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#navi(Adventure-seeker Killy in the magian world quest) LOG-4 魔法 マギ 霧亥がぼうっと立ち尽くしているのを見て、どうしようもなくなったルイズが教室に入り、まさに授業が始まろうというところで、霧亥は現れた。 誰かが笑うのではと、ルイズは気が気でなかったのだが、どちらかというと、その風体と表情に気圧されてしまったものが多いらしい。 そのことに加えて、先ほどのことで気分を悪くしていたのではなかったらしいと、ルイズは胸をなでおろした。 「おはようございます、みなさん」 霧亥は、おはようの意味を尋ねようかと思うほど、周囲の状況に疎い。 その分だけ、これから始まるであろう講義に、すでに集中していた。 なので、この後続く、シュヴルーズと名乗った教師の意味のない挨拶の類に意味はあるのかと、意味のないことを一人考えていた。 「―――おや、ちょうどそちらに、珍しい使い魔の方もいらっしゃいますね。異国の方だとか」 ここにきてようやく、くすくすと笑い声が聞こえてきたが、霧亥は何が起こっているのか分からなかった。 ルイズがひどく精神状態を悪化させていくのだけは知覚できたが、これも何を意味するのか、正確に判別できない。 「笑うものではありませんよ。これは素晴らしいことなのですからね……オールド・オスマンも気に掛けていましたが、前例のないことをやってのけるのは、ある意味才能です」 笑い声を制するものであったが、この発言はむしろ笑い声を大きくした。 「ゼロのルイズの才能ねぇ」 なぜかボロボロの声帯と、シュヴルーズ以上に病的な肥大を遂げた脂肪細胞の持ち主が、ひときわ大きな声で笑った。 「そこらから連れてきた平民に、うそを言わせたのかもしれないじゃないか」 霧亥は自分のことについての論争だと気づいたが、その後も続く不毛な言い合いに首を突っ込むことはしなかった。 ルイズはいくつかの発言に必死に反論したが、自分の名誉とやらのために声を張り上げているだけであり、霧亥にとってはどうでもいいことだ。 最終的に教師に助けを求めた結果、教室はようやく静けさを取り戻す。 「では、授業に入りますよ」 始まった講義の内容は、基礎的な知識の復習から始まったので、霧亥にとってきわめて好都合だった。 使用される魔法による、行使者の系統と段階分け。 ここで重要な発言のひとつが、「かつて存在した虚無の系統は失われた」ことである。 予想通り、その発祥ゆえに、最盛期においても未発達であっただろう文明は、その後数十世紀にわたって発展するどころか維持にも失敗し、衰退の一途をたどった。 唯一の頼みの綱である、魔法と呼ばれる技術も、満足に原理を解明することも体系化することもできていないところまで錆びた。 挙句の果てに使用方法すら忘れてしまったものもあるのだという。 彼らが知っているのは、ある種の作用と力場を任意で制御する、音声・動作入力式のメソッドをもった汎惑星規模のシステムであると。 何より彼ら自身が最も重要視している、“貴族”と呼ばれる特定の権限を、恐らく遺伝的に付加された個体の子体系しかその利用が不可能であること、その程度だ。 あとは便宜的に分類するほどのことしかできておらず、情報の認識や処理は個人の脳に依存している。 この認識も処理も、性能的な限界から極めて杜撰で、その上に使用言語の機能的な問題も含めて出力系は輪を掛けて悲惨なものだ。 このために、発動のための手順を羅列し、繰り返し実行させて覚えこませるのが、基本的な魔法についての訓練であるらしい。 魔法の何たるかを再発見するまでに、いったいどれほどの時間が要るだろう? 一方の霧亥は、驚くほど短時間に、個人の持つ実力だけで、その多くを観測し、分析・理解しようとしていた。 教師による実演が始まる。 “錬金”と呼ばれる、魔法のひとつの形。 陽子と中性子、そして電子に干渉する力が、雑多な原子を変成する。 「金、ですか?」 「いいえ、私はスクウェアではありませんから、これはただの貧金です」 貧者の金、真鍮、あるいは黄銅。 原子番号29銅Cuと原子番号30亜鉛Znを、7対3の割合で混合したものだった。 特に驚くべきではない。 むしろ、最高位の権限を持つ者ですら、かろうじて金などの重金属の合成が可能な程度であるという事実には、落胆せざるを得ない。 仮にこの技術を完全に解明し、使いこなせる文明が生きていたとしても、霧亥を拉致した転送技術は間違いなくオーバーテクノロジーだ。 元素変成程度の技術は、物理定数のほんの幾つかを制御するか、ちょっとした大電力があれば事足りる。 階層都市の基準でいえば、“災厄”後であっても、個人レベルで搭載された機構により、都市の機能を利用せずともそういったことを可能にしてしまえるものだった。 帰還の見込みはますます減っていく。 「さっそく生徒にやってもらおうともらいますが、そうですね―――」 ミス・ヴァリエール。 かつてこの名に、人々がこうまで反応した瞬間を、霧亥は見たことがなかった。 何かを危惧しているらしいが、ゼロがどうだといったような、いまいち意味のつかめない中傷などが抗議の主で、霧亥も教師も理解できなかった。 「やります」 ルイズが教卓に近づき、教師の指示を受けて、魔法を始めようとする。 ここで霧亥は、この学院でルイズを見てきたどの人間よりも、ルイズの持つ力について詳細な知識と正しい認識を持つに至った。 今までとはまったく異なる力。 それがルイズの意思を受けて、陽子や中性子を校正するさらに細かな素粒子に干渉する。 ルイズにはそれを可能とする素質ともいうべきものがあった。 「………!」 霧亥は興味を持ったが、それよりも優先すべきは、今起ころうとしていることを阻止することだ。 ルイズの処理能力を上回る作業量を要求される、細かな作用の固まりは、暴走しているといっていい。 変成することは適わず、原子の一部は崩壊し、素粒子を放出し始めていた。 霧亥が銃を引き抜く。 ルイズの指示を受けて、この世界に横たわる人工的な法則がその姿を変えていく速度に追い付かんばかりの、驚異的な早撃ち。 ルイズの持つ魔法発動媒体、彼らの言うところの“杖”は、手元を残して、錬金された土くれが辿る筈だったのと同じ運命を背負わされた。 閃光に尻餅をつく者や、霧亥の姿を注視する者。 人々の行動や、視線はさまざまだが、状況を正確に把握していたのは霧亥だけだった… …ルイズが悲嘆にくれている理由は、単純に杖が貴重な物であったかららしいが、効率が低いとはいえ、化学反応に核融合と核分裂を混合させたような爆発に巻き込まれるよりはよい結果のはずだ。 なぜここまで複雑性のない目の前の事実の損得を、この人物は正しく理解できないのかと、霧亥は不思議に感じた。 「こんな失敗は始めて………」 それはそうだろう、誰が魔法の失敗の瞬間を狙って、杖を破壊してしまうものか。 「いつも爆発が起こって、みんな私を馬鹿にした…けれど、これは極めつけよ、杖を壊すなんて―――」 霧亥は、自分が発砲したことを口に出すことはなかった。 面倒ごとは避けるつもりだったというだけの事で、特に他意はない。 「―――あってはならないことよ。使い魔の召喚も、こんな形になって、契約もできなくて、挙句に杖まで壊れたっていうのよ……」 メイジ失格だ、貴族失格だと呟くと、そのまま動かなくなった。 落ち込んだ精神状態を回復させるには、どのように話しかければいいのかは簡単だ。 真実を話してやればいい。 不当な扱いを受けているだけで、お前は正しいと煽れば、彼女の精神構造的に見て、効果があるのは間違いない。 実行する必要性は感じなかったが、もっとも近しく、もっとも危険な相手の観察をかねて、霧亥はそんなことを考えながらルイズを見ていた。 「召喚主に失望した? ヴァリエール家の人間であっても、みんなして躊躇わず馬鹿にできるほど、私は無能なのよ……」 自室のベッドにうずめた顔を、霧亥に向ける。 涙腺はもう閉まったらしかった。 「……私は結構、慣れたけれど、あなたには迷惑かけると思う」 霧亥のスキンスーツを眺めながら言うルイズの手には、折れた杖が握られている。 「………」 霧亥の国は、何万年も前から歴史が途切れることなく続いているのだろうか? 教師たちが驚いていたように、彼の所持品や服装に用いられている技術は、ハルケギニアで6000年間蓄積された知識をもってして、その概要すらつかめない。 彼自身からして、超人といって差し支えない人物だ。 彼のような人種が造り上げた国だから、そんな技術が生まれ、長い歴史を持つに至ったのだろうか? だとすれば、教育の過程で、自分のような惨めな落ちこぼれが生まれることも無いだろう。 「笑わないのね」 いまだに警戒を解いていないのか、人を笑うような性格ではないのか、笑えないのか。 「……もう、昼食の時間になっちゃったわ」 理由は何でもよかったが、いつも一人で落ち込んでいたルイズは、人が黙って近くにいるだけでこうも立ち直りが早いのかと思っていた。 これまで通りなら、昼になっても食欲など沸き起こらなかったというのに… …昼食も同じ食堂で、食事を取る人間も同じだったが、霧亥は観察のために同行することにした。 主に観察の対象は食事の内容である。 「使い魔召喚のあとだからかしら、いつもよりちょっと多目ね」 大量に作って大量に破棄することを良しとする精神構造はまったく理解できなかったが、サンプルが多いことには感謝した。 無数の有機物の塊。 どれも霧亥が経口摂取することが不可能なわけではないが、エネルギー補給をこれで行う気には、やはりなれない。 「…少しは食べないと毒よ」 生物にとってもっとも大事なのは、動的平衡を維持すること=代謝だが、霧亥は古い体を壊して、作り変える必要の無い存在である。 よほどの重傷を負わぬ限りは、体内に物質を取り込む必要は無く、重傷であればあるほど生物的な再生ではなく機械的な再生が行われる。 結局、霧亥はあても無く食堂内をうろつき始めた。 メイドと呼ばれる従業員がせわしなく動き回り、消費されきってもいないのに、次から次へと食料を運ぶ。 運ばれるものが、糖質主体のものになるにしたがって、徐々に席を立つ生徒たちも出始めた。 食糧の配給も、勢いが落ちる。 霧亥もこれ以上ここで観察する必要を感じなくなり、人が本格的に動き出す前に、人気の無いところへでも移動しようとしていた。 「………」 ふと霧亥は足にぶつかった物体を拾い上げる。 よく見かける食料のカスや、生物由来の繊維で汚れをふき取って棄てたものではない。 不純物の多いガラスの容器に、何やら複雑な化学物質の水溶液が入っている。 大まかな組成を見るに、人体…特に嗅覚に強く作用する以外、これといって特徴の無いもの、古い言葉で言えば臭気化合物の類であるらしい。 古い型の人類の体内で分泌され、生態活動の制御に関係する、ある種のフェロモン物質にも似ている気がする。 普通に考えれば生体内での合成はありえず、何らかの化学合成によって生み出されたものであるはず。 霧亥は、ここの人々の技術への興味から、液体を降り注ぐ電磁波、もとい日光に透かしながら見つめた。 「何をしているんです」 不意に声をかけられ、霧亥はその主である女子生徒を見つめる。 「それは、ミス・モンモラシーの作る……なぜそれを?」 睨みつけられたように感じて、一瞬たじろぎながらも、臆せず口を開く少女に、霧亥は思案しながらひとつの人物を指し示す。 「彼が……持っていたのね?」 由来は知らないが、痕跡を見るに、その指の先の人物がこれをつい先ほどまで所持していたことは間違いない。 「ケティ、そんな平民に話しかけるのはよくないぞ」 「うるさい!」 血相を変えて霧亥の示した人物へ駆け寄ると、何やら口論が始まる。 会話の内容は正確に聞き取れたが、なぜ口論に成っているのか理解するには時間を要した。 最初は、ある契約をしていたにも拘らず、その内容に反してとある人物から、今霧亥の手の中にある物を贈与されたとして憤慨しているのではと思った。 だが、聞いてみるに、いわゆる“番い”を別な個体に奪われそうになったと踏んだ結果らしい。 番いである異性が、自分以外に労力を割かれることで、生存の可能性や優秀な子孫を残す可能性が低下することを恐れる、生理的欲求。 それ以外にも、多少複雑な自我欲求や、社会的な関係性も見えたが、後者は霧亥には理解しかねるものだ。 人間的な感情は霧亥に沸き起こらなかったが、愚かなことには思えた。 「彼に聞いたわ!!」 最後の一言はこれだった。 ケティと呼ばれた生徒に、その人物は頬を平手打ちされ、遠巻きに見ていたまた別の生徒にも平手を食らわされた。 迷惑な発言だ。 せっかく獲得した二体のパートナーをつまらぬミスで失った怒りを、何の罪も無い関係者にぶつけることで、自我を正常に保とうとしているのは、なんとなく見当が付いた。 「君だね!?」 つかつかと歩いてきた男の脳には、攻撃的な思考の色が見える。 「まったくどうしてくれる? その不注意な行動で、二人の淑女の名誉が傷ついてしまった!」 この社会の中では、そういうルールが存在しているのかもしれないが、周囲の反応を見るに、そうではないのだろう。 逆上して、理不尽な事を口にしているだけらしい。 「少しは機転を利かせたらどうだ? その小瓶を拾い上げて、僕に渡すか、ケティが血相を変えて現れたところで、僕のことを伏せておくか!」 渡したところで、あの位置関係では確実に周囲に目撃され、同じ結果が待っていたのは間違いない。 そうすれば、また理不尽に怒鳴り散らすのだろうと、他人事のように霧亥は考えた。 「…うん?」 ルイズの視線に気づいて、目の前の一際愚かそうな男はにやついた。 「ふん。そうか、あのゼロのルイズの使い魔だったか! 道理で礼儀を知らない平民がいるわけだ!!」 髪をかき上げる動作は、何かを示そうとわざと行っていたが、霧亥は相変わらず理解も反応も示さない。 「僕は、ギーシュ・ド・グラモン。かのグラモン伯爵家の第四子だ……意味はわかるな平民!!」 意味が分からなかった。 両手を開いて、威嚇するように名乗ったはいいが、その名前に関する知識は霧亥に無い。 グラモン家が資金繰りに苦労しているとはいえ、大貴族であると知ったところで、意味が分かるわけでもないが… 「もう一度聞くぞ、いったいどうしてくれ―――!?」 霧亥は小瓶を元落ちていた床に放り出した。 「―――なッ!!」 霧亥は興味なさげに、無感動なまま、ギーシュの脇を通り抜ける。 「ふざけているのか!!?」 ギーシュは、これを侮辱としかとらなかった。 周りの人間も「平民風情にコケにされた、間抜けな二股男」であると笑い声を上げた。 ギーシュは肩を震わせながら必死に言葉を探す。 「決闘だ!!」 霧亥に対するさまざまな感情は、彼の語彙を圧倒してしまい、結局出したせりふは、最悪のものだった。 「いいか、決闘だ平民…!! そこまで僕と、グラモン家と、トリステイン貴族を侮辱するというのなら、この手で叩きのめす!!」 「………」 おお、という歓声が上がった。 ギーシュが馬鹿をやったなという者もいれば、霧亥の貴族への態度に腹を立て、叩きのめしてしまえと内心思う者もいる。 とにかく、食堂は一気に沸き立った。 「待ちなさい、ギーシュ!」 声を上げるのがルイズであると気づいても、霧亥は歩みを止めない。 「どう考えても、今のはあなたが悪いわ! キリイの行動に非は無い。むしろ、あなたの行動こそ侮辱だわ!!」 これをギーシュは鼻で笑い、ほかの生徒もこれに続く。 「平民に侮辱されて困るものがあるのかい? それにね、“ゼロ”のルイズ。魔法も使えない君には分からないかもしれないが、これは貴族への侮辱だぞ!?」 引っ込みが付かなくなったギーシュの行動を間抜けとは思っていても、ルイズがそれに異を唱えるとなると、人々はルイズを嘲笑した。 結果、ルイズは押し黙り、ギーシュは満足そうに宣言した。 ヴェストリ広場に来い。 そこで叩きのめすと言い、ギーシュは去っていった。 ほかの生徒たちも何やら楽しげにその後に続く。 「逃げようなんて、思うなよ?」 何人か残った生徒は、にやにやと下品な顔をしながら霧亥を監視していた。 もちろん、霧亥には逃げ出す気などもうとうない。 口で言っても分からぬであろう者達。 閉鎖的で、原始的な社会体制を持つ集団への対処方法を、霧亥は知っている。 力を見せ付け、制裁する。 ルイズたちに言わせれば、犬の躾にも似ている、なんとも単純な考えだ。 「キリイ! やめなさい、あなた殺されるわよ!?」 その言葉は霧亥に聞き入れられることは無く、黒尽くめの男は無気力そうに決闘の場所まで歩き始めた… …本塔から出ると、頂点に塔のある五角形の壁に囲まれた敷地に出る。 その一角にはヴェストリ広場があるが、このいかにも人気のなさそうな薄暗い空間に、膨大な数の生徒が結集していた。 ちょうど主役の一人、メイジ達の生贄が登場したところで、ざわめきは最高潮に達している。 「よく来たな、怖気づかなかったことは褒めてやる」 ギーシュ・ド・グラモンの声とともに、様々な言葉が叫ばれる。 広場に影を落とす塔をぼうっと眺めていた霧亥は、その歓声を一つ一つ聞き分けては、無意味なこととして脳内から排除していた。 「さあ、諸君! 決闘だ!!」 声高らかに宣言するギーシュを見てルイズは顔色を見る見る悪くしていった。 メイジと平民の戦力差は、個人の実力では埋め難い。 戦いの中では、平民に討ち取られることや、大量の弓や銃弾で、その他大勢に混じって倒れることはメイジにも多々ある。 とはいっても、これは正面切っての決闘であり、霧亥は丸腰同然なのだ。 多くの生徒が、ギーシュに一方的に料理される、生意気な平民の姿を想像して、興奮していた。 「ねぇ、タバサ。彼、どうなると思う?」 「どういう意味?」 「あの使い魔が、ギーシュに勝てるかってことよ―――」 ルイズの悪友でもあるキュルケは、霧亥とお揃いの青白い顔をひとしきり笑った後で、親友のタバサに質問していた。 「―――って、聞くまでも無いけどね」 「あの使い魔が勝つ」 タバサは霧亥よりははるかに人間味のある無表情で、キュルケの問いに答える 「それって、ありえるの?」 「今日の授業での彼の動き、見ていなかったの?」 「えーっと……」 霧亥がルイズの杖を蒸発させたとき、その姿に目を向け驚愕していたのは唯一、彼女だけであった。 彼女が無口であったせいもあって、ほかの誰もそのことに気づいてはいない。 「…彼、なにかしてたかしら?」 キュルケが思い出そうとする間、ギーシュは「杖を落とせば負けでいい」といった勝敗の条件を、自信たっぷりに霧亥に告げていた。 「先制攻撃できれば、最初の一撃でギーシュ・ド・グラモンは即死するかもしれない」 霧亥の正確な一撃は振り下ろされている最中の小さな杖を撃ち抜いた。 その威力は、灰も残さず杖を焼いた。 さらに、霧亥の使った武器は、その杖よりもはるかに小さかった。 「ほんとうに?」 「確証は無い。でもありえる」 タバサは、この意味をしっかりと理解していたし、ギーシュがどの程度の実力者なのかも知っていた。 いつに無く険しい顔で、自分の考えを告げるのも、それゆえだ。 キュルケも、普段感情を表に出さないタバサが、少しばかり緊張しているように見えて、もしや、という気がした。 「始まった!」 どこかの生徒が声を上げる。 ちょうど、ギーシュがバラの造花である杖をかざしたところだ。 「改めて名乗らせてもらう。ギーシュ、“青銅”のギーシュ・ド・グラモンだ! 君も名乗れ!!」 霧亥はなぜ記録に残すわけでもないのに自己紹介の応酬をするのだろうと、無感情に考察を始めようとしていた。 ギーシュは、だんまりを更なる侮辱ととり、痺れを切らして杖をふった。 「この期に及んでか……言っておくが、お相手は僕じゃない! 淑女の名誉を傷つけた下郎に制裁を加えるに相応しい相手がいるのさ!」 元素変成が開始され、金属元素が地中から続々と姿を現す。 霧亥は目を見張ったが、すぐにまったく脅威度の無いものであることが分かってきた。 「この青銅のゴーレム“ワルキューレ”が君の相手だ!」 青銅―――人類が最初に発見したといわれるほど、合成の容易い合金である。 土中の比較的重たい元素を原子番号29の金属元素Cu銅と、同じく原子番号50スズSnに変成し、関節を持った人型に成形。 幾つかの部位に、魔法の基本的な遠隔作用で力を加え、命あるかのように動かす。 なんとも言いがたい無様な人形が目の前にのろのろと現れたのを見て、出すつもりも無かったとはいえ、霧亥は言葉を失った。 これで戦うつもりだったとは… 「ワルキューレ、叩きのめせ!!」 果敢にも走り寄ってくるゴーレムに、霧亥は何の対応もしなかった。 そのうち、青銅の拳が勢いよく、ギーシュがぶたれたのと同じ頬を殴りつける。 動物らしい闘争本能の関係で、興奮状態にある生徒たちが叫び声をあげ、すぐに納まるのを霧亥はじっと観察した。 「もっとだ! 殴りつけろ!!」 力いっぱい二撃目が、反対の頬に叩き込まれ、今度は今までと違うどよめきが巻き起こる。 「そんな!?」 霧亥は瞬きひとつせずに、ゴーレムに視線を移した。 次の瞬間、霧亥は一人だけでギーシュの前に立っていることに、生徒たちが目を見開く。 空気が破裂するような音と、金属がひしゃげる音に、女子生徒などは肩をすくめた。 「わ、ワルキューレ!?」 霧亥の見えないほど素早い拳が、そのワルキューレの胴体を叩き割り、そのまま余力で学院の塔に叩きつけた。 青銅の人形は、到底霧亥の攻撃に耐えられないが、相手を人間の平民と見くびる貴族の生徒たちは、その光景を理解できない。 「何かの間違いだ……!」 もう一体生成されたゴーレムが、助走をつけながら殴りかかる。 直後に同じように潰され、霧亥の拳に助走の勢いを相殺されて、その場で回転して地面のめり込む。 「くそぉ!!」 ギーシュは三度杖を振った。 造花状の杖から偽物の花びらが舞い落ちると、さらに五体のゴーレムが出現する。 違いがひとつあるとすれば、その手には同じ青銅の塊が握られていることだ。 「殺せ!!」 これで、勝ち負けのある決闘ではなくなってしまった。 握られている青銅の塊は、剣や槌、それに槍で、この世界の普通の人間に振り下ろせば問題なく殺害できる。 その一言を受けて霧亥の動きも変わった。 周囲を取り囲んだ青銅の人形を、霧亥は簡単な構えをとってから、一歩踏み込んで先制する。 先ほどと同じく、見えないような攻撃が四回。 殆どひとつの音に聞こえるような打撃が繰り出され、鎧に剣を振り下ろしたようなその金属音が人の耳に届くころには、ゴーレムは拉げた青銅の置物になって地を転がった。 背後の一体も、返す裏拳で振り下ろす槌ごと頭部をもぎ取られて、高速で回転しながら観客の中に突っ込む。 ギーシュは悲鳴を上げ、ほかの生徒たちも同じような反応を取った。 「うわぁぁ!!」 霧亥はギーシュがいまだに杖を手から離さず、幾らでもワルキューレと呼ばれる構成体を作出できることを警戒していた。 その矢先に、ギーシュは杖を振り上げたのだ。 霧亥の行動はすばやかった。 ギーシュがもし、杖を棄てようとして振り上げたのでは?…というようなことは、霧亥は一切考慮しない。 先刻、ルイズの杖を破壊したときとは違い、大量に生み出される高温のプラズマで二次的破壊が発生するほどの威力で一条の光が打ち出される。 「……あれっ!? 腕が無いな」 あまりの事態に、ギーシュは悲鳴を上げるところまで考えが回らなかった。 珪素基系の肉体を容易に引き裂くビーム兵器に、人体が堪えられるはずも無い。 一瞬で肘を中心としたギーシュの利き手は蒸発し、余熱で肩近くまでが炭化。 誰もが驚きの声を上げる。 「ひぃ……!!」 消し炭になった掌が足元に落下したところで、ギーシュは吸うような悲鳴を上げてのたうちだす。 霧亥は、決闘のルールに則り、杖をギーシュの手から、無傷で叩き落した。 「勝っちゃった……」 キュルケが口をぽかんと開けながら呟く。 ほぼ全員がそう思ったが、何人かは目の前の惨状から目をそらし、そう思う余裕すら持たなかった。 「ギーシュ―――!!」 霧亥は相手が完全に沈黙するまでは、その体制を崩す気はなかった。 それを止めを刺そうとしているのだと勘違いしたギーシュの番いこと、二人の女子生徒が走り寄る。 「やめなさい! 殺されるわよ!?」 何人かが静止したが、止まる様子は無い。 それどころか、駆け寄ってギーシュの盾になると、あろうことか霧亥に杖を向けた。 「相手はこちらだ」という意思表示は、霧亥に正しく認識されてしまう。 銃口を二人より少し左側に向けて、そのまま横薙ぎに照射しようとする霧亥。 「そこまで!!」 後一歩で引き金を引こうというところで、運良く二人は命拾いした。 突然飛来した教師に霧亥が注意を向けたところで、突風が吹き荒れ、二人の女子生徒が吹き飛び、霧亥が銃口を下げて軽く踏ん張る。 「馬鹿者めッ! ミス・モンモラシー、応急処置を施して彼を医務室へ運べ!!」 これが風の魔法であることは、霧亥にも理解できた。 極々一部の大気分子の運動方向が、一方向へと揃えられることによる突風。 音速を超えていたわけでもないので、大したことは無いのは当たり前だが、巻き起こした本人は当惑していた。 「ミスタ・キリイ……やれやれ、恐ろしいものですな。土のドット風情とはいえ、こうも軽くあしらい、おまけにあの風で膝も付かぬとは」 降りてきたのは二つ。 一つは実体のある本体だが、もう一つは大気と電磁波に干渉して、簡単な視覚を惑わせる偽者の“影”だ。 本体は、ギーシュの傍らで、生徒の安否よりもこちらの動向に注目している 「おまけに、一瞬で本体を見破る…オールド・オスマンも、耄碌したわけではなかったようだ。私の名はギトー、“疾風”のギトーです」 マントを翻して、軽く一礼する教師ギトーは、内心冷や汗をかいた。 銃口は目の前の遍在ではなく、自分に向けられており、魔法を使うより引き金を引くほうが速いからだ。 「我が学院の生徒は、無駄に血気が多いものがおりましてな―――おっと、ここからは、今やってくる二人に任せましょうか。では失礼」 ギトーの姿が一つ消え、残りも空に消えると、変わってもう二人の教師がやってきた。 「ミスタ・キリイ! お怪我は!?」 「いやいや、まったく申し訳ない! 世間知らずの貴族の馬鹿息子がとんだ粗相をしてしもうた!」 オスマンとコルベールが息を切らしながら霧亥のそばにやってくる。 どうも姿勢が低い。 周囲でぽかん、としていた生徒たちは、その様子を見てさらに唖然とした。 「にしても見事じゃ、ああも容易く決闘に勝利するとは、はははは!」 それにあわせて「ほんとよ」といったことをぼそぼそ口の中で繰り返しながら、ルイズはへたり込む。 「お顔を殴られたように見えましたが、必要ならまたあの時の病室に行って治療を受けてもらっても構いませんぞ!?」 二人の姿と行動を見て、ひとまず霧亥は目的を達成できたのだと理解した。 わざわざ決闘などという馬鹿げた行いに付き合った甲斐もあるというものだ。 「キリイ君。どこへいくのかね?」 ゆっくりと、霧亥は歩き出した。 自然に人々が左右に割れ、霧亥はその中央をなんの感慨もなさそうに歩いていく。 日の光は頭上から地平線の向こうを落ち込み始めている。 ちょうど、大地が明るく照らされ、熱を帯びている頃。 一歩一歩、確かめるようにして歩く真っ黒な人は、昔見たハードコピーの内容を脳内で検索しながら、丘の上へと向かった… LOG.4@END #navi(Adventure-seeker Killy in the magian world quest)
#navi(Adventure-seeker Killy in the magian world quest) LOG-4 魔法 マギ 霧亥がぼうっと立ち尽くしているのを見て、どうしようもなくなったルイズが教室に入り、まさに授業が始まろうというところで、霧亥は現れた。 誰かが笑うのではと、ルイズは気が気でなかったのだが、どちらかというと、その風体と表情に気圧されてしまったものが多いらしい。 そのことに加えて、先ほどのことで気分を悪くしていたのではなかったらしいと、ルイズは胸をなでおろした。 「おはようございます、みなさん」 霧亥は、おはようの意味を尋ねようかと思うほど、周囲の状況に疎い。 その分だけ、これから始まるであろう講義に、すでに集中していた。 なので、この後続く、シュヴルーズと名乗った教師の意味のない挨拶の類に意味はあるのかと、意味のないことを一人考えていた。 「―――おや、ちょうどそちらに、珍しい使い魔の方もいらっしゃいますね。異国の方だとか」 ここにきてようやく、くすくすと笑い声が聞こえてきたが、霧亥は何が起こっているのか分からなかった。 ルイズがひどく精神状態を悪化させていくのだけは知覚できたが、これも何を意味するのか、正確に判別できない。 「笑うものではありませんよ。これは素晴らしいことなのですからね……オールド・オスマンも気に掛けていましたが、前例のないことをやってのけるのは、ある意味才能です」 笑い声を制するものであったが、この発言はむしろ笑い声を大きくした。 「[[ゼロのルイズ]]の才能ねぇ」 なぜかボロボロの声帯と、シュヴルーズ以上に病的な肥大を遂げた脂肪細胞の持ち主が、ひときわ大きな声で笑った。 「そこらから連れてきた平民に、うそを言わせたのかもしれないじゃないか」 霧亥は自分のことについての論争だと気づいたが、その後も続く不毛な言い合いに首を突っ込むことはしなかった。 ルイズはいくつかの発言に必死に反論したが、自分の名誉とやらのために声を張り上げているだけであり、霧亥にとってはどうでもいいことだ。 最終的に教師に助けを求めた結果、教室はようやく静けさを取り戻す。 「では、授業に入りますよ」 始まった講義の内容は、基礎的な知識の復習から始まったので、霧亥にとってきわめて好都合だった。 使用される魔法による、行使者の系統と段階分け。 ここで重要な発言のひとつが、「かつて存在した虚無の系統は失われた」ことである。 予想通り、その発祥ゆえに、最盛期においても未発達であっただろう文明は、その後数十世紀にわたって発展するどころか維持にも失敗し、衰退の一途をたどった。 唯一の頼みの綱である、魔法と呼ばれる技術も、満足に原理を解明することも体系化することもできていないところまで錆びた。 挙句の果てに使用方法すら忘れてしまったものもあるのだという。 彼らが知っているのは、ある種の作用と力場を任意で制御する、音声・動作入力式のメソッドをもった汎惑星規模のシステムであると。 何より彼ら自身が最も重要視している、“貴族”と呼ばれる特定の権限を、恐らく遺伝的に付加された個体の子体系しかその利用が不可能であること、その程度だ。 あとは便宜的に分類するほどのことしかできておらず、情報の認識や処理は個人の脳に依存している。 この認識も処理も、性能的な限界から極めて杜撰で、その上に使用言語の機能的な問題も含めて出力系は輪を掛けて悲惨なものだ。 このために、発動のための手順を羅列し、繰り返し実行させて覚えこませるのが、基本的な魔法についての訓練であるらしい。 魔法の何たるかを再発見するまでに、いったいどれほどの時間が要るだろう? 一方の霧亥は、驚くほど短時間に、個人の持つ実力だけで、その多くを観測し、分析・理解しようとしていた。 教師による実演が始まる。 “錬金”と呼ばれる、魔法のひとつの形。 陽子と中性子、そして電子に干渉する力が、雑多な原子を変成する。 「金、ですか?」 「いいえ、私はスクウェアではありませんから、これはただの貧金です」 貧者の金、真鍮、あるいは黄銅。 原子番号29銅Cuと原子番号30亜鉛Znを、7対3の割合で混合したものだった。 特に驚くべきではない。 むしろ、最高位の権限を持つ者ですら、かろうじて金などの重金属の合成が可能な程度であるという事実には、落胆せざるを得ない。 仮にこの技術を完全に解明し、使いこなせる文明が生きていたとしても、霧亥を拉致した転送技術は間違いなくオーバーテクノロジーだ。 元素変成程度の技術は、物理定数のほんの幾つかを制御するか、ちょっとした大電力があれば事足りる。 階層都市の基準でいえば、“災厄”後であっても、個人レベルで搭載された機構により、都市の機能を利用せずともそういったことを可能にしてしまえるものだった。 帰還の見込みはますます減っていく。 「さっそく生徒にやってもらおうともらいますが、そうですね―――」 ミス・ヴァリエール。 かつてこの名に、人々がこうまで反応した瞬間を、霧亥は見たことがなかった。 何かを危惧しているらしいが、ゼロがどうだといったような、いまいち意味のつかめない中傷などが抗議の主で、霧亥も教師も理解できなかった。 「やります」 ルイズが教卓に近づき、教師の指示を受けて、魔法を始めようとする。 ここで霧亥は、この学院でルイズを見てきたどの人間よりも、ルイズの持つ力について詳細な知識と正しい認識を持つに至った。 今までとはまったく異なる力。 それがルイズの意思を受けて、陽子や中性子を校正するさらに細かな素粒子に干渉する。 ルイズにはそれを可能とする素質ともいうべきものがあった。 「………!」 霧亥は興味を持ったが、それよりも優先すべきは、今起ころうとしていることを阻止することだ。 ルイズの処理能力を上回る作業量を要求される、細かな作用の固まりは、暴走しているといっていい。 変成することは適わず、原子の一部は崩壊し、素粒子を放出し始めていた。 霧亥が銃を引き抜く。 ルイズの指示を受けて、この世界に横たわる人工的な法則がその姿を変えていく速度に追い付かんばかりの、驚異的な早撃ち。 ルイズの持つ魔法発動媒体、彼らの言うところの“杖”は、手元を残して、錬金された土くれが辿る筈だったのと同じ運命を背負わされた。 閃光に尻餅をつく者や、霧亥の姿を注視する者。 人々の行動や、視線はさまざまだが、状況を正確に把握していたのは霧亥だけだった… …ルイズが悲嘆にくれている理由は、単純に杖が貴重な物であったかららしいが、効率が低いとはいえ、化学反応に核融合と核分裂を混合させたような爆発に巻き込まれるよりはよい結果のはずだ。 なぜここまで複雑性のない目の前の事実の損得を、この人物は正しく理解できないのかと、霧亥は不思議に感じた。 「こんな失敗は始めて………」 それはそうだろう、誰が魔法の失敗の瞬間を狙って、杖を破壊してしまうものか。 「いつも爆発が起こって、みんな私を馬鹿にした…けれど、これは極めつけよ、杖を壊すなんて―――」 霧亥は、自分が発砲したことを口に出すことはなかった。 面倒ごとは避けるつもりだったというだけの事で、特に他意はない。 「―――あってはならないことよ。使い魔の召喚も、こんな形になって、契約もできなくて、挙句に杖まで壊れたっていうのよ……」 メイジ失格だ、貴族失格だと呟くと、そのまま動かなくなった。 落ち込んだ精神状態を回復させるには、どのように話しかければいいのかは簡単だ。 真実を話してやればいい。 不当な扱いを受けているだけで、お前は正しいと煽れば、彼女の精神構造的に見て、効果があるのは間違いない。 実行する必要性は感じなかったが、もっとも近しく、もっとも危険な相手の観察をかねて、霧亥はそんなことを考えながらルイズを見ていた。 「召喚主に失望した? ヴァリエール家の人間であっても、みんなして躊躇わず馬鹿にできるほど、私は無能なのよ……」 自室のベッドにうずめた顔を、霧亥に向ける。 涙腺はもう閉まったらしかった。 「……私は結構、慣れたけれど、あなたには迷惑かけると思う」 霧亥のスキンスーツを眺めながら言うルイズの手には、折れた杖が握られている。 「………」 霧亥の国は、何万年も前から歴史が途切れることなく続いているのだろうか? 教師たちが驚いていたように、彼の所持品や服装に用いられている技術は、ハルケギニアで6000年間蓄積された知識をもってして、その概要すらつかめない。 彼自身からして、超人といって差し支えない人物だ。 彼のような人種が造り上げた国だから、そんな技術が生まれ、長い歴史を持つに至ったのだろうか? だとすれば、教育の過程で、自分のような惨めな落ちこぼれが生まれることも無いだろう。 「笑わないのね」 いまだに警戒を解いていないのか、人を笑うような性格ではないのか、笑えないのか。 「……もう、昼食の時間になっちゃったわ」 理由は何でもよかったが、いつも一人で落ち込んでいたルイズは、人が黙って近くにいるだけでこうも立ち直りが早いのかと思っていた。 これまで通りなら、昼になっても食欲など沸き起こらなかったというのに… …昼食も同じ食堂で、食事を取る人間も同じだったが、霧亥は観察のために同行することにした。 主に観察の対象は食事の内容である。 「使い魔召喚のあとだからかしら、いつもよりちょっと多目ね」 大量に作って大量に破棄することを良しとする精神構造はまったく理解できなかったが、サンプルが多いことには感謝した。 無数の有機物の塊。 どれも霧亥が経口摂取することが不可能なわけではないが、エネルギー補給をこれで行う気には、やはりなれない。 「…少しは食べないと毒よ」 生物にとってもっとも大事なのは、動的平衡を維持すること=代謝だが、霧亥は古い体を壊して、作り変える必要の無い存在である。 よほどの重傷を負わぬ限りは、体内に物質を取り込む必要は無く、重傷であればあるほど生物的な再生ではなく機械的な再生が行われる。 結局、霧亥はあても無く食堂内をうろつき始めた。 メイドと呼ばれる従業員がせわしなく動き回り、消費されきってもいないのに、次から次へと食料を運ぶ。 運ばれるものが、糖質主体のものになるにしたがって、徐々に席を立つ生徒たちも出始めた。 食糧の配給も、勢いが落ちる。 霧亥もこれ以上ここで観察する必要を感じなくなり、人が本格的に動き出す前に、人気の無いところへでも移動しようとしていた。 「………」 ふと霧亥は足にぶつかった物体を拾い上げる。 よく見かける食料のカスや、生物由来の繊維で汚れをふき取って棄てたものではない。 不純物の多いガラスの容器に、何やら複雑な化学物質の水溶液が入っている。 大まかな組成を見るに、人体…特に嗅覚に強く作用する以外、これといって特徴の無いもの、古い言葉で言えば臭気化合物の類であるらしい。 古い型の人類の体内で分泌され、生態活動の制御に関係する、ある種のフェロモン物質にも似ている気がする。 普通に考えれば生体内での合成はありえず、何らかの化学合成によって生み出されたものであるはず。 霧亥は、ここの人々の技術への興味から、液体を降り注ぐ電磁波、もとい日光に透かしながら見つめた。 「何をしているんです」 不意に声をかけられ、霧亥はその主である女子生徒を見つめる。 「それは、ミス・モンモラシーの作る……なぜそれを?」 睨みつけられたように感じて、一瞬たじろぎながらも、臆せず口を開く少女に、霧亥は思案しながらひとつの人物を指し示す。 「彼が……持っていたのね?」 由来は知らないが、痕跡を見るに、その指の先の人物がこれをつい先ほどまで所持していたことは間違いない。 「ケティ、そんな平民に話しかけるのはよくないぞ」 「うるさい!」 血相を変えて霧亥の示した人物へ駆け寄ると、何やら口論が始まる。 会話の内容は正確に聞き取れたが、なぜ口論に成っているのか理解するには時間を要した。 最初は、ある契約をしていたにも拘らず、その内容に反してとある人物から、今霧亥の手の中にある物を贈与されたとして憤慨しているのではと思った。 だが、聞いてみるに、いわゆる“番い”を別な個体に奪われそうになったと踏んだ結果らしい。 番いである異性が、自分以外に労力を割かれることで、生存の可能性や優秀な子孫を残す可能性が低下することを恐れる、生理的欲求。 それ以外にも、多少複雑な自我欲求や、社会的な関係性も見えたが、後者は霧亥には理解しかねるものだ。 人間的な感情は霧亥に沸き起こらなかったが、愚かなことには思えた。 「彼に聞いたわ!!」 最後の一言はこれだった。 ケティと呼ばれた生徒に、その人物は頬を平手打ちされ、遠巻きに見ていたまた別の生徒にも平手を食らわされた。 迷惑な発言だ。 せっかく獲得した二体のパートナーをつまらぬミスで失った怒りを、何の罪も無い関係者にぶつけることで、自我を正常に保とうとしているのは、なんとなく見当が付いた。 「君だね!?」 つかつかと歩いてきた男の脳には、攻撃的な思考の色が見える。 「まったくどうしてくれる? その不注意な行動で、二人の淑女の名誉が傷ついてしまった!」 この社会の中では、そういうルールが存在しているのかもしれないが、周囲の反応を見るに、そうではないのだろう。 逆上して、理不尽な事を口にしているだけらしい。 「少しは機転を利かせたらどうだ? その小瓶を拾い上げて、僕に渡すか、ケティが血相を変えて現れたところで、僕のことを伏せておくか!」 渡したところで、あの位置関係では確実に周囲に目撃され、同じ結果が待っていたのは間違いない。 そうすれば、また理不尽に怒鳴り散らすのだろうと、他人事のように霧亥は考えた。 「…うん?」 ルイズの視線に気づいて、目の前の一際愚かそうな男はにやついた。 「ふん。そうか、あのゼロのルイズの使い魔だったか! 道理で礼儀を知らない平民がいるわけだ!!」 髪をかき上げる動作は、何かを示そうとわざと行っていたが、霧亥は相変わらず理解も反応も示さない。 「僕は、ギーシュ・ド・グラモン。かのグラモン伯爵家の第四子だ……意味はわかるな平民!!」 意味が分からなかった。 両手を開いて、威嚇するように名乗ったはいいが、その名前に関する知識は霧亥に無い。 グラモン家が資金繰りに苦労しているとはいえ、大貴族であると知ったところで、意味が分かるわけでもないが… 「もう一度聞くぞ、いったいどうしてくれ―――!?」 霧亥は小瓶を元落ちていた床に放り出した。 「―――なッ!!」 霧亥は興味なさげに、無感動なまま、ギーシュの脇を通り抜ける。 「ふざけているのか!!?」 ギーシュは、これを侮辱としかとらなかった。 周りの人間も「平民風情にコケにされた、間抜けな二股男」であると笑い声を上げた。 ギーシュは肩を震わせながら必死に言葉を探す。 「決闘だ!!」 霧亥に対するさまざまな感情は、彼の語彙を圧倒してしまい、結局出したせりふは、最悪のものだった。 「いいか、決闘だ平民…!! そこまで僕と、グラモン家と、トリステイン貴族を侮辱するというのなら、この手で叩きのめす!!」 「………」 おお、という歓声が上がった。 ギーシュが馬鹿をやったなという者もいれば、霧亥の貴族への態度に腹を立て、叩きのめしてしまえと内心思う者もいる。 とにかく、食堂は一気に沸き立った。 「待ちなさい、ギーシュ!」 声を上げるのがルイズであると気づいても、霧亥は歩みを止めない。 「どう考えても、今のはあなたが悪いわ! キリイの行動に非は無い。むしろ、あなたの行動こそ侮辱だわ!!」 これをギーシュは鼻で笑い、ほかの生徒もこれに続く。 「平民に侮辱されて困るものがあるのかい? それにね、“ゼロ”のルイズ。魔法も使えない君には分からないかもしれないが、これは貴族への侮辱だぞ!?」 引っ込みが付かなくなったギーシュの行動を間抜けとは思っていても、ルイズがそれに異を唱えるとなると、人々はルイズを嘲笑した。 結果、ルイズは押し黙り、ギーシュは満足そうに宣言した。 ヴェストリ広場に来い。 そこで叩きのめすと言い、ギーシュは去っていった。 ほかの生徒たちも何やら楽しげにその後に続く。 「逃げようなんて、思うなよ?」 何人か残った生徒は、にやにやと下品な顔をしながら霧亥を監視していた。 もちろん、霧亥には逃げ出す気などもうとうない。 口で言っても分からぬであろう者達。 閉鎖的で、原始的な社会体制を持つ集団への対処方法を、霧亥は知っている。 力を見せ付け、制裁する。 ルイズたちに言わせれば、犬の躾にも似ている、なんとも単純な考えだ。 「キリイ! やめなさい、あなた殺されるわよ!?」 その言葉は霧亥に聞き入れられることは無く、黒尽くめの男は無気力そうに決闘の場所まで歩き始めた… …本塔から出ると、頂点に塔のある五角形の壁に囲まれた敷地に出る。 その一角にはヴェストリ広場があるが、このいかにも人気のなさそうな薄暗い空間に、膨大な数の生徒が結集していた。 ちょうど主役の一人、メイジ達の生贄が登場したところで、ざわめきは最高潮に達している。 「よく来たな、怖気づかなかったことは褒めてやる」 ギーシュ・ド・グラモンの声とともに、様々な言葉が叫ばれる。 広場に影を落とす塔をぼうっと眺めていた霧亥は、その歓声を一つ一つ聞き分けては、無意味なこととして脳内から排除していた。 「さあ、諸君! 決闘だ!!」 声高らかに宣言するギーシュを見てルイズは顔色を見る見る悪くしていった。 メイジと平民の戦力差は、個人の実力では埋め難い。 戦いの中では、平民に討ち取られることや、大量の弓や銃弾で、その他大勢に混じって倒れることはメイジにも多々ある。 とはいっても、これは正面切っての決闘であり、霧亥は丸腰同然なのだ。 多くの生徒が、ギーシュに一方的に料理される、生意気な平民の姿を想像して、興奮していた。 「ねぇ、タバサ。彼、どうなると思う?」 「どういう意味?」 「あの使い魔が、ギーシュに勝てるかってことよ―――」 ルイズの悪友でもあるキュルケは、霧亥とお揃いの青白い顔をひとしきり笑った後で、親友のタバサに質問していた。 「―――って、聞くまでも無いけどね」 「あの使い魔が勝つ」 タバサは霧亥よりははるかに人間味のある無表情で、キュルケの問いに答える 「それって、ありえるの?」 「今日の授業での彼の動き、見ていなかったの?」 「えーっと……」 霧亥がルイズの杖を蒸発させたとき、その姿に目を向け驚愕していたのは唯一、彼女だけであった。 彼女が無口であったせいもあって、ほかの誰もそのことに気づいてはいない。 「…彼、なにかしてたかしら?」 キュルケが思い出そうとする間、ギーシュは「杖を落とせば負けでいい」といった勝敗の条件を、自信たっぷりに霧亥に告げていた。 「先制攻撃できれば、最初の一撃でギーシュ・ド・グラモンは即死するかもしれない」 霧亥の正確な一撃は振り下ろされている最中の小さな杖を撃ち抜いた。 その威力は、灰も残さず杖を焼いた。 さらに、霧亥の使った武器は、その杖よりもはるかに小さかった。 「ほんとうに?」 「確証は無い。でもありえる」 タバサは、この意味をしっかりと理解していたし、ギーシュがどの程度の実力者なのかも知っていた。 いつに無く険しい顔で、自分の考えを告げるのも、それゆえだ。 キュルケも、普段感情を表に出さないタバサが、少しばかり緊張しているように見えて、もしや、という気がした。 「始まった!」 どこかの生徒が声を上げる。 ちょうど、ギーシュがバラの造花である杖をかざしたところだ。 「改めて名乗らせてもらう。ギーシュ、“青銅”のギーシュ・ド・グラモンだ! 君も名乗れ!!」 霧亥はなぜ記録に残すわけでもないのに自己紹介の応酬をするのだろうと、無感情に考察を始めようとしていた。 ギーシュは、だんまりを更なる侮辱ととり、痺れを切らして杖をふった。 「この期に及んでか……言っておくが、お相手は僕じゃない! 淑女の名誉を傷つけた下郎に制裁を加えるに相応しい相手がいるのさ!」 元素変成が開始され、金属元素が地中から続々と姿を現す。 霧亥は目を見張ったが、すぐにまったく脅威度の無いものであることが分かってきた。 「この青銅のゴーレム“ワルキューレ”が君の相手だ!」 青銅―――人類が最初に発見したといわれるほど、合成の容易い合金である。 土中の比較的重たい元素を原子番号29の金属元素Cu銅と、同じく原子番号50スズSnに変成し、関節を持った人型に成形。 幾つかの部位に、魔法の基本的な遠隔作用で力を加え、命あるかのように動かす。 なんとも言いがたい無様な人形が目の前にのろのろと現れたのを見て、出すつもりも無かったとはいえ、霧亥は言葉を失った。 これで戦うつもりだったとは… 「ワルキューレ、叩きのめせ!!」 果敢にも走り寄ってくるゴーレムに、霧亥は何の対応もしなかった。 そのうち、青銅の拳が勢いよく、ギーシュがぶたれたのと同じ頬を殴りつける。 動物らしい闘争本能の関係で、興奮状態にある生徒たちが叫び声をあげ、すぐに納まるのを霧亥はじっと観察した。 「もっとだ! 殴りつけろ!!」 力いっぱい二撃目が、反対の頬に叩き込まれ、今度は今までと違うどよめきが巻き起こる。 「そんな!?」 霧亥は瞬きひとつせずに、ゴーレムに視線を移した。 次の瞬間、霧亥は一人だけでギーシュの前に立っていることに、生徒たちが目を見開く。 空気が破裂するような音と、金属がひしゃげる音に、女子生徒などは肩をすくめた。 「わ、ワルキューレ!?」 霧亥の見えないほど素早い拳が、そのワルキューレの胴体を叩き割り、そのまま余力で学院の塔に叩きつけた。 青銅の人形は、到底霧亥の攻撃に耐えられないが、相手を人間の平民と見くびる貴族の生徒たちは、その光景を理解できない。 「何かの間違いだ……!」 もう一体生成されたゴーレムが、助走をつけながら殴りかかる。 直後に同じように潰され、霧亥の拳に助走の勢いを相殺されて、その場で回転して地面のめり込む。 「くそぉ!!」 ギーシュは三度杖を振った。 造花状の杖から偽物の花びらが舞い落ちると、さらに五体のゴーレムが出現する。 違いがひとつあるとすれば、その手には同じ青銅の塊が握られていることだ。 「殺せ!!」 これで、勝ち負けのある決闘ではなくなってしまった。 握られている青銅の塊は、剣や槌、それに槍で、この世界の普通の人間に振り下ろせば問題なく殺害できる。 その一言を受けて霧亥の動きも変わった。 周囲を取り囲んだ青銅の人形を、霧亥は簡単な構えをとってから、一歩踏み込んで先制する。 先ほどと同じく、見えないような攻撃が四回。 殆どひとつの音に聞こえるような打撃が繰り出され、鎧に剣を振り下ろしたようなその金属音が人の耳に届くころには、ゴーレムは拉げた青銅の置物になって地を転がった。 背後の一体も、返す裏拳で振り下ろす槌ごと頭部をもぎ取られて、高速で回転しながら観客の中に突っ込む。 ギーシュは悲鳴を上げ、ほかの生徒たちも同じような反応を取った。 「うわぁぁ!!」 霧亥はギーシュがいまだに杖を手から離さず、幾らでもワルキューレと呼ばれる構成体を作出できることを警戒していた。 その矢先に、ギーシュは杖を振り上げたのだ。 霧亥の行動はすばやかった。 ギーシュがもし、杖を棄てようとして振り上げたのでは?…というようなことは、霧亥は一切考慮しない。 先刻、ルイズの杖を破壊したときとは違い、大量に生み出される高温のプラズマで二次的破壊が発生するほどの威力で一条の光が打ち出される。 「……あれっ!? 腕が無いな」 あまりの事態に、ギーシュは悲鳴を上げるところまで考えが回らなかった。 珪素基系の肉体を容易に引き裂くビーム兵器に、人体が堪えられるはずも無い。 一瞬で肘を中心としたギーシュの利き手は蒸発し、余熱で肩近くまでが炭化。 誰もが驚きの声を上げる。 「ひぃ……!!」 消し炭になった掌が足元に落下したところで、ギーシュは吸うような悲鳴を上げてのたうちだす。 霧亥は、決闘のルールに則り、杖をギーシュの手から、無傷で叩き落した。 「勝っちゃった……」 キュルケが口をぽかんと開けながら呟く。 ほぼ全員がそう思ったが、何人かは目の前の惨状から目をそらし、そう思う余裕すら持たなかった。 「ギーシュ―――!!」 霧亥は相手が完全に沈黙するまでは、その体制を崩す気はなかった。 それを止めを刺そうとしているのだと勘違いしたギーシュの番いこと、二人の女子生徒が走り寄る。 「やめなさい! 殺されるわよ!?」 何人かが静止したが、止まる様子は無い。 それどころか、駆け寄ってギーシュの盾になると、あろうことか霧亥に杖を向けた。 「相手はこちらだ」という意思表示は、霧亥に正しく認識されてしまう。 銃口を二人より少し左側に向けて、そのまま横薙ぎに照射しようとする霧亥。 「そこまで!!」 後一歩で引き金を引こうというところで、運良く二人は命拾いした。 突然飛来した教師に霧亥が注意を向けたところで、突風が吹き荒れ、二人の女子生徒が吹き飛び、霧亥が銃口を下げて軽く踏ん張る。 「馬鹿者めッ! ミス・モンモラシー、応急処置を施して彼を医務室へ運べ!!」 これが風の魔法であることは、霧亥にも理解できた。 極々一部の大気分子の運動方向が、一方向へと揃えられることによる突風。 音速を超えていたわけでもないので、大したことは無いのは当たり前だが、巻き起こした本人は当惑していた。 「ミスタ・キリイ……やれやれ、恐ろしいものですな。土のドット風情とはいえ、こうも軽くあしらい、おまけにあの風で膝も付かぬとは」 降りてきたのは二つ。 一つは実体のある本体だが、もう一つは大気と電磁波に干渉して、簡単な視覚を惑わせる偽者の“影”だ。 本体は、ギーシュの傍らで、生徒の安否よりもこちらの動向に注目している 「おまけに、一瞬で本体を見破る…オールド・オスマンも、耄碌したわけではなかったようだ。私の名はギトー、“疾風”のギトーです」 マントを翻して、軽く一礼する教師ギトーは、内心冷や汗をかいた。 銃口は目の前の遍在ではなく、自分に向けられており、魔法を使うより引き金を引くほうが速いからだ。 「我が学院の生徒は、無駄に血気が多いものがおりましてな―――おっと、ここからは、今やってくる二人に任せましょうか。では失礼」 ギトーの姿が一つ消え、残りも空に消えると、変わってもう二人の教師がやってきた。 「ミスタ・キリイ! お怪我は!?」 「いやいや、まったく申し訳ない! 世間知らずの貴族の馬鹿息子がとんだ粗相をしてしもうた!」 オスマンとコルベールが息を切らしながら霧亥のそばにやってくる。 どうも姿勢が低い。 周囲でぽかん、としていた生徒たちは、その様子を見てさらに唖然とした。 「にしても見事じゃ、ああも容易く決闘に勝利するとは、はははは!」 それにあわせて「ほんとよ」といったことをぼそぼそ口の中で繰り返しながら、ルイズはへたり込む。 「お顔を殴られたように見えましたが、必要ならまたあの時の病室に行って治療を受けてもらっても構いませんぞ!?」 二人の姿と行動を見て、ひとまず霧亥は目的を達成できたのだと理解した。 わざわざ決闘などという馬鹿げた行いに付き合った甲斐もあるというものだ。 「キリイ君。どこへいくのかね?」 ゆっくりと、霧亥は歩き出した。 自然に人々が左右に割れ、霧亥はその中央をなんの感慨もなさそうに歩いていく。 日の光は頭上から地平線の向こうを落ち込み始めている。 ちょうど、大地が明るく照らされ、熱を帯びている頃。 一歩一歩、確かめるようにして歩く真っ黒な人は、昔見たハードコピーの内容を脳内で検索しながら、丘の上へと向かった… LOG.4@END #navi(Adventure-seeker Killy in the magian world quest)

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