ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1225 森から群れが消えた日(前編)
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『森から群れが消えた日(前編)』
D.O
「れいむたちのおはなしを、ゆっくりきいてね!」
「ゆっくりきいてね!!」×31
「ゆっくりきいてね!!」×31
ここは、とある山のふもとにある、森に囲まれた小さな農村。
季節は夏の半ばということもあり、森が近いとはいえ畑仕事も楽ではない時期だ。
そんな中、突然村中に響き渡るような大声を出されては、注目しない方が難しいというものである。
村人達は農作業中であった手を止め、その、大きな声の聞こえた方向に視線を集めた。
季節は夏の半ばということもあり、森が近いとはいえ畑仕事も楽ではない時期だ。
そんな中、突然村中に響き渡るような大声を出されては、注目しない方が難しいというものである。
村人達は農作業中であった手を止め、その、大きな声の聞こえた方向に視線を集めた。
「ゆっくりしていってね!!」×32
そこには、30匹以上のゆっくりの集団。
山や森の近くにある農村なら、どこでも見られる光景だった。
山や森の近くにある農村なら、どこでも見られる光景だった。
村人達の口から、ため息が漏れる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「みんな!れいむのおはなしを、ゆっくりきいてね!」
その日の朝、山の中、とはいえ比較的人間さんの活動域に近い森で暮らす、
とあるゆっくりの群れで、長を務めているれいむがとてもゆっくりできる提案をしたのが始まりだった。
とあるゆっくりの群れで、長を務めているれいむがとてもゆっくりできる提案をしたのが始まりだった。
「れいむ・・・のおちびちゃんが、おやさいさんがたべたいっていってるんだよ!!」
「むきゅ?おやさいさんって、にんげんさんがひとりじめしてる?」
「そうだよ、その『おやさいさん』だよ!」
「むきゅ?おやさいさんって、にんげんさんがひとりじめしてる?」
「そうだよ、その『おやさいさん』だよ!」
「わかるよー。おやさいさんは、すっごくゆっくりできるってきいたよー。」
「れいむ・・・のおちびちゃんもだよ!だからみんなで、にんげんさんのところにいくんだよ!!」
「それなら、まりさももゆっくりいくのぜ!
おやさいさんをもってかえるなら、たくさんでいったほうがいいのぜ!」
「れいむ・・・のおちびちゃんもだよ!だからみんなで、にんげんさんのところにいくんだよ!!」
「それなら、まりさももゆっくりいくのぜ!
おやさいさんをもってかえるなら、たくさんでいったほうがいいのぜ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」×30
どうせ行くなら、みんなで行こう。
人間さんがお野菜さんをくれても、持って帰れないではゆっくりできない。
そう提案したまりさも含め、この場にいるゆっくり達は、体格のよい働き盛りのゆっくり達だ。
狩りの中心メンバーである以上、群れそのものの中心メンバーと言ってもよい。
そんな訳なので、この集まりでの決定は自然、群れ全体の決定事項となる。
人間さんがお野菜さんをくれても、持って帰れないではゆっくりできない。
そう提案したまりさも含め、この場にいるゆっくり達は、体格のよい働き盛りのゆっくり達だ。
狩りの中心メンバーである以上、群れそのものの中心メンバーと言ってもよい。
そんな訳なので、この集まりでの決定は自然、群れ全体の決定事項となる。
と言うことでこの日、群れのおとな達みんなで人間さんの村に行く事になったのだった。
ちなみに、人間さんはお野菜さんを分けてくれないかもしれない、という考えが浮かぶゆっくりは、
この群れには居なかったようである。
この群れには居なかったようである。
「むきゅきゅ~ん。まりさ、おべんとうさんもじゅんびできたわ。」
「おとーしゃん、ゆっくちいってらっしゃい!」
「ゆーん、おちびちゃん。きょうのばんごはんは、たのしみにしててね~。」
「おとーしゃん、ゆっくちいってらっしゃい!」
「ゆーん、おちびちゃん。きょうのばんごはんは、たのしみにしててね~。」
さすがにおちびちゃん達や、その世話をする母親役までは連れて行かないまでも、
群れ全体の1割に当たる、約30匹のゆっくりが参加した森の外への大遠征だ。
もう少し議論の余地があってもおかしくないところなのだが、そこはゆっくり。
空が晴れ渡っていることで気分も軽くなったのか、不安を見せるゆっくりすらおらず、
遠征準備も鼻歌混じりで、遠足のような雰囲気ですらあった。
群れ全体の1割に当たる、約30匹のゆっくりが参加した森の外への大遠征だ。
もう少し議論の余地があってもおかしくないところなのだが、そこはゆっくり。
空が晴れ渡っていることで気分も軽くなったのか、不安を見せるゆっくりすらおらず、
遠征準備も鼻歌混じりで、遠足のような雰囲気ですらあった。
「おさ!」
「なんなの?まりさ。」
「まりさのおちびちゃん、そだちざかりだから。おやさいさんも、たっくさんほし・・・」
「しんぱいないよ!きっと、むれのおちびちゃんみーんなが、おなかいっぱいたべれるよ!」
「ゆっくりりかいしたのぜ!!」
「なんなの?まりさ。」
「まりさのおちびちゃん、そだちざかりだから。おやさいさんも、たっくさんほし・・・」
「しんぱいないよ!きっと、むれのおちびちゃんみーんなが、おなかいっぱいたべれるよ!」
「ゆっくりりかいしたのぜ!!」
・・・実のところ、群れのゆっくりプレイスは食糧難などとは程遠く、
わざわざ人間さんからお野菜さんをもらう必要など全く無いのである。
わざわざ人間さんからお野菜さんをもらう必要など全く無いのである。
ただ、長れいむが遠征を思いついたきっかけである噂、
森のゆっくりの間に広く知れ渡っている噂として、
人間さんは、お野菜さんというゆっくりした食べ物が生える、
特別なゆっくりプレイスを独占している、という話があった。
何でもそのお野菜さんは、山の恵みより格段に味がよく、
とても、とてもゆっくりできる食べ物らしい。
それは、山で助け合いながら暮らす群れゆっくりからすると、
とてもゆっくりしていない話だった。
森のゆっくりの間に広く知れ渡っている噂として、
人間さんは、お野菜さんというゆっくりした食べ物が生える、
特別なゆっくりプレイスを独占している、という話があった。
何でもそのお野菜さんは、山の恵みより格段に味がよく、
とても、とてもゆっくりできる食べ物らしい。
それは、山で助け合いながら暮らす群れゆっくりからすると、
とてもゆっくりしていない話だった。
みんなでゆっくりするから、ゆっくり出来るのに・・・。
人間さんも、もっとゆっくりしたらいいのに・・・。
れいむだって、お野菜さん、むーしゃむーしゃしたいのに・・・。
人間さんも、もっとゆっくりしたらいいのに・・・。
れいむだって、お野菜さん、むーしゃむーしゃしたいのに・・・。
無論、そんな訳のわからない理由で野菜をねだられる農家のほうは、いい迷惑だったのだが。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
そんな訳で長れいむ一行がたどり着いたのが、冒頭で述べた山のふもとの農村であった。
「おやさいさんを、れいむたちにもちょうだいね!れいむたちもゆっくりしたいよ!」
「ゆっくりちょうだいね!」×31
「ゆっくりちょうだいね!」×31
森の食べ物は森の生き物(ゆっくり)全員の物。
それは、長れいむについてきた、森ゆっくり達の間では常識であった。
この要求も、ごく当たり前のことを宣言しているに過ぎない。
それは、長れいむについてきた、森ゆっくり達の間では常識であった。
この要求も、ごく当たり前のことを宣言しているに過ぎない。
ただし長れいむだけは、さすがに長になるだけあり、多少異なる考えも持っている。
「(・・・くちでいってわけてくれるなら、さいしょから、ひとりじめなんてしないよ・・・)」
頭数をそろえて山から降りてきたのは、何もお野菜さんを持って帰るためだけではない。
実際に闘うつもりまでは無いにしても、威嚇の意味も考えてのことであった。
いずれも腕(?)に覚えのある成体ゆっくり。
それが、数をそろえて無言の圧力を加えながら、言葉ではあくまでも優しく交渉する。
長れいむは、なかなか外交を心得ているというべきだったかもしれない。
実際に闘うつもりまでは無いにしても、威嚇の意味も考えてのことであった。
いずれも腕(?)に覚えのある成体ゆっくり。
それが、数をそろえて無言の圧力を加えながら、言葉ではあくまでも優しく交渉する。
長れいむは、なかなか外交を心得ているというべきだったかもしれない。
「・・・・・・。」
心底うんざりした顔をしていた村人達だったが、
その中の若手10名程が顔を見合わせると、うんうんと頷いて畑の脇にある倉庫に入っていった。
その中の若手10名程が顔を見合わせると、うんうんと頷いて畑の脇にある倉庫に入っていった。
「ゆっゆーん!あそこにおやさいさんがあるのぜ!?ゆっくりー!」
「おちびちゃんも、たっくさん、むーしゃむーしゃできるね!」
「にんげんさんは、ゆっくりできるねー。」
「おちびちゃんも、たっくさん、むーしゃむーしゃできるね!」
「にんげんさんは、ゆっくりできるねー。」
人間さんはまだ、一言も話してくれていないが、どうやら交渉は上手くいったようである。
早くも目的が達成できそうなことに、大満足の森ゆっくり達。
比較的用心深い長れいむも、群れで待つみんなのおちびちゃん達や、自分の家族の喜ぶ顔を思い浮かべて、
ついでに自分の食欲も満たせるという、ゆっくりとした未来に思いを馳せ始めていた。
早くも目的が達成できそうなことに、大満足の森ゆっくり達。
比較的用心深い長れいむも、群れで待つみんなのおちびちゃん達や、自分の家族の喜ぶ顔を思い浮かべて、
ついでに自分の食欲も満たせるという、ゆっくりとした未来に思いを馳せ始めていた。
「(ゆふふ。これでむれのみんなも、もっとゆっくりできるね。もりからでてきて、ほんとによかったよ。)」
・・・だが、倉庫から出てきた村人達が手に持っていたのは、お野菜さんではなかった。
倉庫から出てきた10名程の村人のうち、
半数が手に持っていたのは、風呂場で使うような木製の『すのこ』。
彼らは、それが何だかわからず首をかしげる、ゆっくり遠征隊数十匹の真後ろ、
森の方に回り込むと、逃げ場をすのこで塞いでしまった。
突然自分達のゆっくりプレイスへの道に、木製の壁が出来たことに戸惑う森ゆっくり達。
半数が手に持っていたのは、風呂場で使うような木製の『すのこ』。
彼らは、それが何だかわからず首をかしげる、ゆっくり遠征隊数十匹の真後ろ、
森の方に回り込むと、逃げ場をすのこで塞いでしまった。
突然自分達のゆっくりプレイスへの道に、木製の壁が出来たことに戸惑う森ゆっくり達。
そして、すのこの壁の反対側、畑の方に、倉庫から戻ってきた残り半数が立ちふさがった。
こちらの村人達が手に持っているのは、おとなの手首程の太さをした木の枝、
それの、手で持つ部分に革紐を巻き付けたもので、棍棒、あるいはバットのような道具だった。
こちらの村人達が手に持っているのは、おとなの手首程の太さをした木の枝、
それの、手で持つ部分に革紐を巻き付けたもので、棍棒、あるいはバットのような道具だった。
森ゆっくり達は、手に棍棒を持つ村人達の顔を見上げ、
その時、初めて妙な雰囲気に気づいた。
その時、初めて妙な雰囲気に気づいた。
・・・人間さんの目、死んじゃったゆっくりの目にそっくり・・・
「ゆっくりし」
ぐしゃっ!
そして、村人達の沈黙に耐えられなくなったまりさが声を出した瞬間、
そのまりさの頭上に、棍棒の一撃が振り下ろされた。
そのまりさの頭上に、棍棒の一撃が振り下ろされた。
長れいむは、自分の目の前で潰れたまりさを見て、
何が起きたのか、よく理解できなかった。
餡子の飛沫を頬に浴びて、これがゆっくり出来ない状況である事だけは早くも理解していたが、
頭の中が真っ白になってしまい、これからどうすればいいのかさっぱり浮かんでこない有様だった。
何が起きたのか、よく理解できなかった。
餡子の飛沫を頬に浴びて、これがゆっくり出来ない状況である事だけは早くも理解していたが、
頭の中が真っ白になってしまい、これからどうすればいいのかさっぱり浮かんでこない有様だった。
長ですらこの調子である。
他の森ゆっくり達など、5秒たっても10秒たっても、
茫然としたまま身動き一つ、声一つ立てる事が出来なかった。
他の森ゆっくり達など、5秒たっても10秒たっても、
茫然としたまま身動き一つ、声一つ立てる事が出来なかった。
潰れたまりさの隣にいた、ちぇんが村人の一人に抱き上げられるまで。
「お前らのゆっくりプレイスの場所を教えろ。」
「わ、わきゃら『ひゅっ!・・・べしゃんっ!』・・・びぇ・・・?」
とにかくゆっくり出来ない相手である事は察したちぇんが、答えを拒否しようとした瞬間、
その村人は、両手で勢いよくちぇんを地面に叩きつけた。
その村人は、両手で勢いよくちぇんを地面に叩きつけた。
「びゅ・・・わ・・・がっ・・?」
あんよから思い切り地面に叩きつけられたちぇんは、
まるで地面に饅頭を叩きつけたかのように、あんよがぐしゃぐしゃに砕け散り、
両目玉は勢いよく飛び出しどこかへ飛んでいっていた。
痙攣を続けてはいるが、どう見ても致命傷である。
まるで地面に饅頭を叩きつけたかのように、あんよがぐしゃぐしゃに砕け散り、
両目玉は勢いよく飛び出しどこかへ飛んでいっていた。
痙攣を続けてはいるが、どう見ても致命傷である。
ちぇんがどうなってしまったか、それを凝視している森ゆっくり達は、頭では理解していた。
だが、心に立て続けに衝撃を受けた森ゆっくり達は、まだ声一つ立てることができない。
その間に、ちぇんの隣にいたありすが、さっきと同じ村人に抱きかかえられた。
だが、心に立て続けに衝撃を受けた森ゆっくり達は、まだ声一つ立てることができない。
その間に、ちぇんの隣にいたありすが、さっきと同じ村人に抱きかかえられた。
「場所、教えるか?」
「こ、こんなのとかい『ひゅっ!・・・べぢゃんっ!』びゃっ・・・・・・」
余計な事を言おうとしていたありすは、後頭部から地面に叩きつけられた。
「い・・ながも・・・の・びぇ・・・」
ありすもちぇん同様、目玉はどこかへ飛んでいっていた。瀕死だった。
違いと言えば、砕け散ったのがあんよか後頭部か、と言う点だけである。
違いと言えば、砕け散ったのがあんよか後頭部か、と言う点だけである。
村人に躊躇は無かった。
議論する猶予も与えなかった。
森ゆっくり達の意思など、誰も気にしていなかった。
議論する猶予も与えなかった。
森ゆっくり達の意思など、誰も気にしていなかった。
そして、ありすの隣にいた、長れいむの順番が回ってきた。
「次、お前は教えるか?」
「ゆ・・・ぎ・・・」
「ゆ・・・ぎ・・・」
そして答えを待ちもせずに、すっ、と長れいむを持った両手が振りかぶられた瞬間、
ガチガチに固まっていた長れいむの口から、泣き叫ぶような大声で、
ガチガチに固まっていた長れいむの口から、泣き叫ぶような大声で、
「ゆぁぁぁああ!?おぢえまずぅぅぅぅぅううう!!」
と、村人達の望む返答が発せられたのであった。
長れいむは、質問をしていた村人の後ろに立っていた、別の村人に手渡された。
そして、他の森ゆっくり達の方を振り返ったその村人は、最後の質問をした。
そして、他の森ゆっくり達の方を振り返ったその村人は、最後の質問をした。
「で、他にも教えたくなったヤツはいるか?」
この結果、10数匹の森ゆっくり達が、
村人のあんよに身を擦り付けて『教える』と答え、生き延びた。
そして、その他残りの全員は、
村人のあんよに身を擦り付けて『教える』と答え、生き延びた。
そして、その他残りの全員は、
「ゆっ!『ぽゆんっ』ゆっ!『ぽゆんっ』・・・かべさん!おねがいだからどいてね!」
すのこの壁に何度も体当たりしたり、
「ゆぁぁ。ゆっくりこっちこないでぇぇ・・・」
すのこまで後ずさり、必死で村人から逃げようとしたり、
「ゆぅぅうう!!みんなは、まりさがまもるよ!ぷくーっ!!」
渾身のぷくーによって、人間さんを追い払おうとしたり、
各々無駄な行動を取り続けた挙句、
各々無駄な行動を取り続けた挙句、
ぐしゃっ!ぐちゃぐちっ!ぶしゅぐちぐちゃびちゃぢゅぐぢゅごすごすっごっごっ!
棍棒がゆっくりを殴っているのか、地面を殴っているのかわからなくなるまで、
徹底的に叩き潰されたのであった。
徹底的に叩き潰されたのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
それから少し経った頃、群れのゆっくりプレイスでは・・・
「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー。」
「おちびちゃんったら、こんなにおくちよごして。ぺーろぺーろ。」
「ゆぁ~ん。しゅっきりー。ゆっくちごちそうしゃま~。」
「おちびちゃんったら、こんなにおくちよごして。ぺーろぺーろ。」
「ゆぁ~ん。しゅっきりー。ゆっくちごちそうしゃま~。」
お昼ごはんを終えたゆっくり親子達が、各々のおうちでゆっくりと過ごしていた。
この群れは、今から数ヶ月前の春、10匹ほどで移住してきた新しい群れである。
その後、ゆっくりの特徴でもある活発な繁殖活動によって、
現在では成体が80匹、赤ゆ子ゆ合わせて300匹程の、中規模の群れにまで膨れ上がっていた。
産めよ増やせよという流れは今も続いており、今後も増え続けることは確実であっただろう。
その後、ゆっくりの特徴でもある活発な繁殖活動によって、
現在では成体が80匹、赤ゆ子ゆ合わせて300匹程の、中規模の群れにまで膨れ上がっていた。
産めよ増やせよという流れは今も続いており、今後も増え続けることは確実であっただろう。
「ゆ、ゆっぐぢぶれいずは、ごっぢでずぅ・・・」
「・・・・・・ぅぇ。」
「・・・・・・ぅぇ。」
村人達10人ほどがそれぞれ棍棒や土木作業用のシャベルを持ち、
長れいむの案内で群れのゆっくりプレイスにやってきたのだが、
目の前の光景を見てさらにうんざりした表情を浮かべることになった。
長れいむの案内で群れのゆっくりプレイスにやってきたのだが、
目の前の光景を見てさらにうんざりした表情を浮かべることになった。
見渡す範囲にすっぽり収まる程度の、大して広くも無いゆっくりプレイスであった。
だが、そこに生える大きな木々の根元、ほぼ全てにおうちの入り口と思われる穴が見える。
だが、そこに生える大きな木々の根元、ほぼ全てにおうちの入り口と思われる穴が見える。
それらの穴はいずれも、木の枝や小石を乱雑に積み上げた奥に隠されていた。
入り口を木の枝や小石で隠すコレは、おうちを外敵から隠すために作る『けっかい』と呼ばれるものだ。
この森では、こんなモノを作る習性を持つ生物はゆっくり以外いない。
しかも、木の根元だけでは場所が足りなかったのか、
大きな石の下や、斜面に穴を掘っておうちにしているものも多い。
入り口を木の枝や小石で隠すコレは、おうちを外敵から隠すために作る『けっかい』と呼ばれるものだ。
この森では、こんなモノを作る習性を持つ生物はゆっくり以外いない。
しかも、木の根元だけでは場所が足りなかったのか、
大きな石の下や、斜面に穴を掘っておうちにしているものも多い。
その数はどう少なく見積もっても50以上あった。
お昼時ということもあり、外を出歩いているゆっくりが居ないのがせめてもの救いだ。
饅頭を追いかける手間まで加わると、日のあるうちに村に帰れるか心配な数である。
饅頭を追いかける手間まで加わると、日のあるうちに村に帰れるか心配な数である。
そして、村人達の作業は静かに開始された。
「ゆーん。おとーしゃん、まだなのじぇ~。」
「むきゅむきゅ、まだおひるよ、おちびちゃん。ゆっくりまっててね。」
「むきゅ~ん。ぱちぇもおやさいしゃん、たのちみ~。」
「むきゅむきゅ、まだおひるよ、おちびちゃん。ゆっくりまっててね。」
「むきゅ~ん。ぱちぇもおやさいしゃん、たのちみ~。」
この木の根元のおうちでは、ぱちゅりー一家がおうちでゆっくりしながら、
つがいであるまりさを待っていた。
おうちには子ぱちぇと子まりさ、さらに先日生まれたばかりの、5匹の赤ゆっくりまで居る。
つがいであるまりさを待っていた。
おうちには子ぱちぇと子まりさ、さらに先日生まれたばかりの、5匹の赤ゆっくりまで居る。
「しゅーやしゅーや・・・むっきゅり」「ゆぴ~・・・ゆぴ~。」
「むきゅきゅ。いもうとたちはゆっくりしてるわよ。おねえさんたちも、ゆっくりまっててね。」
「ゆ~ん。ゆっくちりかいしちゃよ。」
「むきゅきゅ。いもうとたちはゆっくりしてるわよ。おねえさんたちも、ゆっくりまっててね。」
「ゆ~ん。ゆっくちりかいしちゃよ。」
赤ゆっくり達は、食べて、寝て、ゆっくり育っていくことがお仕事だ。
それだけに一層、妹達の寝顔は、姉である子ゆっくり達でも顔をほころばさずにいられない、
とてもゆっくりしたものであった。
お昼ごはんを食べ終わってお昼寝中の妹達の姿を見て、子まりさも子ぱちぇも、
お野菜さんへのワクワクを抑えつつ、一緒にお昼寝してゆっくりと過ごすことにしたのであった。
それだけに一層、妹達の寝顔は、姉である子ゆっくり達でも顔をほころばさずにいられない、
とてもゆっくりしたものであった。
お昼ごはんを食べ終わってお昼寝中の妹達の姿を見て、子まりさも子ぱちぇも、
お野菜さんへのワクワクを抑えつつ、一緒にお昼寝してゆっくりと過ごすことにしたのであった。
「(むきゅん。ぱちぇとまりさのおちびちゃん。とってもゆっくりしてるわ。)」
がさっ、がさっ・・・
その時母ぱちゅりーに、外で何かが歩く音が聞こえてきた。
「むきゅ?まりさ?」
まりさが帰ってきたのかと入り口に振り返った瞬間、
ドスッ!!
『けっかい』を勢いよく貫いておうちに飛び込んできた太い棍棒が、
母ぱちゅりーの右目に突き刺さった。
母ぱちゅりーの右目をも貫通したそれは勢いを全く緩めず、
おうちの一番奥に積まれた備蓄食料の山にまで突き刺さる。
母ぱちゅりーの右目に突き刺さった。
母ぱちゅりーの右目をも貫通したそれは勢いを全く緩めず、
おうちの一番奥に積まれた備蓄食料の山にまで突き刺さる。
「む・・・ぎゅ・・?」
「お、おきゃーしゃん?」
「お、おきゃーしゃん?」
ズボッ!
そして、突っ込んできた時同様、勢いよく引き抜かれる棍棒。
母ぱちゅりーは棒を引き抜かれた勢いで前のめりに倒れたまま、
残った左目の視線も定まらずぶるりっ、と震えるばかり。
子ぱちぇも赤ゆっくり達も、突然の轟音と目の前で起こった事の衝撃に、
身震いすら出来ず母ぱちゅりーを見上げていた。
母ぱちゅりーは棒を引き抜かれた勢いで前のめりに倒れたまま、
残った左目の視線も定まらずぶるりっ、と震えるばかり。
子ぱちぇも赤ゆっくり達も、突然の轟音と目の前で起こった事の衝撃に、
身震いすら出来ず母ぱちゅりーを見上げていた。
「お・・・きゃーしゃん?しゅ、しゅーり、しゅーり・・・ゆっく」
それでも最年長の子まりさだけは何とか動き出し、
右目を失った母ぱちゅりーにすーりすーりしながら、声をかけようとした。
右目を失った母ぱちゅりーにすーりすーりしながら、声をかけようとした。
ドスッ!
その子まりさの頭上を、棍棒の二撃目が貫いた。
「ゆ・・・お、おぼうち。まりしゃの・・・?」
食料の山に再び突っ込まれた棒の先に、
子まりさの引き裂かれたお帽子がぶら下がっていた。
そして、そのお帽子には、金色のゆっくりした髪の毛と、餡子もたっぷりと巻き込まれ・・・
子まりさの引き裂かれたお帽子がぶら下がっていた。
そして、そのお帽子には、金色のゆっくりした髪の毛と、餡子もたっぷりと巻き込まれ・・・
「ゆ、ゆぴぇぇ!?おにぇーちゃんのあたまが、なくなっちゃぁぁああ!!」×5
「ゆ・・・まり、しゃ・・・いぢゃぃぃ・・」
「むきゅぅぅぅううう!?まりしゃ!ゆっく」
「ゆ・・・まり、しゃ・・・いぢゃぃぃ・・」
「むきゅぅぅぅううう!?まりしゃ!ゆっく」
ぱちゅりー一家が泣き叫び続ける贅沢は、それ以上与えられなかった。
ドスッ!
「ぴぇっ・・!?ぴぃ・・!」
3回目。
ドスッ!ドスッ!
「ぴゃぁぁっ!おぼうち・・!!」
4回目。5回目。
「・・・・!!・・!?・・・」
ドスッ!ドスッ!ドスッ・・・
容赦ない棍棒の雨は、母ぱちゅりーを穴だらけにし、
子まりさや子ぱちゅりーの体を削ぎ、
赤ゆっくり達をかすめながら、降り止むまで10回以上続いた。
そこに生命の存在など許さないかのように・・・
子まりさや子ぱちゅりーの体を削ぎ、
赤ゆっくり達をかすめながら、降り止むまで10回以上続いた。
そこに生命の存在など許さないかのように・・・
「かじょくの・・あいどる・・まもりゅのじぇ・・・」
もそっ、もそっ・・・
容赦ない突きの雨の中、子まりさは何とか生き延びた。
体の大きな母ぱちゅりーはともかく、
子ゆっくり、赤ゆっくりならば、よほど運が悪くなければ棒が直撃することはない。
子まりさは、自分自身は頭頂部を削り取られ瀕死ではあったが、
無傷で助かっていた赤まりさ2匹と赤ぱちゅりー1匹をベッドに載せたまま、
力を振り絞っておうちの奥へと運び込もうとしていた。
体の大きな母ぱちゅりーはともかく、
子ゆっくり、赤ゆっくりならば、よほど運が悪くなければ棒が直撃することはない。
子まりさは、自分自身は頭頂部を削り取られ瀕死ではあったが、
無傷で助かっていた赤まりさ2匹と赤ぱちゅりー1匹をベッドに載せたまま、
力を振り絞っておうちの奥へと運び込もうとしていた。
「ゆぴぇーん。おにぇーちゃん、ゆっくちさせちぇー。」
「ゆ、ゆっくちまっててにぇ・・・」
「ゆ、ゆっくちまっててにぇ・・・」
ぺしょ・・・もにょもにょ
「ゆぁーん。ゆっくちさせちぇー。」×3
「ゆぅぅ・・あとで・・ゆっくちぷれいしゅに、つれてっちぇ・・あげりゅから、まっちぇ・・」
「ゆぅぅ・・あとで・・ゆっくちぷれいしゅに、つれてっちぇ・・あげりゅから、まっちぇ・・」
だが、完全に怯えきった赤ゆっくり達は、もしょもしょとベッドから転がり出し、
姉の制止も振り切り必死でおうちの外に這い出す。
姉の制止も振り切り必死でおうちの外に這い出す。
そして赤ゆっくり達は、おうちの入り口にそびえる巨大な2本の柱を見た。
「ゆ、ゆぅ?しゅーり、しゅーり。」
赤まりさは、生まれてから今までおうちを出たことは無いにしても、
一度だけならおうちの外を見たことがあった。
その時は、こんなところに柱は立っていなかったことを憶えている。
一度だけならおうちの外を見たことがあった。
その時は、こんなところに柱は立っていなかったことを憶えている。
それは、村人の足だった。
「ゆーん?ゆっく」
そして3匹仲良く上を見上げた瞬間、赤ゆっくり達は、
自分達の真上から巨大な板状の金属が降ってくるのを見た。
自分達の真上から巨大な板状の金属が降ってくるのを見た。
ぐちっ。
「ゆっく・・・まっちぇ・・あぶにゃ・・・・・・ゆぅ?」
最期の力を振り絞っておうちから這い出した子まりさが見たものは、
自分が必死で助けようとしていた3匹の妹達、そのお飾りと餡子をべっとりと貼り付けた、
一本のシャベルだった。
自分が必死で助けようとしていた3匹の妹達、そのお飾りと餡子をべっとりと貼り付けた、
一本のシャベルだった。
そして子まりさは、そのまま全てを諦めたかのように崩れ落ち、
涙を一滴だけこぼした後、2度と覚めない眠りについたのであった。
涙を一滴だけこぼした後、2度と覚めない眠りについたのであった。
その3分後、かつてゆっくりしたぱちゅりー一家が住んでいたおうちには、
赤ゆっくり3匹の命を奪ったシャベルによって土が詰め込まれていった。
お飾りを失った赤ゆっくり2匹と、お腹を削り取られ瀕死だった子ぱちゅりーは、
叫び声を上げる暇も与えられず、おうちの奥に隠れたまま、
母ぱちゅりーと一緒に木の養分となっていったのである・・・
赤ゆっくり3匹の命を奪ったシャベルによって土が詰め込まれていった。
お飾りを失った赤ゆっくり2匹と、お腹を削り取られ瀕死だった子ぱちゅりーは、
叫び声を上げる暇も与えられず、おうちの奥に隠れたまま、
母ぱちゅりーと一緒に木の養分となっていったのである・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あのぱちゅりーのつがいであったまりさは、ある意味では幸運だったかもしれない。
まりさは村人に最初に話しかけ、これから何が起こるかもわからないまま潰された、
一番最初に命を失ったまりさだった。
まりさはさぞかし幸福な気持ちで生を終えたことであろう。
まりさは、自分以外の遠征隊の運命も、群れの運命も、家族の最期も、
何一つ見ることなく永遠にゆっくりすることができたのだから。
まりさは村人に最初に話しかけ、これから何が起こるかもわからないまま潰された、
一番最初に命を失ったまりさだった。
まりさはさぞかし幸福な気持ちで生を終えたことであろう。
まりさは、自分以外の遠征隊の運命も、群れの運命も、家族の最期も、
何一つ見ることなく永遠にゆっくりすることができたのだから。
そして生き延びた長れいむは、まりさとは全く逆の苦しみを味わうことになった。
「・・・・・・ふむ。」
長れいむを連れた村人二人が、茂みの奥に大きな石が積まれた場所をじっと見ている。
大きな石の隙間に、おうちの入り口であろう穴が見えた。
当然入り口は木の枝などで塞いであったが、
だからこそ疑いようもなく、ゆっくりのおうちである事を理解していた。
大きな石の隙間に、おうちの入り口であろう穴が見えた。
当然入り口は木の枝などで塞いであったが、
だからこそ疑いようもなく、ゆっくりのおうちである事を理解していた。
「・・・ちぇにぇ・・っくちー・・」
「・・いむ・・っくり、おやさい・・・」
「・・いむ・・っくり、おやさい・・・」
中からは、いかにも家族団らんと言った感じの声が聞こえてくる。
外の様子などなにも気づいていないようであった。
外の様子などなにも気づいていないようであった。
一方、長れいむの方は全くゆっくり出来ていなかった。
「ゆぁあ!?やめてね!ゆっくりさせてね!れいむのはにーと、ゆっくりしたおちびちゃんなんだよ!」
村人達は事情を察したが、だからどうにかしてやる訳もない。
騒がれて、中のゆっくりに気づかれても面倒とばかりに、
長れいむは猿ぐつわを噛まされ、背負い籠の中に突っ込まれた。
騒がれて、中のゆっくりに気づかれても面倒とばかりに、
長れいむは猿ぐつわを噛まされ、背負い籠の中に突っ込まれた。
村人達もこの手のおうちには慣れていた。
ゆっくりは雨に弱い。
だだっ広い地面に浅い穴を掘っただけでは、雨の日に雨漏りで家族全滅もありえる。
だからこそ茂みの中に穴を掘っている訳で、
つまりこの手のおうちの天井は、そんなに分厚くできていない。
ゆっくりは雨に弱い。
だだっ広い地面に浅い穴を掘っただけでは、雨の日に雨漏りで家族全滅もありえる。
だからこそ茂みの中に穴を掘っている訳で、
つまりこの手のおうちの天井は、そんなに分厚くできていない。
村人達はおうちの入り口の後方50cmあたりの、
地面をポンポンと叩いて、中に空洞がある事を確かめていた。
そして・・・
地面をポンポンと叩いて、中に空洞がある事を確かめていた。
そして・・・
「おとーしゃん!れいみゅ、はやくむーちゃむーちゃしちゃいよ!」
「はやくおやさいしゃん、もってきちぇにぇ!」
「おちびちゃん!おとーさんは、むれみんなのためにがんばってるんだよ!!ゆっくりまってあげてね!」
「ゆぴぃぃいいい!?どうしちぇそんなこというにょぉぉおお!?」×8
「はやくおやさいしゃん、もってきちぇにぇ!」
「おちびちゃん!おとーさんは、むれみんなのためにがんばってるんだよ!!ゆっくりまってあげてね!」
「ゆぴぃぃいいい!?どうしちぇそんなこというにょぉぉおお!?」×8
「ゆーん。まりしゃもいっしょにいきたかったのじぇ~。」
「ゆふふ、だいじょうぶだよ。おちびちゃんは、おとーさんのつぎに、おさになるんだからね。
おとーさんをみならって、いつかにんげんさんのところにも、みんなをつれていくんだよ。」
「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
「ゆふふ、だいじょうぶだよ。おちびちゃんは、おとーさんのつぎに、おさになるんだからね。
おとーさんをみならって、いつかにんげんさんのところにも、みんなをつれていくんだよ。」
「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
おうちの中には、長れいむのつがいである母まりさと、
元気一杯わがまま一杯の8匹の赤ゆっくり、
そして将来は群れのリーダーへと期待されている子まりさがいた。
長れいむ自慢の、群れの長にふさわしい、ゆっくりした家族達だった。
元気一杯わがまま一杯の8匹の赤ゆっくり、
そして将来は群れのリーダーへと期待されている子まりさがいた。
長れいむ自慢の、群れの長にふさわしい、ゆっくりした家族達だった。
おうちの中だって群れの長にふさわしい内装であった。
床一面に河原から持ってきた丸い石が敷き詰められ、
その上にふかふかの干草が敷かれている。
平たくスベスベの石のテーブルもあり、貯蔵庫の脇には台所(と称する配膳スペース)まである。
これほど快適なおうちは、群れの中だけでなく、森の他の群れを探してもそうはないであろう。
また、赤ゆっくり達のために作られた干草製のベッドは、一般的な鳥の巣型どころか枯れ草の山と言ってよく、
そこに赤ゆっくりが潜り込んで眠る様は、おがくずの中に鶏卵を埋めた様子に近い。
床一面に河原から持ってきた丸い石が敷き詰められ、
その上にふかふかの干草が敷かれている。
平たくスベスベの石のテーブルもあり、貯蔵庫の脇には台所(と称する配膳スペース)まである。
これほど快適なおうちは、群れの中だけでなく、森の他の群れを探してもそうはないであろう。
また、赤ゆっくり達のために作られた干草製のベッドは、一般的な鳥の巣型どころか枯れ草の山と言ってよく、
そこに赤ゆっくりが潜り込んで眠る様は、おがくずの中に鶏卵を埋めた様子に近い。
もしょもしょ・・もしょ・・・
「ゆぴゅぴ~・・・ゆっくち~・・。」
「(ゆふふふ。とってもゆっくりしたすーやすーやだね。おちびちゃん、ゆっくりしていってね。)」
「(ゆふふふ。とってもゆっくりしたすーやすーやだね。おちびちゃん、ゆっくりしていってね。)」
ワガママを言っていたかと思えば、次見た時には天使の寝顔を見せている赤ゆっくり達。
高級鶏卵のように大切に包まれた赤ゆっくり達は、群れの明るい未来そのものであるかのようだった。
高級鶏卵のように大切に包まれた赤ゆっくり達は、群れの明るい未来そのものであるかのようだった。
とんっ・・・とんっ・・・
そのおうちの天井から、何やら物音が聞こえてきた。
一家はよく知っていた。
おうちの上を跳ねる音、これは、大黒柱の長れいむが帰ってきた音だということを。
おうちの上を跳ねる音、これは、大黒柱の長れいむが帰ってきた音だということを。
「ゆぅぅん!れいむがかえってきたよ!」
「ゆわーい!ゆっく」×9
「ゆわーい!ゆっく」×9
ざくっ!!ばらららっ!!
その瞬間、天井がシャベルの一撃により突き破られた。
母まりさは、頭に降り注いだ土に咳き込みながら、
自分の右頬あたりに妙な冷たさと異物感を感じる。
母まりさは、頭に降り注いだ土に咳き込みながら、
自分の右頬あたりに妙な冷たさと異物感を感じる。
そして、自分の右側に振り返ると、巨大な金属の板が母まりさの頬を縦に大きく切り裂いていた。
だが、それ以上にゆっくり出来ない光景が目の前にはあった。
だが、それ以上にゆっくり出来ない光景が目の前にはあった。
・・・シャベルが突き刺さった場所は、赤ゆっくり達のベッドのど真ん中だったのだ。
赤ゆっくり達は眠っている所に土が降り注ぎ、ゴホゴホとせき込んでいる。
そして、
赤ゆっくり達は眠っている所に土が降り注ぎ、ゴホゴホとせき込んでいる。
そして、
「お・・ちびちゃ・・・?」
シャベルがずぼりと引き抜かれると、そこにはゆっくりした寝顔のまま、
『お食べなさい』したかのように見事に真っ二つになった2匹の赤れいむがいた。
『お食べなさい』したかのように見事に真っ二つになった2匹の赤れいむがいた。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぁぁあああああ!?おぢびぢゃん!おだべなざいしちゃだめぇぇええ!?」
ざくっ!!ばらばらぁぁあああん!!
その母まりさの目の前に、シャベルが再び突き刺さった。
その瞬間、十文字に貫かれた天井はその強度を完全に失い、
赤ゆっくり達のベッドの上に容赦なく降り注いだ。
その瞬間、十文字に貫かれた天井はその強度を完全に失い、
赤ゆっくり達のベッドの上に容赦なく降り注いだ。
「ゆぁぁぁああ!?どうぢで、どうぢでぇぇええ!?」
母まりさは気づかない。
天井が完全に崩落したおうちを、見下ろしている瞳がある事を。
天井が完全に崩落したおうちを、見下ろしている瞳がある事を。
「おちびちゃん、ゆっくりしないでたすけるからね!ゆっくりまっててね!」
母まりさの目に映るのは、完全に崩れ落ちた天井の土に埋まりながら、
苦しそうにもそもそ身動きする赤ゆっくり達の姿だけ。
土に埋まったとはいえ潰されてしまったわけではないのだから、今なら全員助けられる。
母まりさは歯で赤ゆっくり達を傷つけないように、舌を使って丁寧に土を掻き分けていった。
苦しそうにもそもそ身動きする赤ゆっくり達の姿だけ。
土に埋まったとはいえ潰されてしまったわけではないのだから、今なら全員助けられる。
母まりさは歯で赤ゆっくり達を傷つけないように、舌を使って丁寧に土を掻き分けていった。
ぐぢゃっ!!
そして、その目の前に村人の足が突き刺さった。
「たすけ・・・ゆ?」
その足が持ち上がった下には、大きな足跡だけが残った。
母まりさの前に、動く物はなにも残っていない。
母まりさの前に、動く物はなにも残っていない。
「ゆ、ゆ、ゆぅぅぅ?おぢびぢゃ・・・?」
ざくっ!ざくっ!!
その頭上に、さらにシャベルが3回、4回と突き刺さる。
母まりさは、自分の体がおうちと一緒にバラバラに解体されていくのを、
放心状態で受け止め続けていた。
母まりさは、自分の体がおうちと一緒にバラバラに解体されていくのを、
放心状態で受け止め続けていた。
そして、どれほどシャベルが降り注ぐのを眺めていたか、
母まりさも顔面以外のほとんどが土に埋まってしまっていたそのとき、
突然、母まりさ自身も失念していた、最後の希望がおうちから飛び出した。
母まりさも顔面以外のほとんどが土に埋まってしまっていたそのとき、
突然、母まりさ自身も失念していた、最後の希望がおうちから飛び出した。
「ゆぴゃぁぁああ!!ゆっくちにげりゅよ!ゆっくちぃぃいい!!」
それは、家族が埋まり、潰され、母が切り刻まれながら土に混ざっていくのを見ながらも、
生き延びるために息をひそめ続けていた、子まりさであった。
生き延びるために息をひそめ続けていた、子まりさであった。
崩れた地面が緩い坂となったのに気付いた子まりさが、
おうちから逃げ出すチャンスと判断し、決死の覚悟で駆け上がったのだった。
おうちから逃げ出すチャンスと判断し、決死の覚悟で駆け上がったのだった。
「に・・げてね・・・おちびちゃんだけで、も、・・ゆっくりしてね・・・」
駆ける。駆ける。駆けあがる子まりさ。
シャベルの雨もいつのまにか降り止み、全ては子まりさに道を開いたかの様であった。
シャベルの雨もいつのまにか降り止み、全ては子まりさに道を開いたかの様であった。
「まりしゃは、まりしゃはとくべつなんだよ!ゆっくち、むれのおさになりゅんだよ!ゆっくち!ゆっくちぃぃいい!!」
そして、子まりさが地上にたどり着いた瞬間見たものは、
ゴルフスイングの構えでシャベルを振りかざした人間さんだった。
ゴルフスイングの構えでシャベルを振りかざした人間さんだった。
ぱしんっ!
周囲に、まるで饅頭をシャベルで引っ叩いたかのような、乾いた音が響いた。
母まりさが、自分の上に再び振りかざされたシャベルを見たとき、
そこには、子まりさの物であったお帽子と、餡子のような何かがへばりついていた。
そこには、子まりさの物であったお帽子と、餡子のような何かがへばりついていた。
母まりさはそれから、全てを諦めたように静かになった。
その上から2度、3度、と母まりさを狙っているのかどうかもわからないシャベルの先端が降り注ぎ続け、
5度目で母まりさも永遠にゆっくりし、
10度目で親子仲良く、周囲の土に完全に混ざりきった。
長れいむの家族達も、群れの他の家族と分け隔てなく平等に、未来を永遠に失ったのであった。
その上から2度、3度、と母まりさを狙っているのかどうかもわからないシャベルの先端が降り注ぎ続け、
5度目で母まりさも永遠にゆっくりし、
10度目で親子仲良く、周囲の土に完全に混ざりきった。
長れいむの家族達も、群れの他の家族と分け隔てなく平等に、未来を永遠に失ったのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
長れいむは、たった半日で、過去・未来、全ての『ゆっくり』を失った。
結局お野菜さんは、一欠片ももらえなかった。
ゆっくりした群れも、長れいむの宝物であった家族も全て奪われた。
・・・そして、長れいむの命も例外ではなかった。
結局お野菜さんは、一欠片ももらえなかった。
ゆっくりした群れも、長れいむの宝物であった家族も全て奪われた。
・・・そして、長れいむの命も例外ではなかった。
長れいむと生き残りの10数匹は、群れの最初の犠牲者達と同様、
地面に思い切り叩きつけられた挙句、棍棒で形も残らないほどぐしゃぐしゃに叩き潰された。
結局、人間に関わろうと考えた瞬間から、長れいむ達の未来は一つしか残されていなかったのである。
地面に思い切り叩きつけられた挙句、棍棒で形も残らないほどぐしゃぐしゃに叩き潰された。
結局、人間に関わろうと考えた瞬間から、長れいむ達の未来は一つしか残されていなかったのである。
「ゆぁぁあああ!?れいむ、もっどゆっぐぢぢだいぃぃいい!ゆっぐ」
べしゃんっ!・・・
ぐしゃっ!ぐちゃぐちっ!ぶしゅぐちぐちゃびちゃぢゅぐぢゅごすごすっごっごっ・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「・・・・・・はあ。」
村人達からため息がこぼれる。
それもそのはずだ。
それもそのはずだ。
春になってから、すでにゆっくりの襲撃は5度目。
月に一度は駆除をしている。
だが、駆除しても駆除してもやってくるのだ。
月に一度は駆除をしている。
だが、駆除しても駆除してもやってくるのだ。
おまけに、放置した場合の被害も恐ろしい。
今回のような恐喝まがいの要求が通らないと見るや、
今度は昼夜を問わず畑にゆっくりが侵入してくるようになる。
網や柵で畑を囲んでも、下に穴を掘ったり、柔軟な体を生かして隙間から侵入してきたり。
子ゆっくり程度の大きさとなると、完全に侵入を防ぐのはほぼ不可能だ。
今回のような恐喝まがいの要求が通らないと見るや、
今度は昼夜を問わず畑にゆっくりが侵入してくるようになる。
網や柵で畑を囲んでも、下に穴を掘ったり、柔軟な体を生かして隙間から侵入してきたり。
子ゆっくり程度の大きさとなると、完全に侵入を防ぐのはほぼ不可能だ。
結果待っているのは、畑一面に生えている野菜が、残らず傷モノにされるという地獄なのである。
・・・根本的な解決を求め、村人達は今日も頭を抱えていた。
【後編に続く】

挿絵:儚いあき