ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2023 あるむれ
最終更新:
ankoss
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どうも、ばや汁です。
今回はHENTAI一切なし、思いつき子ネタで、虐待でも愛ででもないですね。
こういうときが一番タグつけに困ります。
しいて言えば、設定考察もの、とでもいいましょうか。
楽しんでいただければ嬉しいです。
それではどうぞ。
-------------------------------------------
あれは、私がまだ若かった頃。
研究のために入った森で出会った、ある一匹のゆっくりの話。
当時の私は、ゆっくりを研究対象とした生物学者で、自然のゆっくりの生態が主な研究テーマだった。
突如世界中にあふれ浸透し、ペット・食糧などの形で人間の生活に深くかかわることになったゆっくりだが、
まだまだ多くの謎に包まれたゆっくりという生物に、私は強く惹かれていた。
その日も私は一人、研究のために自宅から近いある森に訪れていた。
この森は環境がよく、多くの生物が生息していた、ゆっくりもその中の一つであった。
この森を訪れるたびに、多くのゆっくりを目撃し、自然のままの行動を観察することが出来た。
私は週に1度はその森を訪れ一日を通してゆっくりの生活を観察することを習慣としていた。
しかしその日、一週間ぶりに訪れた森は、どこか不安になるような静けさに包まれていた。
前回来た時には、あちらこちらから野生動物の鳴き声や、ゆっくりたちの声が聞こえてきた。
それがその日に限って、聞こえてくるのはそよ風に揺れる木々の葉が擦れ合う音だけだった。
不思議に思いながらも森の奥に進んでいく、そこで私は、ある一匹のゆっくりと出会った。
「ゆぅ…おなか…へったよ…」
そのゆっくりは巨体を揺らしながら大きな舌を伸ばし、手近にある草を次々と口へ運んでいた。
遠くから見ただけでもわかる、とても大きなドスまりさだった。
ドスまりさは非常に賢い個体で、人間と対等に会話をすることも出来るものが多い。
私は森で何か異変が起こっていないか、聞いてみることにした。
「やあ、ドス、ゆっくりしていってね」
私が背を向けるドスに近付き、挨拶をする。
ドスは振り向かずに草を噛みながら、
「にんげんさん…?ゆっくりしていってね」
と、答えた。
「なぁドス、ドスは今何をしているんだい?」
「おなかがへったから…ごはんさんをたべてるんだよ…」
ドスは食事をやめようとしない、いつからそうしているのだろう、
ドスが歩いてきたと思われる地点には草一つ生えていなかった。
「そうか、ところでドス、このあたりにはたくさんのゆっくりがいたと思ったんだが…」
私の言葉を聞いて、ドスがぶるりと身を震わせ、黙ってしまう。
「…どうかしたのか?」
私が近寄ろうとすると、まりさは突如厳しい口調になって
「にんげんさん!それいじょうドスにちかづかないでね!」
と言い放つ。
ゆっくりといえどこのドスは巨大だ、ぱっとみたところ全長3~4mはあるだろうか。
暴れだされたら人間の私でも止めることはできないかもしれない。
私はおとなしくその場に留まってドスの様子をうかがうことにした。
私がしばらくドスを観察していると、わかったことがいくつかあった。
ドスはゆっくりと移動しながら食料になるものを口に入れる、という行動を続けていたが。
咀嚼とは違うタイミングで、時折口がもごもごと動いているのだ。
そしてかすかにどこかから、ドスのものではないゆっくり達の声が聞こえてくることがあった。
れいむ、まりさ、ぱちゅ、ありす、声色だけで判断してもこれだけのゆっくりがいることが分かった。
しかしその声はどれもどこか遠い、というかこもったような音として聞こえ、今だ一匹も目視で確認することはできなかった。
私の胸は高鳴っていた、もしかしたらこれは新しい発見になるかもしれない。
私の中にいくつも仮説が浮かび上がる、
ドスやその群のゆっくりはテレパシーのようなもので遠くにいる仲間たちと交信できるのではないか?
今ドスが行っている行動は、いったん自分の口内、もしくは体内に餌を貯めこみ、群に届ける狩り行為なのではないか?
私が思考を巡らせていると、突如ドスがガクガクと体を震わせてから、ぼそりと独り言のように呟いた。
「ねぇ…にんげんさん…ドスを…ころしてくれない?」
「え?」
自分の考えごとに没頭していたせいもあるが、私はドスの言っていることの意味がわからなくて、聞き返してしまう。
するとドスは、時折身体を震わせながら、ぽつりぽつりと語り始めた。
ドスは、むれのドスだったんだよ。
とってもとってもゆっくりしたむれだったよ。
だけどあるとき、にんげんさんがやってきて、むれのみんなをころしちゃったんだよ。
いっぱいいっぱいなかまたちがえいえんにゆっくりしたよ。
ドスはむれのみんなをつれて、にんげんさんがこないところまでつれていったよ。
でも、むれがゆっくりしてきたら、またにんげんさんがやってきて、またむれがへっちゃったんだよ。
それをなんどもくりかえしたよ。
ドスはつよいからかんたんににんげんさんにはまけないよ。
だけど、むれのみんなはふつうのゆっくりだから、とってもよわいんだよ。
ドスだってみんなをまもりたいけど、ドスひとりじゃあまもりきれなかったんだよ。
だから…
だからドスは、みんなと”いっしょになって”みんなをずっとゆっくりさせてあげることにしたんだよ。
「でも…もう…」
私は口を挟まずにドスの言葉に耳を傾けていた。
言葉を紡ぐごとに、ドスの体の震えは大きくなっていく。
「ドスは…つかれたよ…だって”みんな”があたまのなかでさわぐんだよ…」
私にはドスの言っていることが良く理解できなかった、一体どういうことなんだろうか。
「もうドスは…」
突然、ドスの体の震えが止まった。
辺りがシンと静まり返る。
そして再びドスが動き出した時、先ほどとは明らかに様子が違っていた。
「ゆゆっ!れいむはおなかがへったよ!おちびちゃんのためにいっぱいたべないといけないんだよ!!」
ドスは今はっきりと”れいむ”と言った、そしてどういうことかはわからないが、声色もさっきまでのドスと違い、
ゆっくりれいむのそれと同じ声だった。
「お、おい、どうしたんだ?」
私が声をかけると、初めてドスがこちらを振り返った。
「ひっ!」
私は思わず悲鳴を上げる、ゆっくりと振り返ったドスの両目は、すでに焦点があっておらず、死んだ魚のような目をしていた。
口のはしからは噛み砕き液状になった草だろうか、なにかドロドロとしたものがあふれ出ていた。
「ゆ?にんげんさんなんだぜ!」
ドスの目がグリグリと動き、片方の目が私をとらえた。
今度は先ほどのれいむとは違う、口調から判断すると、”まりさ”だろうか。
どうしたらよいかわからず棒立ちになってしまっている私に、ゆっくりとドスが近づいてくる。
「むきゃきゃ、いまぱちゅたちはつよいのよ!にんげんさんなんていちころよ!」
次に声を出したのは”ぱちゅりー”だ。
ゆっくりとした速度は、やがて緩やかに加速し、ドスは明かに私を狙って直進してきている。
まずい!
そう直感した私は、震える体を無理やり動かし、全力でドスが来る方向とは反対に走りだした。
本来ならばゆっくりごときが人間の足に追いつけるわけはないのだが、相手はドス、ヘタをうつと命にかかわるかも知れない。
「んほぉおおお!!!にげるなんてつんでれねぇぇ!!!!!」
”ありす”の声が後ろから私の背中を追ってくる。
「ゆっくりできないにんげんはしねぇぇ!!」
「まりさたちのむれをゆっくりできなくさせたゲスはせいっさいだよ!」
「むきゃきゃきゃきゃ!むてきだわぁ!!」
「とかいはなあいをあたえてあげるわぁあああ!!!」
様々な声で叫びながら襲い掛かってくるドスは、ゆっくりとではあるが、確実に私との距離を縮めてきていた。
このままでは追いつかれると思った私は、覚悟を決め、近くにあった大きな木の後ろに素早く回り込んだ。
その木の左右には小さな木が何本も生えていて、ドスは大きく回り込まないと私のところにはたどり着けないはずだ。
ドスン!!と大きな音をたてて、ドスが木にぶつかった。
その衝撃で木が大きく揺れる、幸いすぐに倒れてしまうということはなかったが、
木はドスの重さでメシメシと音を立てている、そう長くは持たないだろう。
「ゆへへへへ、このままぺしゃんこにしてやるんだぜ!」
私がなんとかこの状況を打破する方法はないかと考えていると、突然木に力を込めているドスの動きがピタリと止まった。
「にん…げん…さ…」
”ドス”の声だった。
私は振り返り、木の間からドスのほうを見る。
眼前に迫ったドスの大きな目が、はっきりと私をとらえた。
ドスの目は、先ほどとは違い、透きとおり悲しげな色をしていた。
「いまの…うちに…ドスを…ころして…はや…く…」
とぎれとぎれに言うドスの体が、再び小さく震え始める。
恐らくドスは、自分の中の”他のゆっくり達”と闘っているのだろう。
口の端から涎をだらだらとたらしながら歯を食いしばり、必死に私を見つめてくる。
「このままじゃ…もしかしたらにんげんさんたちにもめいわくがかかるかもしれないよ…
ほかのむれのこたちにもめいわくがかかっちゃうかもしれないよ…そうなるまえに…はやく!!!」
ドスはそう言うと身体に力を入れて震えを抑えつけた。
しかし内なる震えはどんどん高まっているのだろう、ドスの表情にはもはや一片の余裕も感じられなかった。
「あ”…あああ”あ”あ”!!!」
ドスが咆哮をあげる、”彼ら”が顔を出しかけているのかもしれない。
私はとっさに、さっきのドスの体当たりの衝撃で折れて足元に転がっていた木の枝を拾い、ドスの体に突き刺し、えぐった。
『ぎゃああぁああああああああああああ!!!!!』
ドスの口から、ドスの声ではないいろいろなゆっくりの声が混じったような汚い悲鳴が上がる。
私は容赦なくその傷を中心に枝を何度も突き刺し、穴を広げていく。
「ごめん、ごめんな、すぐに楽にしてやるから!」
身体を傷つける私に、ドスは一切抵抗しようとしなかった、いや、”ドス”が抵抗を抑えつけていてくれたのだろう。
私が開けた穴が致命傷であろう深さまで達したとき、ドスは傷口から大量の餡を垂れ流しながら、ゆっくりとほほ笑んだ。
「ありがとう…にんげんさん…これで…みんなゆっくり…でき…」
”ドスの声”で私にそう告げたドスは、私のそばから少し離れて、立ち止まる。
ドスの口からは、
「いやだぁあ!!しにたくない!!!」
「どぼぢでごんなごどにぃぃ!!」
「えいえんにいぎつづげるのよぉおおお!!」
「いながものだわああああ!!」
と、ほかのゆっくり達の声が漏れていたが、ドスの表情は非常に穏やかだった。
傷口から洩れる餡は止まらない、ドスはもう一度私の方を見て、
「じゃあね、さようなら」
と、言った。
事切れたドスの大きな身体から、自重に耐えきれずに大量の餡がどばどばとあふれだす。
もう危険はないだろうと思い、ドスの亡きがらに近づいた私は、自分の目を疑うあるものを目撃することとなる。
「なんだ…これは…」
それは他の、ゆっくりの中身である餡とは明らかに違う、固形物だった。
恐らく中枢餡であろうそれは、しかし私が知識として知るものとは大きく外れていた。
大きさは巨大、直径30センチ以上はあるデコボコとしたいびつな形をしていた。
そして色は非常に濁った黒で、禍々しさすら感じられるほどだった。
これはあくまで仮説にすぎないが、おそらくあのドスは”群れの生き残り”と同化したのではないだろうか。
その方法は定かではない、癒着したのか、それとも喰ったのか、今となっては確かめようはなかった。
結果がどうあれ、おそらくドスが言っていた、”守るために皆と一緒になる”ということが、これだったのだろう。
中枢餡を移植するとその持ち主の記憶、人格が移植後の個体に現れるという研究結果がある。
群れ一個単位で同化したドスは一体どのような思いで生きてきたのだろう。
今回私が見た、実際に発現した4匹の個体以外にも、おそらくたくさんの声がドスの中に響いていたのだろう。
私はその忌々しい中枢餡を思いきり踏みつぶした。
以外にもそれは脆く、乾いた粘土のようにボロボロと崩れ去った。
そして近くの草木で、ドスの体を覆い隠してやる。
墓を作るような道具は持ってきていなかったので、それがその時私にできるこの哀れなドスに対する最大限の供養だった。
その後森から出て、家に帰り、その日見たことを研究日誌にまとめてみた。
しかし、その報告書を発表しても、誰も私の言うことなど信じてくれなかった。
実際に経験した私でも、あれは夢だったのかと思うことがある。
けれど私の足に感じたあの中枢餡を砕いた感触は、私は今でもはっきりと覚えている。
あれを砕いた瞬間、多数のゆっくり達の声にならない悲鳴と、ドスの安らかな声が聞こえたような、そんな気がするのだ。
私はそれからすぐに、ゆっくりの研究に携わることをやめた。
特に理由はない、強いて言えば、これ以上踏み込みゆっくりと深い関わりを持つことが少し怖くなったのかもしれない。
けれど私はその時すでに習慣になっていた森へ足を運ぶ行為を今でも続けている。
もっとも以前は調査であったが、今はただの散策だ、森林浴をすると日々の疲れがゆっくりと癒されていく。
あの森も、どこから来たのだろうか、森のそこかしこから聞こえるゆっくりの声も、今ではすっかり活気を取り戻している。
私はいつもこの森に入ると、あの時出会ったドスのことを思い出す。
あのドスが、あの世でゆっくりと出来ていることを祈って。
今日も森は平和、多くのゆっくり達がそのか弱い生をゆっくりと謳歌している。
----------------------------------------------
思いつき子ネタで申し訳ありません。
中枢餡をほかの個体に移植したら、記憶とか人格(ゆん格?)がうつるっていう設定あったよなぁ…。
アホほど混ぜてみたら、どうなるんだろうなぁ…
って考えると、このようなことになりました。
次の日も朝からお仕事なのに、書き始めるとなんだか止まらなくて、ガリガリ書いてしまいました。
思いつき→走り書きなので、文が荒い部分やもしかしたら誤字などもあるかもしれませんが、ご容赦ください。
コンペさんのネタも考えてあるんですが、参加できるかなぁ…
いや、子ネタ書いてる暇あったら書けるだろうって感じですよね(笑
それではまた次の機会に。
ばや汁でした。
いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます!
この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。
個人用感想スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/
今までの作品
anko1748 かみさま
anko1830-1831 とくべつ
anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん
anko1847 しろくろ
anko1869 ぬくもり
anko1896 いぢめて
anko1906 どうぐ・おかえし
anko1911 さくや・いぢめて おまけ
anko1915 ゆなほ
anko1939 たなばた
anko1943 わけあり
anko1959 続ゆなほ
anko1965 わたしは
anko1983 はこ
anko2001 でぃーおー
anko2007 ゆんりつせん
餡小話では消されてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいなと思っていただけた方は
ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー
http://www26.atwiki.jp/ankoss/
をご活用ください。
今回はHENTAI一切なし、思いつき子ネタで、虐待でも愛ででもないですね。
こういうときが一番タグつけに困ります。
しいて言えば、設定考察もの、とでもいいましょうか。
楽しんでいただければ嬉しいです。
それではどうぞ。
-------------------------------------------
あれは、私がまだ若かった頃。
研究のために入った森で出会った、ある一匹のゆっくりの話。
当時の私は、ゆっくりを研究対象とした生物学者で、自然のゆっくりの生態が主な研究テーマだった。
突如世界中にあふれ浸透し、ペット・食糧などの形で人間の生活に深くかかわることになったゆっくりだが、
まだまだ多くの謎に包まれたゆっくりという生物に、私は強く惹かれていた。
その日も私は一人、研究のために自宅から近いある森に訪れていた。
この森は環境がよく、多くの生物が生息していた、ゆっくりもその中の一つであった。
この森を訪れるたびに、多くのゆっくりを目撃し、自然のままの行動を観察することが出来た。
私は週に1度はその森を訪れ一日を通してゆっくりの生活を観察することを習慣としていた。
しかしその日、一週間ぶりに訪れた森は、どこか不安になるような静けさに包まれていた。
前回来た時には、あちらこちらから野生動物の鳴き声や、ゆっくりたちの声が聞こえてきた。
それがその日に限って、聞こえてくるのはそよ風に揺れる木々の葉が擦れ合う音だけだった。
不思議に思いながらも森の奥に進んでいく、そこで私は、ある一匹のゆっくりと出会った。
「ゆぅ…おなか…へったよ…」
そのゆっくりは巨体を揺らしながら大きな舌を伸ばし、手近にある草を次々と口へ運んでいた。
遠くから見ただけでもわかる、とても大きなドスまりさだった。
ドスまりさは非常に賢い個体で、人間と対等に会話をすることも出来るものが多い。
私は森で何か異変が起こっていないか、聞いてみることにした。
「やあ、ドス、ゆっくりしていってね」
私が背を向けるドスに近付き、挨拶をする。
ドスは振り向かずに草を噛みながら、
「にんげんさん…?ゆっくりしていってね」
と、答えた。
「なぁドス、ドスは今何をしているんだい?」
「おなかがへったから…ごはんさんをたべてるんだよ…」
ドスは食事をやめようとしない、いつからそうしているのだろう、
ドスが歩いてきたと思われる地点には草一つ生えていなかった。
「そうか、ところでドス、このあたりにはたくさんのゆっくりがいたと思ったんだが…」
私の言葉を聞いて、ドスがぶるりと身を震わせ、黙ってしまう。
「…どうかしたのか?」
私が近寄ろうとすると、まりさは突如厳しい口調になって
「にんげんさん!それいじょうドスにちかづかないでね!」
と言い放つ。
ゆっくりといえどこのドスは巨大だ、ぱっとみたところ全長3~4mはあるだろうか。
暴れだされたら人間の私でも止めることはできないかもしれない。
私はおとなしくその場に留まってドスの様子をうかがうことにした。
私がしばらくドスを観察していると、わかったことがいくつかあった。
ドスはゆっくりと移動しながら食料になるものを口に入れる、という行動を続けていたが。
咀嚼とは違うタイミングで、時折口がもごもごと動いているのだ。
そしてかすかにどこかから、ドスのものではないゆっくり達の声が聞こえてくることがあった。
れいむ、まりさ、ぱちゅ、ありす、声色だけで判断してもこれだけのゆっくりがいることが分かった。
しかしその声はどれもどこか遠い、というかこもったような音として聞こえ、今だ一匹も目視で確認することはできなかった。
私の胸は高鳴っていた、もしかしたらこれは新しい発見になるかもしれない。
私の中にいくつも仮説が浮かび上がる、
ドスやその群のゆっくりはテレパシーのようなもので遠くにいる仲間たちと交信できるのではないか?
今ドスが行っている行動は、いったん自分の口内、もしくは体内に餌を貯めこみ、群に届ける狩り行為なのではないか?
私が思考を巡らせていると、突如ドスがガクガクと体を震わせてから、ぼそりと独り言のように呟いた。
「ねぇ…にんげんさん…ドスを…ころしてくれない?」
「え?」
自分の考えごとに没頭していたせいもあるが、私はドスの言っていることの意味がわからなくて、聞き返してしまう。
するとドスは、時折身体を震わせながら、ぽつりぽつりと語り始めた。
ドスは、むれのドスだったんだよ。
とってもとってもゆっくりしたむれだったよ。
だけどあるとき、にんげんさんがやってきて、むれのみんなをころしちゃったんだよ。
いっぱいいっぱいなかまたちがえいえんにゆっくりしたよ。
ドスはむれのみんなをつれて、にんげんさんがこないところまでつれていったよ。
でも、むれがゆっくりしてきたら、またにんげんさんがやってきて、またむれがへっちゃったんだよ。
それをなんどもくりかえしたよ。
ドスはつよいからかんたんににんげんさんにはまけないよ。
だけど、むれのみんなはふつうのゆっくりだから、とってもよわいんだよ。
ドスだってみんなをまもりたいけど、ドスひとりじゃあまもりきれなかったんだよ。
だから…
だからドスは、みんなと”いっしょになって”みんなをずっとゆっくりさせてあげることにしたんだよ。
「でも…もう…」
私は口を挟まずにドスの言葉に耳を傾けていた。
言葉を紡ぐごとに、ドスの体の震えは大きくなっていく。
「ドスは…つかれたよ…だって”みんな”があたまのなかでさわぐんだよ…」
私にはドスの言っていることが良く理解できなかった、一体どういうことなんだろうか。
「もうドスは…」
突然、ドスの体の震えが止まった。
辺りがシンと静まり返る。
そして再びドスが動き出した時、先ほどとは明らかに様子が違っていた。
「ゆゆっ!れいむはおなかがへったよ!おちびちゃんのためにいっぱいたべないといけないんだよ!!」
ドスは今はっきりと”れいむ”と言った、そしてどういうことかはわからないが、声色もさっきまでのドスと違い、
ゆっくりれいむのそれと同じ声だった。
「お、おい、どうしたんだ?」
私が声をかけると、初めてドスがこちらを振り返った。
「ひっ!」
私は思わず悲鳴を上げる、ゆっくりと振り返ったドスの両目は、すでに焦点があっておらず、死んだ魚のような目をしていた。
口のはしからは噛み砕き液状になった草だろうか、なにかドロドロとしたものがあふれ出ていた。
「ゆ?にんげんさんなんだぜ!」
ドスの目がグリグリと動き、片方の目が私をとらえた。
今度は先ほどのれいむとは違う、口調から判断すると、”まりさ”だろうか。
どうしたらよいかわからず棒立ちになってしまっている私に、ゆっくりとドスが近づいてくる。
「むきゃきゃ、いまぱちゅたちはつよいのよ!にんげんさんなんていちころよ!」
次に声を出したのは”ぱちゅりー”だ。
ゆっくりとした速度は、やがて緩やかに加速し、ドスは明かに私を狙って直進してきている。
まずい!
そう直感した私は、震える体を無理やり動かし、全力でドスが来る方向とは反対に走りだした。
本来ならばゆっくりごときが人間の足に追いつけるわけはないのだが、相手はドス、ヘタをうつと命にかかわるかも知れない。
「んほぉおおお!!!にげるなんてつんでれねぇぇ!!!!!」
”ありす”の声が後ろから私の背中を追ってくる。
「ゆっくりできないにんげんはしねぇぇ!!」
「まりさたちのむれをゆっくりできなくさせたゲスはせいっさいだよ!」
「むきゃきゃきゃきゃ!むてきだわぁ!!」
「とかいはなあいをあたえてあげるわぁあああ!!!」
様々な声で叫びながら襲い掛かってくるドスは、ゆっくりとではあるが、確実に私との距離を縮めてきていた。
このままでは追いつかれると思った私は、覚悟を決め、近くにあった大きな木の後ろに素早く回り込んだ。
その木の左右には小さな木が何本も生えていて、ドスは大きく回り込まないと私のところにはたどり着けないはずだ。
ドスン!!と大きな音をたてて、ドスが木にぶつかった。
その衝撃で木が大きく揺れる、幸いすぐに倒れてしまうということはなかったが、
木はドスの重さでメシメシと音を立てている、そう長くは持たないだろう。
「ゆへへへへ、このままぺしゃんこにしてやるんだぜ!」
私がなんとかこの状況を打破する方法はないかと考えていると、突然木に力を込めているドスの動きがピタリと止まった。
「にん…げん…さ…」
”ドス”の声だった。
私は振り返り、木の間からドスのほうを見る。
眼前に迫ったドスの大きな目が、はっきりと私をとらえた。
ドスの目は、先ほどとは違い、透きとおり悲しげな色をしていた。
「いまの…うちに…ドスを…ころして…はや…く…」
とぎれとぎれに言うドスの体が、再び小さく震え始める。
恐らくドスは、自分の中の”他のゆっくり達”と闘っているのだろう。
口の端から涎をだらだらとたらしながら歯を食いしばり、必死に私を見つめてくる。
「このままじゃ…もしかしたらにんげんさんたちにもめいわくがかかるかもしれないよ…
ほかのむれのこたちにもめいわくがかかっちゃうかもしれないよ…そうなるまえに…はやく!!!」
ドスはそう言うと身体に力を入れて震えを抑えつけた。
しかし内なる震えはどんどん高まっているのだろう、ドスの表情にはもはや一片の余裕も感じられなかった。
「あ”…あああ”あ”あ”!!!」
ドスが咆哮をあげる、”彼ら”が顔を出しかけているのかもしれない。
私はとっさに、さっきのドスの体当たりの衝撃で折れて足元に転がっていた木の枝を拾い、ドスの体に突き刺し、えぐった。
『ぎゃああぁああああああああああああ!!!!!』
ドスの口から、ドスの声ではないいろいろなゆっくりの声が混じったような汚い悲鳴が上がる。
私は容赦なくその傷を中心に枝を何度も突き刺し、穴を広げていく。
「ごめん、ごめんな、すぐに楽にしてやるから!」
身体を傷つける私に、ドスは一切抵抗しようとしなかった、いや、”ドス”が抵抗を抑えつけていてくれたのだろう。
私が開けた穴が致命傷であろう深さまで達したとき、ドスは傷口から大量の餡を垂れ流しながら、ゆっくりとほほ笑んだ。
「ありがとう…にんげんさん…これで…みんなゆっくり…でき…」
”ドスの声”で私にそう告げたドスは、私のそばから少し離れて、立ち止まる。
ドスの口からは、
「いやだぁあ!!しにたくない!!!」
「どぼぢでごんなごどにぃぃ!!」
「えいえんにいぎつづげるのよぉおおお!!」
「いながものだわああああ!!」
と、ほかのゆっくり達の声が漏れていたが、ドスの表情は非常に穏やかだった。
傷口から洩れる餡は止まらない、ドスはもう一度私の方を見て、
「じゃあね、さようなら」
と、言った。
事切れたドスの大きな身体から、自重に耐えきれずに大量の餡がどばどばとあふれだす。
もう危険はないだろうと思い、ドスの亡きがらに近づいた私は、自分の目を疑うあるものを目撃することとなる。
「なんだ…これは…」
それは他の、ゆっくりの中身である餡とは明らかに違う、固形物だった。
恐らく中枢餡であろうそれは、しかし私が知識として知るものとは大きく外れていた。
大きさは巨大、直径30センチ以上はあるデコボコとしたいびつな形をしていた。
そして色は非常に濁った黒で、禍々しさすら感じられるほどだった。
これはあくまで仮説にすぎないが、おそらくあのドスは”群れの生き残り”と同化したのではないだろうか。
その方法は定かではない、癒着したのか、それとも喰ったのか、今となっては確かめようはなかった。
結果がどうあれ、おそらくドスが言っていた、”守るために皆と一緒になる”ということが、これだったのだろう。
中枢餡を移植するとその持ち主の記憶、人格が移植後の個体に現れるという研究結果がある。
群れ一個単位で同化したドスは一体どのような思いで生きてきたのだろう。
今回私が見た、実際に発現した4匹の個体以外にも、おそらくたくさんの声がドスの中に響いていたのだろう。
私はその忌々しい中枢餡を思いきり踏みつぶした。
以外にもそれは脆く、乾いた粘土のようにボロボロと崩れ去った。
そして近くの草木で、ドスの体を覆い隠してやる。
墓を作るような道具は持ってきていなかったので、それがその時私にできるこの哀れなドスに対する最大限の供養だった。
その後森から出て、家に帰り、その日見たことを研究日誌にまとめてみた。
しかし、その報告書を発表しても、誰も私の言うことなど信じてくれなかった。
実際に経験した私でも、あれは夢だったのかと思うことがある。
けれど私の足に感じたあの中枢餡を砕いた感触は、私は今でもはっきりと覚えている。
あれを砕いた瞬間、多数のゆっくり達の声にならない悲鳴と、ドスの安らかな声が聞こえたような、そんな気がするのだ。
私はそれからすぐに、ゆっくりの研究に携わることをやめた。
特に理由はない、強いて言えば、これ以上踏み込みゆっくりと深い関わりを持つことが少し怖くなったのかもしれない。
けれど私はその時すでに習慣になっていた森へ足を運ぶ行為を今でも続けている。
もっとも以前は調査であったが、今はただの散策だ、森林浴をすると日々の疲れがゆっくりと癒されていく。
あの森も、どこから来たのだろうか、森のそこかしこから聞こえるゆっくりの声も、今ではすっかり活気を取り戻している。
私はいつもこの森に入ると、あの時出会ったドスのことを思い出す。
あのドスが、あの世でゆっくりと出来ていることを祈って。
今日も森は平和、多くのゆっくり達がそのか弱い生をゆっくりと謳歌している。
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思いつき子ネタで申し訳ありません。
中枢餡をほかの個体に移植したら、記憶とか人格(ゆん格?)がうつるっていう設定あったよなぁ…。
アホほど混ぜてみたら、どうなるんだろうなぁ…
って考えると、このようなことになりました。
次の日も朝からお仕事なのに、書き始めるとなんだか止まらなくて、ガリガリ書いてしまいました。
思いつき→走り書きなので、文が荒い部分やもしかしたら誤字などもあるかもしれませんが、ご容赦ください。
コンペさんのネタも考えてあるんですが、参加できるかなぁ…
いや、子ネタ書いてる暇あったら書けるだろうって感じですよね(笑
それではまた次の機会に。
ばや汁でした。
いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます!
この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。
個人用感想スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/
今までの作品
anko1748 かみさま
anko1830-1831 とくべつ
anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん
anko1847 しろくろ
anko1869 ぬくもり
anko1896 いぢめて
anko1906 どうぐ・おかえし
anko1911 さくや・いぢめて おまけ
anko1915 ゆなほ
anko1939 たなばた
anko1943 わけあり
anko1959 続ゆなほ
anko1965 わたしは
anko1983 はこ
anko2001 でぃーおー
anko2007 ゆんりつせん
餡小話では消されてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいなと思っていただけた方は
ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー
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をご活用ください。