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  • 絶望の街の魔王、降臨 - 06.5

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

絶望の街の魔王、降臨 - 06.5

最終更新:2009年01月05日 13:43

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 ルイズは完全にグロッキー。眼を回し、今は自室のベッドで眠っている。
 流石にいじめ過ぎたかな、とジルは反省する。科学を鼻で笑ったルイズに、その素晴らしさを誇示しようとしたのだが、これでは次から乗ってくれなくなる可能性もある。遅くて乗り心地の悪い馬になんか、本当は乗りたくないのだ。次にルイズを乗せる時には、もう少し抑えようと思っていた。
 それにしても、だ。彼女は不思議に思っていた。先ほど買った剣の事だ。150cm程の長剣、にも関わらず、非常に軽い。
「……フッ!」
 軽く、片手で振れる。
「ねえデル?あなたが軽いのって、魔法?」
「どうだったかね。今までこんな軽々扱われたことなんてねーし……いや……あった、かな?」
「またお得意の『六千年のボケ』?」
「いやいや、ボケなんかじゃないやい!ただちっと忘れてるだけだ!」
「痴呆症の剣か……買って早々後悔するとは思わなかったわ」
「人の話を聞け……ん?どうした相棒?」
 ジルの雰囲気が変わった。デルフから興味が別の物に移った。
「思えば、この世界のこと、まだよく知らなかったと思ってね」
 視線の先には蒼い竜。風竜が空から降りてくるところだった。
「見たことあるわね。ルイズの同級生の使い魔だったかしら」
「へえ、風竜召喚したのがいんのか。でも珍しさに関しちゃ、相棒に勝るものはねーな」
「そうね、人なんて前代未聞だって」
 会話しながら、風竜に近づいていく。
「きゅい?」
「あ、怪我してるわね。結構深いわね……」
 竜の足に、切り傷があった。鋭いものではなく、鈍いエッジの様なもので深く抉られたような切り傷。かなり痛いだろう。
「きゅい……」
 ジルはサイドパックから紙包みを取り出す。魔法より不可思議な混合ハーブ、完全回復薬だ。
「相棒、それはなんでい?」
「地上最強の薬よ。人間じゃないものに効くか判らないけど、ほっとくよりマシよ」
 包みを開くと風竜が騒ぎ出した。確かに黒っぽい、どこか毒々しい粉末は危機を感じるには充分だ。
「きゅいきゅい!」
「あー、暴れない!」
「きゅい!?きゅいい!!」
 足をがっしと掴まれる。その異常な怪力に、竜は恐慌に陥る。
「おい、相棒……」
 がりがり。
「くあっ……」
 その爪で引っかかれる。頬から胸元まで、かなり深く。
「きゅ?」
「ちょ、相棒!?」
「痛いわね。よく見てなさい」
 竜に引っ掻かれて『痛いわね』程度で済む人間を見て、デルフは呆れ返った。どれだけタフなのか。
 それよりも驚いたのは、その回復力だった。紙包みを口元に近付け、一気に含む。喉が動き、飲み込んだのが判った。と、傷がみるみるうちにふさがっていく。
「おでれーた!なんだそれは?」
「凄いのね!!」
 はしゃぐ一匹と一本。そのうち一匹をジト眼で見つめるジル。
「内服でも外用でもあるのよ。苦いわよ。飲む?」
「苦いのは嫌なのね!塗ってほしいのね!」
「判ったわ。全く、わがままな竜ね」
 しゃがみこみ、新たな混合ハーブを取り出し、
「少し染みるわよ」
 塗る。粉末を塗りたくる。
「い、痛いのね!痛いのね!!」
 また暴れる。
 またとばっちりを食らうわけにはいかないと、緊急回避でとっとと離れる。
「痛いの!きゅいきゅい!」
「落ち着きなさい。もう傷は無いわ」
「あ、ほんとですわ。ありがとう!きゅい!」
「よかったわね」
 本当に万能薬だった。最早種族にも縛られない、それを知ったジルは、次は救急スプレーでも試そうかしら、などと考えていた。デルフはまだ「おでれーた、おでれーた」と感心していた。
 さて、心中穏やかではないのはこの風竜、シルフィードである。彼女はただの風竜ではない。高い知能を持ち、人語を操り、先住の魔法を使う韻竜だ。しかし、韻竜は非常に希少な種だ。世間一般の常識では、絶滅したというのが定説である。つまり、シルフィードの存在自体が伝説の様なものなのだ。
 故にシルフィードの正体がばれることを、彼女の主は非常に恐れ、シルフィードに人前で話すことを禁じていた。もしばれれば、ガリアであれアカデミーであれ、実験室送りになるのは間違いない。
 なのに、だ。混合ハーブの効能を目の当たりにしたことで、一瞬ではあるがその禁を破ってしまったのだ。主人のお仕置きで済めば僥倖、下手を打てば研究材料として解剖である。
 しかし……
「ねえ、あなた、人を乗せて飛べるかしら?」
「きゅい?」
 ジルに驚いたりする様子は無い。
「……」
「……」
 返答のタイミングを逸し、微妙な沈黙が流れる。
「あれ?おまえさん、韻竜か?」
 その空気を軽く無視して、デルフが訊いた。
「きゅ、きゅい~~~~~」
「逃げるな」
 飛び立とうとしたシルフィードの足を左手でがっちり掴み、右手でデルフを地面に突き刺す。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!折れる折れる折れる!!」
「アンカーは黙ってなさい!」
「きゅい!落ちる~~~~」
 地面に縫いつけられた形のシルフィードは、さながら繋がれた犬が勢いよく駆け出してひっくり返るように、落ちた。びたーんと。
「相棒、ひでえぜ……」
「凄い馬鹿力なのね!」
「何で逃げるの?」
「そら相棒、喋る動物がいたら珍しいだろうがよ?下手したら実験室行きだ」
「連れ戻されるんじゃなくて?」
 ジルの常識では、珍しい『動物』は大抵、実験室から逃げてきたものだ。B.O.W.とか、ウィルスキャリアのネズミとか。
「相棒が何を言ってるか判らんね。まあこいつは韻竜ってやつで、今じゃ伝説クラスの生物だ。人語を解し、先住魔法を操る」
「そうなの。竜って普通に喋るものだと思ってたわ」
 成程、と、シルフィードは思った。驚かないはずである。
「マジかい……非常識にも程があるぜ」
「この世界の常識なんて知らないわよ」
 元の世界でも、彼女は非常識な存在だが、そんな事はこのインテリジェンスソードには知る由もない。
「この世界?別世界から来たみたいな言い方なのね」
 この韻竜、なかなか鋭い。
「正解よ。だから、この世界のことはよく知らなくてね。この近辺の地理も知らないし、上空から位置関係を見たかったのよ」
「きゅい?」
 ジルの遠まわしな要求に気付かない。
「乗せてくれないかしら?」
「秘密にしてくれるなら、お安い御用なのね」
「誰にも言わないわ。私に利益はないもの」
 快諾とほぼ同時に、その背に飛び乗るジル。
「いくのね~~~~~!!」
 ジルの返事も待たず、急上昇。シルフィードが予想した悲鳴は、誰も上げなかった。



「――――それで、あっち側がガリア。ラグドリアン湖って湖があるのね。……!」
 上空で位置関係を説明していたシルフィードが、止まる。さっきまで絶えることの無いマシンガントークが止み、滑空する。
「お姉さまがお呼びなのね」
 ほぼ垂直に降下し、ある程度高度を下げる。無論、そんな事では鋼の心を持つジルを脅かすに至らない。
「残念ね。ガリアって国が見てみたかったけど、そう遠くには行けないし」
「お姉さまとなら任務でちょくちょく行ってますわ」
 聞き慣れた、しかしこの世界では一度も聞かなかった単語が、ジルをわずかながら変貌させた。
「……任務?」
「!聞かなかった事にしてほしいのね」
「気をつけたほうがいいわよ。さっきもうっかり口を滑らせてたし」
「きゅい……」
 女子寮の周囲を旋回しながら、目標に近付く。『ご主人様』の部屋の窓に。
「……」
 蒼い髪の少女が、韻竜をじーっと見つめていた。
「おねえ……ぐぇ」
 喋ろうとしたシルフィードの声が、潰された牛蛙の様に歪む。目標の隣の窓が開かれていたのに気付いたジルが、喋らせまいとチョークスリーパーをかけたのだ。いや、その太い首をロックできてはないが、その細い右腕だけで絞めている。どれだけの馬鹿力なのかは 知らないが、大抵の攻撃では凹みすらしない竜の外皮越しに気道を潰している。
 ひゅるひゅると高度が下がり、女子寮の外壁にぶつかりやっとシルフィードは解放されるが、ダメ押しの衝撃で完全に気絶していた。
「えげつねぇ……」
 デルフの呟きに、
「やりすぎちゃったかしら……?」
 前衛的な格好で地に伏しているジルは返す。放り出され、派手に着地を失敗したのだ。
 すぐに立ち直り、シルフィードに駆け寄る。竜イコール頑丈という先入観が力加減を誤らせていたと感じたジルは、下手をすると殺したかも、などと冷や汗をかきながら思うのだった。
 そしてそこには、
「……」
 恐らく『お姉さま』がシルフィードの傍らに立っていた。
「ごめんなさい、生きてる?」
「ナイスワーク」
 抑揚の無い声で褒められた。
「聞かれなくて済んだ。ありがとう」
 どうやら感謝されているらしい。
「どういたしまして、でいいのかしら?」
 コクリと頷く少女。そこでジルは思い出す。
「どこか行くんじゃなかったの?」
「……暫く無理」
 気絶したまま身じろぎすらしないシルフィードを一瞥して、囁くように言う。
「お詫びといってはなんだけど、乗る?」
「?」
 乗る、の意味が判らず、顔を上げる少女。ジルが微笑みながら、親指で後ろの方を指していた。
「あの竜よりは速いわよ」
 地上最強の市販バイク、Y2Kが芝生の上に鎮座していた。



 偶然通りかかったギーシュにルイズとシルフィードへの伝言を託し、ジルは甲高く啼く鉄の馬に跨る。タバサは渡された兜を被り、縄で杖を躯にくくりつける。
「しっかり掴まって」
 シルフィードより速い、そんな事は無いだろう。この世界に、風竜より速い存在なんて無いのだから。しかし、さっきから感じるこの危機感はなんなのだろうか。
 キィン、キィンと、ジルはガスタービンエンジンをふかす。その度にタバサの不安は増加する。
「いくわよ……」
 ルイズの時同様、ウイリーしないギリギリの加速でアクセルを回す。その加速性能は、タバサにジルの言葉を信じさせるに足りた。本当に、シルフィードより速い。が、一気に失速する。
「ねえ、どっち?」
 門を出たところで、ジルが訊いてきた。



 地上を順調に巡航するバイクは、日が落ちる前にガリアの首都リュティスに到着した。
 道中自己紹介をしたが、それ以来言葉は交わされていない。ただ単に、タバサに余裕が無かっただけなのだが。
 風圧、体感速度、その機敏な動き、全てがジェットコースタークラスなのだ、ヴェルサルテイル宮殿に到達する頃には、今まで無い程に疲弊していた。しかし、それを表には出さない。いつもの平然とした無表情に、
「え?」
 と、暴君たる王女は疑問符を浮かべる。そしてその後について来る、おかしな格好の美女にも驚く。恐怖どころか、動揺すらしていない。
「今回の相手、何だったか伝えたはずよね?言ってみな?」
「吸血鬼」
「へえ、吸血鬼なんているの。ファンタジーね」
 この澄ました顔が恐怖に歪むのを楽しみにしていたのに、全く変わらない。傍らの女も、今知ったというのに愉快そうに笑う。
「だったら判るだろ?ピクニック気分でできる任務じゃないのは」
「ピクニックって言うより旅行気分ね」
 タバサは答えず、代わりにジルが答えた。
「うるさい!というか、あなた、一体何なの?」
「人に先に名乗らせるのがこの世界の流儀なのかしら?」
「無礼者!私を知らない……」
「うるさいわね、あなたなんか知らないわ」
「衛兵!この無礼者を殺れ!」
「はっ!」
 鎧を着た衛兵が槍を手に駆け寄ろうとするが……
「馬鹿ね」
 馬鹿でかい破裂音と閃光か幾度か瞬く。マズルフラッシュをもろに見たイザベラは網膜を灼かれ、真っ白になり痛む眼を押さえ蹲る。
「眼が!眼がぁ~~~」
 どこかで聞いた様な悲鳴をあげるイザベラには眼もくれず、タバサはその全てを見ていた。今、その視線の先には、装甲越しに脚を撃ち抜かれた衛兵が転がっていた。
「脆いわね、AP弾でもないのに貫通するなんて」
 地上最強のオートマティックピストルを手に無茶をいう、この場で最も暴君と呼ばれるに相応しい女。暴君(タイラント)を倒すのは、それ以上の暴君だ。
「くう……」
 ホワイトアウトから復帰したイザベラは、その惨状を見て、青褪める。
「私から訊いてあげる。私はジル・ヴァレンタイン。ちょっとした手違いでこの娘の竜代わりをしているわ。あなたは?」
 王族だろうが、いや、いかなる人間も逆らえそうにない笑顔で問われる。世間知らずの王女様には、それに抗う術は無かった。
「い、イザベラ……」
「OK。これからは、ちゃんと名乗るのよ。で、もう用は無いのね?」
「いや……」
 タバサに書簡を渡す。その後、何のアクションも無い。
「これで終わりね?」
 恐怖に染まり切った眼でジルを見ながら、コクコクと頷く。
「そう。じゃあ、行きましょ」
 ジルが歩き出し、一礼したタバサがそれについていく。イザベラや使用人達は、その様を呆然と見ていた。



 日が落ちて辺りが暗くなる頃に、やっとシルフィードはガリアに着いた。
「置いていくなんて酷いのね!先回りして使い魔の偉大さを教えてやるのね」
 と意気込むも、二人が偉大な科学の結晶を使った事を知らないシルフィードは、待ち合わせのタバサの実家で幽霊でも見た気分になった。
「なんでいるんですの!?」
「あれ」
 タバサの指し示す先には、見覚えのある機械。
「あの鉄の馬で?」
「あなたより速い」
 シルフィードは頭に鉄槌を食らった気分になった。自分のアイデンティティが奪われた。
「お姉さま、短い間でしたけど……」
「本が読めない。怖い。あなたの方がいい」
 わずかながら、タバサの顔に恐怖が鬱る、いや映る。ほんのわずかで、よっぽど注意深く見なければ判らない程度だが、シルフィードはその変化を見逃さなかった。本当に怖かったのだろう。
「よかったのね。じゃあ明日は……」
「ジルも連れて行く」
「ジル?」
「あなたを絞め落とした人」
 蒼いシルフィードの顔が蒼くなる。
「あの人、凄い力なのね!人じゃないのね!魔王なのね!」
「魔王?」
「竜を絞め落とすなんて魔王以外の何者なのね!?」
「あら、悪い竜を討つのは人間以外にないわ」
 びくっ、とシルフィードは固まる。
「ばれないよう協力してあげたのに、とんだ言い草ね」
「なんでここにいるのね!?」
「タバサを運んできたのよ。あなたを落としたお詫びに、ね」
 悪い人ではない。悪い人ではないが、恐ろしい。怪我も治してくれた。方法に難はあるが、韻竜であることをばれない様に協力してくれた。タバサも運んでくれた。
「落ち着いた?」
「ごめんなさい。私がどうかしてたのね」
「よかったわ。早速友達に嫌われるなんて嫌だったの」
「友達?」
「あれ?私の勘違い?」
 ジルはしょぼんとする。どこか孤高の狼の様なイメージがあるが、仲間想いである。そして一応人間なのだ、凹むこともある。
「ち、違うのね!友達なのね!」
「そう、よかった」
 慌てて否定する。ここに人と竜の友情が誕生した。
「それで、明日の移動はどうする?」
 ジルの問いに、タバサは無言でY2Kを指す。
「ひどいのね~~~~~!!」
 友情に亀裂が入った。



 次の日、朝早くに出立した二人と一頭は、一頭が遥か彼方に置き去りにされる現象が発生し、ひたすらプライドを破壊された風韻竜は、しかし健気にそれを追う。背中に誰も乗っていなくても、どんなに羽ばたいても、それに追いつくことはできない。
 ドップラー効果つきで小さくなっていく鉄の馬の甲高い咆哮が、非常な現実を彼女に突きつけるが、今では小さな点くらいにしか見えないそのシルエットが視界から消える寸前にそれは止まった。
 そこは目的地――――サビエラ村の数百メイル手前だった。
 ――――お姉さまは私を見捨てなかった……
 疲れていた躯を奮わせ、全力を以て主の元へ。
「遅い」
「遅い」
 死の魔王と氷の女王。少なくともシルフィードにはそう見えた。
「ひ、ひどいのね~~~~」
「ふふ、冗談よ」
「……」
 フォローするジルと無言のタバサ。何も言わない分、真意が測りづらい。もしかしたら冗談ではないかも知れないが、今はジルの言葉だけが救い故に追及できない。
「で、どうするの?下手にY2Kで村に突入はできないし、歩いて行くの?」
「そう」
「……それだけじゃないわね。何か企んでるでしょう?」
「……」
 おもむろにメイジの証であるマントを脱ぎ、杖と一緒にジルに渡す。
「成程、偽装って訳ね」
「きゅい?」
「ジル、騎士。私、従者」
 その偽装の意味を、シルフィードは最後の最後まで理解できなかった。



 サビエラ村では、あまり歓迎されてはいないのか、遠巻きに一行は見つめられていた。村人はひそひそとなにやら話しているが、どうせ『弱そう』とか噂しているのだろう。傍から見れば、確かにジルは華奢だ。しかし、元警察特殊部隊隊員であり、更にその前は軍人だった。この世界に来る前はバイオハザード対策部隊に在籍し、生物的に非常識な連中を相手に余裕で渡り合っていたのだ。その任務に付随する、調査や一般人の救出に於いて、ジルは今のこの村と同じようなシチュエーションを経験していた。
 つまりは、前任者の失敗からくる、自分への信頼の失墜。ラクーンシティで置き換えれば判り易い。村人はダリオ・ロッソ、前任者はRPD、そしてジルはジルのまま。この場合村人は非協力的か、或いは消極的に協力してくれる程度だ。
所詮は、群衆心理。
 魔王も騎士も、彼らには全く興味を見せずに歩く。
「ようこそいらっしゃいました騎士様」
 案内役が来て、村長の家に、そして村長の家の居間に通され、歓迎の言葉を受ける。
「ガリア花壇騎士のジル。ジル・ヴァレンタインよ。早速だけど、状況を」
「あ、はい」
 急かされ、村長は説明を始める。タバサから聞いた報告書の内容と、ほぼ一緒だった。
 二ヶ月前に十二歳の少女が殺られ、それから九人が犠牲になったという。
「二人犠牲になった後、誰も夜歩きはしなくなったんですぢゃ。しかし……夜にこっそり忍び込まれるのですぢゃ。どんなに厳重に戸締りをしたとしても」
 このときジルの脳裏にあったのは、どこかの教団の透明になれる寄生虫だ。
「おそらく昼間は森に潜んでおるのでしょう。この近くの森は深いので、昼でも真っ暗ですぢゃ。森に出る者もいなくなる始末で」
 ニンニクとか十字架は効くのかしら、などと考える。デルフリンガーで杭を作り、全武器無限化アイテムの中にあった純銀弾頭のカートリッジを装填しておく事を決定した。
「下の街の神官様に訊いたんですが……吸血鬼は血を吸った一人を“屍人鬼”に、下僕にできるそうですぢゃ。つまりは……村に誰か一人、屍人鬼がいると……皆、疑心暗鬼になって、村を捨てるものも出る始末」
 そういえば……と、ジルは昔の事を思い出した。バイオハザード被災者が避難してきた場所で一人が発症、他の人間も感染してるんじゃないかと疑った一人が暴れ、それを射殺したことを。
「目新しいことといえば、九人目に、胸にナイフか何かで、『04121』と刻まれておったくらいですぢゃ」
 いきなり報告にないことが村長の口から出る。ジルはその報告から『シリアルキラー』の単語を連想した。いや、どこかで聞いたことが……
「そんなところですぢゃ」
 ジルは少しだけ考え込み、踵を返す。
「な!?」
「?」
 予定では、村長が屍人鬼かどうかを調べる為に、躯を検めるはずだった。探偵や依頼主など、最も犯人から遠い存在であるはずの彼らが犯人の可能性もあるからだ。しかし、ジルはその工程をスルーした。
「調査を始めるわ。タバサ、ついてきなさい」
 断られたと思った村長は安堵の息を漏らす。
「検査は」
 タバサが耳打ちする。といっても、身長差がありすぎるために小さな声で訊くという結果になったが。
「無駄よ。どうせ虫刺されとかで誤魔化されるわ。どっちにしろ決定的証拠にはならない。それに、吸血鬼は狡猾なんでしょう?そんなへまをやらかすとは思えない。やるなら現行犯で殲滅するのが一番よ」
「……?」
 ジルの動きが止まる。
「覗き見はあまり感心しないわよ」
 ゆっくりと、奥の扉を向く。少しだけ開いた扉の隙間から、五歳くらいの少女が覗いていた。美しい金髪の、人形の様に可愛い少女だ。
「あら、可愛い娘ね。でも覗きなんてしていたらレディになれないわよ」
 少女はジルの言葉にびくんと身を振るわせると、どこかに逃げていった。
「エルザ!」
 逃げた少女――――エルザを村長は呼ぶが、戻ってくる気配はない。
「おどかしちゃったかしら」
 覗かれていると判った一瞬の殺意……いや、威圧的なオーラは、長く生きている村長をも脅かした。
「失礼をお詫びします。でも勘弁してやってください。あの娘は両親をメイジ殺され、以来恐れておるのですぢゃ」
「あら、村長の娘じゃないのね」
「養子ですぢゃ。一年ほど前に寺院の前に捨てられとったのです。早くに子を亡くし、連れも死んだわしには家族がおりませんでしてな、引き取ることにしたんですぢゃ」
 そして、村長は遠い目になる。
「わしはあの娘の笑顔を見たことがないのですぢゃ。躯も弱く、外で遊ばすこともできん。一度でいいから、あの娘の笑顔が見たいものですぢゃ。なのにこの吸血鬼騒ぎ、早く解決してほしいもんぢゃ……」
 そんな境遇の少女に思いっきり殺意の波動を当てたにも関わらず、ジルは何かを考え込み、タバサはどこ吹く風。もっとも、ジルはどうやって吸血鬼を『見つけ殺す(サーチ・アンド・ジェノサイド)』かを考えていた。仕事柄、どんな敵であろうと(例えそれが 同僚や知り合いの、成れの果てであろうと)それに対する容赦は1ppm程も無いのだった。


「ねえタバサ、吸血鬼に十字架やニンニクは効く?」
「効かない」
「なら銀は?」
「……判らない」
 調査中に、突然そんな事を訊くジルに、タバサは僅かながら困惑していた。
 そんな事はお構いなく、ジルは『自分の世界』の吸血鬼退治のセオリーに従い、最後のグレーである銀弾を装填しだした。ハンドガンは無論、ガトリングガンに至るまで。全て強装弾で弾頭には十字の傷が切られていた。十字架効果ではない。ダムダム弾である。
 非常時の予備として持っているその一つを弄ぶジルを尻目に、タバサは現場を調べ上げる。元警察特殊部隊のジルは、めぼしい場所を既に調べ終えていた。例え、傍からはそう見えなかったとしても。
「……眠りの先住魔法……」
 証言から、唯一判ったのはそれが使われたことだけだった。窓という窓、扉という扉を封じ、歩哨を立てても、吸血鬼はどこからとも無く忍び込み、歩哨を眠らせて血を吸う。
 ターゲットは判っている。前任の騎士を除けば若い娘だけ。ならば、上空のシルフィードに警戒させればいい。
「どこから入ってきたのかしらね」
 惨劇の舞台は寝室。窓には板が打ち付けられ、破壊された痕跡は無い。扉の前には家具が積まれ、普通の人間の力で動かせる状態ではない。つまりは、密室。
「……」
 タバサはその疑問に仮説すら答えない。
 ジルとタバサは、ほぼ同じ思考をしていた。違いは、ジルの戦闘能力の評価による、結論だけだった。
 最も手っ取り早いのは、『村の消去』。しかし、それは確実に取ってはならない手段。ラクーンシティの様な致命的汚染で無い限り使えない。如何に犠牲を出さずに、吸血鬼だけを殲滅するか。
 タバサは、ジルの戦力を当てにしていなかった。ギーシュに勝っても、所詮その程度。囮以外に役には立たないだろうと。何せ相手は吸血鬼なのだ、『かなり強い平民』程度では、倒すのは無理、と。
 そしてジルは、全く別の発想で結論を出していた。
 結局、この日の調査は何の進展も無く終わった。



 そして、翌日。



「へぇ……やってくれるじゃない」
 高高度から監視していたシルフィードに悟られず夜を歩き、家人を眠らせ、若い娘の血を吸った吸血鬼に、ジルは感心していた。
「何を暢気な事を!」
 村人の一人が怒鳴る。しかし、ジルは涼しい顔で検死する。
「見ての通り失血死。死後硬直が胸くらいまできてるわね。大体真夜中くらいにやられてるわ。抵抗の形跡は無いから……寝ていたみたいね。前の娘みたいな刻印は無いから、もうここでの目的は果たしたのかしら?さて……」
 部屋を見回す。やはり密室。出るのは苦労するし、入るのは不可能。
 粗方調べ尽くし、現場を出る。村人がわらわらと集まっていた。
「タバサ。周囲の調査と聞き込みを。見落としがあったら承知しないから、そのつもりでね」
「はい」
 主であることを演じる。
「後……昨夜の警戒で疲れたから、少し寝てくるわ。何かあったら教えて。どうせ魔法使えないから、杖は貴女に預けるわ。暇ができたら磨いてて」
「はい」
 更に囮を演じる。
 その言葉に、当然ながら村人が反応する。
「んだァ!魔法が使えないのか!?」
「んな騎士様がいるんかよ!?」
 数人の村人が怒鳴りながら詰め寄ってくる。
「この御方は、音に聞こえた偉大なメイジである」
「ガキは黙ってやガッ!?」
 いきなり胸倉を掴まれ、ガタイのいい男が宙に浮く。
「うるさいわね。最近何とか退治とかで休みも無くあっちこっち回されてるの。精神力が溜まる暇なんて殆ど無いの。Do you understand?」
「お城は何考えて……」
「優秀な人手が足りないからよ。まともに化物退治ができる騎士なんて、数人しかいないの。でもね……」
 殺意を向けられ、浮いている男が怯む。元の世界でのハードワークの鬱憤が、ここに来て爆発した。しかし、最低限の理性は残っている。『疲労の回復』ではなく『精神力の回復』と言ったのは、最低限の信用(メイジで、騎士であること)を失わないためだった。
「魔法が無くても、ある程度の化物は消せるの。魔法があったほうが遥かにいいのは確かだけど。だから、『たかがそれだけの事』であまり怒らないで欲しいわ」
 タバサのシナリオに無い台詞。しかし、かえってこれはよかったかも知れない。
「う……」
「Ok?」
 微笑んで、返答を待つ。男はこくこくと頷き、そして地に降り立つと、へなへなと崩れ落ちた。
「じゃあタバサ、頼んだわよ」
 杖を渡し、宿へ向かう。
「何だ、あの馬鹿力は?」
「おい、大丈夫か?」
「あの女、普通の人間じゃねぇ……本当に素手で化物を倒した事があるぜ……」
 ジルに持ち上げられた男が呻く様に呟く。底知れぬ闇の淵を覗いた様な顔で。
「おい!」
「あの方は、多少の無礼には眼を瞑る。それよりも、話を訊きたい」



 ジルは本当に眠っていた。村人達がアレキサンドルとかいう男を疑い、騒ぎを起こしても起きない。それもそのはず、夜通し屋根の上に潜んで警戒していたのだから。
 それを、彼女は狙おうとしていた。自分を討とうとする者、しかも若い女。それが無防備に眠っているのだから、やらない手は無い。
 宿にも、周囲にも誰もいない。わーわーと遠くで聞こえる以外は静かなものだ。
 音を立てない様に扉を開け、ゆっくり忍び寄り、魔法で眠りを深くして、その首に噛み付こうとした。
刹那。



「――――え?」



 抜ける様な間抜けなくぐもった破裂音。腹には激痛。そしてシーツには、穴。
「言ったでしょう?覗きをする様な娘は、素敵なレディになれないって」
 何かに貫かれた傷は、何故か治らない。
「なん、で……?」
 それは、様々な現実に対する疑問だった。
 何で、起きてるの?
 何で、判ったの?
 何で、痛いの?
 何で、治らないの?
 何で――――。
「あんなに殺意満々で近寄られたら、誰だって起き……ないか。村の娘はしっかりやられちゃたものね。まあ、最初から怪しいと思ってたのよ。いつも妙に視線を感じたし、現場への進入経路からも、子供だと思っていたし。用心して眠りの魔法を使ったのは 褒めてあげるわ。いまもすごく眠いのよね」
 そう言って、大欠伸をするジル。左手だけ伸ばして、右手はしっかりベレッタを握り、サプレッサー付の銃口を『彼女』から離さない。
「相棒、えげつねーぜ……て、その脚、大丈夫か?」
 ずっと鞘か、宿に置きっぱなしで喋る機会が無かったデルフが、一言。ジルの太腿には、フォークが突き立っていた。
「さて、ちょっと面白い話があるんだけど」
 完璧に無視して、彼女――――エルザに語りかけた。



 その日の夜。
 芝居の最終段階(クライマックス)が始まる。

「本当だった!エルザだ!」
「あの野郎!」
「逃がすな!追え!追え!」
 ジルの言葉で、村全体がエルザを監視。襲撃を未然に防ぎ、逃げるエルザを村人達が追うが、先住魔法を駆使した足止めにてこずり、森に逃げられる。
『森には入らないこと。もし逃げられたら、可能な限り包囲すること』
 ジルの指示通りに動く村人達。半信半疑だったエルザへの容疑か確実になった事で、村人達のジルへの信頼は非常に厚くなっていた。
「いいわね、絶対に森には入らないこと」
 更に念を押し、杖を持ったジルは森に入ってゆく。
 暫くして。何回も爆音が轟き、流れ弾の魔法らしい爆発が外にまで及び、村人はその戦闘に巻き込まれることを恐れ、誰一人としてジルの言いつけを破らなかった。
 そして爆音は止み、どうなったか村人が心配する中、ところどころ焼け焦げた金髪を手に、ジルが森を出てきた。
 村人達が上げる歓喜の咆哮が、茶番劇の終幕だった。



「生きたい?」
「……」

 苦しくて、頷くのが精一杯のエルザ。それに更にジルは問う。
「少し、話をしない?暴れないなら、助けてあげるけど」
 痛みでまともに考えられないエルザは、これにも頷いた。
「Ok」
 くいっと、ジルはエルザの顎を持ち上げ、口移しで『黒っぽい粉末』を飲ませた。
「……?」
 不思議なことに、傷は殆ど『瞬時』といっていいほどの速さで塞がり、痛みが消えた。
「さて、エルザ。私の使い魔にならないかしら?」
「え?」
 思わぬ提案に、一瞬凍りつく脳。それは、ジルが絶対的に取り得ない選択肢であり、エルザの予想を遥か数光年先をいった提案だった。
「ちなみに、嫌と言ったら永遠にさようなら。なれば私の下で働く事になるけど、定期的に血は飲めるし、生活は保障するわ。どう?」
 ジルがこの提案を思いついたのは、吸血鬼が子供である、その確証を得たときからだった。誰にも気付かれずに目標を殺す、なんて高等技術を持っているということは、即ち諜報員に向くということ。ルイズは、今までどこをどう調べても送還魔法が見つからないと言った。そして、ジルは禁書や立ち入り禁止の場所に『手がかり』がある可能性を示唆したが、ルイズの権限ではどうしても不可能がある。ならば、背に腹は変えられない。
 忍び込み、盗むのだ。
 今の彼女なら、盗賊だろうがB.O.W.でさえ利用するだろう。現に、これを利用した任務もあった。毒を以て毒を制す。
 そして、それに適役をここで見つけたのだ。
「使い魔……人間の下僕なんて……」
「幾つかの約束を守れば、こそこそせずに生きていけるけど」
「約束?」
「人間を殺さない。私の命令に従う。これだけ。ああ、破ったら地獄の底まで追いかけてきっちり息の根を止めるから、そのつもりで」
 ここで大人しく従う振りをして逃げ出す策は消えた。約束を――――契約を破ったら、本当にこの人間は――たとえ世界の果てに逃げようとも――私を殺すだろう。そして、この人間は絶対に殺せない。あらゆる感覚が、エルザにそう伝えていた。第六感までもが。
「で?どうかしら。悪い話じゃないと思うけど」
 そう、確かに悪い話じゃない。人間に狩られる心配も無く生きてゆける、そして、血も吸える。これほど幸せなことは無い。
「あ、忘れてたわ。幾つか訊きたい事があるのだけど」
「な……何?」
 答えを言おうとする寸前に声をかけられ、背筋に冷たい物が走る。
「どれだけ血を吸わないでいられるか。死なない程度に血を吸ったらどうなるか。血を直接吸うんじゃなくて、たとえば袋とかで保存したもので代用できるか。最低どれぐらいの頻度でどれくらいの量が必要か。教えてくれない?」
 そう、前提条件。これで、問題があれば即射殺しなければならない。
「三年は飲まないで大丈夫だった。でもなるべく毎日がいいわ。死なない程度に吸ったら逃げられて、逆襲されそうになったから吸い殺してるだけだから、普通に生きていられるわ。屍人鬼には望まないとならないし。血の保存は……やってみたけど美味しくないからあんまりやりたくないわ。一年に一回、人一人分くらいで大丈夫だったわ。でもそれじゃきついから、一週間にちょっとはほしいわ」
 これならいける。救急セットの中には、輸血パックが幾つかと、輸血セットがある。いざとなれば、コルベールに複製を頼めばいい。平行世界ではガソリンの複製ができたのだ、輸血用血液の生産も可能だろう。
「うん、問題ないわね。で、どうかしら?」
 再び問う。既に選択肢はジルの示した道にしか無い。
「使い魔に、なってあげるわ」



「吸血鬼を使い魔にするなんて、あの魔王は凄いのね!!さすが魔王なのね!!」
 上空、タバサとエルザを乗せたシルフィードがきゅいきゅいとはしゃぐ。
 タバサは、髪を切られ少しだけ活発そうな印象になってしまったエルザを見て、複雑な気分になった。
 ――――吸血鬼を飼うなんて、正気じゃない。
 そう、普通の人間、いや、メイジならそうだろう。
 しかし、ジルは吸血鬼を、魔法すら使わず、しかも殺さず、己の力のみで従えてしまった。
「吸血鬼には、銀が効くのよ」
 笑顔でそう言ったジルは、銀弾頭の9mmパラベラムをタバサに寄越した。月の光に反射して、手の中の其れは妖しく鈍く光り、何かの力を感じさせた。
「ま、魔王!?ジル、魔王なの!?」
 エルザが蒼い顔でシルフィードに訊き返す。あの栗色の髪の化物の力を受けたもの同士、通じるものがあるのだろうか、先程からずっと話している。
 下で咆哮が聞こえる。ジルが勝利宣言をしたのだろう。証拠は、エルザの髪。肉片すら残らず吹き飛ばした、そういうシナリオ。あれだけ派手にロケットランチャーをぶっ放していたのには、理由があったのだ。
 後は、ジルが村長に報告して、そしてすぐにヴェルサルテイルに向けて発つだけ。あまり長く学園を開けていると、ルイズがオーガーになりそうだから、というのが理由だ。
「まさか、お姉ちゃんが騎士だったなんて。すっかり騙されちゃったわ」
「そう」
「でも……だったら、マスターは何者?お姉ちゃんの従者?」
 マスターという呼び名に一瞬迷い、それがジルの事だと思い至り、彼女に最も適切な代名詞を考える。
「……同行者?」
「何で疑問形なの?」
「判らない」
「だから魔王なのね~」
 余計謎を深め、風韻竜は夜空を飛ぶ。
 考えても無駄だと、思考を切り替え、タバサは騒がしいのを我慢しながら月明りで本を読み出した。



「っきゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
 ドップラー効果で低く小さくなっていく悲鳴は、無論タバサのものではない。上空でその声を聞いていたタバサは、彼女を不憫に思った。
 ジル曰く、「便利そうだから」らしいが、タバサは真意が他にあるように感じた。つくづく、何を考えているのか判らない。
 しかし、この『魔王』についていけば、彼女の求めている物が手に入る、そんな予感がしてならなかった。どうやって手懐けたかは知らないが、少なくとも力だけでは無い。もしかすれば……と、タバサは思う。有り得ない事だと思いつつも、彼女が関われば現実味を
 帯びてくる、その予想の先には。
 タバサの中のイーヴァルティの騎士が、ジルの顔をして、笑っていた。



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