ディス・アストラナガンのディス・レヴによって、多くの兵士と5割近い貴族が失われたレコン・キスタ。
元より烏合の衆でしかなかった連中だが、これによって指揮系統はめちゃめちゃに寸断され、とりあえずの纏まりすら、欠いている状況であった。
クォヴレーの助言に従って、敵陣の状況を察したウェールズは、好機と見てイーグル号による艦砲射撃を敢行しつつ、地上部隊僅か200を率い敵陣を襲撃。
1割近い損害を出しながらも、それ以上の3000名に上る被害をレコン・キスタに与え、勝利の勝ち鬨を上げることとなった。
明朝にあった、正体不明の大悪魔の襲撃と早朝のアルビオン王軍の奇襲により危機を感じたレコン・キスタ首脳部は撤退を敢行。20リーグもの後退を余儀なくされた。
この後退の最中に、尚も艦砲射撃は続けられ、混乱の中からどうにか援護要請を受けた艦隊が戦場に急行するまでの3時間、散々に撃たれ、押っ取り刀でレキシントンを旗艦とするレコン・キスタ艦隊が到着した時にはイーグル号は既に後退していた。
翌日になり、レコン・キスタがどうにか再編成を終えた時点で確認されたのは、敵の攻撃と逃げ出した傭兵達のため、既に兵力が三万を切っている現状だった。
僅か一晩で、4割の兵を失ったことになるのだ。
更に別の問題も発生していた。
王党派壊滅を目前とし、レコン・キスタ内部での勢力争いは徐々に終局に向かいつつあったのだが、先に述べたとおりに5割もの、それも有力貴族が失われたレコン・キスタは、再度内部で勢力争いが勃発。
利権を巡っての議会論争が発生しつつあった。
一方の王党派は、レコン・キスタより逃げ出した傭兵を逆に取り込み、一時的にとはいえ勢力を拡大。旗色が悪くなればすぐに離反するこれらの傭兵をより深く獲得するために、ウェールズは再度の奇襲を敢行。
利権争いのため、まともに連携を取ろうとしない貴族の陣営を一つ潰し、悠々と凱旋して行った。
ここに至って、利に賢い一部のレコン・キスタ側貴族達は流れは王党派にあると見なし、傘下の傭兵もろとも王軍に帰順を求めた。ちなみにこいつらは、そろいも揃って指輪の力では無しに一番最初にレコン・キスタ側に付いた連中でもある。
ウェールズの本音としては、こんな連中は片っ端からエア・ハンマーでぶん殴ってやりたいところだったが、戦況を鑑みて帰順を認可。それらの戦力も取り込んで王党軍はより躍進した。
一度こうなると脆いもので。
はせ参じる傭兵も増え、艦隊戦力を除けば、あっという間に戦力バランスは王党派側に傾いていった。
なお無傷の艦隊は強力だが、平野部に置いての戦争というものは結局は陣地の取り合いである。いくら敵を倒しても、敵が居なくなった後の占領が出来なければ意味がない。
加速度的に王党派は勢力を増していき、やがてフネごと王党派につく者も現れ始め、レコン・キスタは追いつめられていった。
そんな、タイミングで。
戦場の空。ウェールズは見慣れぬものを見た。
「あれは……」
一面四臂の巨大な黒いヒトガタ。だが、その下半身は蛇の如く。
姿は違うが、あの大きさ。まるであれはあの夜の悪魔のようだ。
あのヴァリエール家の三女が連れていた使い魔の物であった悪魔と似た巨大なゴーレム。
「もしや、再び味方してくれるのか?」
期待を込めた目で見上げるウェールズに、否、その戦場にいた全てのものに重苦しい男の声が聞こえた。
『第二の地獄、アンティノラ』
この日アルビオン王党派は、その総領とも言うべきウェールズ皇太子もろとも主力を失い、壊滅した。
同時にオリヴァー・クロムウェルを失ったレコン・キスタにも、アルビオン全土を統括するだけの力は残されておらず、これより『白の国』は傭兵残党の山賊化、治安の悪化により混迷へと突き進むこととなる。
元より烏合の衆でしかなかった連中だが、これによって指揮系統はめちゃめちゃに寸断され、とりあえずの纏まりすら、欠いている状況であった。
クォヴレーの助言に従って、敵陣の状況を察したウェールズは、好機と見てイーグル号による艦砲射撃を敢行しつつ、地上部隊僅か200を率い敵陣を襲撃。
1割近い損害を出しながらも、それ以上の3000名に上る被害をレコン・キスタに与え、勝利の勝ち鬨を上げることとなった。
明朝にあった、正体不明の大悪魔の襲撃と早朝のアルビオン王軍の奇襲により危機を感じたレコン・キスタ首脳部は撤退を敢行。20リーグもの後退を余儀なくされた。
この後退の最中に、尚も艦砲射撃は続けられ、混乱の中からどうにか援護要請を受けた艦隊が戦場に急行するまでの3時間、散々に撃たれ、押っ取り刀でレキシントンを旗艦とするレコン・キスタ艦隊が到着した時にはイーグル号は既に後退していた。
翌日になり、レコン・キスタがどうにか再編成を終えた時点で確認されたのは、敵の攻撃と逃げ出した傭兵達のため、既に兵力が三万を切っている現状だった。
僅か一晩で、4割の兵を失ったことになるのだ。
更に別の問題も発生していた。
王党派壊滅を目前とし、レコン・キスタ内部での勢力争いは徐々に終局に向かいつつあったのだが、先に述べたとおりに5割もの、それも有力貴族が失われたレコン・キスタは、再度内部で勢力争いが勃発。
利権を巡っての議会論争が発生しつつあった。
一方の王党派は、レコン・キスタより逃げ出した傭兵を逆に取り込み、一時的にとはいえ勢力を拡大。旗色が悪くなればすぐに離反するこれらの傭兵をより深く獲得するために、ウェールズは再度の奇襲を敢行。
利権争いのため、まともに連携を取ろうとしない貴族の陣営を一つ潰し、悠々と凱旋して行った。
ここに至って、利に賢い一部のレコン・キスタ側貴族達は流れは王党派にあると見なし、傘下の傭兵もろとも王軍に帰順を求めた。ちなみにこいつらは、そろいも揃って指輪の力では無しに一番最初にレコン・キスタ側に付いた連中でもある。
ウェールズの本音としては、こんな連中は片っ端からエア・ハンマーでぶん殴ってやりたいところだったが、戦況を鑑みて帰順を認可。それらの戦力も取り込んで王党軍はより躍進した。
一度こうなると脆いもので。
はせ参じる傭兵も増え、艦隊戦力を除けば、あっという間に戦力バランスは王党派側に傾いていった。
なお無傷の艦隊は強力だが、平野部に置いての戦争というものは結局は陣地の取り合いである。いくら敵を倒しても、敵が居なくなった後の占領が出来なければ意味がない。
加速度的に王党派は勢力を増していき、やがてフネごと王党派につく者も現れ始め、レコン・キスタは追いつめられていった。
そんな、タイミングで。
戦場の空。ウェールズは見慣れぬものを見た。
「あれは……」
一面四臂の巨大な黒いヒトガタ。だが、その下半身は蛇の如く。
姿は違うが、あの大きさ。まるであれはあの夜の悪魔のようだ。
あのヴァリエール家の三女が連れていた使い魔の物であった悪魔と似た巨大なゴーレム。
「もしや、再び味方してくれるのか?」
期待を込めた目で見上げるウェールズに、否、その戦場にいた全てのものに重苦しい男の声が聞こえた。
『第二の地獄、アンティノラ』
この日アルビオン王党派は、その総領とも言うべきウェールズ皇太子もろとも主力を失い、壊滅した。
同時にオリヴァー・クロムウェルを失ったレコン・キスタにも、アルビオン全土を統括するだけの力は残されておらず、これより『白の国』は傭兵残党の山賊化、治安の悪化により混迷へと突き進むこととなる。