2012年5月2日
スペイン語およびポルトガル語に翻訳された日本の推理小説がどれぐらいあるのかを調べた。
「
英訳」、「
フランス語訳」、「
ドイツ語訳」、「
イタリア語訳」がどれぐらいあるのかは以前に調べている。これらのリストでは鈴木光司のホラー小説なども含め広くエンターテインメント作品を掲げているが、それらを除くと、英訳出版された日本のミステリは約60冊、フランス語訳も同じく約60冊、ドイツ語訳とイタリア語訳はそれぞれ約20冊ほどである。そして今回調べたところ、スペイン語に翻訳された日本のミステリは20冊弱程度であった。もっともこれらの数字はあくまでも気が付いた分だけなので、実際には数はもう少し多くなるだろう。
Index
スペイン語訳 (Spanish)
スペインamazonで、「翻訳されていそうな」日本の作家名を検索して作成したものである。「翻訳されていそうな」作家とは、英語やフランス語、ドイツ語、イタリア語などに翻訳されている作家である。そのような性質のリストのため、スペイン(語圏)で刊行された日本のミステリを網羅する完全なリストではない。
ここで示しているのはあくまでも見つけたものだけである。たとえば、鈴木光司『リング』のスペイン語版は、2010年12月に発行されたものが見つかったのでそれに
リンクをはっているが、2010年12月以前にも翻訳は出ていたかもしれない。
ISBNをクリックするとスペインamazonの対応するページが開くようになっている。
江戸川乱歩 (Edogawa Rampo)
- Relatos japoneses de misterio e imaginación
- La Lagartija Negra y la Bestia entre las Sombras / 『黒蜥蜴』と『陰獣』
- Moju: La bestia ciega / 『盲獣』
『Relatos japoneses de misterio e imaginación』は9編収録の短編集。英訳短編集『Japanese Tales of Mystery And Imagination』を翻訳したものだと思われる。収録作品は英訳短編集と同じく、「人間椅子」、「心理試験」、「芋虫」、「断崖」、「鏡地獄」、「双生児」、「赤い部屋」、「二癈人」、「押絵と旅する男」。
岡本綺堂 (Kido Okamoto)
- Hanshichi. Un detective en el Japón de los Samuráis / 『半七捕物帳』
El fantasma de Ofumi |
お文の魂 |
1 |
La farola de piedra |
石灯籠 |
2 |
La muerte de Kanpei |
勘平の死 |
3 |
El misterio de la campana de incendios |
半鐘の怪 |
6 |
La doncella del daimyô |
奥女中 |
7 |
Nieve de primavera |
春の雪解 |
9 |
La Mansión de las Campanillas |
朝顔屋敷 |
11 |
El guirigay de los gatos |
猫騒動 |
12 |
La celebración por el paso de la montaña |
山祝いの夜 |
14 |
El caso del halcón desaparecido |
鷹のゆくえ |
15 |
- Fantasmas y Samuráis. Cuentos modernos del viejo Japón (怪奇小説集?)
半七捕物帳シリーズの短編に発表順に通し番号をつけると、英訳は1~14、仏訳は1~20。スペイン語には、最初の15編のうちの10編が訳されている。省略されているのは4「湯屋の二階」、5「お化け師匠」、8「帯取りの池」、10「広重と河獺」、13「弁天娘」。
桐野夏生 (Natsuo Kirino)
- Out / 『OUT』(1997)
- Grotesco / 『グロテスク』(2003)
- Crónicas de una diosa / 『女神記』
鈴木光司 (Koji Suzuki)
続編の『らせん』と『ループ』のスペイン語訳は見当たらなかった。ほかに、MEIMUによる漫画版『
仄暗い水の底から』がスペイン語になっている。
谷豊 (Yutaka Tani)
- Detective Conan 1: La leyenda del tesoro de Koshu / 『小説名探偵コナン 甲州埋蔵金伝説』(2005)
- Detective Conan 2: Sinfonia para un crimen perfecto / 『小説名探偵コナン 殺人交響曲(シンフォニー)』(2006)
どちらも漫画の小説化ではなく、小説オリジナル。
戸川昌子 (Masako Togawa)
- Un Beso de Fuego / 『火の接吻』(1984)
- Lady killer / 『猟人日記』(1963)
- La llave maestra / 『大いなる幻影』(1962)
『火の接吻』スペイン語版の表紙は「
こちら」、『猟人日記』スペイン語版の表紙は「
こちら」などで見られる。
中村文則 (Fuminori Nakamura)
西尾維新 (Nisioisin)
- Death Note: Another Note / 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006)
ほかに、西尾維新が原作を担当した漫画『めだかボックス』が2012年7月から翻訳出版されている。
東野圭吾 (Keigo Higashino)
- La devoción del sospechoso X / 『容疑者Xの献身』(2005)
- La salvación de una santa / 『聖女の救済』
宮部みゆき (Miyuki Miyabe)
ほかに『ブレイブ・ストーリー』が2分冊(あるいは3冊以上?)で出ている。
- Brave Story / 『ブレイブ・ストーリー』
山田風太郎 (Futaro Yamada)
- Los ninjas de koga y su codigo secreto / 『甲賀忍法帖』
- La Leyenda de los Ocho Guerreros Perro / 『八犬伝』
横溝正史 (Seishi Yokomizo)
- El Clan Inugami / 『犬神家の一族』(1951)
吉田修一 (Shuichi Yoshida)
- El hombre que quiso matarme / 『悪人』
漫画の翻訳
- 乙一
- 高見広春
- 田口雅之による漫画版『バトル・ロワイアル』および富沢ひとしによる『ブリッツ・ロワイアル』がスペイン語に翻訳されている。
- ※著者名表記はKoshun TakamiではなくKoushun Takamiであることに注意。
カタルーニャ語訳 (Catalan)
カタルーニャ語はスペイン東部で使用されている言語。
東野圭吾 (Keigo Higashino)
ポルトガル語訳 (Portuguese)
国際交流基金が作成している「
日本文学翻訳書誌検索」(そのデータの参照元になっているのは『Japanese Literature in Foreign Languages』[日本ペンクラブ、1997年]等)で調べてみると、日本ミステリのポルトガル語訳には少なくとも以下のものがあるようである。
- 桐野夏生『OUT』、『グロテスク』(ブラジルで刊行)
- 西村京太郎『名探偵なんて怖くない』(ポルトガルで刊行)
- 松本清張『ゼロの焦点』(ブラジルで刊行)
これ以外に、ネット上を適当に検索してみると、松本清張『点と線』のポルトガル語版の『Dois Pontos e uma Reta』なども見つかった。
ポルトガル語版については、今後改めて調べてみるつもりである。
更新情報
- 2013年12月9日:スペイン語訳:岡本綺堂、谷豊、中村文則、山田風太郎、吉田修一を追加。桐野夏生『女神記』、東野圭吾『聖女の救済』、宮部みゆき『R.P.G.』『ブレイブ・ストーリー』、山田風太郎『八犬伝』を追加。
最終更新:2012年05月03日 16:36