ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1559 三つ編み狩り+おうち破壊+お飾り没収=?
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ankoss
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***まえがき***
・少々独自設定があります
・善良だろうがなんだろうが、ゆっくりは死にます
・理不尽です
*********
(野良 + 越冬) * (三つ編み狩り + おうち破壊 + お飾り没収)=?
一.
冬。
頃合いとはしては、一月の下旬である。 ようやく正月気分が抜けて、いつのも一年が始まったと実感するぐ
らいだろうか。
相変わらずの寒さは絶好調で、外に出るときは分厚いジャケットが手放せない。
そんな冬の真っ只中のある休日に、私は毎年恒例の暇潰しを実行することにした。
「とりあえず、絶対にいるのはゴミ袋と軍手ぐらいだったかな」
ゴミ袋と軍手、更に色々な道具を準備してリュックに入れる。
後はしっかりと防寒対策をして、それから家を出た。
「おお寒い寒い」
やはり、というか、いくら着込んでも寒い。
生来の寒がり気質のせいというわけでもなく、冬は残念ながら当たり前のように寒いのである。
頬を一つ叩いて気合を入れ、目的の公園へと歩き出す。
今年もきっと、素敵な暇潰しとなるだろう。
二.
野良ゆっくりの冬はとにかく厳しい。
この辺りはあまり都会ではないが、山が近いためにいくらかのゆっくりが街の方へと降りてきている。
果たして何が目的でやってきているのかは知れないが、街にもゆっくりはいるのだ。
「ゆー……おちびちゃん、そんなにおかあさんのかみのけをひっぱっちゃだめだよー」
「ゆふぅ! でもたのしーんだじぇ! おかーしゃんのかみのけ、ふわふわできもちいいんだじぇ」
「ありがとうねおちびちゃん」
すりすり、と二匹のゆっくりが身体を擦り合わせて幸せそうに微笑んでいる。
二匹がいるのは、ダンボールの中だ。 それほどの広さではないが、地面には古い新聞紙が敷かれており、ダ
ンボールそのものには何枚か重ねたゴミ袋が被せてある。 その上には、ゴミ袋が飛ばないように重りの石が。
中々立派なゆっくりの家で、越冬生活も快適なようだ。
見れば、ダンボールの隅には、こんもりと膨らんだビニール袋がある。 全て越冬用の食糧であるが、二匹が
冬を越すには十分な量だろう。
「ゆー。 おしょとであそべにゃいのはつまらにゃいけど……ずっとおかーしゃんがいてくれるからしあわせな
んだじぇ!」
「おちびちゃん……いつもひとりにしてごめんね……」
二匹の内訳は、成体まりさが一匹と子まりさが一匹。
どちらも野良らしくボロボロの格好である。 しあわせーと言ってすりすりしている饅頭肌は薄汚れているし、
髪の毛もパサパサで金髪はくすんでいる。 大事な大事なお帽子も、とんがりはくたびれ、つばは切れ込みが入
ってボロボロ。 白かったはずのリボンも灰色に変色している。
そんな薄汚れた野良であっても、二匹は幸せであった。
***
二匹は、元々はきちんとした一家だった。
親まりさに親れいむ、そして子まりさを含む子どもが三匹。
野良にしては子どもが多く、狩りもラクではなかった。
しかし、日々は充実していた。 一家は山のゆっくりぷれいすから街へと引越しをしてきたグループである。
いくつかの家族が集まった小さな集落で暮らしていたが、とあるありす一家が街へと引っ越すというのでそれ
に付き添ってきた。
何でも街は”とかいは”で、今のゆっくりぷれいすよりもとてもゆっくりできるらしい、というのを間に受け
たからだ。
実際に街の暮らしはそこそこ快適であった。
街に入ってすぐのところに人間がほとんど近づかない公園があり、そこを住処とするゆっくりのグループと出
会えたのが幸運だったのだ。
ここのゆっくりたちはかなり善良なゆっくりたちで、そこそこ頭も良かった。
餌場となる人間のゴミ捨て場で、ゴミ袋を破いて漁ったりはしない。 大勢のゆっくり同士が協力して、ゴミ
袋を丸ごと運搬していたのだ。 そしてゴミ袋から食べられるものを取り出してみんなで分ける。 そんな生活
をしていた。
また、ダンボールをゆっくり同士が協力して組み立て、家にもしていた。 食べられないゴミを工夫して雨除
を作ったりなどもしている。
人間もまた、そうやって慎ましく暮らすゆっくりをあえて潰そうとはしなかった。 それはかなり甘い解釈の
仕方で、実際には、ゆっくりに関する法律にある投棄関係の項目のせいで、面倒臭がって潰さないだけというの
が正確であったが。
そういった背景もあって、まりさ一家は快適に公園での暮らしを送っていた。
母れいむと子ゆっくり二匹が死んだのは、人間に捕まったせいであった。
育児の一環として、公園の外を散歩している最中であった。
「ゆゆーん。 きょうもいいてんきだね、おちびちゃん!」
「ゆん! とってもゆっくりできるよぉー」
「きょうのごはんしゃんたのしみだにぇー」
母れいむと子ゆっくりたちは道路をずりずりと進んでいる。
ぽかぽかと暖かい陽気であったので、特に急がず、とてもゆっくりと散歩を楽しんでいた。
父まりさと子まりさは、狩りに出かけている。 ゴミ袋の運搬には人手があってもあっても足りない状態なの
で、大忙しなのだ。
そんな働き者の家族をみんなは尊敬していたし、とてもゆっくりできると感謝もしていた。
「ほんとに、ありすおねーさんについてきてよかったね!」
「ゆん? ありすおねーしゃんだいすきだよ!」
「おねーしゃんとってもゆっくりできるよね!」
「ゆ! こんどありすおねーしゃんのところにあしょびにいきたい!」
「そうだね! それはとってもゆっくりできるね! きょうはおさんぽでゆっくりして、あしたはありすおねー
さんとゆっくりしようね!」
「ゆゆん! ゆっくり!」
三匹はとても幸福であった。
ゆっくりできる家族。 ゆっくりできるお姉さん。 ゆっくりできるおうち。
何もかもゆっくりできるもので、明日がとても楽しみであった。
「あん? ゆっくりじゃねぇか」
三匹がゆっくりと散歩している最中に、一人の人間が現れた。
ゆっくりたちは人間を見つけると、笑顔になって飛び跳ねた。
「ゆっくりしていってね!」
「こんなとこに何でゆっくりがいるんだか」
公園のゆっくりたちにとって、人間は怖いものではなかった。
特に虐めてくることもないし、本当にたまーに、ごはんをくれたりもする。
だから元気良く挨拶したのだ。
「あ、ゆっくり専用ゴミ箱がちょうどあるじゃん」
人間はそんなことを言って、ゴミ箱に備え付けてあるスコップを手にとった。
それから、ゆっくりしていってね、と飛び跳ねるゆっくりをスコップで上に載せる。 ちょうど三匹をいっぺ
んに取ることができた。
「ゆ?」
ゆっくりたちが、首を傾げた瞬間だっただろうか。
ゴトンとゆっくりたちをゴミ箱の中に入れた。
ゆっくり専用ゴミ箱といっても、単なる防音のできる普通のプラスチックゴミ箱である。
決してゆっくりが体当たりしても倒れず、登ることもできないという特徴はあるが。
人間はしっかりと蓋を閉めて、スコップを戻す。
「――――!」
何かが中から体当たりしているような音が聞こえただ、人間にはもう関心がない。
良いことをした、と思いながら再び歩き出した。
ゆっくりしたれいむの親子は、結局共食いの果てにこの世の全てを恨みながら死んで行った。
***
いつまで経っても帰ってこない母れいむと子どもたちは、もうきっとこの世にいないのだろうと、親まりさは
三日ほどで気付いた。
子まりさは泣いて暴れたが、一週間もすれば元の状態に戻った。
一家は二人だけになって、それでも日常は続いていった。 おうちを守るために、子まりさは家に残るように
なった。 けれども、食い扶持も減ったので幾分か生活はラクになっていった。
そして越冬を始めて、今に至る。
子まりさの心の傷も癒えて、越冬中だというのにそこそこゆっくりした生活を送れている。
食糧も十分にあるし、防寒も徹底している。
まりさは愛しい子まりさと身を寄せ合って、とてもゆっくりしていた。
すると、おうちが無くなった。
三.
近くの公園はゆっくりの溜まり場になっている。
原因は、ゴミの管理の甘いアパートが近くにあることと、ゆっくりが鬱陶しくて人間が寄り付かないというと
ころだろうか。
更に大きな要因としては、ゆっくり専用ゴミ箱がないためだと考えられる。 ゆっくりは専用ゴミ箱に捨てる
ことが義務付けられているため、公園でゆっくりを潰すのが面倒なのだ。 また、公園のゆっくりが”比較的”
人間に迷惑をかけないものだというのもあるかもしれない。 しかし、善良だろうがゲスだろうが、人間にはあ
まり興味がないはずだ。 野良のゆっくりを見つけたら捨てるというのが常識なのだから。
そういうわけで、件の公園はゆっくりを狩るにはとても良い穴場なのだ。
早速公園に行ってみると、うわぁ、となる。
ゴミ袋を被せたダンボールがあるわあるわ。
これが全て越冬をしているというのだから、気持ち悪いものである。
「じゃ、さっさとやるか」
私は適当に、入り口の近くにあったダンボールを蹴り飛ばす。
「ゆゆ?」
「ゆ?」
中にいたのは、大きなまりさが一つと小さなまりさが一つ。 計二つ。
急に天井と壁が無くなって、きょとんとした顔をしている。
それから、少しの間の後に震えて叫び始めた。
「ど、どぼじでおうぢざんがなぐなっだのおおおおおおおおおお!?」
「しゃむいいいいい! しゃむいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
それを無視して、蹴り飛ばしたダンボールの方に行き、ダンボールを足で踏みつぶす。
バン、バン、と二度と組み立てられないように。
その音に気付いたのか、大きなまりさがこっちを見た。
「ゆぎゃあああ! な、なにしてのおおおおおお!? まりさのおうちをこわさないでねえええええええ!?」
勘が良いのか、すぐに自分のおうちということに気付いたようだ。
といっても、もうダンボールはペシャンコになっているし、崩壊済みである。
今度はこちらから歩み寄って、新聞紙の上に載っている二つの饅頭を見る。
「どぼじでこんなごとずるのおおお!? ぷくううううううううううう!」
大きいまりさが頬を膨らませて大きくなった。
ゆっくりの威嚇らしいが、全く何もならない。
私は新聞紙の上にあるビニール袋に目を付けた。
おそらく、これが越冬用の餌なのだろう。
私は軍手をして、そのビニール袋を取り上げた。
「や、やめでよねえええええ! それはえっとうようのたべものさんなんだよおおおおおおお!?」
「お、おきゃーさん……しゃぶいよう……」
ガクガクと震える小さいまりさには構わず、大きな方が私の方に体当たりを仕掛けてくる。
その形相は必死といったものだ。
それもそうだろう。 この越冬用の食糧がなければ、生き延びれる可能性はゼロだ。 もっとも、おうちがな
くなった時点でゼロだろうが。
「がえぜ――――ゆべえええええ!!」
爪先で蹴って吹き飛ばす。
ぼてんぼてん、と餡子をまき散らしながら転がるまりさから視線を外して、ビニール袋をゴミ袋に入れる。
これでこの一家の食糧はゼロ。 越冬成功率もゼロである。
「しゃぶいいいい……ゆぎゃああああ! いぢゃいいいい! やべでえええええええ! みつあみしゃんがいぢ
ゃい!」
次に小さいまりさの三つ編みを掴んで持ち上げる。
まりさ種の三つ編みは、なぜか動くのだ。 パワーそのものはないが、ダンボールを組み立てるのにも活躍す
るのだろう。 他にも水に浮かんだときには口と三つ編みを使ってオールを使ったりもするし、まりさ種にとっ
て、なくてはならない重要な部位なのである。
ぶちんっ!
もちろん、私にとっては重要ではないが。
私は三つ編みを根元からちぎって、三つ編みもゆっくりも地面に落とす。
落下のショックで小さいまりさは口から餡子を吐き出した。
「ゆべぇ! み、みつあみしゃん……まりしゃのみつあみしゃん……どぼじで!? どぼじでうごきゃないのお
おおお!? ゆ、ゆ、ゆううううううううう!? ど、どぼじで、どぼじでまりしゃのみつあみしゃんがめのま
えにあるにょおおおおおおおおおおお!?」
無残にもちぎられて捨てられた三つ編みを目の前に、小さいまりさは絶叫しながら餡子を吐き出した。
それからぺーろぺーろ、と泣きながら三つ編みを舐め始めた。
「ゆぅ……ぺーろぺーろ……おねぎゃい……みつあみしゃん、もとにもどっちぇね……ぺーろぺーろ」
もちろん、戻るわけはない。
三つ編みはかなり繊細な部位らしく、一度でも無くなると生えてこないそうだ。
そもそもゆっくりの髪は身体の大きさによって分量が決まっているようで、切った髪は伸びてこない。
「がえぜぇ……まりさたちの……ごはんをがえぜえええええ!」
餡子を吐きながら、ボロボロの身体を引きずって大きなまりさが帰ってきた。
体当たりというのも命がけな状態らしく、あっさりと捕まえることができる。
掴むのは、同じく三つ編みである。
「ゆぐう! さわらないでね! きたないてでまりさのみつあみさんにさわらないでね! あとさっさとごはん
さんをかえしてね! それがないとえっとうできないんだよ!? わかる!?」
じたばたと暴れる饅頭。
しかも前の傷があるから、ぼたぼたと地面に餡子がこぼれている。
相手をするのも面倒なので、小さいのと同じように三つ編みを根元から引きちぎる。
ぶちっ
「ゆ!? な、なにしてるの!? やめてね!? まりさのみつあみさんになにしてるの!?」
中々強度があるようで、小さいのと同じようにはいかない。
しっかり本体を手で抑えて、思いっきり三つ編みを引っ張る。
「いだい! いたいよ! やめてね! やめてね! ゆっくりしないでやめてね! ゆぐううううう!」
ぶちっ
ぶちっ
「やめでええええ! みつあみさんだいじなのおおお!」
ぶちんっ!
「ゆぎゃあああああああ! まりさのみあつみさんがああああああああああ!」
ちぎった後の行動は小さいのと同じであった。
「ぺーろぺーろ……ゆぐっ……まりさの……ゆっくりしたみつあみさんが……ゆぐぅう……」
三つ編みの残骸を必死にぺーろぺーろとしている。
そんな哀れな姿があまりにも可哀想なので、私は声をかけてやった。
「まりさ。 ぺーろぺーろしても三つ編みはもう戻らないよ?」
「うるざいいい! もどるよ! またうごかせるようになるよ!」
「ほんちょ……? みつあみしゃん、もどってくるにょのぉ……?」
「お、おちびちゃん!? ゆわああああ! おちびちゃんどぼじたの!?」
ようやく、おちびちゃんが大怪我をしていることに気付いたらしい。
三つ編みを放り出して、ぺろぺろと小さいのを舐め始めた。
しかし、こんな真冬の中で、しかも吐餡までした小さいゆっくりが助かるわけはないだろう。
今すぐどうということはないだろうが、明日には死んでいるに違いない。
「じゃ、お飾りちょうだいね」
「ゆ!?」
まりさ二匹から帽子を取ってゴミ袋に入れる。
お飾りはゆっくりにとって、無くてはならないもの。 これがなければゆっくりできないし、ゆっくり同士を
認識することができない。
もはやゆっくりの命が具現化したものと言っても良いかもしれない。
そんな大事なものが奪われれば、当然のように叫びだす。
「やめでね! まりさのおぼうしさんかえしてねええええ!」
「ほら、ぺーろぺーろしないとおちびちゃんが死んじゃうぞ?」
「ゆ、ゆ、ゆ……ゆぐぐぐぐ!」
歯を食いしばり、目を剥き出しにして、大きなまりさはこちらを睨みつけていた。
しかし、よほど母性があるのか、最終的におちびちゃんをぺーろぺーろすることに戻った。
ちなみに、小さい方は抗議する余裕もないらしい。
もうこの家族には用がないので、ダンボールにあった雨除セットをゴミ袋に入れて、次のダンボールに向かう。
同じようにダンボールにゴミ袋をかぶせたものであったが、両手でダンボールを上に上げて隣に降ろす。
中には、三匹のれいむがいた。
一つは大きくて、残り二つは小さい。
唐突に真冬の空気に晒され、目を点にしている。
「ゆ?」
「ゆん?」
「ゆ……しゃぶいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
そして震え始めた。
それを横目で見ながら、ダンボールを踏みつけて破壊する。
どうやら寒さ耐性がないらしく、おうちを破壊しても震えるだけで文句を言ってこない。
「ゆわぁぁん! おきゃーしゃん、しゃぶいよ!」
「ゆ、ゆ。 お、おちびちゃんたち、おかあさんのぴこぴこさんのところにきてね!」
「ゆぅ……ゆ! あったかいよ!」
「ゆぅ! わさわさはゆっくりできるね!」
「ゆふふふ。 ほぉら、わさわさだよー」
どうやら親れいむはもみ上げの毛が他に比べて豊富らしく、器用なようだ。
自分の饅頭肌と毛で挟み込んで、わさわさと動かして子どもを温めている。
自分はガクガク震えているのに、大してものだ。
私はダンボールを破壊し終えると、親れいむを持ち上げる。
二つのもみ上げを両手で掴んで。
「な、なに!? にんげんさん!?」
ぽてん、ともみあげから小さいのが落ちるが、どうでも良い。
両手でもみ上げをどんどんと引っ張って行く。
ぶちっ
もみ上げの付け根が嫌な音を立て始める。
「いだいよ! やめでね!」
「ゆわああああん! おぎゃーしゃん、わさわさしてえええええ!」
「いだい! れ、れいむのぴこぴこさんにひどいことしないでね!」
やはり強度があるな、と思いながら思い切り引っ張る。
ぶちん!
ちょうど両方同時に、もみ上げがちぎれた。
「ゆぎゃああああああああああ!」
れいむが絶叫を上げながら、地面に落ちる。
そんな親の絶叫に、小さいのは泣き止んだ。
親れいむは叫びがら転がり回っていていて止まらない。
次に小さいの二つからももみ上げを抜き取る。
これは、小さいので簡単にできた。
「ぴぎゃあああああああああああああああ!」
「ゆぎぃいいあああああああ!」
三つ揃って饅頭が転がりまわっている。
やはりというか、お飾りを取っても、反応しないぐらいの痛がりようであった。
後は、忘れないように餌を回収。
さて、そんなことをワンセットに。
同じように、おうちを破壊。
そして三つ編み、もしくは動かせる部位をちぎる。
最後にお飾りを頂く。
「ゆんやああああああああ! れいむの! れいむのゆっくりしたぴこぴこさんがあああああああああ!」
「ゆぎゃあああああああ! みつあみしゃん! みつあみしゃんがああああああああああああああ!
「まりさのおぼうしさんをがえじでえええええええ!」
「れいむのおりぼんは!? ど、どぼじでやぶるのおおおおおおお!? ゆあああああ! もうゆっくりできな
いいいいいいい!」
「――――そこまでよ!」
そんなことをして越冬の妨害をしていると、一匹のありすが現れた。
成体サイズのありすだ。
険しい顔つきで、こちらを睨む眼光は中々、普通のゆっくりにはない気迫である。
「どうしてこんなことするの!?」
「どうしてって……ゆっくりを殺すためだよ……」
「ゆ!? だ、だから! どうしてころそうとするの!? ありすたちなにかわるいことしたの!?」
「あーあー……野良はそうなんだったな……」
ふと視線を少し上げると、ありすの向こうにダンボールがある。
そこがありすの巣らしい。
健気に叫ぶありすを無視してそっちのダンボールに向かう。
「や、やめなさい! とまりなさ――――ゆげえええ!」
体当たりしようとしたありすを、一息に踏みつぶす。
さすがに成体サイズなので、即死はしないようだ。
まぁ、半分ほどに潰れてカスタードぶちまけてるけど。
「ゆ……や、やめて……ありすの……かぞくには、てを……ゆああああああああ! やめでええええ! ありす
たちががんばってつくったおうちがあああああ! やめで! やめで!! ふまないで! ふまないでえええ
え! だんぼーるさんふまないでえええ!」
ありすの吐き出すBGMを聞きながらダンボール破壊を行う。
ありすのおうちの中には、成体サイズのぱちゅりーが一匹と、小さなありすとぱちゅりーが一匹ずつ。
身体が弱いのか、冬の空気に触れてガタガタと震えている。
「な、なにがおこったの……? ありすは……?」
「しゃむいよおおおお!」
「むきゅううう……」
やはり生活習慣というか、共同体で共通知識があったのだろう。
ビニール袋の中に食糧が入っている。
それをゴミ袋の中に入れる。
お飾りと餌をどんどん放り込んで行っているので、だんだん重くなってきた。
「やめでくだざい……おねがいです……ありすたちのごはんをかえじで……」
涙を流して這い蹲るありすからカチューシャを取って、ゴミ袋に入れる。
うーん。 やっぱり、ゆっくりが必死に集めた御飯を奪い取るのはゆっくりできるね。
無力を噛みしめて命の糧を奪われるゆっくりの涙はたまらない。
「ゆっくぅ……どぼじで……どぼじで……それがないと……しんじゃうよぉ……こどもが……ぱちゅが……」
ありすは、もう、抵抗せずに嗚咽を漏らすだけだった。
ぱちゅりーや子どもたちからも飾りを奪い取る。
「むきゅう……ぱ、ぱちゅのおかざりを……むきゅ……」
「しゃむいよぉ……」
「……」
親の方でも小さく抗議するだけで、子ありすは寒さに震えて命ほど大事なお飾りを奪われたことに気付いてい
ない。
子ぱちゅりーは無言で震えているだけで、もうどうしようもなさそうだ。
この二匹からは、もみあげや三つ編みを取らない。 ありすは取るところがないし、ぱちゅりーは死ぬ可能性
があるから。
こんな調子でおうち破壊と三つ編み(ぴこぴこ)狩り、お帽子没収を行っていく。
目に付く限りの全てに作業を終えると、不思議なことが起こっていた。
なんと、生き残りのゆっくりたち(一つも殺していないのだが)が一箇所に固まっているのだ。
おうちがなくなったゆっくりたちは、ただみんなで身体を寄せ合ってガクガクと震えている。
飾りがないのに、お互いを認識しているらしい。
それとも、飾りが全員ないため、同じ境遇として慰め合っているのだろうか。
「どぼじで」
一団の中で、半分死にかけているありすがこちらに話しかけてくる。
だが、他のゆっくりも視線で同じことを問いかけていた。
「どぼじで、こんなごとするの……? おうちさんがなければ、えっとうできないのよ? ごはんさんがないと、
うえじにしちゃうんだよ?」
「そうだな。 三つ編みとかもみあげも壊したから、もうダンボール組み立てられないね。 飾りがないから他
の群れに助けてもらうこともできないね。 山にも帰れないね」
「しぬよ……ありすたち、このままじゃしんじゃうでしょおお!!」
「そうだね。 寒さに震えながら飢え死にで、苦しんで死ぬね」
「……どぼじで……どぼじでこんなごとずるの……?」
「ここで潰すと私が片付けなければいけないからなぁ。 こうやって越冬に失敗して勝手に死んだやつはお役所
の仕事。 大違いなんだな」
「あ、ありすたちだって! ありすたちだっていきてるんだよおおお!? ひっしに、ひっしにいきてるんだよ
おおお!?」
「そうだな。 ちゃんと御飯も自分で取ってるし、越冬もしてるし、がんばってるな」
「ならなんで!?」
「そうなんだよなー。 野良はその辺勘違いしてるんだよなー」
毎年のことだが、同じような主張をしてくるのだ。
どうも野良は人間の事情がよく分かってないらしい。
「うんとね……簡単に言うとね、野良ゆっくりは生きてるだけで人間の邪魔なんだ」
「……ゆ?」
「どうして、どうして、ってさっきから言ってるけど、野良ゆっくりを殺す理由なんてないんだよ。 強いて言
うなら、邪魔だから」
「な、に、いってるの?」
「たとえばそうだな。 ほら、お前たち公園から出るだろ? 車に轢かれたとするだろ? 道路が汚れるだろ?
掃除が面倒だろ? ほら邪魔だ!」
「え? え? え?」
「分かんないかなぁ……君たちが生きてるから殺すの。 君たちが生きていない状態が、人間にとって一番ゆっ
くりできる状態なの。 分かる?」
「ゆぅ?」
「分かんないよなぁ。 道端に空き缶が捨ててあって、しかもゴミ箱が近くにあればゴミ箱に入れるだろ? こ
の公園はたまたまゴミ箱がないから、ゴミを見てみぬフリしてるの。 って言っても分かんないよなぁ……」
空き缶より始末に負えないから困るんだけど。
案の定ろいうか、ゆっくりたちは固まって首を傾げている。
そりゃ、分かんないだろうし、分かりたくもないだろうさ。
人間も、人間より上位の存在からそんなこと言われたら理不尽だと思うだろうしね。
ただ、人間であればきちんと善悪を考えて、お互いに最良の手段を探ることができなくもないと思うが。
「じゃあ、もっと簡単に教えてあげるよ! ほら、周りを見てごらん!」
「ゆぅ?」
寒さに震えながら、ゆっくりたちは公園を見回す。
「ここは誰のゆっくりぷれいすかな?」
「そ、そんなの……ありすたちのゆっくりぷれいすに決まってるでしょ」
「なんで?」
「な、なんでって……ずっとすんでるし……」
「人間だちは出て行けって言いに来たよね? てか、そこの看板に書いてあるし」
「ゆ? で、でも。 ありすたちのゆっくりぷれいすだっていったら、わかってくれたわ」
「いや、分かってないよ。 じゃあもう一度言うね。 ここは人間のゆっくりぷれいすなの。 分かる?」
「はぁあああああああああああああああ!? なにいってるのおおおおおおおおおおおおおおお!?」
今まで震えて縮こまていたゆっくりたちが、一斉に怒号を上げる。
「ここは、ずっと、ずっと、ずーっとむかしからゆっくりがすんでるんだよおおおお!? きちんとおうちせん
げんしたんだよ!?」
「にんげんさんたちは、ここにぜんぜんこないでしょ!?」
「いや、一年ごとに同じことしてるから、ずっと昔ってことはないんだけどね」
ゆっくりたちの言い分に肩を竦めながら私は呟く。
いくら駆除しても春になると、まぁたやって来てここを住処にするのだ。
つまり、結局ほぼ一年中ゆっくりがいる。 私がこんなことをしているのも皆知らないだろう。 私がこうや
って減らさなきゃ、ゆっくりが増えまくって街にも被害が出るはずだ。 周辺の住民は『特に被害もないし面倒
だからいいか』くらいにしか、現時点では思っていないだろう。 けれどゆっくりは、増えれば絶対に人間の迷
惑になる。 ゆっくりが何を食べているか、を考えるだけでも明らかだ。
まぁしかし、言っても無駄だろう。
私は肩を竦めて、公園から去ることにした。
「まっで! まっでぇ! ごはんをかえじでえええええ!」
「おぼうしさんをかえじで! かえじで! これじゃゆっくりできないいいいい!」
「おうちさんをなおしてよおおおおおおおお! さむいよ! しんじゃうよ! ゆぴいいいいい! さむいいい
い!」
「ひっしに……ひっしに! あつめたのにいいいい! がんばってつくったおうちもつくったのにいいいい!」
「ひどいよ! ひどいよぉおおお! ひどすぎるよおおおお!」
後ろでは、御飯を返せなどと叫び声が聞こえるが、どうでも良い。
潰すと私が片付けなくてはいけないのだ。
だから、ゆっくり越冬失敗してね。
四.
秋の公園は、ゆっくりたちにとって天国であった。
いくらかの食べ物も生えてくるし、気候も安定してゆっくりし放題。
越冬用の食糧も、皆で手分けすれば圧倒いう間に集まる。
そのゆっくりっぷりを妬んだのか、出て行けと言ってくる人間たちがたくさん来ていた。
しかし、理路整然とゆっくりたちが所有者の権限を訴えると、何もせずに帰っていった。
つまり、自分たちの言い分が正しかったのだとゆっくりたちは誇る。
実際は、ゴミ箱が近くにないから潰せないだけだ。
そして、その公園は現在、地獄と化している。
「おちびちゃんはゆっくりたべられてね!」
「ゆぴゃああああああ! おきゃーしゃんやめちぇえええええええええ!」
物を食べれば温かくなる。
ゆっくりは寒さを凌ぐために共食いを始めた。
越冬用の食糧はもうないし、おうちもない。 お飾りがないことで外に出ることもできない。 もう、同族
を食べることでしか生き延びることができない状況にあったのだ。
そんな状況になれば、ゴミ箱の中の親子と同じだ。
そこには家族や仲間の絆などない。
「ゆっくりなきやんでね……」
「ゆんやあああああああああ! わさわさしてよおきゃーしゃん!」
「ゆぅ……おかーさんはもう、わさわさできないんだよ……」
まだ正気なある親子は、震えながら必死に生きようとしていた。
しかし、もう生きる楽しみも何もない。
おちびちゃんは温める”わさわさ”は、もう、二度とできない。
その親子は、仲良く固まって空腹から来る寒さで凍死した。
「んほおおおおおおお! ぱちゅりーのまむまむはさいっこうだわああああああああ!」
「どうして……あり……す……」
犯し、食らい、暴れる。
三つ編みももみ上げもないため、ダンボールを組み立てるのが難しい。 協力して何とかおうちを作っても、
今度はおうちの奪い合いだ。
「ごはん……ごはん……どぼじでえええ……あんなにがんばってあつめだのに……あんなにゆっくりしてたのに
……もっと……もっと、ゆっくり、したかった……」
こうして、公園のゆっくりは死んでいった。
誰かが市役所に連絡をして、死体は撤去された。
その公園を見て、ここがゆっくりのゆっくりぷれいすだと思う者は皆無に違いない。
あとがき
でいぶばっかりの中でのコーヒーブレイクでした。
特に凝った部分のないシンプルな作品ですが、三つ編みとぴこぴこさんにこだわってみました。
自分はフェチあき(仮)という名前で営業しております。
名前を提案してくださった方……ごべんねえええええええ!
今まで書いたもの
anko1424 しっかり舌を肥やしていってね!
anko1414 ドスの数え方
anko1330 まりさのおりぼんさん
anko1329 だんまつま
・少々独自設定があります
・善良だろうがなんだろうが、ゆっくりは死にます
・理不尽です
*********
(野良 + 越冬) * (三つ編み狩り + おうち破壊 + お飾り没収)=?
一.
冬。
頃合いとはしては、一月の下旬である。 ようやく正月気分が抜けて、いつのも一年が始まったと実感するぐ
らいだろうか。
相変わらずの寒さは絶好調で、外に出るときは分厚いジャケットが手放せない。
そんな冬の真っ只中のある休日に、私は毎年恒例の暇潰しを実行することにした。
「とりあえず、絶対にいるのはゴミ袋と軍手ぐらいだったかな」
ゴミ袋と軍手、更に色々な道具を準備してリュックに入れる。
後はしっかりと防寒対策をして、それから家を出た。
「おお寒い寒い」
やはり、というか、いくら着込んでも寒い。
生来の寒がり気質のせいというわけでもなく、冬は残念ながら当たり前のように寒いのである。
頬を一つ叩いて気合を入れ、目的の公園へと歩き出す。
今年もきっと、素敵な暇潰しとなるだろう。
二.
野良ゆっくりの冬はとにかく厳しい。
この辺りはあまり都会ではないが、山が近いためにいくらかのゆっくりが街の方へと降りてきている。
果たして何が目的でやってきているのかは知れないが、街にもゆっくりはいるのだ。
「ゆー……おちびちゃん、そんなにおかあさんのかみのけをひっぱっちゃだめだよー」
「ゆふぅ! でもたのしーんだじぇ! おかーしゃんのかみのけ、ふわふわできもちいいんだじぇ」
「ありがとうねおちびちゃん」
すりすり、と二匹のゆっくりが身体を擦り合わせて幸せそうに微笑んでいる。
二匹がいるのは、ダンボールの中だ。 それほどの広さではないが、地面には古い新聞紙が敷かれており、ダ
ンボールそのものには何枚か重ねたゴミ袋が被せてある。 その上には、ゴミ袋が飛ばないように重りの石が。
中々立派なゆっくりの家で、越冬生活も快適なようだ。
見れば、ダンボールの隅には、こんもりと膨らんだビニール袋がある。 全て越冬用の食糧であるが、二匹が
冬を越すには十分な量だろう。
「ゆー。 おしょとであそべにゃいのはつまらにゃいけど……ずっとおかーしゃんがいてくれるからしあわせな
んだじぇ!」
「おちびちゃん……いつもひとりにしてごめんね……」
二匹の内訳は、成体まりさが一匹と子まりさが一匹。
どちらも野良らしくボロボロの格好である。 しあわせーと言ってすりすりしている饅頭肌は薄汚れているし、
髪の毛もパサパサで金髪はくすんでいる。 大事な大事なお帽子も、とんがりはくたびれ、つばは切れ込みが入
ってボロボロ。 白かったはずのリボンも灰色に変色している。
そんな薄汚れた野良であっても、二匹は幸せであった。
***
二匹は、元々はきちんとした一家だった。
親まりさに親れいむ、そして子まりさを含む子どもが三匹。
野良にしては子どもが多く、狩りもラクではなかった。
しかし、日々は充実していた。 一家は山のゆっくりぷれいすから街へと引越しをしてきたグループである。
いくつかの家族が集まった小さな集落で暮らしていたが、とあるありす一家が街へと引っ越すというのでそれ
に付き添ってきた。
何でも街は”とかいは”で、今のゆっくりぷれいすよりもとてもゆっくりできるらしい、というのを間に受け
たからだ。
実際に街の暮らしはそこそこ快適であった。
街に入ってすぐのところに人間がほとんど近づかない公園があり、そこを住処とするゆっくりのグループと出
会えたのが幸運だったのだ。
ここのゆっくりたちはかなり善良なゆっくりたちで、そこそこ頭も良かった。
餌場となる人間のゴミ捨て場で、ゴミ袋を破いて漁ったりはしない。 大勢のゆっくり同士が協力して、ゴミ
袋を丸ごと運搬していたのだ。 そしてゴミ袋から食べられるものを取り出してみんなで分ける。 そんな生活
をしていた。
また、ダンボールをゆっくり同士が協力して組み立て、家にもしていた。 食べられないゴミを工夫して雨除
を作ったりなどもしている。
人間もまた、そうやって慎ましく暮らすゆっくりをあえて潰そうとはしなかった。 それはかなり甘い解釈の
仕方で、実際には、ゆっくりに関する法律にある投棄関係の項目のせいで、面倒臭がって潰さないだけというの
が正確であったが。
そういった背景もあって、まりさ一家は快適に公園での暮らしを送っていた。
母れいむと子ゆっくり二匹が死んだのは、人間に捕まったせいであった。
育児の一環として、公園の外を散歩している最中であった。
「ゆゆーん。 きょうもいいてんきだね、おちびちゃん!」
「ゆん! とってもゆっくりできるよぉー」
「きょうのごはんしゃんたのしみだにぇー」
母れいむと子ゆっくりたちは道路をずりずりと進んでいる。
ぽかぽかと暖かい陽気であったので、特に急がず、とてもゆっくりと散歩を楽しんでいた。
父まりさと子まりさは、狩りに出かけている。 ゴミ袋の運搬には人手があってもあっても足りない状態なの
で、大忙しなのだ。
そんな働き者の家族をみんなは尊敬していたし、とてもゆっくりできると感謝もしていた。
「ほんとに、ありすおねーさんについてきてよかったね!」
「ゆん? ありすおねーしゃんだいすきだよ!」
「おねーしゃんとってもゆっくりできるよね!」
「ゆ! こんどありすおねーしゃんのところにあしょびにいきたい!」
「そうだね! それはとってもゆっくりできるね! きょうはおさんぽでゆっくりして、あしたはありすおねー
さんとゆっくりしようね!」
「ゆゆん! ゆっくり!」
三匹はとても幸福であった。
ゆっくりできる家族。 ゆっくりできるお姉さん。 ゆっくりできるおうち。
何もかもゆっくりできるもので、明日がとても楽しみであった。
「あん? ゆっくりじゃねぇか」
三匹がゆっくりと散歩している最中に、一人の人間が現れた。
ゆっくりたちは人間を見つけると、笑顔になって飛び跳ねた。
「ゆっくりしていってね!」
「こんなとこに何でゆっくりがいるんだか」
公園のゆっくりたちにとって、人間は怖いものではなかった。
特に虐めてくることもないし、本当にたまーに、ごはんをくれたりもする。
だから元気良く挨拶したのだ。
「あ、ゆっくり専用ゴミ箱がちょうどあるじゃん」
人間はそんなことを言って、ゴミ箱に備え付けてあるスコップを手にとった。
それから、ゆっくりしていってね、と飛び跳ねるゆっくりをスコップで上に載せる。 ちょうど三匹をいっぺ
んに取ることができた。
「ゆ?」
ゆっくりたちが、首を傾げた瞬間だっただろうか。
ゴトンとゆっくりたちをゴミ箱の中に入れた。
ゆっくり専用ゴミ箱といっても、単なる防音のできる普通のプラスチックゴミ箱である。
決してゆっくりが体当たりしても倒れず、登ることもできないという特徴はあるが。
人間はしっかりと蓋を閉めて、スコップを戻す。
「――――!」
何かが中から体当たりしているような音が聞こえただ、人間にはもう関心がない。
良いことをした、と思いながら再び歩き出した。
ゆっくりしたれいむの親子は、結局共食いの果てにこの世の全てを恨みながら死んで行った。
***
いつまで経っても帰ってこない母れいむと子どもたちは、もうきっとこの世にいないのだろうと、親まりさは
三日ほどで気付いた。
子まりさは泣いて暴れたが、一週間もすれば元の状態に戻った。
一家は二人だけになって、それでも日常は続いていった。 おうちを守るために、子まりさは家に残るように
なった。 けれども、食い扶持も減ったので幾分か生活はラクになっていった。
そして越冬を始めて、今に至る。
子まりさの心の傷も癒えて、越冬中だというのにそこそこゆっくりした生活を送れている。
食糧も十分にあるし、防寒も徹底している。
まりさは愛しい子まりさと身を寄せ合って、とてもゆっくりしていた。
すると、おうちが無くなった。
三.
近くの公園はゆっくりの溜まり場になっている。
原因は、ゴミの管理の甘いアパートが近くにあることと、ゆっくりが鬱陶しくて人間が寄り付かないというと
ころだろうか。
更に大きな要因としては、ゆっくり専用ゴミ箱がないためだと考えられる。 ゆっくりは専用ゴミ箱に捨てる
ことが義務付けられているため、公園でゆっくりを潰すのが面倒なのだ。 また、公園のゆっくりが”比較的”
人間に迷惑をかけないものだというのもあるかもしれない。 しかし、善良だろうがゲスだろうが、人間にはあ
まり興味がないはずだ。 野良のゆっくりを見つけたら捨てるというのが常識なのだから。
そういうわけで、件の公園はゆっくりを狩るにはとても良い穴場なのだ。
早速公園に行ってみると、うわぁ、となる。
ゴミ袋を被せたダンボールがあるわあるわ。
これが全て越冬をしているというのだから、気持ち悪いものである。
「じゃ、さっさとやるか」
私は適当に、入り口の近くにあったダンボールを蹴り飛ばす。
「ゆゆ?」
「ゆ?」
中にいたのは、大きなまりさが一つと小さなまりさが一つ。 計二つ。
急に天井と壁が無くなって、きょとんとした顔をしている。
それから、少しの間の後に震えて叫び始めた。
「ど、どぼじでおうぢざんがなぐなっだのおおおおおおおおおお!?」
「しゃむいいいいい! しゃむいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
それを無視して、蹴り飛ばしたダンボールの方に行き、ダンボールを足で踏みつぶす。
バン、バン、と二度と組み立てられないように。
その音に気付いたのか、大きなまりさがこっちを見た。
「ゆぎゃあああ! な、なにしてのおおおおおお!? まりさのおうちをこわさないでねえええええええ!?」
勘が良いのか、すぐに自分のおうちということに気付いたようだ。
といっても、もうダンボールはペシャンコになっているし、崩壊済みである。
今度はこちらから歩み寄って、新聞紙の上に載っている二つの饅頭を見る。
「どぼじでこんなごとずるのおおお!? ぷくううううううううううう!」
大きいまりさが頬を膨らませて大きくなった。
ゆっくりの威嚇らしいが、全く何もならない。
私は新聞紙の上にあるビニール袋に目を付けた。
おそらく、これが越冬用の餌なのだろう。
私は軍手をして、そのビニール袋を取り上げた。
「や、やめでよねえええええ! それはえっとうようのたべものさんなんだよおおおおおおお!?」
「お、おきゃーさん……しゃぶいよう……」
ガクガクと震える小さいまりさには構わず、大きな方が私の方に体当たりを仕掛けてくる。
その形相は必死といったものだ。
それもそうだろう。 この越冬用の食糧がなければ、生き延びれる可能性はゼロだ。 もっとも、おうちがな
くなった時点でゼロだろうが。
「がえぜ――――ゆべえええええ!!」
爪先で蹴って吹き飛ばす。
ぼてんぼてん、と餡子をまき散らしながら転がるまりさから視線を外して、ビニール袋をゴミ袋に入れる。
これでこの一家の食糧はゼロ。 越冬成功率もゼロである。
「しゃぶいいいい……ゆぎゃああああ! いぢゃいいいい! やべでえええええええ! みつあみしゃんがいぢ
ゃい!」
次に小さいまりさの三つ編みを掴んで持ち上げる。
まりさ種の三つ編みは、なぜか動くのだ。 パワーそのものはないが、ダンボールを組み立てるのにも活躍す
るのだろう。 他にも水に浮かんだときには口と三つ編みを使ってオールを使ったりもするし、まりさ種にとっ
て、なくてはならない重要な部位なのである。
ぶちんっ!
もちろん、私にとっては重要ではないが。
私は三つ編みを根元からちぎって、三つ編みもゆっくりも地面に落とす。
落下のショックで小さいまりさは口から餡子を吐き出した。
「ゆべぇ! み、みつあみしゃん……まりしゃのみつあみしゃん……どぼじで!? どぼじでうごきゃないのお
おおお!? ゆ、ゆ、ゆううううううううう!? ど、どぼじで、どぼじでまりしゃのみつあみしゃんがめのま
えにあるにょおおおおおおおおおおお!?」
無残にもちぎられて捨てられた三つ編みを目の前に、小さいまりさは絶叫しながら餡子を吐き出した。
それからぺーろぺーろ、と泣きながら三つ編みを舐め始めた。
「ゆぅ……ぺーろぺーろ……おねぎゃい……みつあみしゃん、もとにもどっちぇね……ぺーろぺーろ」
もちろん、戻るわけはない。
三つ編みはかなり繊細な部位らしく、一度でも無くなると生えてこないそうだ。
そもそもゆっくりの髪は身体の大きさによって分量が決まっているようで、切った髪は伸びてこない。
「がえぜぇ……まりさたちの……ごはんをがえぜえええええ!」
餡子を吐きながら、ボロボロの身体を引きずって大きなまりさが帰ってきた。
体当たりというのも命がけな状態らしく、あっさりと捕まえることができる。
掴むのは、同じく三つ編みである。
「ゆぐう! さわらないでね! きたないてでまりさのみつあみさんにさわらないでね! あとさっさとごはん
さんをかえしてね! それがないとえっとうできないんだよ!? わかる!?」
じたばたと暴れる饅頭。
しかも前の傷があるから、ぼたぼたと地面に餡子がこぼれている。
相手をするのも面倒なので、小さいのと同じように三つ編みを根元から引きちぎる。
ぶちっ
「ゆ!? な、なにしてるの!? やめてね!? まりさのみつあみさんになにしてるの!?」
中々強度があるようで、小さいのと同じようにはいかない。
しっかり本体を手で抑えて、思いっきり三つ編みを引っ張る。
「いだい! いたいよ! やめてね! やめてね! ゆっくりしないでやめてね! ゆぐううううう!」
ぶちっ
ぶちっ
「やめでええええ! みつあみさんだいじなのおおお!」
ぶちんっ!
「ゆぎゃあああああああ! まりさのみあつみさんがああああああああああ!」
ちぎった後の行動は小さいのと同じであった。
「ぺーろぺーろ……ゆぐっ……まりさの……ゆっくりしたみつあみさんが……ゆぐぅう……」
三つ編みの残骸を必死にぺーろぺーろとしている。
そんな哀れな姿があまりにも可哀想なので、私は声をかけてやった。
「まりさ。 ぺーろぺーろしても三つ編みはもう戻らないよ?」
「うるざいいい! もどるよ! またうごかせるようになるよ!」
「ほんちょ……? みつあみしゃん、もどってくるにょのぉ……?」
「お、おちびちゃん!? ゆわああああ! おちびちゃんどぼじたの!?」
ようやく、おちびちゃんが大怪我をしていることに気付いたらしい。
三つ編みを放り出して、ぺろぺろと小さいのを舐め始めた。
しかし、こんな真冬の中で、しかも吐餡までした小さいゆっくりが助かるわけはないだろう。
今すぐどうということはないだろうが、明日には死んでいるに違いない。
「じゃ、お飾りちょうだいね」
「ゆ!?」
まりさ二匹から帽子を取ってゴミ袋に入れる。
お飾りはゆっくりにとって、無くてはならないもの。 これがなければゆっくりできないし、ゆっくり同士を
認識することができない。
もはやゆっくりの命が具現化したものと言っても良いかもしれない。
そんな大事なものが奪われれば、当然のように叫びだす。
「やめでね! まりさのおぼうしさんかえしてねええええ!」
「ほら、ぺーろぺーろしないとおちびちゃんが死んじゃうぞ?」
「ゆ、ゆ、ゆ……ゆぐぐぐぐ!」
歯を食いしばり、目を剥き出しにして、大きなまりさはこちらを睨みつけていた。
しかし、よほど母性があるのか、最終的におちびちゃんをぺーろぺーろすることに戻った。
ちなみに、小さい方は抗議する余裕もないらしい。
もうこの家族には用がないので、ダンボールにあった雨除セットをゴミ袋に入れて、次のダンボールに向かう。
同じようにダンボールにゴミ袋をかぶせたものであったが、両手でダンボールを上に上げて隣に降ろす。
中には、三匹のれいむがいた。
一つは大きくて、残り二つは小さい。
唐突に真冬の空気に晒され、目を点にしている。
「ゆ?」
「ゆん?」
「ゆ……しゃぶいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
そして震え始めた。
それを横目で見ながら、ダンボールを踏みつけて破壊する。
どうやら寒さ耐性がないらしく、おうちを破壊しても震えるだけで文句を言ってこない。
「ゆわぁぁん! おきゃーしゃん、しゃぶいよ!」
「ゆ、ゆ。 お、おちびちゃんたち、おかあさんのぴこぴこさんのところにきてね!」
「ゆぅ……ゆ! あったかいよ!」
「ゆぅ! わさわさはゆっくりできるね!」
「ゆふふふ。 ほぉら、わさわさだよー」
どうやら親れいむはもみ上げの毛が他に比べて豊富らしく、器用なようだ。
自分の饅頭肌と毛で挟み込んで、わさわさと動かして子どもを温めている。
自分はガクガク震えているのに、大してものだ。
私はダンボールを破壊し終えると、親れいむを持ち上げる。
二つのもみ上げを両手で掴んで。
「な、なに!? にんげんさん!?」
ぽてん、ともみあげから小さいのが落ちるが、どうでも良い。
両手でもみ上げをどんどんと引っ張って行く。
ぶちっ
もみ上げの付け根が嫌な音を立て始める。
「いだいよ! やめでね!」
「ゆわああああん! おぎゃーしゃん、わさわさしてえええええ!」
「いだい! れ、れいむのぴこぴこさんにひどいことしないでね!」
やはり強度があるな、と思いながら思い切り引っ張る。
ぶちん!
ちょうど両方同時に、もみ上げがちぎれた。
「ゆぎゃああああああああああ!」
れいむが絶叫を上げながら、地面に落ちる。
そんな親の絶叫に、小さいのは泣き止んだ。
親れいむは叫びがら転がり回っていていて止まらない。
次に小さいの二つからももみ上げを抜き取る。
これは、小さいので簡単にできた。
「ぴぎゃあああああああああああああああ!」
「ゆぎぃいいあああああああ!」
三つ揃って饅頭が転がりまわっている。
やはりというか、お飾りを取っても、反応しないぐらいの痛がりようであった。
後は、忘れないように餌を回収。
さて、そんなことをワンセットに。
同じように、おうちを破壊。
そして三つ編み、もしくは動かせる部位をちぎる。
最後にお飾りを頂く。
「ゆんやああああああああ! れいむの! れいむのゆっくりしたぴこぴこさんがあああああああああ!」
「ゆぎゃあああああああ! みつあみしゃん! みつあみしゃんがああああああああああああああ!
「まりさのおぼうしさんをがえじでえええええええ!」
「れいむのおりぼんは!? ど、どぼじでやぶるのおおおおおおお!? ゆあああああ! もうゆっくりできな
いいいいいいい!」
「――――そこまでよ!」
そんなことをして越冬の妨害をしていると、一匹のありすが現れた。
成体サイズのありすだ。
険しい顔つきで、こちらを睨む眼光は中々、普通のゆっくりにはない気迫である。
「どうしてこんなことするの!?」
「どうしてって……ゆっくりを殺すためだよ……」
「ゆ!? だ、だから! どうしてころそうとするの!? ありすたちなにかわるいことしたの!?」
「あーあー……野良はそうなんだったな……」
ふと視線を少し上げると、ありすの向こうにダンボールがある。
そこがありすの巣らしい。
健気に叫ぶありすを無視してそっちのダンボールに向かう。
「や、やめなさい! とまりなさ――――ゆげえええ!」
体当たりしようとしたありすを、一息に踏みつぶす。
さすがに成体サイズなので、即死はしないようだ。
まぁ、半分ほどに潰れてカスタードぶちまけてるけど。
「ゆ……や、やめて……ありすの……かぞくには、てを……ゆああああああああ! やめでええええ! ありす
たちががんばってつくったおうちがあああああ! やめで! やめで!! ふまないで! ふまないでえええ
え! だんぼーるさんふまないでえええ!」
ありすの吐き出すBGMを聞きながらダンボール破壊を行う。
ありすのおうちの中には、成体サイズのぱちゅりーが一匹と、小さなありすとぱちゅりーが一匹ずつ。
身体が弱いのか、冬の空気に触れてガタガタと震えている。
「な、なにがおこったの……? ありすは……?」
「しゃむいよおおおお!」
「むきゅううう……」
やはり生活習慣というか、共同体で共通知識があったのだろう。
ビニール袋の中に食糧が入っている。
それをゴミ袋の中に入れる。
お飾りと餌をどんどん放り込んで行っているので、だんだん重くなってきた。
「やめでくだざい……おねがいです……ありすたちのごはんをかえじで……」
涙を流して這い蹲るありすからカチューシャを取って、ゴミ袋に入れる。
うーん。 やっぱり、ゆっくりが必死に集めた御飯を奪い取るのはゆっくりできるね。
無力を噛みしめて命の糧を奪われるゆっくりの涙はたまらない。
「ゆっくぅ……どぼじで……どぼじで……それがないと……しんじゃうよぉ……こどもが……ぱちゅが……」
ありすは、もう、抵抗せずに嗚咽を漏らすだけだった。
ぱちゅりーや子どもたちからも飾りを奪い取る。
「むきゅう……ぱ、ぱちゅのおかざりを……むきゅ……」
「しゃむいよぉ……」
「……」
親の方でも小さく抗議するだけで、子ありすは寒さに震えて命ほど大事なお飾りを奪われたことに気付いてい
ない。
子ぱちゅりーは無言で震えているだけで、もうどうしようもなさそうだ。
この二匹からは、もみあげや三つ編みを取らない。 ありすは取るところがないし、ぱちゅりーは死ぬ可能性
があるから。
こんな調子でおうち破壊と三つ編み(ぴこぴこ)狩り、お帽子没収を行っていく。
目に付く限りの全てに作業を終えると、不思議なことが起こっていた。
なんと、生き残りのゆっくりたち(一つも殺していないのだが)が一箇所に固まっているのだ。
おうちがなくなったゆっくりたちは、ただみんなで身体を寄せ合ってガクガクと震えている。
飾りがないのに、お互いを認識しているらしい。
それとも、飾りが全員ないため、同じ境遇として慰め合っているのだろうか。
「どぼじで」
一団の中で、半分死にかけているありすがこちらに話しかけてくる。
だが、他のゆっくりも視線で同じことを問いかけていた。
「どぼじで、こんなごとするの……? おうちさんがなければ、えっとうできないのよ? ごはんさんがないと、
うえじにしちゃうんだよ?」
「そうだな。 三つ編みとかもみあげも壊したから、もうダンボール組み立てられないね。 飾りがないから他
の群れに助けてもらうこともできないね。 山にも帰れないね」
「しぬよ……ありすたち、このままじゃしんじゃうでしょおお!!」
「そうだね。 寒さに震えながら飢え死にで、苦しんで死ぬね」
「……どぼじで……どぼじでこんなごとずるの……?」
「ここで潰すと私が片付けなければいけないからなぁ。 こうやって越冬に失敗して勝手に死んだやつはお役所
の仕事。 大違いなんだな」
「あ、ありすたちだって! ありすたちだっていきてるんだよおおお!? ひっしに、ひっしにいきてるんだよ
おおお!?」
「そうだな。 ちゃんと御飯も自分で取ってるし、越冬もしてるし、がんばってるな」
「ならなんで!?」
「そうなんだよなー。 野良はその辺勘違いしてるんだよなー」
毎年のことだが、同じような主張をしてくるのだ。
どうも野良は人間の事情がよく分かってないらしい。
「うんとね……簡単に言うとね、野良ゆっくりは生きてるだけで人間の邪魔なんだ」
「……ゆ?」
「どうして、どうして、ってさっきから言ってるけど、野良ゆっくりを殺す理由なんてないんだよ。 強いて言
うなら、邪魔だから」
「な、に、いってるの?」
「たとえばそうだな。 ほら、お前たち公園から出るだろ? 車に轢かれたとするだろ? 道路が汚れるだろ?
掃除が面倒だろ? ほら邪魔だ!」
「え? え? え?」
「分かんないかなぁ……君たちが生きてるから殺すの。 君たちが生きていない状態が、人間にとって一番ゆっ
くりできる状態なの。 分かる?」
「ゆぅ?」
「分かんないよなぁ。 道端に空き缶が捨ててあって、しかもゴミ箱が近くにあればゴミ箱に入れるだろ? こ
の公園はたまたまゴミ箱がないから、ゴミを見てみぬフリしてるの。 って言っても分かんないよなぁ……」
空き缶より始末に負えないから困るんだけど。
案の定ろいうか、ゆっくりたちは固まって首を傾げている。
そりゃ、分かんないだろうし、分かりたくもないだろうさ。
人間も、人間より上位の存在からそんなこと言われたら理不尽だと思うだろうしね。
ただ、人間であればきちんと善悪を考えて、お互いに最良の手段を探ることができなくもないと思うが。
「じゃあ、もっと簡単に教えてあげるよ! ほら、周りを見てごらん!」
「ゆぅ?」
寒さに震えながら、ゆっくりたちは公園を見回す。
「ここは誰のゆっくりぷれいすかな?」
「そ、そんなの……ありすたちのゆっくりぷれいすに決まってるでしょ」
「なんで?」
「な、なんでって……ずっとすんでるし……」
「人間だちは出て行けって言いに来たよね? てか、そこの看板に書いてあるし」
「ゆ? で、でも。 ありすたちのゆっくりぷれいすだっていったら、わかってくれたわ」
「いや、分かってないよ。 じゃあもう一度言うね。 ここは人間のゆっくりぷれいすなの。 分かる?」
「はぁあああああああああああああああ!? なにいってるのおおおおおおおおおおおおおおお!?」
今まで震えて縮こまていたゆっくりたちが、一斉に怒号を上げる。
「ここは、ずっと、ずっと、ずーっとむかしからゆっくりがすんでるんだよおおおお!? きちんとおうちせん
げんしたんだよ!?」
「にんげんさんたちは、ここにぜんぜんこないでしょ!?」
「いや、一年ごとに同じことしてるから、ずっと昔ってことはないんだけどね」
ゆっくりたちの言い分に肩を竦めながら私は呟く。
いくら駆除しても春になると、まぁたやって来てここを住処にするのだ。
つまり、結局ほぼ一年中ゆっくりがいる。 私がこんなことをしているのも皆知らないだろう。 私がこうや
って減らさなきゃ、ゆっくりが増えまくって街にも被害が出るはずだ。 周辺の住民は『特に被害もないし面倒
だからいいか』くらいにしか、現時点では思っていないだろう。 けれどゆっくりは、増えれば絶対に人間の迷
惑になる。 ゆっくりが何を食べているか、を考えるだけでも明らかだ。
まぁしかし、言っても無駄だろう。
私は肩を竦めて、公園から去ることにした。
「まっで! まっでぇ! ごはんをかえじでえええええ!」
「おぼうしさんをかえじで! かえじで! これじゃゆっくりできないいいいい!」
「おうちさんをなおしてよおおおおおおおお! さむいよ! しんじゃうよ! ゆぴいいいいい! さむいいい
い!」
「ひっしに……ひっしに! あつめたのにいいいい! がんばってつくったおうちもつくったのにいいいい!」
「ひどいよ! ひどいよぉおおお! ひどすぎるよおおおお!」
後ろでは、御飯を返せなどと叫び声が聞こえるが、どうでも良い。
潰すと私が片付けなくてはいけないのだ。
だから、ゆっくり越冬失敗してね。
四.
秋の公園は、ゆっくりたちにとって天国であった。
いくらかの食べ物も生えてくるし、気候も安定してゆっくりし放題。
越冬用の食糧も、皆で手分けすれば圧倒いう間に集まる。
そのゆっくりっぷりを妬んだのか、出て行けと言ってくる人間たちがたくさん来ていた。
しかし、理路整然とゆっくりたちが所有者の権限を訴えると、何もせずに帰っていった。
つまり、自分たちの言い分が正しかったのだとゆっくりたちは誇る。
実際は、ゴミ箱が近くにないから潰せないだけだ。
そして、その公園は現在、地獄と化している。
「おちびちゃんはゆっくりたべられてね!」
「ゆぴゃああああああ! おきゃーしゃんやめちぇえええええええええ!」
物を食べれば温かくなる。
ゆっくりは寒さを凌ぐために共食いを始めた。
越冬用の食糧はもうないし、おうちもない。 お飾りがないことで外に出ることもできない。 もう、同族
を食べることでしか生き延びることができない状況にあったのだ。
そんな状況になれば、ゴミ箱の中の親子と同じだ。
そこには家族や仲間の絆などない。
「ゆっくりなきやんでね……」
「ゆんやあああああああああ! わさわさしてよおきゃーしゃん!」
「ゆぅ……おかーさんはもう、わさわさできないんだよ……」
まだ正気なある親子は、震えながら必死に生きようとしていた。
しかし、もう生きる楽しみも何もない。
おちびちゃんは温める”わさわさ”は、もう、二度とできない。
その親子は、仲良く固まって空腹から来る寒さで凍死した。
「んほおおおおおおお! ぱちゅりーのまむまむはさいっこうだわああああああああ!」
「どうして……あり……す……」
犯し、食らい、暴れる。
三つ編みももみ上げもないため、ダンボールを組み立てるのが難しい。 協力して何とかおうちを作っても、
今度はおうちの奪い合いだ。
「ごはん……ごはん……どぼじでえええ……あんなにがんばってあつめだのに……あんなにゆっくりしてたのに
……もっと……もっと、ゆっくり、したかった……」
こうして、公園のゆっくりは死んでいった。
誰かが市役所に連絡をして、死体は撤去された。
その公園を見て、ここがゆっくりのゆっくりぷれいすだと思う者は皆無に違いない。
あとがき
でいぶばっかりの中でのコーヒーブレイクでした。
特に凝った部分のないシンプルな作品ですが、三つ編みとぴこぴこさんにこだわってみました。
自分はフェチあき(仮)という名前で営業しております。
名前を提案してくださった方……ごべんねえええええええ!
今まで書いたもの
anko1424 しっかり舌を肥やしていってね!
anko1414 ドスの数え方
anko1330 まりさのおりぼんさん
anko1329 だんまつま