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スクライド・零-13 - (2008/03/12 (水) 21:38:15) のソース
[[>>back>スクライド・零-12]] [[>>next>スクライド・零-14]] 「おやおやおチビちゃん、張り切ってるねぇ」 カズマを伴って茂みから本塔を見張るルイズを冷ややかにながめるフードの下の目。 口元には嘲笑をたたえたミス・ロングビルこと土くれのフーケは、一瞥をくれてその場を立ち去った。 まさか下調べしているのを見られるとは想定外だったが、 昨晩のような月夜にあのピンクの髪はいくら隠そうとしても所詮素人のやること、相当に目立つ。 彼女がゼロという不名誉な二つ名で呼ばれているのは重々承知していたから、 決定的な証拠さえ見せなければ何もできないと踏んだのは予想通りだったが、 まさか次の晩から張り込みをするとは流石に思ってもみなかった。 もっとも、王女殿下の行幸などというめったにないイベントがあることがわかったのだ、 決行はそっちに変更済みである。警備もそちらに割かざるを得ないから手薄になるし王女の顔に泥もぬれる。 一石二鳥以上だろう。 まぁ、やる気のミス・ヴァリエールにはせいぜい寝不足になってもらおうではないか。 意地の悪いニヤニヤ笑いはしばらく止まらなかったという。 ちなみに、翌朝しっかりルイズは寝過ごしたそうな。 さて、時間は品評会の前日まで進む。 アンリエッタ王女の来訪ということで、学院総出での出迎えが行われた。 ルイズとしてはここ数日間の空振りで体力的にも精神的にもかなりやばいことになっていたが、 ものすごくがんばって、フラフラしながらもなんとかユニコーンが引く馬車が通り過ぎるまで耐えることができた。 直後に立ったまま寝てしまい、苦笑しながらのキュルケに支えられていたことを知ったらどんな顔をするだろうか。 カズマはハナから興味がないので(ルイズは出迎えに参加するように言っていたようだが、 寝てるんだか起きてるんだかあやしい状態だったのでキュルケに押し付けて聞き流した)、 一応一行が見えるあたりで木にもたれて座っていた。隣ではタバサが本を読んでいる。 「いいのか?」と聞いてみたが、「興味ない」「(私は)外国人だから(参加しなくても)問題ない」とかいう答え。 インナー育ちで外国と言う概念が良くわからないカズマにはピンとこなかったが (『縄張り』のようなものか、程度に考えたようだ)、本人がいいならいいのだろうと気にしないことにしている。 タバサの使い魔であるシルフィードも木陰でうたた寝中だ。 妙に平和な空間が形成されていたがそれも終わる。王女が建物に入り生徒が解散となったためだ。 居眠り中のルイズをレビテーションで運びながら、キュルケとギーシュ、さらにモンモランシーがやってきた。 王女の容姿を褒めるギーシュにモンモランシーが頬を膨らませ、私のほうが美人よねぇ等とキュルケが言い、 いやいやあの高貴さは君には真似できないとギーシュが返す。ついでにモンモランシーが自分の胸元に目を下ろしため息をつくエトセトラエトセトラ…。 起きないルイズが微笑ましい。 ふと、君島やかなみとすごした何気ない日を思い出す、こんな空気もごくごくたまには悪くない。 その日の夕食後のこと、ルイズは今晩も張り込むべきか迷っていた。 これまでの空振りのこともあるし、そもそも姫殿下が滞在中ということで 城から連れてきた衛兵も歩哨に立っている。こっちが捕らえられる様なことになったりするかもしれないではないか。 それはまずい。汚名返上はおろか肉親からどんな折檻を受けるか想像をしただけで身震いがする。 「というわけで今晩の張り込みは中止よ」 「そうか」 脳内スキーマを全く説明することなく結論を述べるルイズに、 あまりの手ごたえの無さにすっかり飽きていたカズマは軽く同意する。 とまぁ、そこに長く2回、短く3回のノックの音が響いた。 [[>>back>スクライド・零-12]] [[>>next>スクライド・零-14]]