無論、飼
い主の才能と努力も必要となってくる。
「それに、俺プラチナって嫌いなんだよな……。もうあのレベルまで行くとゆっくりじゃねー
だろ。妖怪か怪物だろ。まあ前に見た盲動れいむってのは可愛いかったけど」
だろ。妖怪か怪物だろ。まあ前に見た盲動れいむってのは可愛いかったけど」
テレビ画面では、箒型すぃーに乗ったまりさが機関銃型のミニはっけろで、空中に鮮や
かな弾幕を描いている。現在プラチナバッジ持ちは三百匹ほどいると言われている。この
まりさのような規格外のゆっくりは多いらしい。
男はシャーペンで参考書に線を引きながら、
かな弾幕を描いている。現在プラチナバッジ持ちは三百匹ほどいると言われている。この
まりさのような規格外のゆっくりは多いらしい。
男はシャーペンで参考書に線を引きながら、
「あと、プラチナの半分以上胴付だし。胴付ってのもなー……」
「おにいさんは、どうつきがきらいなのぜ?」
「おにいさんは、どうつきがきらいなのぜ?」
胴が生えて人間の少女のような形になったゆっくり。稀に動物のような身体や鳥のよう
な身体を持つこともあるらしい。
男は大袈裟にため息を付いてみせた。
な身体を持つこともあるらしい。
男は大袈裟にため息を付いてみせた。
「胴付って何と言うか、ゆっくりじゃないもん。それに、胴付きって大抵オツムが高性能化
するから、ゲス化もしないし……虐めてるのバレたら動物愛護法違反でとっ捕まるし。意
外と出費が増えるらしいし、俺にとっちゃ胴付きはゆっくりできないゆっくりだ」
するから、ゲス化もしないし……虐めてるのバレたら動物愛護法違反でとっ捕まるし。意
外と出費が増えるらしいし、俺にとっちゃ胴付きはゆっくりできないゆっくりだ」
胴が生えると運動能力と知能が一気に上昇する。また、扱いも普通のゆっくりと異なっ
てくる。普通のゆっくりを虐待しても犯罪にならないが、胴付きを虐待していると捕まる可
能性がある。胴付きを虐待した場合、次に人間に手を出す危険性が出てくるからだ。
また、飼うための費用も増えるため、胴付きにならない事を望む飼い主も多い。
てくる。普通のゆっくりを虐待しても犯罪にならないが、胴付きを虐待していると捕まる可
能性がある。胴付きを虐待した場合、次に人間に手を出す危険性が出てくるからだ。
また、飼うための費用も増えるため、胴付きにならない事を望む飼い主も多い。
「だから間違っても胴生やすなよ」
「ゆっくりわかったのぜ」
「ゆっくりわかったのぜ」
男との言葉に、まりさは頷いた。
公餡委員会支部。
「きんちょうするのぜ……」
待合い室にて、二十人の人間と二十匹のゆっくりが試験開始を待っていた。今日の受
験者である二十組。まりさは書類選考で受かり、筆記面接を受けるために公餡支部へと
やってきていた。
験者である二十組。まりさは書類選考で受かり、筆記面接を受けるために公餡支部へと
やってきていた。
「大丈夫だ、まりさ。お前ならできる。俺は信じてるぞ」
「わかったのぜ……!」
「わかったのぜ……!」
金バッジ試験を受けるゆっくりは、希少種が多い。しかし、れいむやぱちゅりー、みょん
などの基本種も普通にいる。そして胴付きのちぇんが一匹、窓辺で深呼吸をしていた。皆
緊張した面持ちを見せている。
などの基本種も普通にいる。そして胴付きのちぇんが一匹、窓辺で深呼吸をしていた。皆
緊張した面持ちを見せている。
「ではゆっくりの筆記試験を始めます。飼い主の片はゆっくりを連れて、こちらの教室に移
動して下さい」
動して下さい」
職員がそう言った。
まりさたちは机の上に乗せられていた。三方にはカンニング防止の白いついたてが作ら
れている。正面には台と答案用紙、エンピツが用意してある。試験を受けるゆっくりはエン
ピツを咥え、文字を書かなければならない。
文字の書けないゆっくりはそこで脱落となる。
まりさは答案用紙に書かれた文字を読んでいく。
れている。正面には台と答案用紙、エンピツが用意してある。試験を受けるゆっくりはエン
ピツを咥え、文字を書かなければならない。
文字の書けないゆっくりはそこで脱落となる。
まりさは答案用紙に書かれた文字を読んでいく。
「以下の漢字の読みを書きなさい」
「市内」
「客人」
「苦楽」
「以下のひらがなを漢字で書きなさい」
「だいしょう」
「とうざいなんぼく」
「あたらしい」
「以下の数式の答えを書きなさい」
「46+43」
「4×7」
「18÷6」
「市内」
「客人」
「苦楽」
「以下のひらがなを漢字で書きなさい」
「だいしょう」
「とうざいなんぼく」
「あたらしい」
「以下の数式の答えを書きなさい」
「46+43」
「4×7」
「18÷6」
おおむね小学二、三年生レベルの国語算数の問題だった。人間基準では簡単な問題
だが、ゆっくり基準ではかなりの難題である。それでもこの問題を解くために、まりさは今
まで頑張ってきた。
まりさはエンピツを咥え、その先端を答案用紙に走らせる。
だが、ゆっくり基準ではかなりの難題である。それでもこの問題を解くために、まりさは今
まで頑張ってきた。
まりさはエンピツを咥え、その先端を答案用紙に走らせる。
実技試験。
まりさの前には、小さな入り口があった。室内に作られた簡単な迷路である。この迷路
を抜けることが実技試験だ。
まりさの前には、小さな入り口があった。室内に作られた簡単な迷路である。この迷路
を抜けることが実技試験だ。
「では、ゴールまで行って下さい」
「わかったのぜ!」
「わかったのぜ!」
まりさは答えて、迷路に入っていった。
それなりに複雑な迷路である。金バッジ試験に来るゆっくりならおよそ十分弱で抜けら
れるが、普通のゆっくりなら一時間近くかかるだろう。それくらいの難易度だ。まりさは何
度も行き止まりにぶつかり、方向転換をする。しかし、迷路はどこも同じ壁であり、自分が
どこにいるのか分からなくなってくる。
それなりに複雑な迷路である。金バッジ試験に来るゆっくりならおよそ十分弱で抜けら
れるが、普通のゆっくりなら一時間近くかかるだろう。それくらいの難易度だ。まりさは何
度も行き止まりにぶつかり、方向転換をする。しかし、迷路はどこも同じ壁であり、自分が
どこにいるのか分からなくなってくる。
「むずかしいのぜ……。でも、あきらめないのぜ……!」
しかし、まりさは挫けず迷路を走っていた。
ゆっくりが迷路を抜けるためにどう動いたか、どのように感情を変化させるか。それらは
カメラできっちりと撮影されていた。迷路を抜ける記憶力や知力だけでなく、迷路の中でど
のような表情や動きをしているかも評価の材料となる。
これは苦難に対する姿勢のテストだった。
ゆっくりが迷路を抜けるためにどう動いたか、どのように感情を変化させるか。それらは
カメラできっちりと撮影されていた。迷路を抜ける記憶力や知力だけでなく、迷路の中でど
のような表情や動きをしているかも評価の材料となる。
これは苦難に対する姿勢のテストだった。
試験室に戻って、筆記試験。
「以下の言葉から好きな言葉を選び丸を付けなさい」
「ぷりん、ケーキ、おだんご、ようかん、ぱん」
「ねこ、いぬ、きつね、ヤマアラシ、モモンガ」
「?」
「ぷりん、ケーキ、おだんご、ようかん、ぱん」
「ねこ、いぬ、きつね、ヤマアラシ、モモンガ」
「?」
疑問符を浮かべながら、まりさは文字に丸を付けていく。これは一種の心理テストで、
潜在的なゲスを調べるものらしい。
潜在的なゲスを調べるものらしい。
一方飼い主たちも教室で机に向かっていた。
「あなたの飼っているゆっくりが他者に損害を与えた場合の処置を書きなさい」
「あなたの飼っているゆっくりが他者から損害を与えられた場合の処置を書きなさい」
「ゆっくりが怪我をした時の処置を書きなさい」
「ゆっくりを飼うにあたって、してはいけない事を五つ書きなさい」
「あなたの飼っているゆっくりが他者から損害を与えられた場合の処置を書きなさい」
「ゆっくりが怪我をした時の処置を書きなさい」
「ゆっくりを飼うにあたって、してはいけない事を五つ書きなさい」
そのような問題が並んでいる。
こちらは金バッジのゆっくりを飼うに相応しい飼い主かどうかの試験だ。いくらゆっくりが
優秀でも飼い主が駄目だと途端にゆっくりは堕落してしまう。いわゆる金ゲス化だ。金ゲ
スが頻発すれば、金バッジの価値が大きく下げてしまう。それを避けるために金バッジ試
験では飼い主の適正が強く試されるのだ。
こちらは金バッジのゆっくりを飼うに相応しい飼い主かどうかの試験だ。いくらゆっくりが
優秀でも飼い主が駄目だと途端にゆっくりは堕落してしまう。いわゆる金ゲス化だ。金ゲ
スが頻発すれば、金バッジの価値が大きく下げてしまう。それを避けるために金バッジ試
験では飼い主の適正が強く試されるのだ。
「難しいなぁ……」
男は苦笑いをしながら、シャーペンを解答用紙に走らせた。
「以下の言葉から好きな言葉を選びなさい」
「カラス、スズメ、コンドル、トビ、白鳥」
「ミルク、砂糖、蜂蜜、トースト、卵」
「むぅ」
「カラス、スズメ、コンドル、トビ、白鳥」
「ミルク、砂糖、蜂蜜、トースト、卵」
「むぅ」
飼い主も同じように心理テストを受けている。
「よろしくお願いします」
「おねがいしますのぜ」
「おねがいしますのぜ」
椅子に座った男とまりさ。正面では試験官が三人机に向かっていた。
試験の最終問題である面接。直接飼い主と飼いゆっくりと話をし、そのゆっくりが金バッ
ジに相応しいか、また飼い主が金バッジを飼うに相応しいか、調べるのだ。
左の試験官が用意してあった用紙を眺めた。一次選考用の書類である。
それから、男に訝しげな視線を向ける。
試験の最終問題である面接。直接飼い主と飼いゆっくりと話をし、そのゆっくりが金バッ
ジに相応しいか、また飼い主が金バッジを飼うに相応しいか、調べるのだ。
左の試験官が用意してあった用紙を眺めた。一次選考用の書類である。
それから、男に訝しげな視線を向ける。
「では早速質問ですが……この金バッジ志望理由の『金ゲスを虐待したいので、金バッジ
を取らせます』って……どういうこと?」
を取らせます』って……どういうこと?」
ピシリ。
と、まりさはひび割れた。
目を見開き男を見る。
目を見開き男を見る。
「……お、おにいさん?」
「そのままの意味です。金ゲスを虐待するのは昔からの夢でしたから」
「そのままの意味です。金ゲスを虐待するのは昔からの夢でしたから」
爽やかな笑顔で、男が答える。何もおかしい事は言っていない。そんな自信たっぷりの
態度だった。金ゲスが欲しくても、普通なら別の建前を書くだろう。しかし、男は真正直に
志望理由を書いていた。
態度だった。金ゲスが欲しくても、普通なら別の建前を書くだろう。しかし、男は真正直に
志望理由を書いていた。
「ゆぅ。おわったのぜ……」
まりさは一筋の涙をこぼす。
試験は落ちた。そう確信する。
当たり前だが、金ゲスを虐待したいから金バッジを取らせる。そんな理由が受け入れら
れるはずがない。合格することは、万にひとつもないだろう。
そもそも書類選考に受かったのも、男に試験を受けさせ、面接という形で直接その性格
や考え方を見るためだろう。志望理由に金ゲスを虐待するためと書く人間は普通いない。
それでも、まりさは無駄な抵抗を試みる。
試験は落ちた。そう確信する。
当たり前だが、金ゲスを虐待したいから金バッジを取らせる。そんな理由が受け入れら
れるはずがない。合格することは、万にひとつもないだろう。
そもそも書類選考に受かったのも、男に試験を受けさせ、面接という形で直接その性格
や考え方を見るためだろう。志望理由に金ゲスを虐待するためと書く人間は普通いない。
それでも、まりさは無駄な抵抗を試みる。
「そ、そういうじょうだんはやめるのぜ、おにいさん。ここはまじめなばしょなんだから、い
つものノリじゃだめなんだぜ」
つものノリじゃだめなんだぜ」
冷や汗をだらだら流しながら愛想笑いとともに、男に声を掛ける。
それから試験官たちに向き直り、
それから試験官たちに向き直り、
「う、うちのおにいさんは、じょ、じょうだんがすきなひとなんですのぜ……」
だが、まりさの努力が身を結ぶ事はなかった。
「そちらのまりさくんとはどこで出会いました」
「一年くらい前に雨の中で死にかけているのを発見して、ああこの子は立派なゲスになる
なーと直感的に閃いて拾ったんです」
「一年くらい前に雨の中で死にかけているのを発見して、ああこの子は立派なゲスになる
なーと直感的に閃いて拾ったんです」
試験官の問いに、男が楽しそうに話していた。
面接はかなり長く続いている。金ゲスにするために金バッジ試験を受けた男がどのよう
な人物なのか、質問や会話から情報を得るためだろう。
面接はかなり長く続いている。金ゲスにするために金バッジ試験を受けた男がどのよう
な人物なのか、質問や会話から情報を得るためだろう。
「………」
まりさに向けられる試験官三人の視線。
椅子の上で身を捩り、まりさは涙を流していた。
椅子の上で身を捩り、まりさは涙を流していた。
(いたいのぜ……。おじさんたちのしせんが、ものすっごくいたいのぜ。その『あんこのうな
かいぬしもってあんたもたいへんね』ってしせんはやめるのぜぇぇ……。こころがえぐられ
るよーにいたいのぜええぇ……)
かいぬしもってあんたもたいへんね』ってしせんはやめるのぜぇぇ……。こころがえぐられ
るよーにいたいのぜええぇ……)
「何故落ちた? 何がマズかったんだ?」
不合格通知を見つめ、男は首を傾げていた。
不合格という文字と次頑張って下さい云々と定型句が書かれた書類。どの部分が問題
で落ちたのかは書かれていない。
不合格という文字と次頑張って下さい云々と定型句が書かれた書類。どの部分が問題
で落ちたのかは書かれていない。
「あれのどこに、うかるようそがあるんだぜええ!?」
まりさは全力で叫ぶ。まりさを金ゲスにするために、金バッジを取らせる。それは半分以
上冗談だと思っていた。だが、本気だったしい。
上冗談だと思っていた。だが、本気だったしい。
「うーん。ちょっとフランク過ぎたか?」
まりさは目を伏せ、呻く。
「たぶん、おにいさんのなまえは、ブラックリストさんにのっちゃったんだぜ」
「ブラックリスト? なんか聞いたことがあるような……無いような」
「ブラックリスト? なんか聞いたことがあるような……無いような」
首を捻る男。
金バッジの情報を集めていると、時々見たり聞いたりするブラックリストという言葉。
金バッジの情報を集めていると、時々見たり聞いたりするブラックリストという言葉。
「なにがあってもきんバッジしけんでごうかくさせないひとのリストなのぜ。としでんせつと
かいわれてるけど、かなりじつざいするっぽいんだぜ」
かいわれてるけど、かなりじつざいするっぽいんだぜ」
まりさはそう説明した。
金バッジゆっくりを飼う資格が全く無いと判断された場合、ブラックリストに名前を加えら
れ、今後試験でどれほど優秀な成績を出しても不合格にされるという。
ある意味当然の結果とも言えた。
金バッジゆっくりを飼う資格が全く無いと判断された場合、ブラックリストに名前を加えら
れ、今後試験でどれほど優秀な成績を出しても不合格にされるという。
ある意味当然の結果とも言えた。
「……つまりどういう事だってばよ?」
「おにいさんは、いっしょうきんゲスはかえないのぜ」
「おにいさんは、いっしょうきんゲスはかえないのぜ」
いまいち状況の呑み込めない男に、まりさは素っ気なく答える。
金バッジは飼い主と飼いゆっくりが揃って意味を持つ。たとえ金バッジゆっくりを手に入
れても、飼い主に金バッジ資格が無ければ、金バッジは没収されてしまう。その場合は改
めて金バッジ資格を取ればいいのだが、ブラックリストに乗ってしまっては金バッジ資格は
絶対に手にはいらない。
つまり、男は今後金バッジゆっくりは飼えず、金ゲスも飼えない。
金バッジは飼い主と飼いゆっくりが揃って意味を持つ。たとえ金バッジゆっくりを手に入
れても、飼い主に金バッジ資格が無ければ、金バッジは没収されてしまう。その場合は改
めて金バッジ資格を取ればいいのだが、ブラックリストに乗ってしまっては金バッジ資格は
絶対に手にはいらない。
つまり、男は今後金バッジゆっくりは飼えず、金ゲスも飼えない。
「なん……だ、と……!?」
状況をようやく理解し、男は愕然と固まった。
それはある休日のことだった。
男がコンビニに出掛けている最中、ふらふらと一匹のれいむが庭にやってきた。ぼろぼ
ろに汚れて窶れたれいむである。まだ若く、亞成体くらいの大きさだ。庭を横切ろうとした
ところで、ぱたりとうつ伏せに倒れた。
男がコンビニに出掛けている最中、ふらふらと一匹のれいむが庭にやってきた。ぼろぼ
ろに汚れて窶れたれいむである。まだ若く、亞成体くらいの大きさだ。庭を横切ろうとした
ところで、ぱたりとうつ伏せに倒れた。
「ゆ……ぅ……」
苦しげな声とともに、れいむが震えた。
「れ、れいむしっかりするのぜ!?」
本来飼いゆっくりは野良ゆっくりに関わってはいけないと教えられている。しかし、まりさ
はほとんど迷わず窓を開け、れいむに駆け寄った。行き倒れかけたれいむに、幼い頃の
自分を重ねたのである。
れいむは力無く顔を上げ、光の消えた眼をまりさに向ける。
はほとんど迷わず窓を開け、れいむに駆け寄った。行き倒れかけたれいむに、幼い頃の
自分を重ねたのである。
れいむは力無く顔を上げ、光の消えた眼をまりさに向ける。
「たすけて……」
「ちょっとまってるのぜ!?」
「ちょっとまってるのぜ!?」
まりさは大急ぎで部屋に戻って行った。
まりさが持ってきた体力回復用のパックオレンジジュースを飲み、おやつのお菓子を食
べれいむはとりあえず復活した。
べれいむはとりあえず復活した。
「おとーさんもおかーさんも、おねーちゃんもいもーともみんなしんじゃって……れいむひと
りぼっちだよ。れいむあんまりかりうまくないから、ごはんさんもとれないし。ぜんぜんゆっ
くりできないよ……」
りぼっちだよ。れいむあんまりかりうまくないから、ごはんさんもとれないし。ぜんぜんゆっ
くりできないよ……」
涙を流しながら、れいむがまりさに身の上話をしている。
「それはつらいのぜ。まりさもむかしそんなんだったのぜ……」
真面目な面持ちでれいむの話を聞いているまりさ。
まりさは西の方向をお下げで示した。
「このさきにあるこうえんにいくのぜ」
「こうえんはあぶないよ……」
「こうえんはあぶないよ……」
顔を伏せ、れいむが不安がる。野良ゆっくりが下手に公園に乗り込むと、そこにいる地
域ゆっくりによって拘束され、そのまま駆除されてしまう。今の野良ゆっくりにとって公園
は危険地帯と認識されている。
まりさは説明を続けた。
域ゆっくりによって拘束され、そのまま駆除されてしまう。今の野良ゆっくりにとって公園
は危険地帯と認識されている。
まりさは説明を続けた。
「ちいきゆっくりになりたっていえば、はなしはきいてもらえるのぜ。ちいきゆっくりになっ
て、まじめにおしごとすれば、おうちもごはんももらえるのぜ」
「ゆ……?」
て、まじめにおしごとすれば、おうちもごはんももらえるのぜ」
「ゆ……?」
れいむが顔を上げる。
「じゃ、れいむがんばるよ!」
もみあげを振り、れいむが庭から出て行く。公園に行き地域ゆっくりになりたいと頼むの
だろう。地域ゆっくりは基本的に真面目であればどんなゆっくりでもなれる。
だろう。地域ゆっくりは基本的に真面目であればどんなゆっくりでもなれる。
「がんばるのぜ!」
お下げを振りながら、まりさはれいむを見送った。
じー。
「……」
視線を感じて振り向くと、窓辺から男がまりさを凝視していた。全身に黒いオーラを纏い
つつ。いつからそうしていたのかは分からない。コンビニに行くと言っていたので、帰って
きてから様子を見ていたのだろう。
つつ。いつからそうしていたのかは分からない。コンビニに行くと言っていたので、帰って
きてから様子を見ていたのだろう。
「窓開けたり、知らん野良におやつやったりした事はどうでもいい」
あっさりと言う。
冷や汗を流しつつ、まりさは黙って男を見上げていた。
冷や汗を流しつつ、まりさは黙って男を見上げていた。
「これが噂に聞く――野良を部屋に招き入れてつがいになってすっきりーしておちびちゃ
ん作って飼い主を奴隷呼ばわりする、黄金パターンだと思ってわくわくしてたのに……」
ん作って飼い主を奴隷呼ばわりする、黄金パターンだと思ってわくわくしてたのに……」
右手をきつく握り締め、下唇を噛みながら、身体を震わせている。目元からこぼれる一
筋の涙。無念さと悔しさが全身からにじみ出ていた。
きっと鋭い視線をまりさに向け、
筋の涙。無念さと悔しさが全身からにじみ出ていた。
きっと鋭い視線をまりさに向け、
「何でれいむ相手にゆん生相談しちゃってるわけええ!? しかも何であのれいむも真面
目に前向きに生きようとしてるわけええ!? あのれいむも、まりさ誘惑するくらいの気概
見せてねええ! 野良でしょ、野良ゆっくりなんでしょおお!?」
「ご、ごめんなさいなのぜ……」
目に前向きに生きようとしてるわけええ!? あのれいむも、まりさ誘惑するくらいの気概
見せてねええ! 野良でしょ、野良ゆっくりなんでしょおお!?」
「ご、ごめんなさいなのぜ……」
泣きながら叫ぶ男に、まりさはただ謝ることしかできなかった。
れいむは地域ゆっくりとなって真面目に働いているらしい。
「ふふ……へへ……」
布団の中で男が笑っている。
夜、まりさがふと目を覚ましたら、男の寝言が聞こえてきた。
夜、まりさがふと目を覚ましたら、男の寝言が聞こえてきた。
「まり……さ……。あんよ焼き……しようねー」
夢の中でゲスになったまりさを虐待しているらしい。
大事に育てた飼いゆっくりがゲス化して、それを制裁する。その目的はいまだに健在だ
った。しかし、男の予想以上にまりさは優秀なゆっくりだった。今のところゲス化の兆しは
無く、今後も無いだろう。
男を眺めながら、まりさは呟いた。
大事に育てた飼いゆっくりがゲス化して、それを制裁する。その目的はいまだに健在だ
った。しかし、男の予想以上にまりさは優秀なゆっくりだった。今のところゲス化の兆しは
無く、今後も無いだろう。
男を眺めながら、まりさは呟いた。
「たのしそうなねごとなのぜ……」
男に拾われておよそ一年が経つ。命を助けてもらい、格好いい帽子も作ってもらい、快
適な生活も保障されている。その恩はきちんと返さないといけないと、まりさは常々考え
ていた。
適な生活も保障されている。その恩はきちんと返さないといけないと、まりさは常々考え
ていた。
「おいじじい! ここはまりささまのおうちなんだぜ! いますぐごくじょうのあまあまもって
くるんだぜ! いますぐでいいのぜ! はやくするんだぜ!」
くるんだぜ! いますぐでいいのぜ! はやくするんだぜ!」
仕事から帰ってきた男に、卓袱台にふんぞり返ったまりさは大声でそう告げた。
今まで大事にしてもらった恩を返すために、まりさはゲスになることを決めた。これから
虐待されて死ぬだろうが、それは仕方ないと受け入れた。
今まで大事にしてもらった恩を返すために、まりさはゲスになることを決めた。これから
虐待されて死ぬだろうが、それは仕方ないと受け入れた。
「この馬鹿がああっ!」
男の平手打ちがまりさを吹っ飛ばす。
一回転して床に落ちるまりさに、男が大声で叫んだ。
一回転して床に落ちるまりさに、男が大声で叫んだ。
「ゲスの振りしたゆっくり虐待するほど俺は落ちぶれちゃいねえええ!」
「あっさりばれたのぜ!」
「あっさりばれたのぜ!」
まりさは身体を跳ねさせる。まりさの計画はあっさりと頓挫した。
男は床に正座をし、正面を指差した。
男は床に正座をし、正面を指差した。
「まりさ、そこに座れ」
「ゆん?」
「ゆん?」
言われた通りに、まりさは男の正面に座る。
神妙な面持ちで男は静かに語り始めた。
神妙な面持ちで男は静かに語り始めた。
「まず飼いゲス虐待ってのは、大事に飼っていたゆっくりが飼い主を裏切る。その悲しみ
と怒りをぶつけるからこそいいんだ。この裏切りって部分が重要なんだ。たとえばどこの
馬の骨ともつかん野良ゆっくりに一目惚れとか、日々の扱いに不満を持ってとか、そうい
う裏切りの理由が大事なんだ」
「ゆぅぅ……」
と怒りをぶつけるからこそいいんだ。この裏切りって部分が重要なんだ。たとえばどこの
馬の骨ともつかん野良ゆっくりに一目惚れとか、日々の扱いに不満を持ってとか、そうい
う裏切りの理由が大事なんだ」
「ゆぅぅ……」
いきなり始まった話に、まりさは顔を引きつらせた。
あとがき
余談ですが、まりさと飼い主は金バッジの筆記試験は合格しています。
まりさの銀バッジ試験を担当したのは「anko4338 超伝道をもげ!」に登場した針お姉さ
んです。
余談ですが、まりさと飼い主は金バッジの筆記試験は合格しています。
まりさの銀バッジ試験を担当したのは「anko4338 超伝道をもげ!」に登場した針お姉さ
んです。
「anko4373 ものもらい」のイラストありがとうございます。
過去SS
anko4377 勝手に生えてくる
anko4373 ものもらい
anko4360 ゆっくりさせてね
anko4350 Cancer
anko4341 予防接種
anko4338 超伝道をもげ!
以下省略
anko4377 勝手に生えてくる
anko4373 ものもらい
anko4360 ゆっくりさせてね
anko4350 Cancer
anko4341 予防接種
anko4338 超伝道をもげ!
以下省略
挿絵: