揚げバター

登録日:2025/05/18 Sun 22:16:00
更新日:2025/05/20 Tue 13:24:55NEW!
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それは、血管を詰まらせるスナック



揚げバターDeep-fried butter)とは、衣で包んだバターを揚げた、アメリカ発祥のスナックフードである。




【概要】

凍らせたバターをパン粉やホットケーキミックスなどの衣で包み油で揚げ、砂糖などで味付けした料理。

そう、「バター」「揚げる」のである。

生乳本来のクリーミーな風味やふんわりとした食感や口溶けを与える幸せの味・バター。
100gで750キロカロリーを軽く超えるバターを油で熱し、それにかぶり付く絵図など、未見の人には到底思い描けるはずもないだろう。それほどの狂気と呼ぶ他ない究極のジャンクフードである。

ある者はこれを「悪魔の食べ物」と呼び、またある者は「地上で想像しうるものの中でおそらく最悪の料理」と名付けた。
ジャンクフード好きの多いアメリカ人をして、その大半はその恐るべき魔の料理に恐怖し、残りの数割にあたるバター好き(毎日何らかの食事でバターを摂取しているレベル)さえも手出しすることを躊躇うほどである。


【歴史】

歴史と言っても揚げバターそのもののルーツはさほど古くはなく、2009年にテキサス州ダラスで開催された物産フェアの揚げ物コンテストにて、発明家のアーベル・ゴンザレス・ジュニアが出品した料理が発祥とされている。
このコンテストで初お披露目された揚げバターは、その年の「最もクリエイティブな食品賞」を獲得。あくまでユーモア賞的な位置付けであり決して総合的な優秀賞ではなく、以降はイロモノ枠として各地で話題となった。

アイオワ州産業物産フェアにも出品しており、この時は揚げ衣に直接蜂蜜とシナモンを味付けしてから揚げ、仕上げにシュガーコーティングをするという想像するだけで口中が甘ったるくなりそうな製法だった。

2011年、カリフォルニア州コスタメサで開催された歴史的イベント・オレンジカウンティフェアに出店。揚げバターにチョコレート・ベーコンを合わせたセット「冠状動脈コンボ」という名で販売された。

ちなみに考案者のゴンザレスは、過去にも2006年の大会でコカ・コーラ風味の生地を油で揚げ、シロップやホイップクリームなどをトッピングした「揚げコーラ」(1カップ830kcal)を考案し反響を呼ぶなど、常軌を逸した独創性でありながら見る者の心と食欲を掴んで離さない狂気にも似た中毒性を併せ持った創作スナックフードを世に送り出すマッドサイエンティスト(?)として知られている。


【特徴】

「エネルギーを吸収する系の敵が吸収しきれない量のエネルギーをぶつけられた感じ!!」
「食べ物の感想じゃねぇよ!!」
スナックバス江より)
あえて説明するまでもないと思うが、とんでもなく体に悪い
世の中ほどほどでさえあれば健康にいい食材もあれど、これだけは百害あって一利無しと言っても過言ではない。


ここで一般的な固形バターの栄養成分を分析してみよう。

バターの国内トップシェアを誇る「雪印・北海道バター(1パック・200g)」に表示されているカロリーは732kcal、脂質は81.0g(うち動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は50.5g)である(いずれも100gあたり)。

一方、一日に摂取する脂質の推奨量は成人男性が75g前後、成人女性が56g前後とされ、生活習慣病のリスクを高める飽和脂肪酸は一日10g未満に抑えることが健康的とされている。
揚げバター…というかバター本体1パック分の脂質量は、明らかにこの推奨量をオーバーしていることがわかる。

そもそも一日にバターを1箱消費するという行為をメーカー側も想定していないことは、いわゆる「切れてるバター」やレストランなどでよく付いてくる一切分が包装されたバターの存在からして明白であると言え、あれが一食に摂っても差し支えない分量である。
揚げバターがいかに不健康であるか以前に人間的ですらない消費法という認識が一般的であることは否定できない。
とはいえ、バターは洋菓子に必要不可欠な存在であり、それらを作る上で大量のバターや砂糖を消費すること自体は珍しくもなく、ジャンキーなお菓子を愛する人々にとっては今更な話ではないかという解釈もできるが……まあ、結局は量や比率の問題である。


そんな健康面の話はさて置き、肝心の味や食べ応えはどうなのかと言うと、バター好きにとっては…


たまんねぇほど美味い。


なにしろ主役は生乳の一番うまい部分を濃縮したバター。さらにコーティングはバターとの相性も抜群なベーキングパウダー。ほっぺたがバターのようにとろけ落ちてしまうこと請け合いである。
わかりやすく味をたとえると「気持ち多めにバターを乗っけて染み込ませたホットケーキ」あるいは「パンがグデングデンになるぐらいバターに浸したフレンチトースト」といった感じ。
加えて油で揚げているため、アメリカンドッグに似た外側のサクサク感と中のふんわり感に思わず舌鼓を打つことだろう。

一口かじると中に閉じ込められたドロドロのバターが勢いよく飛び散り、顔や手にかかりやすい。特に揚げたてはハンパなく熱いため火傷に注意しよう。

飲み込むとズシンとした重圧が胃袋にのしかかる。砂糖を絡めた油脂を頬張っているだけに体内が莫大なカロリーやPFCを確実に取り込んでいることを肌身に感じることができる。まさに背徳の真髄を極めた一品である。


美味いけど体に悪い。体に悪いけど美味い。
大抵の食べ物に共通するこの真理こそが、こと揚げバターとなれば悪魔の如き執念をもって人の弱みにつけ込むのである。


この項目を読んでて胸焼けがするぐらい微塵も食べる気が湧かなかったのなら心配はなさそうだが、「一度でいいから食べてみたい」と思った人は、くれぐれもドハマりしないと心に誓っていただきたい。魅惑のバターが持つ依存性を断じて侮るべからず。
「絶対食うな」とまで言うと大袈裟だが、間違っても過食や常食は避けてほしい。なんならこれをツマミに酒をキメるような暴挙だけは絶対にやめよう。
食べるのをやめなかったせいで病院送りになっても当項目は一切責任を負いません。


【作り方】

それでも食べてみたいという方へ、ご家庭でも手軽に揚げバターが楽しめるレシピをご紹介。

〜材料(1人前)〜
  • 有塩バター*1:80g
  • サラダ油:適量
  • ホットケーキミックス*2:100g
  • 卵:1個
  • 牛乳:80cc
  • 粉砂糖:小さじ1

〜作り方〜
1.有塩バターを食べやすいサイズに切り(切るのが面倒な場合は切れてるタイプを使うのもアリ)、1切ずつ爪楊枝または竹串を刺した状態で2時間ほど冷凍する。
2.ボウルでホットケーキミックスと牛乳、卵を混ぜ衣を作る。
3.鍋にサラダ油を入れ190度まで熱する。冷凍したバターを衣にくぐらせ、油で揚げる。バターが溶け出さないよう高温でサッと揚げるのがコツ。こんがりきつね色になったら出来上がり。
4.粉砂糖(お好みで蜂蜜、シナモンシュガー、チョコレートシロップ、ジャム等も可)で味つけし完成。アイスクリームを添えるとバターの油っこさを冷たさとサッパリ感で中和してくれる。

こちらは、揚げバター初心者の人でも作りやすく食べやすく、ほんの少しだけ体への負担を軽減した一口サイズを想定したレシピである。
「本場よろしくブロック丸ごと揚げたバターでキメたいんじゃああぁあ!!」という気高き上級志向の方は、YouTuberなどが実際に挑戦している動画が多く挙がっているためそちらを参考にしていただきたい。


追記・修正は、揚げバターを1箱分完食してからお願いします。


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最終更新:2025年05月20日 13:24

*1 無塩の場合は塩を少々加えて味を調整する。

*2 ベーキングパウダー不使用のものは、揚げた時に破裂する恐れがあるため使用してはいけない。